心不全発症長期リスクはスパイロメトリーによる肺機能低下時増加し、これは基礎心疾患・心血管リスク要素(喫煙を含む)補正でも変わらない。
Atherosclerosis Risk in Communities (ARIC) studyという住民ベースの米国研究で、NHLBIスポンサー研究で、約16000名の成人(45-64歳)平均15年間フォローアップ研究。
COPDは心不全患者の合併症として多く、逆も、真。しかし、ごく最近まで、先行するCOPDが心不全の長期リスク要素として認められてなかった。
肺における気流閉塞病態自体が心不全の大きなリスク要素という仮説を強化する研究とエディトリアルでは述べている。
Airflow obstruction, lung function and risk of incident heart failure: The atherosclerosis risk in communities (ARIC) study.
Agarwal SK, Heiss G, Barr RG, et al.
Eur J Heart Fail 2012; doi:10.1093/eurjhf/hfs016
標準化スパイロメトリーによる肺容量と共変数情報を15792のARIC(Atherosclerosis Risk in Communities)コホート被験者(1987-89)で収集。13660名を2005年まで心不全発症頻度をカルテ・死亡記録で確認。
平均フォローアップ14.9年で、新規発症心不全1369(10%)
心不全・年齢、身長補正ハザード比(HRs)は、単調にFEV14分位減少毎に増加し、両性、人種群、喫煙状態とも横断的に増加。
心血管リスク・身長による多因子補正後、FEV1最小vs最高比較で、ハザード比[95%信頼区間(CIs)]は、白人女性 3.91 (2.40–6.35)、 白人男性 3.03 (2.12–4.33) 、 黒人女性 2.11 (1.33–3.34)、黒人男性 2.23 (1.37–3.59)
相関は弱く、炎症の全身性マーカー補正後も統計学的に有意差残存
多変量補正心不全発症は、FEV1/FVC <70% vs ≧ 70%において、男性 1.44(95%CI 1.20-1.74)、 女性 1.40(1.13-1.72)
心不全に対する一致した陽性の相関が肺気腫・COPD自己報告診断で認められるが、喘息に対しては見られず。
喫煙などを含め遺伝的・環境的な説明要素の存在が議論されている。
気流制限が心不全へ影響を与えている証拠がNEJMで報告されており、議論されている。CTによる評価からみると、重症気流制限が結果的に左室充満を阻害し、心機能を低下させる機序が考えられた。
非重症肺気腫でも、気流制限・肺気腫の程度が左室機能・形態へ影響を及ぼす 2010年 01月 21日
Barr RG, Bluemke DA, Ahmed FS, et al. Percent emphysema, airflow obstruction, and impaired left ventricular filling. N Engl J Med 2010; 362: 217-227.
NEJMの報告がなければ、さほど、注目されない現象だったのかもしれない。