2014年2月5日水曜日

カナダ:透析開始基準を拡大

新しいカナダのガイドラインでは、慢性腎臓病患者の透析開始基準を 10-12mL/minから、15 mL/minとする基準となった。 6mL/minや症状悪化まで待ってはならないとした。


Guidelines
Canadian Society of Nephrology 2014 clinical practice guideline for timing the initiation of chronic dialysis
Gihad E. Nesrallah,  et. al.
CMAJ February 4, 2014 vol. 186 no. 2 
doi: 10.1503/cmaj.130363

http://www.cmaj.ca/content/186/2/112.full.pdf

根拠は、IDEAL トライアル(A Randomized, Controlled Trial of Early versus Late Initiation of Dialysis N Engl J Med 2010; 363:609-619)

でも、これって、早期透析介入で、生存率や臨床的アウトカム改善につながらないって話だったはず・・・

GFR : 10.0 to 14.0 ml per minute (early start) vs estimated GFR was 5.0 to 7.0 ml per minute (late start)


崖に落ちてから、助けても・・という発想らしい

マウス実験:胃腸がん JAK阻害剤治療 可能性

骨髄線維症治療薬 JAK阻害剤が、胃がん・腸がん治療に役立つ可能性

JAK阻害剤は、白血病、リンパ腫、ループス、関節リウマチなどの病態に臨床トライアル研究中だが、これらの研究チームは、がん細胞生存延長・増殖に関わる分子研究にてターゲットとしてのJAKの果たす役割を解明。表題の期待が寄せられた。


http://www.wehi.edu.au/uploads/MR_2014_02_04_WEHI_Existing_medicines_show_promise_for_treating_stomach_and_bowel_cancer.pdf


Therapeutic Inhibition of Jak Activity Inhibits Progression of Gastrointestinal Tumors in Mice
Emma Stuart ,et. al.,


三次喫煙:多臓器的障害マウスモデル報告

朝日、毎日で、三次喫煙記事有ったようだ
http://goo.gl/yPv9F6


ホテルは部分的禁煙では効果無い。部分的禁煙ではニコチンだけでなく発がん性物質も暴露させる。  2013/05


ヨーロッパ呼吸器学会で、0-13歳の気道感染オッズ倍へ、そして、居宅内喘鳴発生頻度倍化報告など三次喫煙報告

Hutchinson S, et al "Third-hand tobacco smoke exposure and respiratory complaints in children: A cross-sectional study" ERS 2013; Abstract P4332.
解説:Third-Hand Smoke Impacts Kids' Breathing
http://www.medpagetoday.com/MeetingCoverage/ERS/41558


あらたに、カリフォルニア大学からの報告で、マウス研究により、複数臓器障害を生じる可能性
Cigarette Smoke Toxins Deposited on Surfaces: Implications for Human Health
Manuela Martins-Green ,et.al.
PLOSone Published: January 29, 2014    DOI: 10.1371/journal.pone.0086391

セカンドハンドスモーク(SHS)は、喫煙本人より有害性内在の可能性有り、さらに、サードハンドスモーク(THS:三次喫煙)は、小児への影響が示唆されてきている。
THS暴露マウスは、多臓器へ影響し、タバコ特異的発がんバイオマーカー(tobaco-specific carcinogen biomaker):NNALの濃度は、SHS暴露児と同様の影響をもたらすことが判明。

肝臓内で、THSにより、脂質レベル増加、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)をもたらし、肝硬変、ガンのprecursorとなり、心血管疾患寄与要素となる。

肺内では、THSは、過剰な膠原線維産生、炎症性サイトカイン高濃度をもたらし、線維化の可能性、COPDや喘息のような炎症性起因疾患への影響を示唆。

外傷性皮膚疾患では、THS暴露マウスの治癒は喫煙者手術切開創に於ける多くの特徴を持つ。

行動研究によれば、THS暴露マウスは、過反応となるという、SHS/THS暴露小児の問題行動出現は、その長期暴露に起因し、より重度の神経学的疾患発症リスクを有意に高める。

これらの結果は、ヒトTHSの毒性的影響に関する研究のベースとなり、THS非意図的暴露予防に役立つ可能性がある




善玉はいつも善玉ではない: PGC-1αは筋内では善行を、糖尿病血管内では悪行を・・・

なぜ、糖尿病は微小血管合併症を発症するのか、結果、眼や腎臓、神経系だけで無く、潰瘍や、慢性炎症を生じ、下肢切断などもきたし、透析・失明などの状況を生み出す。


一つの機序が明らかに
Endothelial PGC-1α Mediates Vascular Dysfunction in Diabetes
Cell Metabolism, Volume 19, Issue 2, 246-258, 4 February 2014



解説:
Research reveals why diabetes patients are at risk for microvascular complicationsA metabolic molecule is found to inhibit blood vessel growth in patients with diabetes, leading to impaired wound healinghttp://www.eurekalert.org/pub_releases/2014-02/bidm-rrw013114.php
以下、意訳・略訳
PGC-1αを10年来研究し、多機能的役割が見られ、特に、循環量少ない危機的体内で、PGC-1αは筋肉内での酸素低下、栄養低下を感知し、新しい血管増殖を阻害、すなわち血管新生プロセスを促進(spur)する。筋内において、PGC-1αは、pro-metabolicで、血管新生の重大な調整要素。だが、血管新生に反応する鍵となる細胞は、血管内に存在する血管内皮細胞である。糖尿病での血管内皮細胞内のPGC-1αの役割を検討。

一連の細胞培養実験で、血管内皮特異的遺伝マウスモデルも用い、PGC-1αの血管内皮での役割は糖尿病で誘導され、血管内皮migration・血管新生を強く阻害し、結果、血管機能障害を生じる。

これらの発見は驚くべきもので、PGC-1αの血管内皮での役割は筋細胞内のそれと真逆ということ。 
筋肉内ではpro-metabolic的働きを示し、より血管を増加させ、血管不足のため飢餓状態に陥った損傷・乏血管状況の回復もたらす役割をしている。しかし、血管内皮では、糖尿病状況において血管造生を阻害し、治癒抑制する働き。

同じ分子が、働く組織・細胞において異なる働きをするということで、興味深いという側面もある。薬物治療に関しても、やはり、単一の実験系で、都合の良い効果があるとしても、別の臓器ではとんでもない方向へ機能が働くことさえ有るわけで、そういう面でも教訓的研究結果となる。

[善玉]というラベリングは科学・医学の世界ではとくにリスキー

PGC-1αは善玉という認識が一般的に有るようだが、重篤な血管新生へ悪影響をもたらす状況も存在する。逆手をとって治療に結びつくかもしれない。





JNC 8:エビデンスに基づく成人高血圧管理ガイドライン

【高血圧ガイドライン】JNC8 批評  2013年12月19日
JNC-8ガイドライン撤回せよ・・・という主張 2014年1月7日


コメント解説してるが、正式には、今日付出版らしい



2014 Evidence-Based Guideline for the Management of High Blood Pressure in Adults;Report From the Panel Members Appointed to the Eighth Joint National Committee (JNC 8)
Paul A. James, et. al.
JAMA. 2014;311(5):507-520. doi:10.1001/jama.2013.284427. 

若い頃からの血圧軌跡(trajectory)は、中年期冠動脈病変に影響を与える

血圧値単回数測定値は、動脈硬化発症と関連するが、血圧の長期パターンの心血管疾患リスクへの影響は十分解明されてない。若年成人期からの血圧軌跡(trajectory)パターンで通常のを同定し、冠動脈石灰化との関連性を決定する研究


若年期の血圧経緯軌跡は様々で、血圧軌跡高いほど、中年期の冠動脈石灰化リスク高い。
長期血圧軌跡は、個別・無症状動脈硬化同定に関して正確性をもたらす。




Blood Pressure Trajectories in Early Adulthood and Subclinical Atherosclerosis in Middle Age
Norrina B. Allen, et. al.
JAMA. 2014;311(5):490-497. doi:10.1001/jama.2013.285122. 

前向きコホート研究 CARDIA研究、4681名(黒人、白人、ベースライン年齢 18-30歳、 米国都市部4ヶ所)、25年間フォローアップ(2010-2011年まで)
収縮期血圧、拡張期血圧、中間血圧:mid-BP([収縮期血圧+拡張期血圧]/2)、冠動脈性疾患リスクマーカー(ベースライン、2、5、7,15,20、25年)
Latent mixture modelingは、収縮期血圧、拡張期血圧、中間血圧:mid-BPの軌跡を同定して求める。
結果、5つのmid-BPパターンを同定
  • 低値安定:low-stable (21.8%; 95% CI, 19.9%-23.7%; n=987)
  • 中間安定:moderate-stable (42.3%; 40.3%-44.3%; n=2085)
  • 中間増加:moderate-increasing (12.2%; 10.4%-14.0%; n=489)
  • 高値 安定:elevated-stable (19.0%; 17.1%-20.0%; n=903)
  • 高値 増加:elevated-increasing (4.8%; 4.0%-5.5%; n=217)




低値安定群と比較して、高値血圧・軌跡群では、冠動脈石灰化スコア(CAC):100HU以上を有する場合のオッズ比著明増加。補正オッズ比は、中間安定群 1.44 (95% CI, 0.83-2.49) 、 中間増加群 1.86 (95% CI, 0.91-3.82) 、 高値 安定群 2.28 (95% CI, 1.24-4.18)、 高値 増加群  3.70 (95% CI, 1.66-8.20)


CACスコア 100 HU以上補正発症率は、低値安定群で5.8%
絶対的増加は、中間安定群 2.7%、中間増加群 5%、高値安定群 6.3%、高値増加群12.9%とそれぞれmid-BPパターンで、増加。


ベースライン、25歳血圧補正後もこの関連性は変化せず

収縮期血圧単独軌跡でも同様所見だが、拡張期血圧軌跡ではその相関減弱する。

trajectoryって概念・・・最近はやり?
Long-Term Trajectory of Two Unique Cardiac Biomarkers and Subsequent Left Ventricular Structural Pathology and Risk of Incident Heart Failure in Community-Dwelling Older Adults at Low Baseline Risk

リスク暴露の積分値だけでなく、そのリスク増加率(微分値)も重要なのだろうか?

Trajectory表現は多岐にわたるようだ
http://kaigyoi.blogspot.jp/2013/03/2.html
http://intmed.exblog.jp/12482592/

CATISトライアル:虚血性卒中は急性期降圧効果必要とせず

今、思うと懐かしい時代だが、アダラート舌下と卒中の関連性が、一時、司法を巻き込んで話題になったことがある。脳卒中治療に関して専門性が重要視されない時代が続いたが、今は、超急性期治療の重要性もあり、我々専門外が治療管理に関わることは少なくなった。以前、看護師たちが血圧に関してしつこく管理を求め、結果的に、アダラート舌下席巻時代があった。卒中急性期に関して、舌下うんぬんに関わらず、降圧治療急ぐことはないというエビデンス。



卒中一次予防・二次予防のための降圧ベネフィットは確立しているが、急性虚血性卒中に関しては不明

臨床の世界でも中国のトライアル報告目立つようになったが、同じ、アジア人種としての知見だから、ありがたい部分もある。


以下の治験結論としては、急性虚血性卒中に関し、降圧剤による血圧降下治療は、無治療対照に比べ、第14日めあるいは退院時の死亡・障害複合リスクを減少せず


降圧治療せず・・・という日本では、困難な状況を対照にしているところが、ありがたい。

4072名、発症48時間内の非血栓性虚血性卒中で、収縮期血圧増加患者対象China Antihypertensive Trial in Acute Ischemic Stroke (単盲験、エンドポイント盲目化ランダム化臨床研究)

介入は、
ランダム化後24時間内に、収縮期血圧20%〜25%降圧し、7日内に血圧到達目標140/90未満、その後入院中この値を維持(n=2038)
全ての降圧剤中止(対照: n=2033)
主要アウトカムは、14日目・あるいは退院時、死亡・重大障害(修正 Rankin Scaleスコア 3以上)

Effects of Immediate Blood Pressure Reduction on Death and Major Disability in Patients With Acute Ischemic StrokeThe CATIS Randomized Clinical Trial
Jiang He, et. al.
JAMA. 2014;311(5):479-489. doi:10.1001/jama.2013.282543.

平均収縮期血圧、ランダム化後24時間内 
介入群 166.7 mm Hg → 144.7 mm Hg ( - 12.7%)
対照群 165.6 mm Hg → 152.9 mm Hg (−7.2%)  (difference, −5.5% [95% CI, −4.9 to −6.1%]; absolute difference, −9.1 mm Hg [95% CI, −10.2 to −8.1];  P < .001).

平均収縮期血圧ランダム化後7日目
介入群 137.3 mm Hg
対照群 146.5 mm Hg (difference, −9.3 mm Hg [95% CI, −10.1 to −8.4]; P < .001).


プライマリアウトカムに、14日目・退院時 群間差なし
(683 イベント数 [降圧治療群] vs 681 イベント数 [対照]; odds ratio, 1.00 [95% CI, 0.88 to 1.14]; P = .98)

治療後3ヶ月目セカンダリ複合アウトカム(死亡・重大障害)でも、群間差無し (500 イベント数 [降圧治療群] vs 502 events [対照群]; odds ratio, 0.99 [95% CI, 0.86 to 1.15]; P = .93)





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