アルコールがもたらすマクロファージへの病的作用:転写及びエピジェネティク変化として炎症亢進・感染防御の崩壊、酸化ストレスの亢進などあきらかになった
Ethanol Consumption Induces Nonspecific Inflammation and Functional Defects in Alveolar Macrophages
Sloan A. Lewis , et al.
https://doi.org/10.1165/rcmb.2021-0346OC PubMed: 35380939
https://www.atsjournals.org/doi/abs/10.1165/rcmb.2021-0346OC
慢性的なアルコール飲酒は、ウイルスや細菌性の呼吸器系病原菌に対する感受性の上昇と関連している。本研究では、アカゲザルのエタノール自己投与モデルを用いて、長期飲酒が肺の免疫学的ランドスケープに及ぼす影響について研究している。
エタノール(EtOH)飲酒動物の肺胞マクロファージ(AMs)内の炎症状況に注目し、炎症性遺伝子の調整を行い、ranscription factors AP-1, IRF8, and NFKB p-65のbiinding motifを含むintergenic regionへのchromatin accessibilityの増強を伴うことを示した。 基礎状態でのこれらの転写およびエピジェネティックな変化と同様に、EtOH飲用動物のAMは、LPSおよびrespiratory syncytial virusに対する炎症性メディエーター反応を上昇させることがわかった。 しかし、転写解析の結果、respiratory syncytial virusに対するEtOHによるインターフェロン刺激遺伝子の誘導は非効率的であり、抗菌防御の崩壊が示唆された。
これに対応して、EtOH飲用動物のAMは、酸化ストレスおよび酸化的リン酸化の増加を示す転写シフトを示し、これは細胞質活性酸素種およびミトコンドリア電位の上昇と相まっていた。
この酸化ストレスの高まりは、細菌を貪食する能力の低下を伴っていた。バルクRNAとトランスポザーゼアクセス可能なクロマチン配列のアッセイデータから、慢性的なアルコール飲料によって、組織の修復と維持に関連する遺伝子座の発現とクロマチンアクセスが減少することがさらに明らかになった。同様に、単一細胞のRNAシーケンスデータの解析により、EtOHによって組織の維持から炎症反応へと細胞状態が変化することが明らかになった。
これらのデータから、アルコール依存症患者における慢性的な飲酒が感染症に対する感受性を高めるメカニズムについて、新たな知見が得られた。