2019年3月13日水曜日

認知症:中年期食事の予防効果は根拠乏しい

現時点で、認知症が真に"preventable"、"treatable"と言えるのか?

食事の内容・質の脳機能への役割から考え、特定の栄養素の役割などから"potentially modifiable"と述べる人間もいるらしく、また、多くの研究で単一栄養素・食品に関連した認知への影響報告がなされている。しかし、栄養素相互作用もあり評価は複雑で困難。バイオマーカーや認知症リスクへの影響や、認知機能低下をもってその評価とする多数の報告もある。システミック・レビューや観察研究メタアナリシスでも確固たる結論でない領域である、食事による認知症リスクへの影響



Association of Midlife Diet With Subsequent Risk for Dementia
Tasnime N. Akbaraly, et al.
JAMA. 2019;321(10):957-968. doi:10.1001/jama.2019.1432


Key Points
  • 疑問点  中年期の食事はその後の認知症リスクと関連するか?
  • 知見 前向きコホート研究 認知症無し 8225名登録、中年期食事(平均年齢 50歳)をAlternate Health Eating Index (score range, 0-110)で評価したが、その後の認知症リスクと有意相関せず (Alternate Health Eating Index10-ポイント増加毎ハザード比, 0.97)
  • 意義   中年期食事の質の反復評価はその後の認知症リスクと有意相関しない

要約
【序文】  観察研究では食事が認知的健康と関連することが示唆されている。しかし、多くの研究のフォローアップ期間は長期的に認知症臨床前状態を考慮するに不十分な期間であり、介入研究エビデンスも結論づけできない状況
目的 中年期食事は認知症リスクと関連するか検討 
【デザイン・セッティング・登録】 住民ベースコホート研究(1985-1988)、食事摂取評価 1991-1993、1997-1999、2002-2004。認知症発症フォローアップ 2017年3月31日まで 
【暴露】  Food frequency questionnaire to derive the Alternate Healthy Eating Index (AHEI)、11の構成食事の質スコアe (score range, 0-110)、高スコアほどより健康的と示唆 
【主要アウトカムと測定項目】  電子カルテとリンクし確認された認知症発症
【結果】   1991-1993年認知症無し 8225名(平均年齢, 50.2歳、 SD 6.1歳、男性 5686(69.1%)
フォローアップ中央値 24.8年間(IQR , 24.2 - 25.1年間)記録で認知症発症 344例
1991-1993年、1997-1999(フォローアップ中央値, 19.1年間)、2002-2004年(フォローアップ中央値 13.5年間)のAHEI暴露3分位では、認知症発症率の有意差認めず
1991-1993年分 AHEI最悪三分位 1000人年あたり 認知症発症 1.76 (95% CI, 1.47-2.12)と比較し、中間三分位  0.03 (95% CI, −0.43 to 0.49)  最良三分位は 0.04 (95% CI, -0.42 to 0.51)、
1997-1999年分 AHEI最悪三分位 1000人年あたり 認知症発症  2.06 [95% CI, 1.62 to 2.61、中間三分位 0.14 (95% CI, −0.58 to 0.86) 最良三分位 0.14 (95% CI, −0.58 to 0.85)

2002-2004年分 AHEI最悪三分位 1000人年あたり 認知症発症   3.12 [95% CI, 2.49 to 3.92、中間三分位 −0.61 (95% CI, −1.56 to 0.33)  最良三分位  −0.73 (95% CI, −1.67 to 0.22)

多変量解析にて、AHE増加 1-2D(10ポイント) 毎 認知症発症I補正ハザード比(HRs)は、1991-1993評価 adjusted HR, 0.97 [95% CI, 0.87 to 1.08、 1997-1999評価 adjusted HR, 0.97 [95% CI, 0.83 to 1.12]、 2002-2004年評価adjusted HR, 0.87 [95% CI, 0.75 to 1.00] で有意でない

【結論と知見】 長期前向きコホートにて、中年期食事内容の質評価は、その後の認知症リスクと有意相関しない




中年期食事に注意しても遅い?あるいは、他要素の方が影響大?
認知症はその前状態として15-20 年間の期間があり、この間に認知機能衰退、気分変容など伴う。中年期からがんばっても遅い可能性がある。
また、ここでの健康食はメディタリアン、DASH等低炭水化物・高蛋白スコアに基づくもの、 ここの健康食が、真に"脳の健康につながる食事”とは限らない可能性もある。




noteへ実験的移行

禁煙はお早めに! 米国における人種・民族・性別による喫煙・禁煙での死亡率相違|Makisey|note 日常生活内の小さな身体活動の積み重ねが健康ベネフィットをもたらす:VILPA|Makisey|note