2013年7月22日月曜日

臨床研究不正:研究者の知識低すぎるという主張

臨床研究不正でNPOが非難 研究者の知識低すぎる
http://www.47news.jp/CN/201307/CN2013072001001494.html

ノバルティスファーマの降圧薬ディオバンを使い京都府立医大で行われた臨床研究がデータ操作された問題で、医師らでつくるNPO法人臨床研究適正評価教育機構(桑島巌理事長)は20日に記者会見し、臨床研究に関わった医師の知識や技術が低すぎると非難した。

この桑島理事長って、「職場高血圧」(workplace hypertension)というテーマで製薬メーカーによる講演会かなり行ってた。

「職場高血圧」・「仮面高血圧」という造語にご用心 2005年 07月 21日

ちなみに「office」とは、通常、「clinical office」のことであり、日本の「診察室」相当であり、白衣高血圧のこと。  


ちなみに、pubmed上で、「'work' AND 'hypertension'」や「'occupation' AND 'hypertension'」 に 'Kuwajima'をAND検索に加えると、

Workplace hypertension is associated with obesity and family history of hypertension.
Hypertens Res. 2006 Dec;29(12):969-76.

という論文が検索される。中身をみると、通常血圧正常でも、「job strain」(職業上の緊張)による高血圧ということで、ABPMによる測定値を持って、「職場高血圧」と命名している。「Workplace hypertension」という病態に関してはその意義は否定しないが、「職場高血圧」という命名は軽々しいのではないか、そういう思いを持つ。

最近のメタアナリシス・システマティックレビューでも「job strain」という言葉はあっても、「workplace hypertension」は使われてないようだ。
Job Strain and Ambulatory Blood Pressure: A Meta-Analysis and Systematic Review
Read More: http://ajph.aphapublications.org/doi/abs/10.2105/AJPH.2012.301153?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%3dpubmed

そういう御仁が、「臨床研究に関わった医師の知識や技術が低すぎると非難」という・・・



米国と比較すれば分かるが、「日本の臨床研究のレベルは低い」というより、国が金出さないため、研究に必要な「資金や資材・人材提供」を紐付き資金に求めざる得ないという状況が問題と思う。

NPO法人臨床研究適正評価教育機構は、批判すべき方向性が違う

レビュー : ガーリックの心血管疾患予防作用 ・・・ アジュバントとしては効果有り

ガーリックの使用は脂質低下治療のアジュバントとしては使用可能。だが、治療主体としては推奨されない。さらに標準化物使用や方法論的問題の無い方法でのメタアナリシスが必要。

Review Article
Role of Garlic Usage in Cardiovascular Disease Prevention: An Evidence-Based Approach
Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine
Volume 2013 (2013), Article ID 125649, 9 pages
http://dx.doi.org/10.1155/2013/125649


ガーリックの心血管疾患へのインパクト特に、血中脂質へのインパクトが示された。しかし、一部に逆の結果も報告されている。
(機序の説明としては、HMG-CoA ruductaseなど関連酵素阻害作用が示唆
http://www.hindawi.com/journals/ecam/2013/125649/tab1/

同様に、高血圧コントロールへの効果
http://www.hindawi.com/journals/ecam/2013/125649/tab2/


血小板への効果もデータ不足気味、小規模ながら認められる。
;血小板接着・凝集へのベネフィット効果で心血管系への効果の可能性、血小板カルシウム流入、COX、cAMP、cGMPへ影響を与える、血小板NO産生促進

不一致性の可能性が有り、構成要素ばらつきの問題、食品・成分内のsulphur成分のばらつきの問題、被験者方法論的ばらつき、食事対照などのばらつきなどの結果と思われる。


副作用
生ガーリック使用者でのアレルギー性皮膚炎、 経口抗凝固薬との相互作用の可能性


電子タバコ:通常喫煙減少目的が、電子タバコ定期使用へ変化しただけ

米国FDA : 電子タバコ法的規制へのチャレンジ 2013/7/17



電子タバコ(Electronic cigarettes):ECが一般化しつつある。
もし通常喫煙代替可能なら、公衆衛生上インパクトを与える代物

The Emerging Phenomenon of Electronic Cigarettes
Pasquale Caponnetto, Davide Campagna, Gabriella Papale, Cristina Russo, Riccardo Polosa
Disclosures
Expert Rev Resp Med. 2012;6(1):63-74.
http://www.medscape.com/viewarticle/758218_5

ケベック州の2012名の喫煙・たばこ購入者 2012名に関してアンケート調査

1738(86%)名の喫煙者参加。半数は一度はEC使用を試みたとの報告。
ECトライしたうち、18.3%(95% CI, 15.7-20.9%)で定期使用、14%(95% CI, 1.6%-16.2%)が連日使用と回答
連日定期使用は7.1ヶ月平均
EC使用の主な理由は、通常喫煙量減少のためで、定期EC使用者の60%が、ECは通常喫煙減少目的にかなってると回答
高齢ほど、ECへの初期期待大きいほど、定期的EC使用出現と相関
結論としては、一度でも電子タバコをためした1/5ほどが 的使用となり、通常喫煙代替としての代用となっている。電子タバコを法制化準備中の政府、通常喫煙へのマーケット単一施策づくりという訳にはいかない。


Do e-cigarettes have the potential to compete with conventional cigarettes? A survey of conventional cigarette smokers’ experiences with e-cigarettes
Eva Kralikova, et. al.
Chest. Published online July 18, 2013. 10.1378/chest.12-2842

てんかん:早死率高い、併存精神疾患、特に、うつ合併に注意

てんかん患者は早死にリスク高く、特に外因性死因が多いという大規模研究結果

筆者等によれば、てんかん患者で早死率高いことが示唆され、特に併存・精神疾患n関与が示唆されるという結論。


"Premature mortality in epilepsy and the role of psychiatric comorbidity: a total population study"
Fazel S, et al
Lancet 2013; DOI: 10.1016/S0140-6736(13)60899-5.

スウェーデン1954-2009年生まれ、てんかん入院・外来診断(n-69,995)例での検討

住民対照(年齢マッチ化・性別マッチ化, n=660,869)、非発症同胞(n=81,396)との比較


フォローアップ中死亡 6155 (8.8%)名、年齢中央値  34·5 (IQR 21·0—44·0)歳
早死オッズ高い(住民対照との比較補正オッズ比 [aOR] of 11·1 [95% CI 10·6—11·6] 、 非発症同胞との比較 11·4 [10·4—12·5])

死因のうち、外因死 15·8% (n=972)
非自動車事故オッズ比高い(aOR 5·5, 95 % CI 4·7—6·5) 、自殺オッズ比高い(3·7, 3·3—4·2)

これら外因死のうち、非てんかん・非精神疾患患者との比較で、精神疾患合併は75.2%で、併発うつの場合特に相関性が高い(13·0, 10·3—16·6)、同様に、薬物不正使用 で相関性高い(22·4, 18·3—27·3)

慢性腎臓病:高リン酸血症へのリン吸着剤 非カルシウムベース薬剤はカルシウムベースに比べ死亡率減少

慢性腎臓病(CKD)における高リン酸血症予防、血中リン酸減少のため、リン吸着薬(又はリン酸塩吸着薬、phosphate binder)には、カルシウムベースと無カルシウムベースがある。具体的な慢性腎不全患者における高リン血症治療としては、沈降炭酸カルシウム(商品名カルタンほか)、炭酸ランタン水和物(商品名ホスレノールほか)、セベラマー塩酸塩(商品名レナジェル、フォスブロックほか)。
 
一方、「カルシウム含有リン吸着剤のカルシ ウム投与量を 1500mg/ 日以下にする目標が設定 された.高カルシウム血症やカルシウムの過剰付 加が血管石灰化の原因となりうること,高カルシ ウム血症に高リン血症が加わると心血管系リスク や死亡リスクがさらに悪化することが報告された ことを受け,高カルシウム血症やカルシウム過剰 負荷回避を目的したものであった」(http://l-pod.com/modules/shop/pdf/jin/2011/AR11_jin_3E09.pdf)




Effect of calcium-based versus non-calcium-based phosphate binders on mortality in patients with chronic kidney disease: an updated systematic review and meta-analysis
The Lancet, Early Online Publication, 19 July 2013

CKD患者において、非カルシウムベースのリン酸塩吸着薬は、カルシウムベース薬剤に比べ、全原因死亡減少と関連する。

847の記録同定、8つの新しい研究(5つのランダム化トライアル)が今回参照クライテリアと一致し、さらに、以前の筆者等のメタアナリシス検討10研究(9つのランダム化トライアル)を加えた。

4622名の11のランダム化研究:非カルシウムベースリン酸吸着剤では、カルシウムベースリン酸吸着剤に比べ全原因死亡率22%減少  (リスク比 0·78, 95% CI 0·61—0·98)


腎不全保存期も含む、CKDに伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)という概念

慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン
透析会誌45(4):301-356,2012
http://www.jsdt.or.jp/tools/file/download.cgi/779/慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン.pdf





※ 以下を見ると、保存期でも、CKD-MBDモニタリング推奨されている。ただ、リン酸吸着剤としてはカルシウム含有薬剤のみ保険適応の現状。

保存期CKD-MBD

 ステートメント
I. 測定すべき項目とその頻度
1)血清 P,Ca,PTH,ALP 値の測定は,CKD 3 から開始することを推奨する(1C).2) 血清 P,Ca,ALP 値の測定は,CKD 3 では 6∼12 か月ごと,CKD 4 では 3∼6 か月ごと,CKD 5 で
は 1∼3 か月ごとに行うのが妥当である*1(グレードなし).3) PTH 値は CKD 3 でベースライン値を測定し,以降,CKD 4 では 6∼12 か月ごと,CKD 5 では 3∼6 か月ごとに行うのが妥当である*1(グレードなし).4) 骨密度検査の実施は,CKD 1∼2 の患者,および生化学異常を有さない CKD 3 の患者では,一般人
口と同様にその適応を考慮することが望ましい*2(2B).5) 骨代謝マーカーの測定は,CKD 1∼2 の患者,および生化学異常を有さない CKD 3 の患者では,一
般人口と同様にその適応を考慮することが望ましい*2*3(2C).6) 保存期 CKD 患者における骨生検の適応は,透析患者での適応に準ずる(グレードなし).
 II.各測定項目の管理目標と治療法
1. 血清 P,Ca 値の管理
1) 血清 P,Ca 値は,各施設の基準値内に維持することが望ましい(2C).2) 血清 P 値の管理は,食事の P 制限や P 吸着薬*4による治療によって行うのが妥当である(グレード
なし).3) 血清 Ca 値の管理は,Ca 含有 P 吸着薬や経口活性型ビタミン D 製剤*5の投与,およびその投与量 の調節によって行うのが妥当である(グレードなし).
2.PTH 値の管理

1). PTH 値が基準値上限を超える場合,この是正を考慮することは妥当である(グレードなし).2) PTH 値の管理は,食事での P 制限,P 吸着薬の投与,または経口活性型ビタミン D 製剤の投与に
よって行うのが妥当である(グレードなし).3) PTH 値の管理の結果,血清 P,Ca 値の異常および腎機能の悪化をきたさないようにすることを推 奨する*6(1C).
3.脆弱性骨折予防のための薬物開始基準*2を満たす場合,CKD 1∼2 の患者では,一般人口と同様の骨
粗鬆症治療を推奨する(1A).生化学異常を有さない CKD 3 の患者でも,一般人口と同様の治療方針 が望ましい*7(2B). 


補足
*1 異常値を認める場合や治療を変更した場合,CKD が急速に進行する場合等では,より頻回の測定を考慮する. 
*2「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン(2011 年版)」に準ずる.
*3  骨型 ALP,TRACP-5b は腎機能の影響を受けにくいが,CKD 患者の骨病変の予測能は高くなく,骨折リス ク評価に関するエビデンスも乏しい.
*4  本邦で保存期 CKD に使用可能な P 吸着薬は,沈降炭酸 Ca のみである.
*5  本邦で保存期 CKD に使用可能な経口活性型ビタミン D 製剤は,アルファカルシドールとカルシトリオールのみである.
*6  沈降炭酸 Ca や経口活性型ビタミン D 製剤の投与量が過剰となり,高 Ca 血症や腎機能悪化をひき起こさないよう注意が必要である.アルファカルシドール 0.5 mg/日,カルシトリオール 0.25 mg/日までは腎機能に対する悪影響は少ないと報告されている.
*7  生化学異常を伴う CKD 3 の患者,および CKD 4∼5 の患者での骨量減少に対する治療法は確立していない. 

百日咳成分ワクチン:Tdap:菌体PCRでの有効性判断 ・・・ moderate

日常診療で気づくことなのだが、百日咳やマイコプラズマ、咳喘息と言いながら、診断根拠がない直感的診療があちことで行われている。百日咳は特に科学的根拠の乏しい抗体1回法での診断を、某団体がメディアにて広めたため誤用加速している現状
成人持続咳嗽(2週間以上)患者におけるLAMP法による百日咳菌抗原遺伝子陽性率と臨床像 (Vol. 29 p. 75-77: 2008年3月号) http://idsc.nih.go.jp/iasr/29/337/dj3377.html
whoopingや家庭内感染などの臨床情報が重要で、LAMP法などの直接百日咳菌体確認法が必要だし、抗体法で判断するにしてもペア抗体でなければならないはずなのに・・


マスメディアに露出する医師たちはセンセーショナリズムなこと、極端なことが好きなようで、「百日咳は流行し、その原因はワクチン接種低率のため」と従ってる人たちが多い。

果たして、百日咳ワクチンとはそれほど有効性の高いものなのだろうか?

百日咳に対するワクチンには、「不活化ワクチン (wP, whole cell pertussis 全細胞性と、成分ワクチン(aP, acellular pertussis 非細胞性百日咳)」がある。日本では、後者成分ワクチンが主になされている。

以下の報告も、acellular pertussis(Tdap)である成分ワクチンの有効性報告

PCRレベルでの有効性判断としてみると、Tdapワクチンは青年期・成人期での有効性はmoderateという結論。でも、wPよりはましらしい



破傷風・ジフテリア(・百日咳)ワクチン Tdap(Tetanus, Diphteria, acellular Pertussis) と、Tdワクチンの違いは百日咳ウィルス対応の有無

 
北カリフォルニアでの症例対照検討
Tdapの有効性を、11歳以上でPCR確認百日咳


民間非営利保険組織である、Kaiser Permanente Northern California の21,599名
PCR陽性症例 668名、PCR陰性症例 10098名
Tdapワクチン率は、PCR陽性症例 24.0%、PCR陰性対照で31.9%(P<0 .001="" p="">Tdap補正推定有効率は、PCR対照比較で、53.0%(95% 信頼区間 41.9% - 62.0%)
Kaisr Permanente Northern California対照では64.0%(55.5%-70.9%)

Effectiveness of pertussis vaccines for adolescents and adults: case-control study
BMJ 2013; 347 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.f4249 (Published 17 July 2013)



百日咳は、5歳未満の小児で、いわゆるwPワクチンは1948年導入され、その後百日咳症例は6ヶ月未満でも性熱気でも減少。死亡率に関わる問題としては、乳児期が大部分だが、ウィルスのリザーバとしてはそれ以上の年齢層も問題。乳児・小児のワクチンカバー率かなり高いにもかかわらず、1980年代以降周期的に百日咳流行が繰り返されている。
Tdapワクチンが抗体効果改善に対し行われ、2005年2つのTdapワクチンが米国でライセンス獲得。今回の検討は有効性確認のための研究。


現時点では、ワクチンに全てを期待する方が間違い

noteへ実験的移行

禁煙はお早めに! 米国における人種・民族・性別による喫煙・禁煙での死亡率相違|Makisey|note 日常生活内の小さな身体活動の積み重ねが健康ベネフィットをもたらす:VILPA|Makisey|note