2019年4月2日火曜日

睡眠時無呼吸症候群:AHI=重症度という幻想

「令和」発表で、pubmed検索 
案の定、”Showing results for reina. Your search for reiwa retrieved no results.”

"heisei"だと、420あるんですけどね・・・




この報告によると
  • 睡眠時間の短さ→昼間の眠気
  • 閉塞型睡眠時無呼吸→肥満、高血圧、脂質異常リスク
と、分けられる

Epworth 睡眠スケールで、閉塞型睡眠時無呼吸をスクリーンするのが標準だと思うのだが、AHI5以上検知感度6割強で、スクリーンとしては感度悪いし、客観的睡眠計測で補正する必要ありそうな・・・

「新幹線運転手居眠り」から日本では周知されはじめた睡眠時無呼吸症候群、眠気=睡眠時無呼吸症候群という直感が臨床の場で浸透されすぎているのかもしれない

もう一度、昼間の眠気に関しては睡眠時間について検証が必要かもしれない。

最初の文献の結論は・・・
「【昼間眠気】客観的睡眠時間測定加味すると・・閉塞型睡眠時無呼吸より睡眠時間の短さが重要


OSA, Short Sleep Duration, and Their Interactions With Sleepiness and Cardiometabolic Risk Factors in Adults
The ELSA-Brasil Study
Luciano F. Drager, et al.
CHEST 
DOI: https://doi.org/10.1016/j.chest.2018.12.003

【序文】閉塞型睡眠時無呼吸(OSA)と短い睡眠時間(short sleep duration : SSD)は昼間の症状と心血管代謝deregulationと関連する。しかし、OSA着眼研究が大多数で、SSD評価はされてないし、逆もしかり。目的はOSA、SSDの関連性、眠気と心血管リスク要素の相互関連を大規模成人コホートで検討

【方法】ブラジル長軸的研究:Brazilian Longitudinal Study of Adult Health (ELSA-Brasil) 連続被検で臨床評価、睡眠アンケート、家庭睡眠モニタリング、actigraphy施行。
OSAはAHI 15イベント/h以上。SSD 6時間未満

【結果】2,064名データ最終解析(男性 42.8%;平均年齢 49±8歳)
全体頻度 OSA 32.9%、SSD 27.2%
多寄与因子補正後、過剰眠気はSSDと独立して相関 (OR, 1.448; 95% CI, 1.172-1.790)し、OSAでは相関せず (OR, 1.107; 95% CI, 0.888-1.380)
SSDのOSAとの相互作用は有意ではない
明らかな肥満 (OR, 3.894; 95% CI, 3.077-4.928)、高血圧 (OR, 1.314; 95% CI, 1.035-1.667),、脂質異常(OR, 1.251; 95% CI, 1.006-1.555) は独立してOSAと相関するが、SSDとは相関せず
同様に、OSAのSSDとの関連は有意ではない
SSD5時間未満あるいは連続睡眠時間という項目を検討に加えても、心代謝リスク要素との相関性の無さは変わらない

【結論】客観的睡眠時間の少なさは昼間の眠気と独立して関連するが、閉塞型睡眠時無呼吸では関連認めず。逆に、閉塞型睡眠時無呼吸は独立して肥満、高血圧、脂質異常と関連するが、客観的睡眠時間の短さとは関連せず



次の文献の結論は
AHIより覚醒閾値低下と関連したイベント時間の短さが生命予後と関連


そもそも、AHIという指標は、生じる低酸素血症、睡眠断片化、イベント毎の期間、そしてイベントの分布などの情報、体位毎、夜間、睡眠ステージ毎の情報が無視されている。arousal thresholdや間接指標としのて呼吸イベントの時間などの情報が含まれてないため、イベント持続時間を計測、低酸素血症、高炭酸ガス血症、end inspiratory effortなどを生理的ストレッサーとして指標化する報告が最近なされている。


Apnea–Hypopnea Event Duration Predicts Mortality in Men and Women in the Sleep Heart Health Study
Matthew P. Butler , et al.
AJRCCM Vol. 199, No.7 Apr 01,2019
https://doi.org/10.1164/rccm.201804-0758OC       PubMed: 30336691

序文: 閉塞型睡眠時無呼吸は死亡率リスク要素だが、その診断metricであるAHIは予後因子としてはpoor。AHIは患者個体内・患者間の生理学的変動、例えば低酸素血症・睡眠断絶化をcaptureできないため、気道虚脱、化学受容体negative feedback loop gain、arousal thresholdなどの病態生理変動の差を反映できない。

目的: 呼吸イベント時間、arousal thresholdのheritable sleep apnea traitが総死亡率を反映するかの検証

方法: 前向き居住者ベースコホート Sleep Heart Health Studyにおいてイベント時間の機能として死亡リスクをCox比例ハザードにて推定。

測定と結果: フォローアップ11年間で、5,712名被検者中死亡1,290。
住民統計要素(平均年齢 63歳、女性 52%)、AHI(平均 13.8 ; SD 15.0、喫煙 、明瞭な心代謝疾患といった要素補正後、最も短いduration event分位ほど他の分位に比較して総死亡ハザード高い:1.31 (95% 信頼区間, 1.11–1.54).



この相関は男女とも観察され、中等度睡眠時無呼吸で最も強い相関であった (ハザード比, 1.59; 95% 信頼区間, 1.11–2.28)

結論 :相対的に短いrespiratory event durationは、低arousal thresholdのマーカーとして、男女とも死亡率予測要素。respiratory event短い症例では換気不安定 and/or 自律神経augmented responseを有し、健康有害事象尤度増加し、閉塞型無呼吸の生理学的変動評価として重要であろう




イベント時間は女性やアフリカ系アメリカ人など短く genetic locus (rs35424364)というラテンヒスパニック系アメリカ人に多いなど遺伝的な関連性あり
AHIの数値にかかわらず、睡眠障害にばらつきがあり、
1)より軽い睡眠ステージでも覚醒が生じる
2)同じ睡眠ステージでも化学受容体や、呼吸努力が生じ覚醒閾値が低く、
3)化学受容体からの反応が迅速すぎる(低酸素高炭酸ガス血症への化学受容体反応性、loop gainの増加)
など機序で生じると考察



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