2012年4月13日金曜日

レビュー 新規抗凝固薬:血栓塞栓・心房細動卒中予防

静脈性血栓性疾患、慢性心房細動に対する治療予防 の以下内容のレビュー

1)新規薬剤開発の必要性
2)臨床トライアル有効性/安全性
3)検査モニタリングの必要性
4)臨床現場での新規薬剤使用の方向性


フリーテキストだから紹介というだけで・・・


NEW ANTICOAGULANT DRUGS FOR TREATMENT OF VENOUS THROMBOEMBOLISM AND STROKE PREVENTION IN ATRIAL FIBRILLATION
Armando Tripodi, Gualtiero Palareti
Journal of Internal Medicine
Accepted manuscript online: 24 MAR 2012
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-2796.2012.02541.x/pdf

直接作用性のトロンビン、Xa 阻害剤が臨床的に利用できるようになった。従来の抗血栓薬剤に関する諸問題に対し克服可能な部分もある。経口投与可能で、半減期が比較的短く、therapeutic windowがやや広く受容性が広がり、予測可能な量反応関係、定期的検査・用量補正が不要。
これらの特性は、ヘパリンやビタミンKアゴニストにくらべ医師・患者にとって管理しやすくアピールされるものである。
臨床トライアルを臨床現場に適応一般化することは容易でなく、第IV相での有効性・安全性確認が必要。

Dabigatran(プラザキサ)
・ 急性VTE : RE-COVER研究
・ VTE二次予防 : RE-MEDY 及び RE-SONATE研究
・ 非弁膜症性心房細動 : RE-LY研究

Rivaroxaban
・ 急性DVT治療 : EINSTEINプログラム
・ 非弁膜症性心房細動 : ROCKET AF研究
(日本人対象 J-ROCKET AF ;参考 http://therres.jp/1conferences/2012/JCS2012/20120322112400.php

Apixaban
・ 非弁膜症性心房細動 : ARISTOTLE研究
・ 心房細動 : AVERROES研究
・ VTE治療 : AMPLIFYプログラム

新規薬剤の検査コントロール

将来の方向性

Matsuda index 、 Liver IR index



◆ Matsuda index

Matsuda (–DeFronzo insulin sensitivity) index:インスリン感受性評価指標。当初はComposite Indexあるいは ISI(comp)という表記を用いたが、次第にこの名前で呼ばれるようになった。
http://mmatsuda.diabetes-smc.jp/newpage115.html

“理論的には75gブドウ糖負荷試験時の血中ブドウ糖濃度(mg/dl)と血中インスリン濃度(μU./ml)の基礎値の積と反応のAUC(area under he curve)の平均値との積の幾何学平均を分母にして10000を分子にして除したもの”で、“血中ブドウ糖濃度5つと血中インスリン濃度5つの合計10の数値の入力”を必要とする。

Matsuda–DeFronzo insulin sensitivity index is a better predictor than HOMA-IR of hypertension in Japanese: the Tanno–Sobetsu study M Furugen,
Journal of Human Hypertension 26, 325-333 (May 2012)

◆ Liver IR index

“空腹時血中インスリン(FPI)濃度増加 × 内因性ぶどう糖産生(EGP) 量増加”は、“肝インスリン抵抗性”を意味する。これを肝インスリン抵抗性増加の指標とする

 Liver IR index =
-0.091+(log insulin AUC 0-120 min x 0.400)
+(log fat mass% x 0.346) - (log HDL-cholesterol x 0.408)
+(log BMI x 0.435)

この式で相関性良好とのこと。



Liver IR index は、Matsuda ISIより、総コレステロール値、CRP、TGレベルに強く相関し、男性CVDリスクの強い指標となる可能性。

Association Between Liver Insulin Resistance and Cardiovascular Risk Factors
Jagadish Vangipurapu et. al.
Journal of Internal Medicine 
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-2796.2012.02540.x/abstract;jsessionid=7790E1D1999E3A8D45F4035B1EB08190.d01t03


検査数値による類推&横断研究だから、エビデンスレベルとしてはさほど上位ではない報告。

指数のお勉強として、紹介した。

血中総テストステロン低値の特異性は低い・・・ いいかげんな基準で“男性更年期”を拡大解釈するな!

late-onset hypogonadism、時に”男性更年期”という、いんちき病名でよばれる病態が仮に現実に存在すると仮定する。
その場合でも、3つの症状” fewer morning erections, fewer sexual thoughts, and erectile dysfunction”と男性ホルモン低値と一致した場合にだけ、その病名を呼ぶべきである
( 男性更年期診断の厳格化によりその疾病はわずか2%となる ・・・ 疾患存在への疑問 2010年 06月 17日)。



男性ホルモンとしての低ゴナドトロピン血症測定は、血中総テストステロン値が初期検査として推奨されている。

男性ホルモン低値の基準に関しても、総テストステロン値評価は結合蛋白の問題などその値をそのまま信用するわけには行かない。

遊離テストステロンは グロブリン結合異常や正常下限での評価に用いられるわけだが、それをゴールドスタンダードにして、正常vs低遊離テストステロン判別パフォーマンスを検討。


Performance of Total Testosterone Measurement to Predict Free Testosterone for the Biochemical Evaluation of Male Hypogonadism
The Journal of Urology Volume 187, Issue 4, April 2012, Pages 1369–1373


 3672名の電子カルテでの低ゴナドトロピン評価

低テストステロン血症(280ng/dL未満)での、低遊離テストステロン血症、除外・予測のための、感度・特異度は 91.3%、73.7%。

閾値 350ng/dL未満、400ng/dL未満では、感度 96.8%、98.2%と増加する。

閾値 150ng/dL未満、200ng/dL未満では、特異性98.9%、92.6%と増加する。


血中総テストステロン 280ng/dL、350ng/dLでは、感度十分でなく
350-400ng/dLを越える場合、正常の遊離テストステロンと考えて良いだろう。

150ng/dL未満を除けば、低ゴナドトロピン評価の特異性は少ない。




遊離テストステロン値をゴールドスタンダードとしても、総テストステロンのカットオフ値は曖昧である。

また、男性低ゴナドトロピン血症としての "state"としての存在としては存在する。だが、この低値を拡大解釈し、"disorder"としての存在を強調する医師たちが存在する。

 男性更年期障害:バランスを失った日本医師会雑誌の記載・・・生涯教育素材の価値無し 2011年 02月 05日
こういうタイトルをつける日本医師会編集部って、軽薄すぎる。
カットオフ値を曖昧にして、 本来正常な遊離テストステロン状態のヒトに男性ホルモン補充することのリスクを軽視しすぎている。

男性更年期のアンドロゲン補充療法・・・・エビデンス無し、リスク可能性大 2004年 05月 06日

ヒトの寄りつけない洞窟で、耐性菌多数検出 ・・・ 抗生剤耐性化は自然界でも存在

“Lechuguilla Cave”:参考 wiki http://bit.ly/liuAig

レチュギア・ケイブ(Lechuguilla Cave)は、全米最深(1,604フィート;489メートル)で、長さは世界第5位(126.1 miles;203 km)の石灰岩の洞窟である。

  400万年に渡って外から完全に隔離されている洞窟

 その洞窟内部に抗生剤耐性菌を発見!

多くの細菌は、少なくともひとつは薬剤耐性あり、 14を越える抗生剤耐性も見られる。

明確な説明として、天然の抗生物質があり、他の微生物との競合で、細菌自体が自然発生的に耐性菌となった。
耐性菌の存在は人類出現より遙か前から存在し、人類が抗生剤を手に入れたのはわずか70年。それより20倍も前に耐性菌が存在していたという話。、

Antibiotic Resistance Is Prevalent in an Isolated Cave Microbiome.
Bhullar K, Waglechner N, Pawlowski A, Koteva K, Banks ED, et al. (2012) 
PLoS ONE 7(4): e34953. doi:10.1371


14の商用使用されている抗生剤耐性
耐性は、MRSA治療薬ダプトマイシンへの耐性を含み、酵素による耐性メカニズムは、自然・半合成マクロライド抗菌剤で、糖鎖形成、キナーゼを介したリン酸化反応メカニズムなどをを含む。

 耐性菌の遺伝子シークエンスとして、マクロライドキナーゼをエンコードする遺伝子同定し、これは、現代の抗生剤耐性病原菌で知られているものであった。


ヒトが抗生剤使用から分離された微生物にとっても、耐性出現の意味合い理解という面で重要である。


参考: http://io9.com/5901482/the-worlds-most-isolated-cave-is-home-to-4-million-year-old-superbugs


まともな日本語訳が、ナショナルジオグラフィックサイトに・・・掲載されたので、そちらをご参考に・・・
 http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20120412003&expand#title

ERCP膵炎:検査後直腸内インドメタシン投与でリスク低下

A Randomized Trial of Rectal Indomethacin to Prevent Post-ERCP Pancreatitis
B. Joseph Elmunzer, et. al.
for the U.S. Cooperative for Outcomes Research in Endoscopy (USCORE)


多施設ランダム化プラシーボ対照化二重盲検臨床トライアル

ERCP後、単回の直腸内インドメタシン or  プラシーボ比較
 
プライマリアウトカムはERCP後膵炎(新規上腹部痛、ERCP後24時間膵酵素正常上限を3回以上増加、 2夜以上の入院)

602名の患者登録・フォローアップ完遂
82%で、オッジ氏括約筋機能異常臨床的疑い

ERCP後膵炎 : インドメタシン群  27/295(9.2%) vs プラシーボ 52/307(16.9%)(P=0.005)

中等度・重度膵炎:インドメタシン群 13(4.4%) vs プラシーボ 8.8%(P=0.03)。

次世代米国医師たちの悩み・・・オバマ医療制度改革への不安・不満、医学生増加

40最以下の医師たちの57%が、米国医療システムのに対し将来に対して悲観的に考えている。
Next Generation Physician Survey
the Physicians Foundation
http://www.physiciansfoundation.org/FoundationReportDetails.aspx?id=360

500の回答者で、1/3(31%)は“かなり悲観的”と答え、26%が“やや悲観的”と、わずか4%が“かなり楽観的”と考え値得る。

1/3(34%)が、 "new healthcare law/regulations"が主理由のようで、“制度の混乱”、“政府介入”、“メディケア混乱、さらに悪化”と オバマが進める医療保険法( Affordable Care Act )への危惧を表明している。1/4程度は、正の効果を期待しているが、negativismの意思表明で、悪いはずがないという楽観主義者の中に多い。

なにが影響すると考えているかという、”収入/キャッシュフロー”(65%)、雇用(53%)、家族の生活(46%)、他医師(36%)と答えている。

 半数がプライマリケア医、35%がオフィス開業医、15%が病院勤務専門医という比率


  若い米国医師たちは現行の米国医療制度に80%が満足しており、58%がグループでの雇われ、2-6のグループからなるのが多数。


 この世代の医師たちは大量医学生への危機を感じ、将来への悲観的観測を促進しているようだ。

Medical Market Researchの2011年12月実施アンケート
 http://www.medpagetoday.com/PublicHealthPolicy/GeneralProfessionalIssues/32160


おおざっぱすぎるが、米国医師たちは“皆保険制度”への方向を恐れ、日本の医師たちは“皆保険制度崩壊”を恐れる。

共通点は、“制度変更への不安”  



米国では、具体的には、制度変更に伴い、“経済的状況の変化と、雇用状勢の変化、医師間の関係変化”などを恐れる。

日本でも、自らが経済的リスクをさらして事業を行っている病院経営者・開業医が制度変化に敏感であろう。開業医にとって、開業医という仕組みが崩壊することへの不安、そして、医療事業家による系列化やチェーン化への不安がある。客観的評価の高い技能・技倆を有する人たちにとっては経済的メリットになることが多いだろう。一般の勤務医にとっては・・・様々。


政治家や為政者達は医師たちの生活面なんぞ二の次。医者達にとって、制度変更ってのは必ず不安を伴う。




どちらの国の医師たちも、楽観的スタンスをとり、制度改革に能動的に参画した方がメリットは大きいとおもうのだけど・・・ 

日本医師会が、“めざせ、皆保険制度撤廃!”、 “広域医療法人チェーン展開を進めろ!”、“株式会社医療算入しろ!”、“医療の公益法人 撤廃!”、“TPP促進”とか言い出すことってないのだろうか?  事業している開業医や経営者には、決してデメリットだけではない。高血圧患者に“真のエビデンス(ランダム化トライアル)のない”特保を売り込み、膝痛の患者に原価ほぼただに近い“ヒアルロン酸”などの製品を勧めることの出来る混合診療・・・ 医師としての良心を捨てればいくらでも金稼ぎが出来る夢のような世界。

・・・以上、皮肉ですよ、皮肉。

“皆保険制度崩壊”で一番弊害を被るのは、一般の人だし、地方(vs 都市部)だし、低所得層(vs 高所得層)だし、かれらが本来は騒ぐべきなのに・・・

医師会が反対するから “業界利益誘導”とメディアや政府からミスリードされる・・・

そういう側面は、もうちょっと周知されるべきだろうが、“医師会=地上最強の悪の集団”という刷り込みができあがってるようで、まぁ この集団の言い分は聞く耳持たれない。
まともなことを主張しても、「また、医師会が変なこと言ってる、金儲けの材料でも探してるんだろう」くらいしか思われない。日本医師会って、末端会員にとっては、力もない癖に、上層部だけはその組織にへんなプライドを持ち、強情で、そのくせ、“男性更年期”特集のように流行りものに弱く、アカデミックでない。“悪の最強集団”ならそれらしく、ストライキでもやれば良いのに、アカデミズムが中心じゃないものだから、政権により方針がころころ変わり、内部の人心がまとまらない。

noteへ実験的移行

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