2022年3月12日土曜日

スイミング誘発肺水腫へのプレホスピタルケアとしてのNPPV

私自身、“Swimming-induced pulmonary edema”という病名をしらなかった。スウェーデンの特殊事情もあるようだがpre-hospital careとしてのNPPV投与の適合性・妥当性を検討とのこと。

Swimming-induced pulmonary edema – evaluation of prehospital treatment with continuous positive airway pressure or positive expiratory pressure device

Claudia Seiler, et al.

Open AccessPublished:March 11, 2022DOI:https://doi.org/10.1016/j.chest.2022.02.054

https://journal.chestnet.org/action/showPdf?pii=S0012-3692%2822%2900425-1


【背景】

水泳誘発性肺水腫(SIPE)は、冷たい外水域での水泳中に時折発生する。SIPEの最適な治療法は不明であるが、非侵襲的陽圧換気(NPPV)は病院前の治療の選択肢の一つである。

【研究課題】

NPPVはSIPEの病院前治療として実行可能かつ安全か、また治療後の回復を反映するのはどのようなアウトカム指標か。

【研究デザインおよび方法

2017年から2019年にかけて、スウェーデン最大のオープンウォータースイミングイベントであるVansbrosimningenにて、前向き観察研究を実施した。SIPEと診断され、末梢酸素飽和度(SpO2)≦95%および/または持続的な呼吸器症状を有するスイマーを研究の対象とした。NPPVは、顔面マスクによる持続気道陽圧(CPAP)または呼気陽圧装置(PEP-device)として現場で実施された。退院基準はSpO2が95%以上であり、臨床的に回復していることであった。4つの評価指標を設定した。SpO2、肺の聴診によるクラックル、肺の超音波検査(LUS)による肺水腫、および患者が報告する呼吸器症状である。

【結果】

119名の治療患者のうち、94名がCPAPを受け、24名がPEP-デバイスを受け、1名が気管挿管を必要とした。合計108名(91%)が中央値10-20分のNPPV後に退院し、11名(9%)が転院を余儀なくされた。NPPVによりSpO2が中央値91%から97%に上昇し(p<0.0001)、患者が報告した6つの呼吸器症状が改善した(数値評価スケール中央値1-7から0-1、p<0.0001)。NPPV治療中、聴診によるcrackle(93% vs 87%、p=0.508)、LUSでの肺水腫(100% vs 97%、p=0.500)の有意な減少は見られなかった。

【解釈】

NPPVをCPAPまたはPEP装置として投与することにより、SIPEの病院前治療として実行可能かつ安全であり、大多数の患者がその場で退院できることが証明された。また、SpO2や患者が訴える呼吸器症状は治療後の回復を反映していたが、肺の聴診やLUSでは回復しなかった。



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