2014年1月22日水曜日

【英国】痛風:王様の病気は増加し、治療不十分が目立つ

日本の常識は世界の非常識で有名な尿酸治療の世界;痛風と関係なく、無症候性高尿酸血症(Asymptomatic hyperuricemia)への治療がなされる。

尿酸低下治療原理主義者たちだけが幅をきかす日本

これの是非に関するエビデンスに基づく議論が必要なはずだが、まともな議論がなされず、尿酸低下治療が唯一の痛風予防策のようなミスリードがなされる。実際に痛風に関する強い予測要素は、年齢、BMI、高血圧、コレステロール値、アルコール摂取であり、尿酸値がその予測要素とならないという報告もある。


閲覧者には、Medpage解説を冷ややかに見て欲しいのだが・・・


痛風治療英国内住民調査がなされてる。

Medpage解説によると、痛風という「王様たちの疾患」は、現代では一般庶民の疾患となった。米国内では830万名、住民の3.9%の罹患率。20年間で約2倍となり、40年間では3倍、これは肥満罹患率の増加、降圧利尿剤使用、高齢化に関係していると想定される。歴史的に見て、贅沢と関係し、食事量増大と関連し、腎疾患・心疾患のある患者に多く、管理すべきなのに、不十分管理が目立つ。痛風は急性あるいは間欠的疾患と誤解され、慢性破壊性関節疾患ということが忘れられている。症状出現前に関節内結晶存在する。これを忘れ、多くの医師たちは、古典的スタンダードであるNSAIDsやコルヒチン治療のみを行う。 
尿酸ナトリウム結晶は関節腔や滑液包内に到達し、NALP3 inflammasomeを活性化し、IL-1やTNFなどを遊離炎症を発生させる。尿酸値を飽和濃度未満に維持し、関節・組織結晶形成未満にする治療。 
 American College of Rheumatology (ACR)、 British Society for Rheumatology、 European League Against Rheumatism では、xanthine oxidase inhibitorすなわちアロプリノールを推奨。ACRでは、アロプリノール 100mg/日投与量という少ない量で、尿酸値を 6mg/dL未満とする目標で、 6mg/dL未満を特定の患者に推奨。100−300mg/日を腎機能に応じて調整。アロプリノールは800mg/日まで増量可能(日本では300mgまで?)だが、一度設定するとその後変更は少ない。アロプリノールの有害事象、500名から1千名に約1人という致死的可能性のある全身性過敏症がある。これは薬剤投与量最小開始でかなりの部分回避できると・・・。ACRガイドラインでは、HLA-B*5801 alleleと関連し、漢人に多く、日本人には比較的少ない(漢人 20% vs 日本人 1.2%)。 
帝人ファーマ開発のフェブキソスタット(febuxostat)は、アロプリノール代替だが、ACRガイドラインでは、アロプリノールとともに第1選択と記載された。しかし、高価で有りやはり代替オプションとして考えるべきだろうとされる。


Clinical and epidemiological research
Extended report
Rising burden of gout in the UK but continuing suboptimal management: a nationwide population study
Ann Rheum Dis doi:10.1136/annrheumdis-2013-204463

1997−2012年の英国一般住民調査

数年間痛風罹患・発生数増加。しかし、尿酸低下治療による至適治療率は変化無し。


Age-specific prevalence (A) and incidence (B) of gout in 2012 (Blue: men; red: women; green: total; dotted lines show 95% confidence bounds).




Secular trends of adherence of urate-lowering treatment (ULT) treated patients (blue: adherent; red: partially adherent; green: non-adherent patients).

EBM:口承 ・・・ 語り継ぐべき歴史

(McMasters大学の若きレジデンシー・コーディネーター 1990年4月の"Scientific Medicine"というフレーズからEvidence-based Medicine(EBM)というフレーズへ、この言葉はレジデンシープログラムのカリキュラムの核となったもので、Gordon Guyattらにより採用され、1992年JAMA誌・「The Rational Clinical Examination series」記事が掲載されている。その後、ご存じEBMの父とされる、David Sackettが1955年の「肝炎に対するベッド安静と食事に関するランダム化区分トライアル」報告を例として、患者にこれをどう適応するか解説。これが医者・医学生誰でも読んでるであろう‘clinical epidemiology'書籍
 Archie Cochraneは、臨床家・疫学者で、Welsh National School of Medicineの教授、1988年79歳で死亡、1972年、Effectiveness and Efficiency: Random Reflections on Health Servicesというセミナー本を出版。
 Bryan Haynes(McMaster大学臨床疫学・生物統計教授)は"Expert-based Medicine"と呼びそのピットフォール認識啓発、1969年、医学校でのEBMの旅が始まった(Evidence-Based Medicine: An Oral History Video)。1960年代、Cochrane collaborationの共同出資者、Iain Chalmersは、後顧的研究主体の当時の研究結果に臨床上役立つツールや知見を見いだせず、怒りを覚えていたと。その後、UK National Perinatal Epidemiology Unitの設立につながった。

Editorial | January 22/29, 2014
Evidence-Based Medicine—An Oral History
Richard Smith, MBChB, CBE, FMedSci, FRCPE, FRCGP1; Drummond Rennie, MD, FRCP2
JAMA. 2014;311(4):365-367. doi:10.1001/jama.2013.286182. 



EBMの進歩(JAMA) 2008年 10月 15日



一方、「EBMに基づく・・・ガイドライン」などと、アホとしか思えない言葉が流布する日本。EBMとは、ガイドラインのための存在ではない。学会や講演会など聴講してると、講演者のEBMの意味はき違えが気になる。ただ、最近では、「EBM」という言葉流行から消えてるのか次第に耳にすることが少なくなってきた。日本には結局、EBMは定着しなかったのだろう。科学性を無視し、権威者の意見に左右されることが多すぎる日本の医療、その矛盾は各方面で、とくにワクチン行政や薬剤行政などでめだつ。



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