2013年5月24日金曜日

スタチンの種類と、糖尿病新規発症リスク ・・・ポテンシャルの高いスタチンほど糖尿病発症リスク高い

 150万人の研究で、BMJにおいて、強力なスタチンは22%ほど、ややポテンシャルの劣るスタチンに比較してリスク増加する。代表的薬剤としてアトルバスタチンは、160名治療に1名ほどの超過リスクを示す。ただ、専門家は、そのベネフィットはリスクより凌駕すると述べている。糖尿病リスクを心配してプラバスタチンを優先して使う行動は控えるべきとも述べている。

 異なるスタチン、すなわち、HMG-CoA reductase阻害剤治療患者の糖尿病新規発症リスク、住民ベースコホート研究で、66歳以上のスタチン治療開始(1997年8月1日から2010年3が31まで)・非糖尿病、前年スタチン処方されてない新規ユーザーに限定されたものの検討

 結論としては、プラバスタチン(先発商品名:メバロチン)と比較すると、アトルバスタチン(先発商品名:リピトール)、ロスバスタチン(商品名:クレストール)、シンバスタチン(先発商品名:リポバス)は、糖尿病新規発症と関連する。ただ、ロスバスタチンのリスクは処方量依存的関連性がある。



Risk of incident diabetes among patients treated with statins: population based study
BMJ 2013; 346 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.f2610 


プラバスタチン(先発商品名:メバロチン)に比較するとアトルバスタチン(先発商品名:リピトール)は糖尿病リスク増加(補正ハザード比率 1.22, 95% 信頼区間 1.15 〜 1.29)

ロスバスタチン(クレストール) (1.18, 1.10 〜 1.26)
シンバスタチン(先発商品名:リポバス)(1.10, 1.04 〜 1.17)も同様に増加。

フルバスタチン(商品名:ローコール)においてはリスク増加有意でない (0.95, 0.81 〜 1.11)
ロバスタチン(商品名:メバコール) (0.99, 0.86 〜 1.14)も同様


糖尿病発症絶対的リスク(1000人年)では、アトルバスタチン 31、 ロスバスタチン 34

対して、プラバスタチン 23、シンバスタチン 26で、絶対的リスクは軽度低下している

心血管疾患一次予防・二次予防に関わらず、スタチン一致した影響

スタチンをpotencyで群別したときに同様の結果が観察されるが、投与量を斟酌すれば、ロブスタチン使用に関する糖尿病発症リスクは有意でなくなる (補正ハザード比率 1.01, 0.94 〜 1.09)


結論:プラバスタチンに比べ、potency高いスタチン、特にアトルバスタチン、シンバスタチンは、糖尿病新規発症リスク増加と関連してるかもしれない


小児・青年期CTスキャンによる発がん 年毎1万人に1人以上超過発症と予測

CTスキャン暴露後のがん発症率増加は主に放射線による。元朝かリスクはフォローアップ終了まで持続するので、イベント生涯リスクは結論づけはできない。
放射線量最小化にて診断的CT施行するよう、個別スキャンを最適化するよう、臨床的適応状況を限定化すべき

1090万名のオーストラリアのMedicare記録(1985年0-19歳、1985年1月1日から2005年12月31日生まれ)
CTスキャン暴露と非暴露の比較

Cancer risk in 680 000 people exposed to computed tomography scans in childhood or adolescence: data linkage study of 11 million Australians
BMJ 2013; 346 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.f2360 (Published 21 May 2013)
Cite this as: BMJ 2013;346:f2360
がん発症前1年前のCTスキャン 680 211名暴露で、がん 3 150名。
暴露後フォローアップ中央期間は9.5年間 
包括的がん発生頻度は、非暴露群より24%多い(年齢、性別、誕生年補正)
(発症率比(rate ratio)(IRR)) 1.24 (95% 信頼区間 1.20-1.29) p < 0.001
量反応関係が見られ、IRRは、CTスキャン追加毎 0.16 (0.13 - 0.19)増加する
IRRは若年ほど暴露に大きな影響される (P < 0.001 for trend) 

年齢 1-4、5-9、10-14、15歳以上で、IRRはそれぞれ、1.35 (1.25 - 1.45)、 1.25 (1.17 -  1.34)、 1.24 (1.14 - 1.34) 
IRRは固形がん(消化器系、 メラノーマ、 軟部組織、 女性生殖器、 尿路、 脳、 甲状腺)、白血病、骨髄異形成、他のリンパ系腫瘍でもいずれも有意。 
CTスキャン暴露超過発症は 608で、脳腫瘍 147、 固形腫瘍 356、 白血病・骨髄異形成 49、 他のリンパ系疾患 57 
絶対的超過発症率は、がん全部の組み合わせで、10万対 9.38/人年 
(2007年12月31日時点) 
スキャンあたり平均最小有効放射線量は 4.5 mSvと推定


原発や原爆の放射線被曝による身体的影響には厳しいくせに、より日常性のある、医療用放射線の身体的影響には寛容な日本国民。腹部の脂の量を測定するためだけのCTスキャン風景をテレビでよく見る。よろこんでCTをうけすぎる国民は、まか不思議さ。
大人は自己責任が通じるのだろうが・・・子供は特に自らのリスクを自分で判断できないのだから、周囲がそのリスクベネフィットを慎重に判断すべきなはず。

2歳未満の軽症と思える頭部外傷に関するCT検査適応・・・様々議論されているので、検索して参考のこと


参考:
CT使用頻度増大と放射線被曝の影響 2007年 11月 29日
小児頭部外傷の低リスク評価:不要なCTを減らせ! 2009年 10月 05日

魚油・ω3不飽和脂肪酸のadiponectinへの影響 :出版バイアスありすぎ

海産物長鎖不飽和脂肪酸(n-3 PUFAs)による動物モデルでのインスリン感受性改善の報告あるが、ヒトでは必ずしも一致した報告でもない。adiponectinはインスリン感受性のマーカーであり、adipocyte機能のマーカーでもある。n-3 PUFAのadiponectinへの影響に関しては不明。

n-3 PUFA消費による循環中adiponectinへの影響についてのシステマティック・レビュー、メタアナリシス

出版バイアスを強く示唆する結果である。

魚油の化けの皮もはがれつつあるし、adiponectin中心主義もどうなんだろ

Wu JHY, et al "Effect of fish oil on circulating adiponectin: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials" J Clinical Endocrinol Metab 2013.

110研究中、14のRCTでクライテリア合致。
14のトライアルアームは魚油評価 (n = 682 ; プラシーボ n=641)
魚油は、adiponectinを 0.37 μg/mL [95% 信頼区間 (CI) 0.07 ; 0.67, p = 0.02)増加
トライアル 11/14で、0以上の効果であったが、heterogeneityは明らか (I2 = 72.9%)で、n-3 PUFA量・期間、研究質スコア、研究場所、ベースラインBMI (meta-progression p > .05)では説明できず。
funnel plotは、非対称で、小規模トライアルほど効果発現多し (Egger's P = .11)
fill-and-trimメソッドにより、理論的pool化効果 0.18 μg/mL (95% CI - 0.15; + 0.52, p = 0.28)
2つのトライアル群のみ、魚食評価( n = 136 ,vs プラシーボ 58 )、adiponectinへのpooled effectは統計学的有意差無し (p = 0.99)、しかし、CIはn数少なく幅広い

ランダム化プラシーボ対照:アジスロマイシン COPD急性増悪、入院率減少効果確認

アジスロマイシンの評価って忙しい

米国FDA警告:ジスロマック・致死的不整脈リスク 2013/03/13 
若年・中年:アジスロマイシンは心血管死亡リスク増加関連せず 2013/03/02 
BAT:非CF性気管支拡張症への長期アジスロマイシン治療は、急性増悪減少させ、QOL生存率改善効果の可能性;だが、薬剤耐性が問題 2013/03/28 
重症COPDアジスロマイシン長期投与にて効果:小規模後顧的研究 2011年 10月 04日 
COPD急性増悪予防:アジスロマイシン持続療法 2011年 08月 25日

プラシーボ群比較研究にて、COPDへの長期使用にて、急性増悪遷延・気道系原因入院遷延の報告


Martinez F, et al "Chronic azithromycin therapy decreases the risk of re-hospitalization in patients with COPD" ATS 2013; Abstract 40862.http://www.medpagetoday.com/MeetingCoverage/ATS/39374

治験登録前12ヶ月間に、COPD急性増悪経験経験あり、あるいは、登録時酸素投与の症例がすべて。
アジスロマイシン250mg/日・連日 1年間 
原因不問再入院 アジスロマイシン 45名 vs プラシーボ 65名
(ハザード比 0.71、95% CI 0.47-1.-6) 
アジスロマイシン投与群は、プラシーボに比較して、初回呼吸器系入院率を有意に減少  (HR 0.58, 95% CI 0.34-0.99) 
再入院率の差は、40日後再現れ始め、そして、160日後は減少しながらも160日まで効果は増大する。 
40日で、プラシーボ・アジスロマイシン群も入院90%ほど回避され、200日後アジスロマイシン治療群の80%、プラシーボ群の60%の呼吸器関連再入院なし 
原因不問再入院観察では、全原因入院初回入院とその後入院の遅延に関して、アジスロマイシン服用は傾向的効果あり
 非ランダム化、行政データベースなどの報告で、急性増悪までの期間延長の報告があった。この研究により、あらたな知見が加わった形。
post-hoc解析で、アジスロマイシン治療で、呼吸器系入院 156 vs プラシーボ 156(HR 0.82, 95% CI 0.65-1.07)
呼吸器系原因再入院で、アジスロマイシン群 31、プラシーボ群 49の入院



【オピオイドによる便秘】末梢作動性オピオイド受容体アゴニスト;naloxegol  2つの二重盲検にて効果あり

末梢作動性のオピオイド受容体アンタゴニストが、オピオイドによる便秘を改善するか?

KODIAC-04 pIIIトライアル
naloxegol 25 mg 12週間 で、44.4%で治療反応 (vs プラシーボ 29.3% , p = 0.001)

KODIAC-0.35という同様研究では、 naloxegol 39.7% vs 29.3% (p = 0.021)



Chey W, et al "Efficacy and safety of naloxegol in patients with opioid-induced constipation: results from two prospective, randomized, controlled trials" DDW 2013; Abstract 900.
http://www.medpagetoday.com/MeetingCoverage/DDW/39375



GRADE研究・プロトコール

米国37センターでの、2型糖尿病 GRADE研究


Rationale and Design of the Glycemia Reduction Approaches in Diabetes: A Comparative Effectiveness Study (GRADE)
Published online before print May 20, 2013, doi: 10.2337/dc13-0356
Diabetes Care May 20, 2013

GRADE  → U34プランニング・グラント (NIDDK:  National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases )

コンセンサス・プロトコールはNIDDK、GRADE Research Groupから承認

5千名の登録基準:
・5年未満の糖尿病期間
・診断時30歳以上
・ベースライン HbA1c 6.8-8.5%

SU、DPP4阻害剤、GLP-1受容体アゴニスト、インスリンの4つのクラスをランダム割り付け
メトホルミンは 1000-2000 mg/日

プライマリ代謝アウトカムは、HbA1c 7%以上と定義し、4.8年間(range 4−7年)平均観察期間

他の長期代謝アウトカムは、HbA1c > 7.5%確認後、基礎インスリン追加必要
そして、集中的基礎/ボーラスインスリンレジメン組み入れの必要性

4種薬剤を、選択的微小血管合併症、心血管疾患リスク、副作用、耐用性、QOL、コスト効果で評価


日本の糖尿病診療は、国際的なそれと異なり、メトホルミンをベーストすることを、関係学会のお偉いさんが良しとしないため、国際的な臨床的トライアルエビデンスをそのまま導入できない。

JAPANなんたら研究では、あの悪名高い悪トスを、糖尿病発症予防抑制に対して、メトホルミンを無視して、単剤指定し、その後、さすがに、メトホルミン or 悪トスとしたり・・・
2型糖尿病発症予防のための介入試験(J-DOIT1)http://www.pimrc.or.jp/diabetes/research1_protocol_130.pdf「J-DOIT-3」はヘルシンキ宣言違反? 2009-02-18


現行、ガイドラインでも、メトホルミンを、他剤と同列にあつかう愚行が続いている。

noteへ実験的移行

禁煙はお早めに! 米国における人種・民族・性別による喫煙・禁煙での死亡率相違|Makisey|note 日常生活内の小さな身体活動の積み重ねが健康ベネフィットをもたらす:VILPA|Makisey|note