2012年3月20日火曜日

抗血小板:CKDアウトカム改善せず



慢性腎臓病(CKD)で抗血小板薬のデータは広範なpopulationのトライアルのpost hoc解析から由来するものである。出血アウトカム・トライアル期間はheterogenous。

CKD患者の抗血小板治療による死亡率・心血管疾患・出血イベントへの影響

Review
Effects of Antiplatelet Therapy on Mortality and Cardiovascular and Bleeding Outcomes in Persons With Chronic Kidney Disease
A Systematic Review and Meta-analysis
Ann. Int. Med. March 20, 2012 vol. 156 no. 6 445-459



抗血小板剤は心血管イベント予防に使われてるが動脈硬化性疾患は予防しがたいため、治療効果は、CKD患者で異なる。そして、出血ハザードがこのポピュレーションで増加する。

9トライアル(CKDのpost hoc 全サブグループ:急性冠症候群、PCI施行、9969名を含む)と、31トライアル(安定・非心血管疾患11701名)

low qualityエビデンスとして、急性冠症候群患者で、glycoprotein IIb/IIIa inhibitors or clopidogrel plus standard care と標準治療とを比較、全原因・心血管疾患死亡率、心筋梗塞とは小程度もしくは影響のない状態。しかし、出血は増加。

安定・非心血管疾患では、プラシーボ、無治療比較で 、抗血小板は心筋梗塞予防できるが、死亡率への影響は不明で、low quality evidenceながら、minor bleeding増加する。
CKD患者での抗血小板治療のベネフィットは不確定、出血ハザードによる影響が大きい。

Rotterdam Study: 冠動脈石灰化スコアはFRS予後予測改善

オランダ・The Rotterdam Study 前向き住民ベースコホートをベースにして、
冠動脈心疾患(CHD)の新規リスクマーカーにより、Framingham risk score(FRS)を改善するか?

Evaluation of Newer Risk Markers for Coronary Heart Disease Risk Classification
A Cohort Study
Maryam Kavousi, et. al.
Ann. Int. Med. March 20, 2012 vol. 156 no. 6 438-444


coronary artery calcium [CAC] scoreをFRSへ追加することで、リスク予測正確性を改善(c-statistic increase, 0.05 [95% CI, 0.02 to 0.06]; net reclassification index, 19.3% overall [39.3% in those at intermediate risk, by FRS])

 prohormone BNPのN末端フラグメント値もリスク予測を改善するが、程度は少ない(c-statistic increase, 0.02 [CI, 0.01 to 0.04]; net reclassification index, 7.6% overall [33.0% in those at intermediate risk, by FRS])

 他のマーカーのリスク要素改善効果は境界的でたいしたことない。




冠動脈(心臓)CTのための SCCTガイドライン
www.scct.jp/SCCTguideline.pdf

SGLT2阻害剤 Dapagliflozin:インスリン投与2型糖尿病への長期効果

新規SGLT2( sodium–glucose cotransporter 2)阻害剤ダパグリフロジン(dapagliflozin)

後述してある、がんリスク関連など安全性危惧のため、まだ米国FDAでも認可されてないはずの薬剤


Long-Term Efficacy of Dapagliflozin in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus Receiving High Doses of Insulin
A Randomized Trial
John P.H. Wilding,et. al.
Dapagliflozin 006 Study Group
Ann. Int. Med. March 20, 2012 vol. 156 no. 6 405-415 

24週、ランダム化、プラシーボ対照化、多施設トライアル

インスリン30U以上の2型糖尿病コントロール不良

プラシーボ 、dapagliflazin 2.5mg、5mg、10mg の1:1:1:1 ランダム化割り付け
48週間

プライマリアウトカムは、ベースラインから24週までの糖化ヘモグロビンA1c変化
セカンダリアウトカムは、24週時点体重、インスリン投与量、空腹時血糖
副事象24週間評価

800名解析。

24週後、平均糖化ヘモグロビンA1c

プラシーボ群 0.39%、dapagliflozin 群 0.79%〜0.96%減少 
平均差
2.5mg群 −0.40% [95% CI, −0.54% to −0.25%]
5mg群 −0.49% [CI, −0.65% to −0.34%]
10mg群 −0.57% [CI, −0.72% to −0.42%]
1日インスリン投与量はdapagliflozinで0.63-1.95 U減少、プラシーボでは 5.65 U増加
平均差
2.5mg群 −7.60 U [CI, −10.32 to −4.87 U]
5mg群 −6.28 U [CI, −8.99 to −3.58 U]
10mg群  −6.82 U [CI, −9.56 to −4.09 U]
体重は、dapagliflozinで0.92〜1.61 kg減少、プラシーボで0.43kg増加
平均差
2.5mg群  −1.35 kg [CI, −1.90 to −0.80 kg]
5mg群 −1.42 kg [CI, −1.97 to −0.88 kg]
10mg群 −2.04 kg [CI, −2.59 to −1.48 kg]
この影響は48週間持続

プラシーボ群比較で、pooled dapagliflozin群患者では低血糖エピソード高い (56.6% vs. 51.8%)、生殖器感染イベント (9.0% vs. 2.5%)、尿路感染示唆イベント (9.7% vs. 5.1%)


新規糖尿病薬ダパグリフロジンも膀胱癌・乳がんリスク懸念 &肝障害 ・・ FDA認可どうなる? 2011年 07月 16日 http://intmed.exblog.jp/13086674/

抗酸化神話への警告:ビタミンE/C/αリポ酸による抗酸化剤でかえって認知機能低下!

この場合は、ビタミンE、C、αリポ酸だが、その抗酸化剤による、アミロイド、タウ病理関連脳脊髄液バイオマーカーに対し影響は認めず。脳脊髄液F2ーisoprostane levelは、E/C/ALA群で低下し、酸化ストレスの減少を示唆する作用がある。しかし、認知機能低下の可能性が認められ、長期臨床トライアルにおいてはこのことに今後注意が必要である。
 

Antioxidants for Alzheimer Disease

A Randomized Clinical Trial With Cerebrospinal Fluid Biomarker Measures

Douglas R. Galasko, et. al.

for the Alzheimer's Disease Cooperative Study
 

Arch Neurol. Published online March 19, 2012. doi:10.1001/archneurol.2012.85


ビタミンE(αートコフェロール)800IU/ 日+ビタミンC 500mg/日+αーリポ酸900mg/日(E/C/ALA) ;コエンザイムQ ×3/日
vs
プラシーボ


アルツハイマー病関連CSF(脳脊髄液)バイオマーカー、酸化ストレス、認知機能(MMSE)、機能(Alzheimer's Disease Cooperative Study Activities of Daily Living Scale)


78名をランダム化; 連続CSF試料は66名で生化学解析可能採取 
研究薬剤はトレランス良好

MMSEスコアはむしろE/C/ALA低下促進 、安全性の問題が表面化した。

脳脊髄液 Aβ42、tau、P-tau181の変化は3群で差認めず


脳脊髄液F2-isoprostane濃度、酸化ストレスバイオマーカーは、ベースラインから16週目で、平均19%平均で減少するが、他の群では差は認めない。




抗酸化サプリメントは寿命を短くする 2007年 02月 28日
http://intmed.exblog.jp/5178031/ 

抗酸化物質だけを大量にとると酸化促進物質として溜まる  2011年 06月 09日
http://intmed.exblog.jp/12809477/
 
 
サプリメント、ビタミン関係の身体的悪影響に関する知見は、テレビ(NHKを含め)ほぼ報道されない。
例外は、この程度か?
     ↓
ビタミンE過剰摂取で骨減少=ネズミで確認、人の調査必要―慶大など 2012年03月05
http://kaigyoi.blogspot.jp/2012/03/e.html

スタチンの肺炎頻度減少

”healthy user" effectで説明できるかもしれないという反論が呈されている、スタチンの肺炎減少効果の検討。

randomized, double-blind, placebo-controlled JUPITER trial (Justification for the Use of Statins in Prevention: an Intervention Trial Evaluating Rosuvastatin)からの解析


The effect of rosuvastatin on incident pneumonia: results from the JUPITER trial
Victor Novack, et. al.
CMAJ March 19, 2012 cmaj.111017 

17802のトライアル登録、1.9年中央値フォロー
肺炎頻度は、ロバスタチン群 214、プラシーボ 257 (hazard ratio [HR] 0.83, 95% confidence interval [CI] 0.69–1.00)

心血管イベント前イベントに限定した解析では、肺炎は、rosuvastatin群 203、プラシーボ 250 (HR 0.81, 95% CI 0.67–0.97)

再発肺炎を組み入れた場合、この効果は変更されない (HR 0.81, 95% CI 0.67–0.98)、また、年齢、性別、喫煙、メタボリックシンドローム、脂質レベル、CRPレベルでも同様に修正されない。


肺炎後スタチン:死亡回避治療必要人数 15 ・・・ スタチン予防効果 2011年 04月 08日
http://intmed.exblog.jp/12387883/

スタチン事前服用による肺炎アウトカム改善 2008年 10月 28日
http://intmed.exblog.jp/7610427/

糖尿病患者のスタチン治療は肺炎リスクを抑制? 2006年 10月 29日
http://intmed.exblog.jp/4591071/

老人:スタチン治療と市中肺炎リスク減少効果は幻? 2009年 06月 19日
http://intmed.exblog.jp/8435654/


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