2018年10月15日月曜日

百日咳ガイドライン CHEST咳嗽専門委員会:診断・治療ジレンマはつづくが・・・

百日咳の診断・治療は、突き詰めればジレンマだらけとなる

早期治療のためには痙咳期前の典型的症状でない時点で治療しなきゃならないが、他疾患除外・診断正確性のために菌体検出が要求され治療タイミングが遅れやすい

成人においては、あまねく広まった「咳喘息」とやらの病名で誤診されている可能性がある。


せめて、吸気性笛音の存在がある症例では診断機会を逸しないようにしよう・・・


whoop
https://www.whoopingcough.net/introduction.




Clinically Diagnosing Pertussis-Associated Cough in Adults and Children: Chest Guideline and Expert Panel Report
Abigail Moore, et, al. FCCP On behalf of the CHEST Expert Cough Panel
DOI: https://doi.org/10.1016/j.chest.2018.09.027
https://journal.chestnet.org/article/S0012-3692(18)32575-3/fulltext


The American College of Chest Physicians (CHEST) methodologic guidelines and the Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluation framework were used. The Expert Cough Panel based their recommendations on findings from a systematic review that was recently published on the topic; final grading was reached by consensus according to Delphi methodology. The systematic review was carried out to answer the Key Clinical Question: In patients presenting with cough, how can we most accurately diagnose from clinical features alone those who have pertussis-associated cough as opposed to other causes of cough?

結果:事前設定メタ解析除外後、感度・特異度推定にて臨床的特徴4つのみ


  • paroxysmal cough :発作性咳嗽
  • post-tussive vomiting :咳き込み後嘔吐
  • inspiratory whoop :吸気性笛音
  • absence of fever :発熱なし


「発作性咳嗽」と「高熱なし」が感度高く (93.2% [CI, 83.2-97.4]、81.8% [CI, 72.2-88.7])、特異度低い (20.6% [CI, 14.7-28.1] 、18.8% [CI, 8.1-37.9])

「吸気性笛音」と「咳き込み後嘔吐」は感度低くy (32.5% [CI, 24.5-41.6] 、 29.8% [CI, 8.0-45.2])、特異度高い(77.7% [CI, 73.1-81.7] 、 79.5% [CI, 69.4-86.9])

小児においては、事前設定メタアナリシス除外後、感度特異度は小児(0-18歳)の臨床的い特性のみで形成され、「咳き込み後嘔吐」
小児の「咳き込み後嘔吐」が唯一、ほぼ感度高く (60.0% [CI, 40.3-77.0]) 、ほぼほぼ特異度高い (66.0% [CI, 52.5-77.3])

急性(3週間未満)咳嗽あるいは亜急性(3週間から8週間)咳嗽成人においては、「笛音」、「咳き込み後嘔吐」では、百日咳可能性としては"rule in"すべき事項であるが、一方、「発作性咳嗽」が無いこと、「発熱」の存在は"rule out"すべき事項







SUMMARY OF RECOMMENDATIONS:
 1. For adult patients complaining of acute cough (< 3 weeks in duration) or subacute cough (3-8 weeks), we suggest that clinicians should specifically assess for the 4 key characteristics of paroxysmal cough, post-tussive vomiting, inspiratory whooping, and absence of fever in ruling in or out a clinical diagnosis of pertussis. (Grade 2C)

 Remark: Paroxysmal cough is defined as recurrent prolonged coughing episodes (i.e., an expiratory  phase with multiple burst of outflow) with an inability to breathe during spells. Post-tussive vomiting is defined as vomiting induced by coughing. Inspiratory whooping is defined as a continuous inspiratory airway sound with a whooping quality to it. Fever is defined as any body temperature above the normal of  98.6oF(37oC).

 2. For adult patients complaining of acute or sub-acute cough, we suggest that clinicians consider that the cough is unlikely to be due to pertussis if the patient has a fever or the cough is not paroxysmal in nature. (Grade 2C)

 3. For adult patients complaining of acute or subacute cough, we suggest that clinicians consider that the cough is likely to be caused by pertussis if there is post-tussive vomiting or is associated with an inspiratory whooping sound. (Grade 2C)

 4. For children complaining of acute cough (< 4 weeks duration), we suggest that clinicians should specifically assess for the 3 classical characteristics of paroxysmal cough, post-tussive  vomiting, inspiratory whooping. (Ungraded consensus-based statement)

 5. For children complaining of acute cough, we suggest that clinicians consider that the cough  could be caused by pertussis if there is post-tussive vomiting. (Grade 2C)

 6. For children complaining of acute cough, we suggest that clinicians consider that the cough  could be caused by pertussis if there is paroxysmal cough or inspiratory whooping. (Ungraded  consensus-based statement)



日本では遷延咳嗽というだけで、臨床的特徴を無視し、単回抗体値だけで、成人百日咳と診断してしまう集団がいるが、”精度の高い新検査法(百日咳菌LAMP法、2016年から健康保険適用、IASR 2017, 38: 33-34)”などで確認が必要となった昨今、この主張は消えるだろう。


全数届け出となった「百日咳」、疑い例を抽出することが一般医家にとっても重要となった。
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/shiryou3.pdf


百日咳 感染症法に基づく医師届出ガイドライン(初版)
平成 30 年4月25 日 国立感染症研究所

抜粋
診断方法:百日咳は発症日から検体採取までの時間経過と実施した検査の種類が結果に非常に大きく影響するため、検体採取日を含め、正確な情報収集が必要となる。※抗菌薬適正使用の観点から、臨床的に抗菌薬治療開始の判断材料となるのは、分離培養による百日咳菌の検出および病原体遺伝子の検出で、血清抗体価は判断材料とならない。
 ①分離同定による病原体の検出:検体の種類と採取日と結果を明記する。
②検体からの病原体遺伝子の検出:検体の種類と採取日と結果を明記する。検査方法については、LAMP法、PCR法のいずれかを確認し、明記する。
※PCR法陽性の場合、百日咳以外のパラ百日咳菌等の類縁菌による感染症の可能性がある
が、感染症法上の届出対象としてはBordetella pertussis感染症の場合のみである

従来の抗体法による診断では届け出対象とはならないようだ


”抗菌薬適正使用の観点”ってのがおかしくて、LAMP/PCR結果判明まで5−7日間かかるのが普通であり、治療windowを逃す可能性がある
Early treatment of pertussis is very important. The earlier a person, especially an infant, starts treatment the better. If a patient starts treatment for pertussis early in the course of illness, during the first 1 to 2 weeks before coughing paroxysms occur, symptoms may be lessened. Clinicians should strongly consider treating prior to test results if clinical history is strongly suggestive or patient is at risk for severe or complicated disease (e.g., infants). If a clinician diagnoses the patient late, antibiotics will not alter the course of the illness and, even without antibiotics, the patient should no longer be spreading pertussis.
タイミングを逃した抗菌薬は患者本人には役立たず、ただ単に、百日咳を広めないための治療となる

発作性咳嗽が生じるまでの期間が最も抗菌薬有効ってのと診断確実性の合間に臨床的ジレンマが生じる!

未コントロール喘息:吸入ステロイド中等量→高用量への増量で、血中好酸球減少する

未コントロール下喘息患者では、吸入ステロイド中等量→高用量への増量で、血中好酸球減少する。さらに300/μL未満でも低下が見られるようで、好酸球数絶対値での事前判断は困難では?

好酸球数モニタリングにて変動など考慮することも、IL-5関連バイオ製剤使用に関して、参考になるのでは?また、ICS投与量設定の上でも・・・


Impact of an increase in the inhaled corticosteroid dose on blood eosinophils in asthma
Lommatzsch M, et al.
Thorax 2018;0:1–2. doi:10.1136/thoraxjnl-2018-212233
https://thorax.bmj.com/content/early/2018/10/12/thoraxjnl-2018-212233

20世紀初頭から好酸球増加は喘息の臨床的特徴の一つとして認識されてるが、ここ10年間はこのパラメータとしての関心が新興している。血中好酸球数増加は、喘息重症度、喘息急性増悪発生と関連するが、血中好酸球の特異的減少をもたらバイオ製剤は喘息急性増悪減少と相関する。吸入ステロイド(ICS)長期治療と短期的ICS増量は喘息急性増悪を減少するが、ICS治療の好酸球へのインパクトは不明である。
現在、IL-5経路ターゲットBio製剤治療のの決定は血中好酸球数をベースになされる。故に、ベースラインでの喘息治療、特にICSと血中好酸球の変化へのインパクトが重要


1993年、Evansらは、ICS高用量(ブデソニド 1600 μg/日, 14日間)1を)、ICS投与治療歴のない軽症喘息10名の患者に治療し、血中好酸球数 370 → 160 細胞数/μLへの減少を示した。しかし、中等症・重症喘息患者での血中好酸球ネオICSメンテナンス量増加の影響は不明であった。

well-controlに至らない患者でbio製剤治療評価のため事前ICS投与量最適化のための推奨として血中好酸球へ影響が強いという初めての報告。
連続11名患者(年齢中央値 54歳、女性 5名、男性 6名;Never-Smoker 6名、Ex-smoker 5名)ルーチン受診の一環としての対象。ICS/LABAでもwell-controlに至らない症例
重症喘息クリニックの初期コンサルテーション前6ヶ月以上ICS投与量は安定という条件

11名の患者中、7名で長時間作用型ムスカリン受容体拮抗剤併用
経口ステロイド、他の免疫抑制、バイオ製剤希望患者なし


ベースライン肺機能、血中好酸球数)(数/μL)、血中好酸球比率(%全白血球)をICS連日投与2倍量以上(投与量中央値 ベクロメサゾン1000μg→2000μg/日換算)投与前評価
フォローアップ期間中央値 84日評価

ICS投与量増加後全患者で血中好酸球数減少、血中好酸球数 中央値 56 → 320 数/μL (49%減少)、好酸球数比率 8.7% → 4.8%(減少 46%)


中等量→高用量ICS増加にて、喘息での血中好酸球減少は、ことさらに、一定的に減少する  (ほぼ半減)



この観察された影響は、ICS増加による物で、アドヒアランスによるものと考察される(専門外来受診フォロー)。投与量増加、アドヒアランス改善のどちらでもICS量増加により、好酸球への影響は生じ、ICS日内投与量に依存

ICSは血中好酸球濃度へインパクトを与えるが、これらの結果により補強された


ベースラインでの好酸球数個別評価は、研究登録のクライテリアではなかったため、フォローアップ後の平均への回帰はなさそう。 経口ステロイド投与、IL-5経路ターゲットのバイオ製剤は血中好酸球濃度へ強いインパクトを与えることが確立されている。
ICS投与量が血中好酸球にさらに強くインパクトを与えることは2つの臨床的意義がある。

ひとつは、このデータによると、好酸球性喘息患者および再発性悪化患者のICSの用量を、生物製剤または全身性コルチコステロイドによる治療を検討する前に高用量に増やすべきであるという考え方が支持される。もうひとつは 、このデータでは、喘息におけるパラメータ「血液好酸球」が、個々の患者のICSの現在の投与量によって実質的に影響を受けることを示唆している。

故に、喘息での好酸球数の”正常値”は個別化判定必要で、さらに、ICS投与量増加により血中好酸球に影響w与えるが、IL-5経路ターゲットbio製剤必要性の閾値は低すぎる可能性ありICS投与量増加前に血中好酸球をモニターすべきということが示唆される。





FeNOでもそうだよなぁ


RCT:非大量喀血へのトラネキサム酸吸入の有効性・安全性

もちろん、日本でしてはいけないと思うが、喀血治療としてのトランサミン吸入療法の二重盲検ランダム化トライアル

日常臨床にておいて、この効果は無視できないのでは?

Inhaled Tranexamic Acid for Hemoptysis Treatment: A Randomized Controlled Trial
Ori Wand, et. al.
https://journal.chestnet.org/article/S0012-3692(18)32572-8/fulltext
DOI: https://doi.org/10.1016/j.chest.2018.09.026


2重盲検ランダム化トライアル:トラネキサム酸500mgx3/日 ネブライザー投与
vs プラシーボ(生理食塩水)
大量喀血(200ml超/24時間、喀血量)
血行動態・呼吸不安定患者除外
死亡率と血痰再発率を30日目、1年間フォローアップ

ランダム化 47名、トラネキサム酸吸入 n=25 vs 生理食塩水 n=22

  • トラネキサム酸は、入院2日目から予測喀血量の有意減少
  • 入院5日間内血痰寛解率はトラネキサム酸群で高い 96% vs. 50%, p<0.0005)

  • 平均入院日数はトラネキサム酸群で短い  (5.7±2.5 vs. 7.8±4.6 days, p=0.046)
  • また、出血コントロールのための比較的侵襲的処置(気管支鏡処置、血管塞栓など)必要数減少 (none vs 18.2%, p=0.041)

  • 副作用どの群でも認めず
  • 加え、フォローアップ1年時点で再発率減少 (p=0.009)


結論:トラネキサム酸吸入は、非massiveな喀血患者に安全で、有効

noteへ実験的移行

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