2019年3月11日月曜日

最大規模の食事性脂肪と死亡率関連研究

平均16年間の追跡調査期間は一般集団における特定の食事性脂肪摂取量と死亡率関連性調査としては最大の報告

ALA: α-リノレン酸(α-linolenic acid):ω3
LA: リノール酸(linoleic acid):ω6




Dietary Fats in Relation to Total and Cause-Specific Mortality in a Prospective Cohort of 521 120 Individuals With 16 Years of Follow-Up
Pan Zhuang , Yu Zhang , Wei He , Xiaoqian Chen , Jingnan Chen , Lilin He , Lei Mao , Fei Wu , Jingjing Jiao
Originally published14 Jan 2019
https://doi.org/10.1161/CIRCRESAHA.118.314038
Circulation Research. 2019;124:757–768


序文:心血管健康状態と飽和脂肪酸摂取関連性は議論のあるところ。不飽和脂肪酸と総死亡率・心血管疾患死亡率に関しても一致したものでもなく、非CVD死亡率についてデータは不足している
目的:食事脂肪摂取の総死亡率・原因特異的死亡率の関連性評価
研究方法と結果: 521,120名(50-71歳: National Institutes of Health-American Association of Retired Persons Diet and Health Study )、16年間フォローアップ研究
飽和脂肪酸(SFAs)、トランス脂肪酸、単価不飽和脂肪酸(MUFAs)、多価不飽和脂肪酸(PUFAs) を食事回数アンケートで評価
Cox比例ハザードモデル推定ハザード比、95% CIs

全体として、死亡 128,328/ 730万人年フォローアップ
炭水化物置換として、総死亡率の5分位最大最小比較多変量補正ハザード比


  • SFA 1.29 (95% CI, 1.25–1.33)
  • MUFA 0.98 (0.94–1.02) 
  • animal MUFA 1.09 (1.06–1.13)
  • plant MUFA 0.94 (0.91–0.97)
  • PUFA 0.93 (0.91–0.95) 
  • marine omega-3 PUFA 0.92 (0.90–0.94) 
  • αリノレン酸(α-linolenic acid) 1.06 (1.03–1.09) 
  • リノール酸(Linoleic acid) 0.88 (0.86–0.91) 
  • arachidonic acid 1.10 (1.08–1.13) 




CVD死亡率は、marine omega-3 PUFA摂取量と逆相関 (P trend <0 .0001="" acachidonic="" acid="" p="" trans-fatty="">
等カロリーとしてエネルギー摂取の5%をSFAsからplant MUFAsへ置き換えると、総死亡率、CVD死亡率、がん死亡率の各々の減少15%、10%, 11%、 30%

等カロリーとしてエネルギー摂取の2%をSFAsからlinoleic  acdへ置き換えると、総死亡率、CVD死亡率、がん死亡率、呼吸器疾患死亡率、糖尿病死亡率の各々の減少 8%、6%、8%、11%、9%

結論:SFAs、trans-fatty acids、animal MUFAs、α-linolenic acid、 arachidonic acid は死亡率増加と関連
marine omega-3 PUFAs と  SFAs → plant MUFAs or linoleic acidへの置換"は総死亡率、CVD死亡率、特定原因別死亡率を低下する








【discussion】
飽和脂肪酸(SFAs)と総死亡率、心血管疾患死亡率の関連性は、米国NHS、HPPS、Takayama studyと一致。この報告ではTFAと総・CVD死亡率増加関連し確認する必要がある。洋食では動物脂肪が主体となるため、総単価不飽和脂肪酸(MUFAs)と飽和脂肪酸(SFAs)は強相関有り、関連性を不明確にする可能性有り。

ω3-多価不飽和脂肪酸(PUFAs) は心血管疾患、がん、呼吸器系疾患、アルツハイマー病、慢性肝疾患などの慢性炎症性疾患予防効果の可能性あり、LDLに影響を与えず、血中トリグリセリド低下をもたらすが、メタアナリシスによると心臓死を含むCVD予防効果無しと結論づけられているが、二次予防では虚血性心血管疾患における冠動脈性心疾患二次予防効果が示されている。marine-n-3 PUFA摂取とCVD・がん・アルツハイマー病死亡率逆相関は他報告と一致。

α-リノレン酸(ALA)の生理学的効果はmarine ω-3 PUFAsへの転換もあるが転換率は限定的で性別に依存。この研究ではがん死亡率が従来の報告より強固であった。α-リノレン酸(ALA)摂取と総死亡率増加、呼吸器系疾患死亡率増加の関連性はまだ再検が必要で前向き研究・RCT必要。不飽和構造故、α-リノレン酸(ALA)はリノール酸(LA)より12−15倍transformしやすく、α-リノレン酸(ALA)の40%がトランス型転換する可能性有り。

リノール酸(LA)は、CVD、がん、糖尿病、感染症による死亡リスクと強い逆相関が有り、これらは一般的な住民ベース前向き研究の所見と一致するが、最近のメタアナリシスでは飽和脂肪酸(SAFs)からリノール酸(LA)を差し引くと総死亡・CVD死亡率の減少は認められない。さらにCVD死亡率の逆相関もCVD患者に於ける正相関との一致性も観られず。この不一致性は、トランス型脂肪のphase-out前の10年間で、マーガリン使用がTFAsに含まれるリノール酸(LA)として記載されたためと思われる。

糖尿病死亡率に関してリノール酸(LA)摂取量と逆相関は、ω6 PUFAバイオマーカーと2型糖尿病有病率の逆相関を示すメタアナリシスと方向性一致。リノール酸(LA)摂取とがん・感染症死亡率の逆相関は今後解明必要。

対照的に、アラキドン酸は総死亡率、CVD死亡率、がん死亡率、呼吸器系疾患死亡率の増加と関連。リノール酸(LA)由来だが、アラキドン酸過剰摂取は炎症誘発・血栓形成促進的で、病態生理変化の大元の一つ。脂肪細胞アラキドン酸バイオマーカーは心筋梗塞・心血管死亡率と正相関。アラキドン酸と飽和脂肪酸(SFA)摂取量は弱い相関(Spearman 係数 0.28)、アラキドン酸摂取量と死亡率増加の関連性は懸念すべき

多価不飽和脂肪酸(PUFA)の蘇生に関して、ω3/ω6比は総死亡率、がん死亡率、糖尿病死亡率低下と相関、しかしアルツハイマー病死亡率増加と相関。marine ω3-PUFAとαリノレン酸(ALA)の相関性が大きく解離、リノール酸(LA)とアラキドン酸(AA)でも解離があるため、ω6/ω3比は特異的ω3およびω6PUFAと比較したときに死亡率の意義あるバイオマーカーとなり得ない

サブグループ解析にて女性より男性の方が、飽和脂肪酸(SFA)、多価不飽和脂肪酸(PUFA)、リノール酸(LA)、marine ω3PUFA摂取量が総死亡率においてより明確な相関が示され、多価不飽和脂肪酸(PUFA)の代謝の性別dimorphismの存在、性別ライフスタイル差が関連するのかもしれない。


特定種脂肪摂取量と死亡率の関係の明確化必要で、今回はこの端緒と・・・

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