2019年5月30日木曜日

心不全管理は胸部エコー B-lineで・・・

超音波検査はポータブルポケットサイズによる心不全管理のため知見

Lung Ultrasoung Guided Treatment in Chronic Heart Failure Patients: a Randomized Controlled Trial (LUS-HF)
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02959372


 European Society of Cardiology Heart Failure (ESC-HF) 2019での学会発表


Ultrasound 'Lung Comets' Reveal Subclinical Congestion, Hint at Treatment-Target Value in HF Outpatients
https://www.medscape.com/viewarticle/913527
May 27, 2019


少数検討だが画期的な無作為化試験知見
心不全(HF)の外来患者における肺超音波検査(LUS)検査の可能性

肺超音波画像の於る"B lines"の点滅出現は、組織と貯留液とのエコー差によるアーチファクト、これがうっ血の診断確定、予後指標となる

胸膜線から横断する線状のため"ultrasound lung comets"とも呼ばれ、液貯留を意味する。
この線状陰影は、体液減少管理のターゲットとしての役割が示唆され、追加利尿剤反応にて臨床的アウトカム改善をもたらすことを示唆。
複合プライマリエンドポイントの6ヶ月後リスクに関して48%の減少で境界的有意差を示したが、LUSのB lineガイドの外来利尿剤治療による退院直後患者の心不全悪化緊急クリニック受診を75%減少した効果が大きい

トライアルは主たる診断として急性心不全で入院を経て退院したばかりの124名
呼吸困難と肺うっ血エビデンス、年齢補正natriuretic peptide値高値で重篤肺疾患無しの患者

退院前単盲検ランダム化:LUS 61名 vs LUSガイダンスなし 63名
ガイダンスの違いで標準治療を受ける

ベースラインで平均LVEF、natriuretic peptide level、心血管・肺疾患併存症、6分間歩行距離、LUSでのB lineの数は同等

Natriuretic peptideとLUSを2週後、1ヶ月、3ヶ月後、6ヶ月後施行

死亡、心不全増悪による緊急クリニック受診、再入院
LUS-ガイド群 23% vs 対照群 40% ハザード比 0.52   (95% CI, 0.27 - 0.99; P = .046)

他 natriuretic peptide level、QOL、心不全増悪のための緊急受診以外の項目は同様




Practical approach to lung ultrasound
https://academic.oup.com/bjaed/article/16/2/39/2897763?searchresult=1#64764094


B lines








COPD急性増悪と環境リスク 低温とオゾン

最近大陸からの贈り物で光化学スモッグ発生している

オゾン層破壊物質の増加原因は中国 国際研究チーム
2019年05月23
https://www.bbc.com/japanese/48375540
実際、外来で、不調を訴えるCOPD・喘息患者が多い印象

図表を見ると やっぱオゾンが悪い




大気汚染及び気候的要素が以下にCOPD急性増悪入院へ影響を与えるかのスペインでの後顧的検討(2004-2013)
 Spanish Meteorological Agencyの気候データ・大気汚染レベルと入院率(スペイン退院データベース)検討
COPD急性増悪で、16万の入院


結論からは、寒冷気候要素(季節、絶対温度)で負の影響、大気汚染(NO2、O3、PM10)では短期的に影響があるという話

Analysis of environmental risk factors for chronic obstructive pulmonary disease exacerbation: A case-crossover study (2004-2013)
Javier de Miguel-Díez, et al.
PLOS ONE Published: May 23, 2019
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0217143






アメリカ胸部学会(ATS)にて、米国はPMの方は改善したが、オゾンはやはり残存ということで目下問題はオゾンへの対応が必要

ATS: 'Dramatic' Survival Gains With Better Air Quality
Deaths attributed to particulate pollution decline; mortality from ozone unchanged
by Salynn Boyles, Contributing Writer May 28, 2019
https://www.medpagetoday.com/publichealthpolicy/environmentalhealth/80084





Cromar K, et al "Trends in excess morbidity and mortality associated with air pollution above ATS-recommended standards, 2008-2017" Ann Am Thorac Soc 2019.



過去10年間で、米国胸部学会(ATS)が推奨するレベルを上回る大気汚染レベルにさらされたことによる死亡者数は、主に粒子状物質への曝露の減少により、半分近く減少した、と研究者らは報告した。  米国のほとんどの地域で、2.5ミクロン以下の粒子状物質(PM2.5)の減少に起因する死亡率の改善が見られましたが、特に公害関連の健康問題が最も高い都市で顕著でした、とKevin Cromar博士は述べています。 、ニューヨーク市のニューヨーク大学のマロン都市管理研究所、および同僚の。
2008年から2017年までのEPA大気質システムデータの3回目の年次分析に基づいて、「Health of the Air」報告書は、期間中のPM2.5関連死亡率の60%近くの減少を推定した。 しかしオゾン汚染による死亡率はほとんど変わっていなかった、と彼らはアメリカ胸部学会の年報で報告した。
CromarはMedPage Todayに対し、「この分析により、粒子状物質による健康への影響が国中の大部分で劇的に改善されたことが示された」と述べた。 この分析では、2014年以降の粒子状物質汚染の減少による健康増進率の横ばいも示されました。懸念は、大気質の改善を目的とした規制を廃止しようとする最近の連邦政府の努力が、報告書に示されている死亡率と健康増進を逆転させる可能性があることだ。 EPAは、クリーンパワープランの廃止や、大気汚染の低減にはそれほど効果的ではない手頃な価格のクリーンエネルギー法の導入とともに、CO2基準をロールバックした」と彼は述べた。 「これらの行動のすべては、一緒に取られて、私たちを間違った方向に動かしています。」
Cromar氏は、この報告書の最新版が、大気質に関連した健康の傾向を経時的に調べた最初のものであると指摘した。
研究者らは、2008年から2017年までの各年に、米国内のモニターについてEPA大気質システムから得られた毎日の大気汚染(PM 2.5およびオゾン)値を分析した。
これらの値は、PM2.5の24時間測定基準と、オゾンの最大1時間測定、最大8時間測定、および24時間平均測定の3つの測定基準を使用して、ベースライン値と年間ベースラインおよびコントロールデータセットを作成するために使用されました。各モニターのローリング3年間の設計値に相当します。
「これらの設計値は、PM2.5の年間平均濃度の3年間平均、PM2.5の24時間の98パーセンタイル値の3年間平均、および毎日4番目に高いものの3年間平均に対応します。最大8時間のO3濃度」と研究者らは書いている。 「対照値は、年間PM 2.5に対して11μg/ m 3、24時間PM 2.5に対して25μg/ m 3、およびO 3に対して60 ppbのATS勧告に基づいていた。
推奨されるカットオフ値は、年間のPM2.5が12μg/ m3、24時間のPM2.5が35μg/ m3、オゾンが70ppbの既存の国家大気環境基準(NAAQS)よりも低かった。
「この分析に使用されたATS推奨レベルは、既存のNAAQSでは人間の健康を保護するのに不十分であり、より健康を守るための規制の必要性を強調していることがわかっています」とCromarらは書いています。
EPAの標準的な健康機能に基づいた疫学研究からの濃度 - 反応関係を用いて、各郡のATS勧告を上回る汚染レベルの死亡率への影響を計算した。
分析によると、ATSの勧告を超える大気汚染レベルによる死亡者数は、2010年の約12,600人(95%CI 5,470-21,040)から2017年の7,140人(95%CI 2,290-14,040)に減少しました。
また、PM2.5に関連した死亡率は、同じ期間で年間約8,330から年間3,260に減少しましたが、オゾン関連の死亡率はそれほど変わりませんでした。
有効なPM2.5設計値を持つ530の郡のうち、78(15%)だけがATS推奨濃度を満たしていませんでした。有効なオゾン設計値を持つ726の郡のうち599(83%)がATSの推奨を満たしていませんでした。
「粒子状物質の健康への影響に関しては実質的な改善が見られましたが、オゾンの健康への影響を見ても、米国のどの地域でも改善の大きな傾向は見られませんでした」とCromarは述べました。 「これはそれだけでは解決できない問題です。数値を見ると、オゾン汚染への曝露による健康への重大な影響がわかります。」
彼は、大気質は地方および州レベルで、そして連邦当局によって対処される必要があるが、連邦規制は大気汚染レベルを下げるための最も効果的で効率的な道であると彼は付け加えた。
「EPAと連邦政府が機会を利用しない、またはさらに悪いことに有効な規制をロールバックしないことを選択した場合、市や州は大気質の改善に努める必要があるだろう」と彼は述べた。 「それらの唯一の選択肢は、大気質に対処するための効率的でない方法であり、これもはるかに費用がかかる。」

高齢女性:歩数7500で効果頭打ち、歩行運動強度関係なし

序文をみると、日本の「万歩計」がウェアラブル端末に先行すること1965年発売され、日本では「1万歩」推奨となっている。ウェアラブル対応端末は2017年1億2500万台以上世界的に出荷されている。1万歩がcommon goalとして扱われているが果たして?

女性に限った検討ではあるが、死亡率改善効果に運動強度は影響与えず、1日の歩数が重要という話


Association of Step Volume and Intensity With All-Cause Mortality in Older Women
I-Min Lee, et al.
JAMA Intern Med. Published online May 29, 2019.
doi:10.1001/jamainternmed.2019.0899

意義:健康上必要な歩数目標は1日1万歩という目標が一般に信じられているが、この数については科学的根拠が少ない。さらに、歩数強度増加が健康ベネフィットに関連するか、1日の歩数と独立しているか不明。

目的:1日当たりの歩数とステッピング強度と全死因死亡率との関連検討

デザイン、設定、および被験者:
この前向きコホート研究には、2011年から2015年までの7日間の覚醒時間中に加速度計着用参加同意、女性健康調査の18289人の米国女性 ;データは17466デバイスから正常にダウンロード。これらの女性のうち、コンプライアンス良好(4日以上10時間以上装着)で2018年から2019年解析に含まれたのは16741名

暴露:1日あたり歩数とステッピング強度のいくつかの指標(ie, (ie, peak 1-minute cadence; peak 30-minute cadence; maximum 5-minute cadence; time spent at a stepping rate of ≥40 steps/min, reflecting purposeful steps :1分間ケイデンスピーク、30分間ケイデンスピーク、5分間ケイデンス最大、40ステップ/分以上となった時間数(意図的ステップ反映))

ケイデンスとは?ケイデンスは1分当たりのステップ数を計算し、2で割ることにより算出されます。例えば、両足では1分当たりのステップ数が180である場合、ケイデンスは90になります。ケイデンスは、ランニング効率を評価する重要なツールです。また、ランニングテクニックの改善にも役立つものです。
主要アウトカム・測定:総死亡率

結果: 選択基準一致16741名女性、平均(SD)年齢 72.0歳(5.7歳)

平均歩数は1日当たり5499で、ステップ頻度あたりの比率は 

  • 0歩/分:51.4%、(インシデンタルなステップにあたる)
  • 1〜39/分 45.5%
  • 40歩/分以上(意図的ステップ) 3.1%

平均フォローアップ 4.3年間、死亡 504名
1日あたりの歩数中央値は、分布横断的に低度→高度4分位で各々、2718、4363、5905、8442 歩数/日
対応する死亡率ハザード比(寄与要素補正)は、各々  1.00 (reference)、 0.59 (95% CI, 0.47-0.75)、 0.54 (95% CI, 0.41-0.72)、 0.42 (95% CI, 0.30-0.60) (P < 0.01)

spline解析だと、最大歩数として7500 /日まで1日あたりの歩数増加後とHRは低下する

高強度ほど有意に死亡率低下と相関するが、日数あたりの歩数補正後、相関性は減衰し、ほぼ有意でなくなる  (ケイデンス1分間ピーク 最高 vs 最小4分位 HR 0.87  [95% CI, 0.68-1.11]; ケイデンス30分間ピーク 最高 vs 最小4分位 HR  0.86 [95% CI, 0.65-1.13]; 5分間最大ケイデンス 最高 vs 最小4分位 HR  0.80 [95% CI, 0.62-1.05]; 40歩/分以上のステッピング速度時の経過時間 最高 vs 最小4分位 HR   1.27 [95% CI, 0.96-1.68]; P > .05)





結論と知見:年配の女性の間では、およそ4400歩/日という少ない数が、およそ2700歩/日と比較して低い死亡率と有意に関連。一日あたりの歩数が増えるにつれて、死亡率は徐々に減少し、平準化する前に約7500歩/日。歩数強度は、1日の総歩数を考慮した後の死亡率の低下とは明らかに関連していない。





こういうのってreverse causation bias:逆因果バイアスとの戦いで、同じ運動(身体活動)を扱っている報告だが・・・嘘が紛れ込む


"A standard method to reduce reverse causation is to exclude outcomes occurring in the initial follow-up period.":フォローアップ初期発生アウトカムの除外必要で、リスクのplausible trajectory 明確化してリスク評価する必要がある

逆因果バイアス考慮上の検討で、身体不活発は全原因認知症およびアルツハイマー病と関連せず、だが、心血管疾患発症の身体不活発サブグループでは認知症超過リスク認めた

Physical inactivity, cardiometabolic disease, and risk of dementia: an individual-participant meta-analysis
BMJ 2019; 365 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.l1495 (Published 17 April 2019)
Cite this as: BMJ 2019;365:l1495










   嘘つき
    ↓
認知症がなぜ生じるのか、その発症機構はすべて解明されているとは言えませんが、これまでの研究で、▼教育歴▼肥満▼高血圧▼難聴▼喫煙▼うつ▼運動不足▼社会的孤立▼糖尿病―などの要素が関連していることが分かってきています。
https://www.medwatch.jp/?p=26492



財務省・厚労省およびその関係者は平気で嘘をつく

SCARLET:敗血症関連凝固障害への組み替えトロンボモデュリン死亡率有効性認めず

26ヶ国159ヶ所のICUで行われた多施設第三相治験

主要アウトカム:28日間総死亡率

介入:敗血症関連凝固異常症例のランダム化
・ボーラス静注 or 15分間点滴投与 (0.06 mg/kg/d [最大 6mg/d]n=395
・プラシーボ n=406
x6日間

結果的には死亡率差認めずというものだが、後述の如く、これではおわらんぞという感じ


Effect of a Recombinant Human Soluble Thrombomodulin on Mortality in Patients With Sepsis-Associated Coagulopathy
The SCARLET Randomized Clinical Trial
Jean-Louis Vincent,et al. for the SCARLET Trial Group
JAMA. 2019;321(20):1993-2002. doi:10.1001/jama.2019.5358


816名ランダム化、研究完遂・full解析 800名(平均年齢 60.7歳、男性 437 54.6%]

thrombomodulin群とプラシーボ群の 28日総死亡率の統計学的有意差なし (106 / 395  [26.8%] vs 119 / 405  [29.4%]; P = 0.32)
絶対的リスク差 2.55% (95% CI, −3.68% to 8.77%)

重大出血副作用イベント(定義:全ての頭蓋内出血、生命危機出血、検討者判断重症分類出血イベント、2連続日赤血球パック 1440mL[ 6単位相当]以上輸血)は、thrombomodulin群 23/396 (5.8%) vs プラシーボ 16/405(4.0%)





ART-123は遺伝子組み換えヒト可溶性thrombomodulin (rhsTM ; thrombomodulin α) は498のアミノ酸(64 kDa)からなりthrombomodulinの可溶性活性化細胞外ドメイン部分
主たるメカニズムは血中トロンビン分子結合能力由来で、protein Cから活性化protein Cへ転換するactivation complexの役割で、付加的にrhsTMは例えばhigh mobility group box protein 1 や histoneなどdamage-associated molecular patternによる炎症抑制、臓器障害抑制をもたらす。
敗血症・DIC疑診例第2相ランダムトライアルpost hoc解析では死亡率減少効果示唆され、①感染症、②最低1つの敗血症臓器障害(心血管 and/or 呼吸系)及び凝固障害の場合、③凝固障害(INR延長)と血小板数減少の3つでrhsTM投与死亡率減少示唆されていた






28日間の全死因死亡率の主要評価項目の低下を明らかにすることができなかったため、他の抗凝固薬との過去の結果から研究がなぜ行われたのかという疑問が生じた。答えは多少微妙だが、要するに、トロンボモジュリンは重要な理論的利点を提供する異なる作用機序を持つこととなった。



日本のp3トライアル(227名、血液悪性腫瘍あるいは感染基礎疾患DIC)が敗血症患者への組み替えthrombomodulinのアジュバント治療としての初めての有効性報告
Efficacy and safety of recombinant human soluble thrombomodulin (ART‐123) in disseminated intravascular coagulation: results of a phase III, randomized, double‐blind clinical trial
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1538-7836.2006.02267.x
この研究自体はプライマリエンドポイントとしてDIC改善目的でヘパリンと比較した有効性研究であった。DIC改善に有意差(66.1% vs 49.9%)あったが、セカンダエンドポイントの死オブ率には有効さ無かった(21.9% vs 25.7%)
この結果により日本ではDIC管理にART-123(組み替えthrombomodulin)承認となった(2008年)

プラシーボ対照トライアル(n=781)は

A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Phase 2b Study to Evaluate the Safety and Efficacy of Recombinant Human Soluble Thrombomodulin, ART-123, in Patients With Sepsis and Suspected Disseminated Intravascular Coagulation
Critical Care Medicine. 41(9):2069–2079, SEP 2013

これでは28日死亡率有意差無し (17.8% vs 21.6% in the placebo group)



エディトリアルとしては
1)ヘパリン投与群がthrombomdulin治療阻害してる可能性
2)プラシーボ死亡率高くトライアル自体が検出力としてパワー不足
3)登録期間長すぎ・・・ということは登録数少なく無理矢理登録したところがある疑惑、1例登録が3分の1でプロトコール不徹底の可能性
4)薬剤投与時INR正常化1/4で投与タイミングの問題がある。投与時INR値でpost-hoc解析すると有意差まではないが死亡率低下の可能性
5)トロンビン・抗トロンビン複合体(TAT)濃度以上、 protein C濃度 40%以下で有効性差示唆
などこのトライアルでは終わらんぞ・・・感

noteへ実験的移行

禁煙はお早めに! 米国における人種・民族・性別による喫煙・禁煙での死亡率相違|Makisey|note 日常生活内の小さな身体活動の積み重ねが健康ベネフィットをもたらす:VILPA|Makisey|note