2012年8月28日火曜日

痛風:通常許容血中鉛濃度の1/6でも痛風・高尿酸血症リスク増加

許容血中鉛レベルは < 1.21μmol/L( < 25μg/dL)だそうだ。
鉛中毒は痛風性関節炎を生じるが、一般住民での低濃度レベルの鉛ではたして痛風リスクに関わるか?

この論文での最大4分位は、0.19μmol/L[3.95 μg/dL]と、一般許容濃度の1/6程度である。このレベルの低い濃度でも痛風リスク増加が見られるという報告。

Low-Level Lead Exposure and the Prevalence of Gout: An Observational Study
Eswar Krishnan, et. al.

Ann Intern Med. 21 August 2012;157(4):233-241
痛風頻度を血中鉛濃度4分位最大(平均 0.19μmol/L[3.95 μg/dL])vs 最小(平均 0.04μmol/L[0.89 μg/dL])比較 6.05% (95% CI, 4.49% ~ 7.62%)  vs  1.76% (CI, 1.10% ~ 2.42%)

血中濃度倍化毎、非補正痛風オッズ比 1.74(CI, 1.47 ~ 2.05)、高尿酸血症オッズ比 1.25 (CI, 1.12 ~ 1.40)

腎機能・糖尿病・利尿剤・高血圧・人種・BMI、収入、教育レベル補正後、最大4分位血中鉛濃度は痛風に関し3.6倍、高尿酸血症に関し1.9倍のリスク増加



生活環境と血中鉛濃度
http://www.pref.aichi.jp/eiseiken/5f/pd.html

これで見ると、交通警察官や駐車場作業員、ガソリンスタンド従業員、トンネル作業差h、ガレージ器械工など 25μg/dLを超している


関連:
カドミウム、ヒ素、鉛高濃度と 膵内分泌がんの関連 2011年 12月 20日

妊娠中鉛暴露は低レベルでも血圧増加に寄与 2011年 02月 07日

子供の知的発達と鉛濃度 2007年 11月 21日

USPSTF勧告:CKD検診ベネフィット・リスク結論づけできず

このステートメント、 CKD検診に関してネガティブな報告が目立っていたので、驚きはない。
慢性腎臓病(CKD) 検診・治 療は エビデンスに乏しい メタボ+CKD検診なんて詐欺に詐欺を重ねてるようなモノ  2012年4月19日


カナダ:CKD検診にコスト効果なし 2010年 11月 19日

無症状で、糖尿病・高血圧のない場合の話で、日本などで行われている、“住民検診や人間ドック”など無エビデンスベースの検診などが対象の話。


CKDの患者の48%は糖尿病あり、91%は高血圧を有しているというUSPSTFステートメントもあり、これら疾患のマネージメントは対象としない話である。

アメリカ家庭医協会雑誌解説
慢性疾患マネージメント目的のCKD検査・モニタリングやCKDと関係が深い糖尿病・高血圧患者での検査・モニタリングには適応されない。
New AAFP, USPSTF Guidance
Evidence Lacking to Support Screening Asymptomatic Adults for Chronic Kidney Disease
http://www.aafp.org/online/en/home/publications/news/news-now/health-of-the-public/20120829ckdscreen.html




USPSTFは、無症状成人へのCKDルーチン検診に関しベネフィット・リスク評価不充分と結論づけ


Screening for Chronic Kidney Disease: U.S. Preventive Services Task Force Recommendation Statement
Virginia A. Moyer, et. al.
the U.S. Preventive Services Task Force
Ann Intern Med. 28 August 2012

Recommendation: The USPSTF concludes that the evidence is insufficient to assess the balance of benefits and harms of routine screening for CKD in asymptomatic adults. (I statement)

The U.S. Preventive Services Task Force (USPSTF) makes recommendations about the effectiveness of specific clinical preventive services for patients without related signs or symptoms.

It bases its recommendations on the evidence of both the benefits and harms of the service and an assessment of the balance. The USPSTF does not consider the costs of providing a service in this assessment.


患者向け:Screening for Chronic Kidney Disease: U.S. Preventive Services Task Force Recommendation Statement
Ann Intern Med. 28 August 2012





NHKためしてガッテンでは、「CKD」で暴走しておりました。
あいかわらずのクズテレビ局です。
http://www3.nhk.or.jp/gatten/


そして、我々の地域の検診では“CKD”の項目を今年から導入してます。エビデンス無いものを強引に導入するアホな施策が目立ちます。

大麻使用若年ほどIQ低下


Persistent cannabis users show neuropsychological decline from childhood to midlife
PNAS Published online before print August 27, 2012, doi: 10.1073/pnas.1206820109 PNAS August 27, 2012

大麻定期使用が有害と思春期成年は思ってないという報告がある。若年者ではじめるほど、日数ベースの大麻使用は増えるという現象もある。

1037名の生下時からの前向きコホート(Dunedin Study):1972/1973から38歳まで
18、21、26、32、38歳での大麻使用確認インタビュー

神経精神検査13歳で行い、38歳で再検査

持続的大麻使用者は、教育レベル補正後も神経精神的機能、機能面特性横断的に低下広汎である。

ベースラインからのIQ変化
未使用者、依存症診断既往無し: +0.80
使用者、依存症診断無し: -1.07
診断1回: -1.62
診断2回: -2.47
診断3回以上: -5.75



23コホートメンバーで、18歳未満での大麻開始者では、IQ平均8ほど低下し、重度大麻使用者で成人使用開始群ではfull-scale scoreの低下極少ない(P=0.02)

β選択性薬剤2つ:心血管系イベント差認めず

Comparative Effectiveness of 2 β-Blockers in Hypertensive Patients
Emily D. Parker, et. al.
Arch Intern Med. Published online August 27, 2012.


β1選択性、ISA(-)であるatenolol(テノーミンなど)、metoprolol tartrate(セロケン、ロプレソールなど)の比較

高血圧加療使用時心血管イベント発症に差を認めず



こういうことが分かってなかったってことの方が驚きですね

実は、古い薬剤は、エビデンス構築なされてないことが多い

WOMAN研究:閉経後女性食生活習慣と体重変化

 Women on the Move through Activity and Nutrition (WOMAN)研究:


"Short- and long-term eating habit modification predicts weight change in overweight postmenopausal women: Results from the WOMAN study"
Barone Gibbs B, et al
J Acad Nutr Diet 2012; 112: 1347-1355.



閉経女性の短期・長期体重減少は食物の種類に注目した食物行動変容により異なる
デザートが少ないほど、加糖ドリンク、揚げ物、外食が少ないほど、そして、魚摂取が多いほど有意に体重減少と関連。
48ヶ月時点で、体重減少は有意にデザート・加糖ドリンク、肉・チーズ摂取減少し、フルーツ・野菜増加と関連した。

長時間作用性吸入β2刺激薬のステップオフ治療は有害

長時間作用性吸入β2刺激薬(LABA)のstep-off 中止後、症状コントロール悪化、QOL悪化をもたらすという報告

“Step-Off Therapy”に対する警告


step-downに対して、段階的減量としてのstep-off (e.g. https://wao.confex.com/.../Step-down%20or%20Step-off.ppt
ステップダウン・アプローチは、ステップアップ・アプローチほどデータがない 
・ICS/LABA固定吸入内での、ICSのステップダウン治療は有効
LABAステップオフ治療は喘息コントロールを失うリスクを高める可能性あり
・LABA+ICSをLTRA+ICSに置き換え研究はされてない

上記2番めの事象を確認した報告。

National Asthma Education and Prevention Programは、数ヶ月コントロール状態にある患者ではstep-down治療を考慮した方が良いとしている。
 
"Long-acting beta2-agonist step-off in patients with controlled asthma: systematic review with meta-analysis"
Brozek J, et al
Arch Intern Med 2012; DOI: 10.1001/archinternmed.2012.3250.
LABA中断に関するエビデンス評価のシステマティック・レビューとメタアナリシスで、合剤治療で一度コントロール到達した患者を対象

1492の論文から選別、5つのトライアルでのみ、15歳以上の事前特異化登録クライテリアを満たしてなかった。

LABA step-offアプローチは治療変更せず群と比べ良好な結果では無かった。

LABA step-offレジメンは、喘息悪化増加、Asthma Quality of Life Questionnaire score悪化 (mean difference [95% CI], 0.32 [0.14-0.51] points lower)、 Asthma Control Questionnaire score 悪化(0.24 [0.13-0.35] points higher)、無症状期間減少(9.15% [1.62%-16.69%] less)、研究脱落リスク増加、以上の結果、有効性無く、喘息コントロール不要 (risk ratio, 3.27 [2.16-4.96])

イベント数少数・観察期間短いため、急性増悪・死亡リスクは評価せず



x剤型少なく、薬剤調整困難というプラクティカルな問題と、ステップダウン法は現実ではエビデンス少ない。

LABAステップオフしないとすれば・・・
シムビコート固定的+ICS追加調整で漸減する方法
ICS単独+LABA単独(現実的にはサルメテロールロタディスク25μg使用、発売予定のホルメテロール単剤は?)
ホクナリンテープをLABA的に使用する方法
ICS/LABA→ICS+LTRA併用に一時期行う
 ・・・などなど考えられるが・・・

運動は喫煙渇望を抑制する

禁煙による運動能力改善効果は比較的迅速(Prev Med. 1988 Jan;17(1):79-92.)


喫煙渇望・喫煙衝動に駆られたとき、運動することは良い方法であり、強いエビデンスが示された。


The acute effects of physical activity on cigarette cravings: Systematic review and meta-analysis with individual participant data (IPD).
Haasova M. et. al.
Addiction DOI: 10.1111/j.1360-0443.2012.04034.x

【目的】  individual participant data (IPD)を用いて一連の運動による、Strength of Desire (SoD) や Desire to Smoke (DtS)への急性効果をシステマティック・レビューと実験トライアルの初回メタアナリシスを行う

【方法】 文献のシステマティック・レビューとIPDメタアナリシスで、一連の運動のSoD、DtSに対する急性効果を禁煙中の薬物療法未使用状況での一時的非喫煙状態にある喫煙者を対象に行ったもの報告を対象。考察対象研究著者に接触し、生のIPDを入手。
2 stage、1-stage IPDrandom effects meta-analysisを行った。
運動群を対照群とを、介入後SoD、DtSでベースライン補正後比較

【結果】 運動によるSoDの平均標準化平均差として、2-stage IPD meta-analysisの結果、-1.91 (95% CI: -2.59 ~ -1.22) (across 15 primary studies)

2-stage IPD meta-analysis評価による運動によるDtSへの影響は、-2.03 (95% CI: -2.60 ~ -1.46) (across 17 primary studies)

メタアナリシスを加え、一つの平行群研究を含む1-stage modelを加え、対照群との中等度運動比較だけのメタアナリシスを行うと、有意に運動後喫煙渇望を有意な減少が示された。。

研究間heterogeneity高度だが、すべてのプライマリ研究のeffect sizeは同一方向であり、運動は対照群比較で有意な渇望減少が見られた。


【結論】運動は急激にたばこ渇望を減少させるという強いエビデンスが示された。


おそらく、プレスリリースにtypoあり、メディア報道そのまんまのところが多い
http://articles.chicagotribune.com/2012-08-26/lifestyle/sns-rt-us-smokingbre87q00z-20120826_1_cigarette-cravings-nicotine-replacement-exercise-and-health-psychology

http://bit.ly/SwF01w ← http://bil.l/・・・となっている



喫煙に関しては、化学物質関連障害としての、環境的疾患の側面と精神的疾患の側面がある。精神疾患としての側面を無視して、薬物治療だけ重きが置かれるとしたら問題。
一方で、体系化された記述ではないのが物足りないが、保険診療マニュアルには認知療法的考えがちらばめられている。これに、"short bouts of physical activity (PA)"を どう組み込むか、禁煙指導方法手段の改善につながることを期待したい。

ST上昇型心筋梗塞:その他背景にかかわらず再潅流治療による死亡率改善効果あり

ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者は再潅流療法で使用で死亡率改善した。
患者背景がその予後改善に関わってるのではないかという疑念もあるわけで、それを確認するための検討。特に若年女性比率が増加しているなど・・・

結論としては、フランスでは1995-2010年で、60歳未満の若年女性増加を伴い、患者背景も他に変化しつつ、再潅流法普及、推奨薬剤の変化を伴いながら、包括心血管疾患死亡率は減少(オッズ比 0.39 95%CI, 0.29-0.53, p<0 .001=".001" br="br">
no perfusionでも1995→2000年で改善が見られるが、その後は頭打ちでやはり、再潅流法のベネフィットは大きい様だ。

Association of Changes in Clinical Characteristics and Management With Improvement in Survival Among Patients With ST-Elevation Myocardial Infarction  
Etienne Puymirat, et.al.
For the USIK USIC 2000 and FAST MI Investigators
JAMA. Published online August 27, 2012. doi:10.1001/2012.jama.11348
 



Figure. Changes in 30-Day Mortality According to Use and Type of Reperfusion Therapy 



Table 3. Observed and Risk Score-Standardized 30-Day Mortality Rates

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禁煙はお早めに! 米国における人種・民族・性別による喫煙・禁煙での死亡率相違|Makisey|note 日常生活内の小さな身体活動の積み重ねが健康ベネフィットをもたらす:VILPA|Makisey|note