2017年3月31日金曜日

深呼吸と覚醒の仕組み

呼吸は、永遠でなければならないリズム、でなきゃ死んじゃう。呼吸はそれ以外に、発生、顔面や口唇の運動行動、感情表出(泣き笑い)、移動行動でもintegrateされる。認知により左右され、ヨガや瞑想、心理療法は感情や覚醒状況、高度脳機能の役割でも注目される。マウスの350ニューロンという少数のサブセットを特定し、 脳幹locus coeruleus (LC) のノルアドレナリン作動性ニューロン群で、覚醒状況と関わることを発見






呼吸リズムの関連で pre-Bötzinger complex は重要とのこと

日本の研究者もこの領域でご活躍なようで・・・
無意識下でも形成、維持がなされる自律的な呼吸運動は、生命維持に必須で、その停止は死に直結し、その障害は呼吸不全を惹起します。呼吸運動は横隔膜などの呼吸筋の活動によりますが、呼吸筋の活動は、延髄を中心とする脳幹部で形成される呼吸リズム形成神経機構の働きにより維持されています。(略)独立行政法人国立病院機構村山医療センター臨床研究センターの岡田泰昌室長、東京大学大学院薬学系研究科の池谷裕二准教授、佐々木拓哉博士、兵庫医科大学生理学講座の越久仁敬教授らを中心とする研究グループは、げっ歯類延髄のpre-Botzinger complexと呼ばれる呼吸リズム形成の中核となっている部位において、吸息性神経活動に先行して活動を開始するアストロサイト(グリア細胞の一種)を発見しました。さらに、pre-Botzinger complex領域のアストロサイトを選択的に興奮させると、吸息性神経活動を起こしうることを確かめました。
引用:http://prw.kyodonews.jp/opn/release/201209257177/



PM10大気汚染:死亡率影響即日的〜老人影響大、女性影響大

pm10の死亡率への影響、中国大都市での異質性についても調査
2億人以上の統計、38都市 死亡総数35万のデータ





Particulate air pollution and mortality in 38 of China’s largest cities: time series analysis
BMJ 2017; 356 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.j667 (Published 14 March 2017)
Cite this as: BMJ 2017;356:j667


同日のpm10濃度の変化量は、その日1日あたりの死亡数増加に関わる度合いは 0.44% (95% 信頼区間 0.30% to 0.58%)

前日、その前々日の lag pm10濃度では、1/3〜2/3へその影響程度減弱するも死亡率増加と相関

心血管疾患死亡へのPM10の影響は 10 μg/m3あたり 0.62% (0.43 〜 0.81%)で、他の疾患死亡率では0.26% (0.09% 〜 0.42%)

PM10暴露は男性より女性でインパクト大

60歳以上老人では 60歳未満の若年者より高濃度大気汚染での影響大

都市間で影響ばらつき、 PM10高濃度の場合ほど境界的ではあるが影響減少



今までの研究は西洋社会での報告が主、中国では PM10濃度 500μg/m3
を超える状況が頻繁
random effects meta-analysisを用い中国国内大気汚染粒子濃度の推定とその影響のheterogeneityを検討されたもの





2017年3月29日水曜日

小児期鉛暴露長期影響:IQ、認知機能、社会経済ステータス低下と関連?

亜鉛は、ガソリンなどのアルキル鉛、鉛製給水管、塗装原料など環境中に多く存在する
安価なアクセサリーなど亜鉛含む場合、子供のおもちゃなど特に注意する必要があるそうで、2008年改正食品衛生法で有害指定されている

で・・・


ニュージーランド40年間 前向きコホート研究

小児期鉛暴露が、その後成人となったときの認知機能や社会経済ステータスに関連するか?

Association of Childhood Blood Lead Levels With Cognitive Function and Socioeconomic Status at Age 38 Years and With IQ Change and Socioeconomic Mobility Between Childhood and Adulthood
Aaron Reuben, et al.
JAMA. 2017;317(12):1244-1251


オリジナル被検者 1037名中、 1007名38歳まで生存、 11歳児鉛検査 565名(56%)( 男性 54%、 白人 93%)、 11歳時 血中鉛濃度 平均(SD) 10.99 (4.63) µg/dL


血液検査された38歳時被検者  mean WAIS-IV score  101.16 (14.82)、mean NZSEI-06 score 49.75 (17.12)

母体IQ、 小児IQ、小児社会経済ステータス補正後、血中鉛濃度 5-μg増加毎、以下と相関

成人IQ 1.61-point スコア低下 (95% CI, −2.48 to −0.74)
知覚推理:perceptual reasoning 2.07-point  スコア低下 (95% CI, −3.14 to −1.01)
working memory 1.26-point  スコア低下 (95% CI, −2.38 to −0.14)

小児期鉛濃度と、verbal comprehensionとprocessing speed は統計学的に有意ではない

寄与要素補正後、小児期鉛濃度 5-µg/dL 増加ほど、社会経済ステータス 1.79-unit スコア低下 (95% CI, −3.17 to −0.40)


血中鉛濃度増加と、IQ及び社会経済ステータスの減少に関する強い相関は、小児期からの下方移動に起因し、その関連性は40%



結論:ニュージーランド1972−1973年生まれコホートにて、鉛小児暴露は、38歳時点の認知機能及び社会経済ステータスと相関し、IQ減少と社会的下方流動と関連する
小児鉛暴露が長期影響を及ぼす可能性







日本での摂取量微増傾向あるそうで・・・

環境中の鉛による健康影響について
http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/MM0904_01.pdf


RCT:ビタミンD・カルシウムサプリメント:癌発生抑制作用認めず

この論文の前提にこれがある

“Over 2-7 years of duration, the benefit of vitamin D supplementation may be limited to cancer mortality.”
Vitamin D supplements and cancer incidence and mortality: a meta-analysisBr J Cancer. 2014 Aug 26; 111(5): 976–980.


故にRCTで確認

閉経後女性(平均年齢 65.2 , SD 7.0)歳、ベースライン血中 25-OHビタミンD 32.8 ng/mL, SD 10.5)


Effect of Vitamin D and Calcium Supplementation on Cancer Incidence in Older Women
A Randomized Clinical Trial
Joan Lappe, et. al.
JAMA. 2017;317(12):1234-1243. doi:10.1001/jama.2017.2115

治療群:ビタミン D3 2000 IU/d + カルシウム 1500 mg/d vs プラシーボ
プライマリアウトカムは、全種類癌の発生頻度(非メラノーマ癌除外)

1年後 介入群 血中25-OHビタミンD濃度 43.9 ng/mL、プラシーボ群  31.6 ng/mL

新規癌診断:介入群  109  45 (3.89%) vs プラシーボ  64 (5.58%) (差, 1.69% [95% CI, −0.06% to 3.46%]; P = .06)

Kaplan-Meier incidence over 4 years 介入群 0.042 (95% CI, 0.032 to 0.056)  vs  0.060 (95% CI, 0.048 to 0.076) ; P = .06

非補正Cox比例ハザード回帰ハザード比 0.70 (95% CI, 0.47 to 1.02)

副作用:腎結石 介入群 16 vs プラシーボ群 10、 血中カルシウム濃度増加 介入群 6 vs プラシーボ群 2

2017年3月27日月曜日

静脈血栓塞栓:HERDOO2 rule :女性の低リスク 短期抗凝固治療後長期的治療は不要

初回原因不明静脈血栓塞栓女性で、HERDOO2 低スコアなら抗凝固療法短期治療後中止可能・・・・との結論



連続症例初回原因不明静脈血栓塞栓(VTE、下肢近位側 or 肺塞栓)症例 3155名
5から12ヶ月間の抗凝固治療完遂者

HERDO02クライテリア 0〜1女性を低リスク :介入群
2以上女性と 男性を高リスク :観察群

1年間超過フォローアップにて有症状再発

Validating the HERDOO2 rule to guide treatment duration for women with unprovoked venous thrombosis: multinational prospective cohort management study
BMJ 2017; 356 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.j1065 (Published 17 March 2017)






   
女性1213名の内、低リスク 631 (51.3%)、経口抗凝固剤中止 591名
プライマリ解析にて、

  • 抗凝固剤中止低リスク女性で、564人年フォローアップ中、再発VTE発症 17名 ( 年間3.0%, 95% 信頼区間 1.8% 〜 4.8%)



  • 高リスク女性と、男性 のうち、抗凝固剤中止 323名、309人年フォローアップ中、再発VTE発症  25名 ( 年間 8.1%, 5.2%〜11.9%)
  • 高リスク女性と、男性のうち、抗凝固剤継続 1802名、1758人年フォローアップ中、再発VTE発症  28名 ( 年間 1.6%, 1.1%〜2.3%)



2017年3月24日金曜日

気道疾患のミトコンドリア機能障害

ミトコンドリアのbioenergetics、カルシウム、構造上の調整障害(fusion、fission、 splittingと増殖)、motility、 ROSとDAMPs(Damage associated Molecular patters)、autophagy/mitophagyなど

治療ターゲットの一例として、昔懐かしいビタミンC・E、 mitoubiquinone mesylate(MitoQ)のようなミトコンドリア標的抗酸化物質。ミトコンドリア特異的 mitoTEMPOは、線維化抑制、マウスの喘息モデルに有効との報告。MitoQとMitoTEMPOともタバコ煙抽出物によるミトコンドリア機能障害改善作用、COPDの気道平滑筋ミトコンドリア機能改善、喘息のオゾン暴露マウスでの改善作用・・・記載あり
fission/fusion、motilityなど今後の課題


英国調査:飲酒の各心血管疾患への影響は均質なものではない

英国ロンドンにおける調査:CALIBER (ClinicAl research using LInked Bespoke studies and Electronic health Records)

1997−2010年(フォローアップ中央値6年間)の住民ベース電子カルテに基づくコホート研究
コモンな疾患12種類のアルコール摂取との関連




2017年3月23日木曜日

プレガバリン:リリカ 坐骨神経痛に効果無し

プレガバリン:リリカ 坐骨神経痛に効果無し

大事なことなので、2度書いた





Trial of Pregabalin for Acute and Chronic Sciatica
Stephanie Mathieson, et al.
N Engl J Med 2017; 376:1111-1120March 23, 2017

ランダム化二重盲検プラシーボ対照化トライアル
プレガバリン 150mg/日;最大 600mg/日まで補正
vs プラシーボ

プライマリアウトカム:下肢痛強度(0−10ポイント) 8週目、52週目
セカンダリアウトカム:障害程度、背部痛強度、QOL(事前設定期間測定:1年間以上)


総数209名ランダム化;プレガバリン 108、プラシーボ 101

未補正下肢痛強度スコア
8週:プレガバリン 3.7 vs プラシーボ 3.1 (補正平均差, 0.5; 95% confidence interval [CI], −0.2 to 1.2; P=0.19)
52週: 3.4 vs 3.0 (補正平均差,  0.3; 95% CI, −0.5 to 1.0; P=0.46)

セカンダリアウトカム全項目:8週後、52週後 群間有意差認めず


副事象: 227 vs 124、プレガバリン群においてdizziness多い



2017年3月16日木曜日

COPD急性増悪管理:ERS/ATSガイドライン

chronic obstructive pulmonary disease (COPD) 専門家multi-disciplinary task force によるCOPD急性増悪治療の新しいガイドライン

European Respiratory Society (ERS)と American Thoracic Society (ATS) 共同



Management of COPD exacerbations: a European Respiratory Society/American Thoracic Society guideline
Jadwiga A. Wedzicha, et al.
European Respiratory Journal 2017 49: 1600791; DOI: 10.1183/13993003.00791-2016



以前のガイドラインでは重症急性増悪患者からの集めたエビデンスが主だったが、新しい文書は、外来での軽症中等症急性増悪患者への抗生剤・ステロイド・抗生剤を含む事項から、重症急性増悪退院後3週間呼吸リハビリテーション開始推奨を含む事項
加え、
非侵襲換気治療、在宅ケアについて6つの鍵となる議論点
・経口ステロイド vs ステロイド非投与 ; 非入院患者
・経口ステロイド vs 注射ステロイド ; 入院患者
・抗生剤 vs 抗生剤非投与 ;歩行可能患者
・非侵襲人工換気 vs 通常ケア ; 入院患者
・在宅管理 vs 入院
・呼吸リハビリテーション vs 通常ケア ; 入院患者








Global Strategy for the Diagnosis, Management, and Prevention of Chronic Obstructive Lung Disease 2017 Report: GOLD Executive Summary
Claus F. Vogelmeier, et. al.
European Respiratory Journal 2017 49: 1700214; DOI: 10.1183/13993003.00214-2017

2017年3月15日水曜日

小児科医師たちの"emotional intelligence"

"emotional intelligence"は解説として、「 the ability to recognize and understand emotions in yourself and others and to use this awareness to manage your behavior and relationships.」と記載。自分の感情の客観的認識理解と、行動とその感情との関連性について管理自覚することとなるだろうか?


優秀な医師はこの"emotional intelligence"高度なのか?
https://medicalxpress.com/news/2017-03-emotional-intelligence-doctors.html





若年医師たちは、グループとして emotional intelligence surveyにおいて、スコア110の中央値群で高レンジであり、一般には100程度。

以下サブカテゴリーが極めて優秀

  • 衝動制御:impulse control (114)
  • 共感:empathy (113) 
  • 社会的責任:social responsibility (112) 


以下スコア比較的低値

  • 独善性:assertiveness (102)
  • 柔軟性:flexibility (102) 
  • 自立:independence (101)


医師に対する”emotional intelligence"の調査報告はなされたことがあるが、主として小児科レジデントへの調査は行われず

レジデント3−4年目は、1−2年目比較で assertiveness (109 vs 100)が高い
スキルや知識獲得からくる自信にゆらいするものか?

一方、1−2年目のレジデントは、 empathy (115.5 vs 110)が高い。

性別の差は無い




Assessment of Emotional Intelligence in Pediatric and Med-Peds Residents
Ramzan Shahid et al,
Journal of Contemporary Medical Education (2016). 
DOI: 10.5455/jcme.20170116015415






IQと違い、"emotional intelligence"は教育可能。教育的介入により同スコアは改善する。特に自立性、独善性、共感に関してフォーカスすべきと解説

Read more at: https://medicalxpress.com/news/2017-03-emotional-intelligence-doctors.html#jCp




 医師に限らず、年齢と共に独善性と自立性を増長してしまうものなのだろう。

老医師の立場になりつつ私・・・確かに、柔軟性欠如傾向にあり、独善性が増しているのを自覚する

それにしても小児科の先生たちは衝動制御:impulse control 優れてると思うわ・・・成人基本の内科開業医はそう思う・・・


2017年3月14日火曜日

システマティック・メタアナリシス 非糖尿病CKDの集約的血圧コントロールと腎疾患発症

非糖尿病CKDの集約的血圧コントロールと腎疾患発症のシステマティック・メタアナリシス

比較:強化: intensive BP control (<130 bp="" control="" hg="" mm="" nbsp="" span="" standard="" vs=""> 


結論から言えば、

  • 総論的には、強化降圧にベネフィット見いだせず
  • ただし、人種的効果差あり?
  • 非黒人では、標準治療よりより強化された治療が優れている可能性有り




Association of Intensive Blood Pressure Control and Kidney Disease Progression in Nondiabetic Patients With Chronic Kidney Disease
A Systematic Review and Meta-analysis
Wan-Chuan Tsai, et. al.
JAMA Intern Med. Published online March 13, 2017. doi:10.1001/jamainternmed.2017.0197

9トライアル、8127名、フォローアップ期間中央値 3.3年間

標準血圧コントロール比較し、集約的血圧コントロールで、以下有意差認めず

  • 年間GFR減少 (mean difference, 0.07; 95% CI, −0.16 to 0.29 mL/min/1.73 m2/y)
  • sCr倍化あるいはGFR 50%減少 (RR, 0.99; 95% CI, 0.76-1.29)
  • ESRD (RR, 0.96; 95% CI, 0.78-1.18)
  • 複合腎アウトカム (RR, 0.99; 95% CI, 0.81-1.21)
  • 全原因死亡 RR, 0.95; 95% CI, 0.66-1.37)


非黒人及び蛋白尿高レベルでは、強化血圧コントロールで腎疾患発症リスク低下傾向






ALLHATから人種的違いを意識するようになったが、今回も、人種差でその予防的効果が異なる。食習慣、genotypeが関与するのだろうか?




2017年3月11日土曜日

“beauty parlor stroke syndrome”

美容・理髪店における洗髪後、死に至る可能性さえある健康被害は稀ではあるが・・・
実態は、“vertebral artery dissection from hyperextension of the neck”(頚部過伸展に伴う、椎骨動脈解離) 

“beauty parlor stroke syndrome”
https://www.theatlantic.com/health/archive/2017/03/is-this-going-to-kill-me-beauty-parlor-stroke-syndrome/517851/




Is Beauty Parlor Stroke Syndrome A Real Thing?http://acsh.org/news/2016/03/10/is-beauty-parlor-stroke-syndrome-a-real-thing


医学用語として記載

Beauty Parlor Stroke (redirected from Beauty Parlor Stroke Syndrome)
A cerebrovascular accident that occurs in a woman receiving a shampoo in a beauty salon caused by bilateral compression of the vertebral arteries, which occurs when the head is tilted backwards over the shampoo sink, in a background of atherosclerosis
http://medical-dictionary.thefreedictionary.com/Beauty+Parlor+Stroke+Syndrome 



April 28, 1993 Beauty Parlor Stroke Syndrome: Report of Five Cases Michael I. Weintraub, MD
JAMA. 1993;269(16):2085-2086. doi:10.1001/jama.1993.03500160051022 



時折、取り上げられる病態ではあるが、警告はすぐ忘れられる






2017年3月10日金曜日

ACE阻害剤/ARB投与時は血中Crモニタリングを・・・

ACE阻害剤/ARBの臨床的重要性は揺るがないが・・・ 腎機能モニタリングしなければ、患者にリスクを与えることとなる





ACE阻害剤やARBは高血圧、心不全、糖尿病性微量アルブミン尿症、蛋白尿性腎症、心筋梗塞後に主に処方されている。遠心性腎細動脈収縮によるアンジオテンシンIIの拮抗作用によりこれら薬剤服用後急激腎機能低下例が存在する。
突然の腎障害検出のため、ACE阻害剤/ARB開始前後のsCrモニタリングが曖昧ながら推奨されている。30%以上sCR増加時治療中止を考慮する。最近の報告ではそのモニタリング10%程度で、さらにsCr30%以上増加例痔中止したのはわずか20%。

ACE阻害剤/ARB開始後sCR濃度増加にともなう長期心血管アウトカムについての住民ベースでの調査

Serum creatinine elevation after renin-angiotensin system blockade and long term cardiorenal risks: cohort study
BMJ 2017; 356 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.j791 (Published 09 March 2017)
Cite this as: BMJ 2017;356:j791


主要アウトカム測定は、ポアソン回帰による、sCr30%増加やsCr10%増加毎のESRD、心筋梗塞、心不全、死亡発生率

Cr30%増加2078(1.7%)において、その比率高いのは、女性、高齢で、併発症多く、NSAIDs使用、ループ利尿剤、K sparing 利尿剤使用多い


Cr30%以上はそれ以下に比べ全てのアウトカム補正発生率増加と関連

  • ESRD 3.43 (95% confidence interval 2.40 to 4.91)
  • 心筋梗塞 1.46 (1.16 to 1.84)
  • 心不全 1.37 (1.14 to 1.65) 
  • 死亡 1.84 (1.65 to 2.05) 



sCr増加毎詳細カテゴリー化 (<10 10-19="" 20-29="" 30-39="" all="" for="" p="" trends="" values="">

sCr 30%未満増加でも、全てのアウトカム発生率増加と相関
death (10-19%増加 1.15 (1.09 to 1.22)、20-29%増加  1.35 (1.23 to 1.49), < 10%増加を指標)


カレンダー期間、患者サブグループ、治療継続者においていずれも一致






COPDあらたな治療ターゲット?:Frizzled Receptor 4

肺実質肺胞組織の喪失と、組織修復障害に特徴付けられるCOPD


WNT/β-catenin signaling低下がCOPDで観察されるも
 WNT receptors Frizzled (FZD)の役割について特異的には不明


Frizzled proteinの説明
http://www.cellbiol.net/docs/Frizzled.pdf

アポトーシス中のsignal transduction pathway
https://en.wikipedia.org/wiki/Frizzled#/media/File:Signal_transduction_pathways.svg



まずは観察として、COPD患者、特に喫煙者において、Frizzled 4受容体が非喫煙者比較して減少
次に、細胞培養とモデル系で、細胞内Frizzled 4 signaling抑制にて、WNT/beta-catenin活性減少し、創傷治癒・修復機転低下をもたらすことを示した
受容体欠損で、エラスチンやフィブリン、IGF1を含む構造上有用な特定の蛋白

 ↓

Reduced Frizzled Receptor 4 Expression Prevents WNT/β-catenin-driven Alveolar Lung Repair in COPD
Wioletta Skronska-Wasek , et. al.
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine (2017). DOI: 10.1164/rccm.201605-0904OC
DOI: http://dx.doi.org/10.1164/rccm.201605-0904OC


2017年3月8日水曜日

米国:心血管代謝疾患死亡と食事要素の検討

 米国内の心血管・代謝疾患死亡の半数近くが問題ある食習慣により被呼起こされ、特に、ナトリウム摂取が高比率で、他、加工肉、糖化甘味飲料、加工・未加工肉過剰も重要な要素。不十分摂取として果物・野菜・ナッツ/シーズ類・全粒粉・PUFA(多価不飽和脂肪)・海産物ω3など。
 ただ、 住民のうちの、性別、人種、教育水準などの影響が多々ありとのこと



 National Health and Nutrition Examination Surveys (1999-2002: n = 8104; 2009-2012: n = 8516)
 食事と疾患の推定相関
 前向き研究・臨床トライアルのメタアナリシスから潜在バイアスリスクを解析評価、 National Center for Health Statisticsから疾患特異的国民死亡率推定


 10の食品/栄養成分と心血管代謝疾患の関連性
 (フルーツ、野菜、ナッツ・シーズ、全粒穀類、非加工レッドミート、加工レッドミート、糖化飲料(SSB: sugar-sweetened beverage)


 主要アウトカムは、心疾患・卒中・2型糖尿病の死亡率絶対的・比率、疾患特異的・住民統計指標(年齢、性別、人種、教育)特異的死亡率とその傾向(2001〜2012年間)



Association Between Dietary Factors and Mortality From Heart Disease, Stroke, and Type 2 Diabetes in the United States
Renata Micha, et. al.
JAMA. 2017;317(9):912-924. doi:10.1001/jama.2017.0947
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2608221


2012年、米国成人での心血管代謝疾患死亡数 702 308
心疾患:506 10  (冠動脈疾患 371 266、 高血圧性心疾患 35 019、他心血管疾患  99 815 )
卒中  128 294  (虚血性16 125 ischemic, 出血性 32 591 , 他 79 578 )
 2型糖尿病  67 914

 これらのうち、suboptimal intakesと関連するのは、年間心血管代謝疾患死 推定  318 656 (95% uncertainty interval [UI], 306 064-329 755; 45.4%)
心血管代謝疾患死  男性 48.6% (95% UI, 46.2%-50.9%) 、女性 41.8% (95% UI, 39.3%-44.2%)

  • 若年(25-34歳)  64.2% (95% UI, 60.6%-67.9%) 、高齢(75歳以上) 35.7% (95% UI, 33.1%-38.1%) 
  • 黒人  53.1% (95% UI, 51.6%-54.8%) , ヒスパニック 50.0% (95% UI, 48.2%-51.8%) , 白人 42.8% (95% UI, 40.9%-44.5%)
  • 教育水準  低 46.8% (95% UI, 44.9%-48.7%) , 中等度 45.7% (95% UI, 44.2%-47.4%) , 高度 39.1% (95% UI, 37.2%-41.2%) 


推定食事関連心血管死亡数最大は

  • 高ナトリウム摂取 (66 508 死亡数, 2012年; 全血管代謝疾患死亡中 9.5% )
  • 低ナッツ・シーズ類摂取 (59 374; 8.5%) 
  • 高い加工肉摂取  (57 766; 8.2%)
  • 低l海産物ω3摂取 (54 626; 7.8%)
  • 低野菜摂取 (53 410; 7.6%)
  • 低果物摂取 (52 547; 7.5%)
  • 高SSBs<加糖飲料>摂取 (51 694; 7.4%) 


2002年から2012年において、住民補正米国心臓代謝疾患死亡数/年あたりは26.5%減少


PUFA(不飽和脂肪酸)、ナッツ・シーズ類の不十分摂取、SSBS過剰がこの減少に関連
(相対変化率 それぞれ −20.8% [95% UI, −18.5% to −22.8%]), −18.0% [95% UI, −14.6% to −21.0%]) ,−14.5% [95% UI, −12.0% to −16.9%])

最大増加は、非加工レッドミートと関連 (+14.4% [95% UI, 9.1%-19.5%])



バーは推定相対変化比率(2002年と2012年)
(2012死亡率 ー 2002死亡率)/2002死亡率×100:エラーバーは95%不確定区間




未加工肉、塩へ着眼すべきは、日本にも投射できる話と思う

2017年3月7日火曜日

COPD急性増悪:炎症悪化 1割、肺塞栓 1.5割

COPD急性増悪(AE-COPD)患者では炎症増加するも、30%程度は明らかな原因不明。
肺塞栓がどの程度AE-COPDに関与しているか?

前向き・横断研究でのAE-COPDとCT造影診断肺塞栓(PE)の検討で、頻度、塞栓局在部位、臨床的頻度、林相的マーカーの検討

Prevalence and Localization of Pulmonary Embolism in Unexplained Acute Exacerbations of COPD:
A Systematic Review and Meta-analysis
Floor E. Aleva,  et. al.
Chest. 2017;151(3):544-554. doi:10.1016/j.chest.2016.07.034


システマティック研究、1650記録、22記事を主レビュー、7研究を検討

原因不明AE-COPDのPE頻度はpooled dataにて、880名中 16.1% (95% CI, 8.3%-25.8%)
塞栓検出 68%、主に肺動脈主幹、葉肺動脈、葉間動脈

死亡率・入院期間は、原因不明AE-COPD及びPE患者で多い

胸膜痛と心不全が、原因不明AE-COPD及びPE患者でより多い








AE-COPDに、全例、“ステロイド+抗生剤”ではいけないのかもしれない

2017年3月6日月曜日

HMGB1:重症喘息 新たな治療ターゲット?

the Journal of Allergy and Clinical Immunology誌に、アレルギー機転への介入ではない新しい治療に繋がる可能性


high-mobility group box 1 (HMGB1) とその受容体の役割が明らかになり、クロマチン蛋白、DNAのorganisation、そして翻訳の調整機能で、単球、マクロファージ、樹状細胞で働き、炎症性反応を促進する。


redox stateと関連し、癌・敗血症・自己免疫予後と関連。HMG1活性状態は病的炎症状況で見られ、それら疾患と関連。superoxideやperoxynitriteはHMG1のleakageを促進する。
HMGB1活性はredox stateに強く依存し、炎症活動性HMGB1はintramolecular disulfide bond(分子内S-S結合: disulfide bond)(Cys23, Cys45)を増加し、Cys106を減少。Cys106の酸化は刺激性活性を抑制し、免疫寛容を促進する。




HMGB1関連分子と細胞表面受容体の相互作用
RAGE受容体やTLR4受容体として働くHMGB1が免疫応答刺激性はたらく
HMGB1はTLR4リガンドLPS、CXCR4、CXCL12、TLRリガンドRNAやDNAと、複合体を形成。HMGB1もCD24やthrombospondinと結合も報告され、negativeな調整シグナルを生じる



Redox Modulation of HMGB1-Related Signaling
Christina Janko, et. al.
Antioxid Redox Signal. 2014 Mar 1; 20(7): 1075–1085.



誘発喀痰中のHMGB1値はCOPDで喘息・健康対照者より高い(P < 0.001)
喘息患者とCOPDともにHMG1値は好中球数・比率に相関
好酸球性・非好酸球性喘息とHMG1値関連がない
High mobility group protein B1 (HMGB1) in asthma: comparison of patients with chronic obstructive pulmonary disease and healthy controls.
Hou, C., Zhao, H., Liu, L., Li, W., Zhou, X., Lv, Y. et al.
Mol Med. 2011; 17: 807–815


HMGB1がpivotal factorの可能性



気道HMGB1のredox stateと気道平滑筋機能に於けるHMGB1の役割を検討
重症喘息(vs健常対照比較)で、oxidation1によるHMGB1不活性化に伴い、S-S結合(Cys23, Cys45)と減少下にあるHMGB1は喀痰中で有意増加する

HMGB1 is upregulated in the airways in asthma and potentiates airway smooth muscle contraction via TLR4
http://www.jacionline.org/article/S0091-6749(17)30047-7/pdf
American Academy of Allergy, Asthma & Immunology



2017年3月3日金曜日

肥満性と癌の関連

システマティック・レビュー

脂肪症; 肥満性と癌の関連

交絡要素だらけなため解釈困難な「がんと肥満」との関連性
「Umbrella review」(CMAJ October 13, 2009 vol. 181 no. 8 )を用いて検討





CCBYNC Open access
Research
Adiposity and cancer at major anatomical sites: umbrella review of the literature
BMJ 2017; 356 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.j477 (Published 28 February 2017)

36のメタアナリシス:プライマリ癌とそのサブタイプ発症と死亡に関し、adiposityの指標との関連性調査、うち95のメタアナリシスはコホート研究とadiposity連続係数測定のうち、9つの癌で12(23%)の相関性を強いエビデンスで検出

BMI増加は食道腺癌、結腸・直腸がん(男性)、胆道系・膵臓癌、閉経後女性の子宮体癌、腎癌、多発性骨髄腫


体重増加とウェスト/ヒップ比は、ホルモン補充療法既往無し女性の閉経後乳がんリスク、子宮体部癌と高度関連

BMI 5 kg/m2増加毎発症リスク増加は

  • 男性直腸癌  9% (相対リスク RR 1.09 95% 信頼区間 1.06 - 1.13)で、 
  • 胆道系癌 56% (1.56, 1.34 to 1.81)



ホルモン補充療法既往無し閉経後女性のリスクは、成人での体重5kg増加毎11% (1.11, 1.09 to 1.13)増加
子宮体部癌のリスクはウェスト/ヒップ比 0.1増加毎 21% (1.21, 1.13 to 1.29)増加


5つの不可関連要素として、adiposityのカテゴリー化指標を用いても強いエビデンスとして指示されたのが、

  • 直腸結腸癌の体重増加
  • 胆のう癌・胃噴門部癌、卵巣癌、多発性骨髄腫死亡率のBMI








欧州レジストリ調査:新生児アウトカム・先天異常:タミフル、リレンザによるリスク増加認めず

欧州のレジストリー調査
タミフル、リレンザという2つのニューラミニデース阻害剤妊娠中使用と胎児異常・先天異常

Neuraminidase inhibitors during pregnancy and risk of adverse neonatal outcomes and congenital malformations: population based European register study
BMJ 2017; 356 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.j629 (Published 28 February 2017)

暴露母・児 5824 (0.8%) 、非暴露対照 692 232


調査アウトカムと関連せず

  • 低出産体重児(adjusted odds ratio 0.77, 95% confidence interval 0.65 to 0.91)
  • 低Apgarスコア (adjusted odds ratio 0.87, 0.67 to 1.14)
  • 早期産 (adjusted hazard ratio 0.97, 0.86 to 1.10)
  • 胎児発育遅延 (adjusted odds ratio 0.72, 0.59 to 0.87)
  • 死産 (adjusted odds ratio 0.81, 0.51 to 1.30)
  • 早期新生児死亡 (adjusted odds ratio 1.13, 0.56 to 2.28)
  • 疾患併発新生児 (adjusted odds ratio 0.92, 0.86 to 1.00)


第一トリメスター期母体暴露と先天異常についてリスク増加認めず (adjusted odds ratio 1.06, 0.77 to 1.48)



オセルタミビル単独に限定してもどのリスク増加も見られず




治療投薬限定だと思う、予防投薬に関する記載見つけられない

ビッグデータとか結局はレジストリー調査が主になるとおもうのだが、その信頼性担保は調査法に依存するはず。市販後調査レベルでさかんに”リアルワールド”などとごまかすメーカー目立つが、PMSの信頼性ってそれほど高いのだろうか?
話は横道になったが・・・昨今、少々メーカーのこの主の宣伝に行きすぎを感じてる次第

米国FDA通過:迅速現実的無痛採血装置

現時点では0.1ml(100μL)の採血のみ
微量採血となにがちがうんだという気もするが・・・上腕に貼り付けてボタン押せば採血サンプル利用できるので恐怖感が少ない。


First-Ever Device for Fast and Virtually Painless Blood Draw Receives FDA Clearance
http://www.prnewswire.com/news-releases/first-ever-device-for-fast-and-virtually-painless-blood-draw-receives-fda-clearance-300412276.html



U.S. Food and Drug Administration (FDA) 510(k) clearanc




http://www.7sbio.com/



製品紹介
http://www.7sbio.com/products


TAP SPECIFICATIONS

  • 100uL 全血
  • Lithium heparin
  • Blood indicator window 
  • Approximately 1.5 inches in diameter, about the size of the bell of a stethoscope
  • Single-use - no ability to reuse, needles are secured in device
  • Ability to add future accessories, e.g. connectivity, additive array, sample separation, and dried blood spots



noteへ実験的移行

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