これは、レスピマットの安全性懸念(e.g. スピリーバ・レスピマットの安全性疑惑: メタアナリシス 死亡率52%増加2011年 06月 15日)からなされた検討
TioSpir試験は果たして、この剤形の安全性懸念に対する回答になってるのだろうか?
形の上では、「レスピマット vs ハンディヘラー:非劣性評価で安全性確認」ということになってる
この治験は、
・プライマリ・アウトカムとして、レスピマットの死亡率 対ハンディヘラー 非劣性評価
・セカンダリ・アウトカムとして、同上COPD急性増悪回数 優越性評価
結果は、いずれも有意差を示していない。すなわち、帰無仮説は否定されていない。
では、これをどう解釈するか ・・・ 臨床医のEBM能力にかかわるトレーニング問題
同等性・非劣性
現代行われている有効性評価対照トライアルには、対照として「プラシーボ、非治療、 用量反応」を用いる優越性トライアルがある。4つめの種類として、非劣性として、active controlとして実際の治療(薬)を対照としてのsuperiority trialがなされ、対照より新治療(新薬)が優秀であると示すトライアルがある。さらに、新薬と対照薬の差が小さく、新薬でも有効であるということを証明するためのトライアルが行われている。
優越性検討を示す意図でない積極治療を対照とするトライアル
片側検定で、対照群より悪化を示すものではない場合、非劣性と呼ぶ。
非劣性試験の帰無仮説は「被験薬(T)と対照薬(C)の非劣性限界値(M)を定義し、この劣性限界値Mを超え、Cより劣勢である」こと。同じことだが・・・
帰無仮説:Ho: C-T ≧ M (Tは、Mを超えて、Cより劣性である)
対立仮説:Ha:C-T < M (Tは、Mを超えて、Cより劣性でない)
参照:http://www.fda.gov/downloads/Drugs/NewsEvents/UCM209084.pdf
対して、一般的薬剤トライアルである、プラシーボあるいは非治療対照治験では、帰無仮説は「被験薬剤(T)がプラシーボ(0)より有効でない、すなわち、T ≦ 0」
Ho:T ≦ P あるいは TーP ≦ 0
Ha:T > P あるいは TーP > 0
図譜として示された例(イベント発生率差 2%を非劣性限界と仮説)
(参照:https://www.mja.com.au/journal/2009/190/6/non-inferiority-trials-determining-whether-alternative-treatments-are-good-enough)
同等性・非劣性試験 2006年03月08日
解釈としては、帰無仮説に立ち返るべきである。
Ho:「死亡率において、スピリーバ・レスピマットは、スピリーバ・ハンディヘラーより、その非劣性限界値を超えて、その発生率高い」この帰無仮説は棄却されてない
言い換えれば、このTioSpirトライアルにおいて、少なくとも、「死亡率に関して言えば、スピリーバ・レスピマットは、スピリーバ・ハンディヘラーより危険である」という仮説は棄却されてない。
セカンダリアウトカムに関しての帰無仮説「スピリーバレスピマットは、スピリーバ・ハンディヘラーに比べ、設定限界値を超えて、COPD,急性増悪イベント減少効果は少ないか、同等」・・・これも棄却されてない。
この治験の大前提はUPLIFT試験
UPLIFT:スピリーバ 2008年 10月 06日
企業側は以下の宣伝したら詐欺行為・・・(食品表示偽装以上の犯罪)
「UPLIFT試験で、ハンディヘラーで、COPD死亡率か以前効果が示された(セカンダリアウトカムでの知見(下手な鉄砲が打ち当たった可能性)なのにまるで主目的だったかのような表現する詐欺)」→「TioSpir試験で、レスピマットよりハンディヘラーは非劣性示されなかった」(今回の同等性証明との混同詐欺;帰無仮説否定されてないのに同等と表現)→「故に、レスピマットでCOPDで死亡率改善し、安全性証明された」(三段論法にもならない詭弁詐欺)
やりかねないぜ!
呼吸器系医師は臨床治験になれてない。その解釈に不慣れ。
循環器疾患医師たちよりだまされやすいと思う。循環器系だってNovartisのいんちきトライアルにだまされたのだから・・・