2013年1月18日金曜日

糖の取り過ぎでも太る ・・・“糖は肥満と関係ない”というのは誤り


こういう記載のサイトがある・・・
砂糖は嗜好性が強いので、肥満の原因といわれることがありますが、カロリーはそれほど高くなく、単位あたりで比較しても脂肪の半分以下です。さらに、砂糖には食欲をおさえる働きがあり、この点でも、肥満とは関係ないことがわかっています。
時に、テレビ・ラジオ・新聞・週刊誌で、こういう主張を見聞きすることがある。


これは真実なのだろうか?


 “(砂糖)が肥満と関係ない”というのは誤り である。


以下のシステマティック・レビューに元づき記載すれば・・・
“肥満と砂糖は関係ある” というのは事実

ただ、他の栄養素と等エネルギー比較すると、肥満(脂肪量)への影響は同じ

正しくは、“糖も他の栄養素と同様肥満と関連する”と記載すべきである




システマティック・レビュー&メタアナリシス

糖摂取量増えるほど脂肪量は増加する。ただ、他の主要栄養素とエネルギー等価交換において、脂肪量は増えないので、基本的には食事量が増えるためと考えられる。

Dietary sugars and body weight: systematic review and meta-analyses of randomised controlled trials and cohort studies
BMJ 2013; 346 doi: (Published 15 January 2013) Cite this as: BMJ 2013;346:e7492

トライアル7895中30、コホート研究9445中38を登録

アドリブ食(食事摂取に厳しい制限せず)成人トライアルにおいて、食事中の糖摂取量減少は体重減少と相関 (0.80 kg, 95% 信頼区間 0.39 ~ 1.21; P<0 .001=".001" br="br">糖摂取量増加は、体重増加と相関する (0.75 kg, 0.30 ~ 1.19; P=0.001)

他の炭水化物を食事性糖の等エネルギー交換にて、体重の変化を示さない (0.04 kg, −0.04 to 0.13)

小児のトライアルにおいて、糖加糖食事・飲料減少を勧めている場合、被験者のコンプライアンス悪く、これらのトライアルでは体重の包括的変化認めず。

しかし、前向き研究の1年後糖甘味飲料摂取相関に関し、糖摂取最大摂取群/最小摂取群比較の、過体重・肥満となるオッズ比は1.55(1.32-1.82)

1つのメタアナリシスではheterogeneity有意に存在し、複数のトライアルではバイアスが存在したが、感度分析では、この傾向は一致し、除外後も相関性存在。





成人体脂肪量測定:糖摂取減少の効果




 


成人体脂肪測定量:糖摂取増加の効果



 


糖を他の炭水化物・主栄養素類へ等エネルギー交換の影響





小児体脂肪量:食事性糖摂取減少効果





小児体脂肪量と糖摂取の相関性





でも、bioelectrical impedance analysis (BIA)ってほんとに信頼できるのだろうか?

太り気味の方が死亡率は低い ・・・ 解釈は単純ではない

ちょっと太り気味の方が死亡率は低い ・・・ってことなのだが、エディターでは、そういう単純なものではないと考えてるようだ。交絡要素の可能性を示唆している。


 Association of All-Cause Mortality With Overweight and Obesity Using Standard Body Mass Index CategoriesA Systematic Review and Meta-analysis
Katherine M. Flegal, et. al.
JAMA. 2013;309(1):71-82. doi:10.1001/jama.2012.113905.


正常体重(BMI 18.5~25以下)比較のRandom-effects summary 全原因死亡 HRs
overweight (BMI  25~30未満): 0.94 (95% CI, 0.91-0.96)
obesity (BMI  30以上):1.18 (95% CI, 1.12-1.25)
grade 1 obesity (BMI  30~35未満):0.95 (95% CI, 0.88-1.01)
grades 2 / 3 obesity (BMI  35~、40以上):1.29 (95% CI, 1.18-1.41)

適正補正考慮された体重・身長に限定した場合に一致した所見

現実測定に比べ、自己報告体重・身長の場合の方が、ハザード比高い


grade 2/3の肥満では、全原因死亡率は高い
grade 1の肥満では死亡率増加とは関連せず、過体重はむしろ全原因死亡率低下を示す。
事前定義標準BMIにて研究間比較を調整した。


Only Substantial Obesity Is Associated with All-Cause Mortality
In a meta-analysis, being modestly overweight was somewhat protective.
http://general-medicine.jwatch.org/cgi/content/full/2013/117/1?q=etoc_jwgenmed
米国、ヨーロッパ、オーストラリアの288万名、27万件の死亡事象を含む97研究のまとめで、体重カテゴリーを標準化したもの。

“肥満と死亡との関連性の過剰補正もなく、年齢、性別、喫煙状態の過小補正もない”


疑問点がうかぶのは、軽度過体重から肥満の場合、早期死亡増加の関連性が、以前の報告であったこと。
エディターは、BMIに関して住民統計学的データ、人種、脂肪蓄積、心血管系フィットネスの独立した関連性を斟酌してなかったことに着眼している。
医療に関しては、合併症・QOL低下に関わる死亡率を取り組まなければならない。
体重やBMIは有益だが、カウンセリング上はそれだけでは不完全だ。


テレビやラジオなどで、物知りが押した解説者が「ちょっと太り気味の方が長生き」なんて講釈たれそうな話題ではある。テレビって、ものごとを断定的にするほうが好まれる。テレビや出版業界からは慎重な物言いはきらわれるから極論する方が取り上げられやすい。

悪性黒色腫診断スマホ・アプリの診断正確性 ・・・ 


皮膚病変を写真で判断するスマートフォンアプリの評価

4つのスマートフォンアプリ


 Diagnostic Inaccuracy of Smartphone Applications for Melanoma Detection
Joel A. Wolf, et. al.
JAMA Dermatol. 2013;():1-4. doi:10.1001/jamadermatol.2013.2382.

感度は、6.8%から98.1%
特異度は、30.4%から93.7%
PPVは 33.3%から42.1%
NPVは、65.4%から97.0%

最も感度の高いメラノーマ診断アプリは専門医資格をもつ皮膚科医師への転送及び診断アプリであったというオチ

もっともだめなのは、画像診断自動アルゴリズムによるもの

Flublok : 昆虫内増殖による新しいインフルエンザワクチン FDA承認

FDA NEWS RELEASE
FDA approves new seasonal influenza vaccine made using novel technology
http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm335891.htm

新しい技術の3価インフルエンザワクチン:Flublok

製造方法は、おそらく、“バキュロウイルスに目的遺伝子を組み込んだ後、昆虫細胞に感染させて目的タンパクを製造する系で、組み込む遺伝子の種類が変わっても生産条件を大きく変える必要がない、柔軟で効率的な製造技術”(http://www.umnpharma.com/project/technology.html)

昆虫ウィルス発現システムと組み込みDNA技術を利用したもので、季節性インフルエンザ18-49歳までが対象

鶏卵増殖では時間がかかるのに比べ、この技術によりインフルエンザ大流行時も即時大量生産可能と製薬会社側。

45mcgに用量設定し、比較対照試験ではすべてのインフルエンザウィルス株に対して44.6%程度の有効性
2500名のボランティアで安全性確認

HA抗原に対するワクチンのため従来のワクチンと根本的には変わらないため有効性に関しては従来通りの限界がある。

左室収縮機能不全:β遮断剤共有のクラス効果である



ガイドラインでは有症状心不全で、NYHA I以上、AHA/ACC分類StepB以上でβ遮断剤適応だが、今回、左室収縮機能不全患者に関して、多くのβ遮断剤共通の効果(class effect)あるかどうかの報告


Benefits of β blockers in patients with heart failure and reduced ejection fraction: network meta-analysis
BMJ 2013; 346 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.f55 (Published 16 January 2013


アテノロール(テノーミンなど)、ビソプロロール(メインテートなど)、ブシンドロール、カルベジロール(アーチスト)、メトプロロール(ロプレソールなど)、ネビボロールの21トライアルの異なるβ遮断剤の心不全への有効性システマティックレビューとメタアナリシス

総合解析にて、β遮断剤はプラシーボ・標準治療比較で、中央値12ヶ月での、死亡率ベネフィットが確実(オッズ比 0.69、0.56~0.80)

しかし、異なるβ遮断剤でのガチンコ比較では死亡リスク、心臓突然死、ポンプ機能不全による死亡、薬剤中止率に関して明らかな違いはない。

左室駆出率改善効果も個別薬剤毎でなく、同等。




日本の心不全ガイドライン(http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2010_matsuzaki_d.pdf)記載のβ遮断剤はカルベジロール、メトプロロール、ビソプロロール
ただ、心不全医療保険適応はカルベジロール、ビソプロロールのみで、後発品剤型によっては保険適応外なので注意が必要。

大規模症例対照研究:ビスフォスフォネート暴露と消化管がん関連せず

 2つの大規模プライマリケアデータベースに基づく症例対照研究(50歳以上、1997-2011)で、ビスフォスフォネート暴露は通常の胃腸がん(直腸結腸がん、食道がん、胃がん)のリスク増加と関連せず

Exposure to bisphosphonates and risk of gastrointestinal cancers: series of nested case-control studies with QResearch and CPRD data
BMJ 2013; 346 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.f114 (Published 16 January 2013)
Cite this as: BMJ 2013;346:f114




 基礎研究ではビスフォスフォネートは抗腫瘍作用の可能性があるが、胃腸系への副作用の可能性あり、粘膜刺激の上、潰瘍の原因となる可能性があり、がんとの関連性も否定出来ないということので確認研究らしい。
以下の報告があった
Cardwell CR, et.al. Esposure to oral bisphosphonates and risk of esophageal cancer. JAMA. 2010;304(6):657-663. doi:10.1001/jama.2010.1098 

Green J,  et al. Oral bisphosphonates and risk of cancer of oesphagus, stomach, and colorectum: case-control analysis within a UK primary care cohort.  BMJ 2010; 341 doi:  (Published 3 September 2010)

最近では以下の報告もある

女性では、ビスフォスフォネート処方で、食道癌リスク増加 2012/10/31
http://kaigyoi.blogspot.jp/2012/10/blog-post_31.html



上記報告だけで、結論づけするには早すぎると思う・・・



骨粗鬆症:ビスフォスフォネート製剤は5年程度で打ち止めにすべきだ ;"drug holiday"方針 2011年 09月 10日 http://intmed.exblog.jp/13545069/

骨粗鬆症治療:ビスフォスフォネート治療継続期間に関する意見 2012/05/10 http://kaigyoi.blogspot.jp/2012/05/blog-post_10.html



nestedコホート研究について
前向きコホート研究は、対象群を同定し、ベースラインにおいて対照群から標本やデータを抽出し、それらを時間的に前向きにフォローアップして行われる。この研究の利点は、事象と原因との時間的な関係を確立できること、暴露についての不完全なkい億による偏りを最小限にとどめることである。前向きコホートの欠点としては、研究対象のフォローアップを維持することが難しいことや、観察したい結果がまれにしか起きない場合の時間的な非効率性、などが挙げられる。前向きコホート研究のコストを抑える方法として、コホートを確立した後に行う実験解析の対象を、陽性の研究対象と、そえに見合った数の陰性の研究対象に限る方法がある。この種の研究デザインは、症例コントロール研究画コホートの入れ子になってることから、入れ子症例コントロールデザインと呼ばれる(Wacholder et. al. 1992)。
後ろ向きコホート研究は、現在に於ける研究対照群を同定した後、彼らの過去をさかのぼって追跡し絵行われる。この種の研究では、絶対リスク、相対リスクを評価することが可能で、また、前向きコホート研究と比べて容易に出来ることが多い。しかし、たとえば食事摂取など過去に起きた暴露を想い出す必要がある場合などに、後ろ向きコホート研究では偏りが生じうる。コホートがどのように確立したかによっては、コホート研究の結果を他の固体群一般化するのは難しいかもしれない。

(消化器癌 - 47 ページ - Google ブック検索結果 books.google.co.jp/books?isbn=4431712267 上西紀夫 - 2007 - Digestive organs)



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