2020年6月10日水曜日

dysanapsis:不釣り合いな気道と肺の発達変化 喘息に続き、COPDと関連性報告

気道の発達不均一性、dysanapsisは、小児喘息の罹病率や治療不応性と関連する
https://kaigyoi.blogspot.com/2017/02/dysanapsis.html


 dysanapsisとは,ギリシャ語のdys=unequalとanap—tixy=growthをつないだ言葉で,別名allometryとも呼ばれる。肺のdysanapsisは,肺の成長過程で気道と肺胞が不つり合いとなることをさしている。肺胞の大きさ(肺気量)が大きい個体で必ずしも気道サイズ(気道体積)が大きい訳ではなく,同一個体の成長過程でこの割合が変わり,また個体間でも大きなバラツキがある。このゼミナールでdysanapsisをとり上げた理由は,正常人において気道と肺胞のつり合いについていくつかの興味ある研究が成され,肺疾患における意義も今後明らかにされようとしているからである。
 まずdysanapsisの表現法について。最も実際的で生体で用いうる方法は,胸部レ線写真(正,側)で気管のサイズおよび断面積を実測し,これと肺気量との比を求めるものである。胸郭内気管の正面および側面からみた直径を0.5cm間隔で測り,平均値を求める。測定の下限は分岐部から2〜3cm口側である。気管の断面積は,半月形とみなして計算出来る(Osmanliev D,et al.Am.Rev.Resp.Dis.126:179,1982)。

dysanapsisについては、CTでの評価が簡単となりより広範に分析できるようになった

https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1404204399

つぎはCOPDとの関連性

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、完全には逆転しない空気の流れの制限によって定義され、世界的に罹患率と死亡率の主要な原因となっています。
 喫煙タバコは COPD の主要な危険因子であるが、多くの国で数十年にわたって喫煙率が低下しているにもかかわらず、それに対応する疾患負担の減少は緩やかなものであった。
 さらに、生涯喫煙者のうち、スピロメトリーで定義された COPD を有する者は少数派であり、1987 年から 1988 年までと 2005 年から 2009 年までの人口ベースの観察サンプルでは、喫煙しなかった人の中で最大 30%が発生していた。
COPDには他の因子(例えば、副流煙、環境汚染物質や職業汚染物質、喘息)も関連しているが、COPDリスクの変動の多くは未だに説明されていない。
3年間の肺機能の軌跡研究では、高齢者のCOPDの50%は加速的な肺機能の低下ではなく、ベースラインの肺機能の低下に起因していることが示された。
低ベースライン肺機能に関連する因子を特定することは、地域社会における高齢者のCOPDリスクの大きな割合を説明するのに役立つかもしれない。
dysanapsisとは、肺の大きさに対する気道樹の口径の不一致を指し、最初は健康な成人の間でのスピロメトリーのばらつきから推測されていた。
肺機能障害は人生の早い時期に発生すると考えられており、閉塞性肺疾患の罹患率に関与しており、コンピュータ断層撮影(CT)を用いて直接定量化することが可能である。
本研究では、平均気道内腔径と肺総容積の比(気道対肺比)として CT で定量化されたdysanapsisが、強制生命能力(FEV1:FVC)比に対する 1 秒目の強制呼気量の変動の有意な割合を統計的に説明し、一般の高齢者における COPD の発症と関連しているという仮説を検討


Association of Dysanapsis With Chronic Obstructive Pulmonary Disease Among Older Adults
Benjamin M. Smith, et al.,  for the MESA Lung, CanCOLD, and SPIROMICS Investigators
JAMA. 2020;323(22):2268-2280. doi:10.1001/jama.2020.6918
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2766866

Key Points
  • 疑問点 dysanapsis、気道という樹木の管が肺のサイズ(airway tree caliber to lung size)とmismatchがその後COPDのリスクと関連するか?
  • 知見:高齢者6529人を対象とした後顧的御観察研究で、たばこ曝露およびその他の標準的な危険因子調整後、dysanapsis(コンピュータ断層撮影での気道と肺の比率:airway to lung ratio on computed tomography)の定量的な測定値は、COPDの発症(1秒目の強制呼気量と強制生命力[FEV1:FVC]、呼吸器症状を伴う0.70未満)と有意に関連していた。
  • 意義:高齢者においてdysanapsisはCOPDのリスク要素と思われる


意義
喫煙は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の主要な危険因子であるが、COPD リスクの多くは未だに原因不明である。

目的
高齢者におけるCOPDの発症およびCOPDの肺機能低下と、CT(コンピュータ断層撮影)で評価される気道樹の口径と肺の大きさの不一致であるdysanapsisが関連しているかどうかを明らかにする

デザイン、設定、および参加者
2つのコミュニティベースのサンプルからなるレトロスペクティブコホート研究:Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis (MESA) Lung Study、2531人の参加者(米国6施設、2010-2018年)、およびCanadian Cohort of Obstructive Lung Disease (CanCOLD)、1272人の参加者(カナダ9施設、2010-2018年)、およびCOPDのケースコントロール研究の2つのコミュニティベースのサンプルからなるレトロスペクティブコホート研究。COPDの症例対照研究:The Subpopulations and Intermediate Outcome Measures in COPD Study(SPIROMICS)では、2726人の参加者(米国12施設、2011年~2016年)

暴露
 Dysanapsisは、19ヶ所の標準的な解剖学的位置で測定された気道内腔径の幾何学的平均値を肺容積の立方根(気道対肺比)で割ったものとしてCT上で定量化

主要アウトカムと測定法
プライマリアウトカムは、気管支拡張後FEV1/FVC 0.70未満で呼吸器症状有りをCOPDと定義
セカンダリアウトカムは長軸的な肺機能
すべての解析は、人口統計学および標準的な COPD 危険因子(一次および二次たばこ煙暴露、職業および環境汚染物質、喘息)で調整

結果
MESA Lungサンプル(平均[SD]年齢 69歳[9歳]; 女性 1334名 [52.7%])でCOPD有病者 237/253 (9.4%)、airway to lung ratio(気道/肺比率) 平均(SD) 0.033(0.004)、FEV1平均減少量 -33mL/年(31 mL/年)
COPD有病のないMESA Lung被験者 2294名のうち、その後 6.2年間中央値期間においてCOPD発症 98(4.3%)

airway to lung ratio(気道/肺比率)最大4分位に比べ、最小4分位では有意にCOPD発症頻度高い (1000人年あたり 9.8 vs 1.2 ; rate ratio [RR], 8.12; 95% CI, 3.81 to 17.27; rate difference, 1000人年あたり 8.6 例; 95% CI, 7.1 to 9.2; P <0.001) だが、FEV1減少に関しては有意では無かった  ( −31 vs −33 mL/y; 差, 2 mL/年; 95% CI, −2 to 5; P = 0.30).
CanCOL被験者(平均[SD]年齢 67歳[10歳]、女性 564 [44.3%])のうち、期間中央値 3.1年間においてCOPD発症 113/752(15.0%)、FEV1減少平均(SD)   −36 mL/年 (75 mL/年)
airway to lung ratio(気道/肺比率)4分位最小でのCOPD発症は最大4分位より有意に高率(1000人年あたり 80.6 vs 24.2 例; リスク比 3.33; 95% CI, 1.89 to 5.85; rate difference, 1000人年あたり 56.4 ; 95% CI, 38.0 to 66.8;  P <0.001)
しかし、FEV1減少では有意差無し  (−34 vs −36 mL/年; 差, 1 mL/年; 95% CI, −15 to 16; P=0.97)
 
COPDのあるSPIROMICS被験者 1206名(平均 [SD] 年齢 65歳[8歳]; 女性 542 [44.9%])ではフォローアップ期間中央値 2.1年間において、airway to lung ratio(気道/肺比率)最小4分位では、平均FEV1減少 -37 mL/年(15 mL/年)で、MESA Lung被験者の減少速度と有意差なし(P=0.98)
しかし、最大4分位ではMESA Lungより迅速に低下 (−55 mL/年 [16 mL/年 ]; 差, −17 mL/年; 95% CI, −32 to −3; P = 0.004)

結論と関連性
高齢者では、脱力症は COPD と有意に関連しており、肺の大きさに対する気道樹の口径が低いと COPD のリスクが高かった。ダイアナプシスはCOPDと関連する危険因子であるように思われる。

www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。






住民ベース研究MESA Lung StudyでのCOPDリスク要素なしの被験者
代表的冠状断CT画像;区分化された中心部気道樹(色づけピンク)、対応する気道/肺比でdysanapsis測定、FEV1/FVC比 

A, A participant in the first percentile (percent-predicted airway tree size, 78%) and FEV1:FVC of 0.55.
B, A participant in the 25th percentile (percent-predicted airway tree size, 91%) and FEV1:FVC of 0.68.
C, A participant in the 50th percentile (percent-predicted airway tree size,100%) and FEV1:FVC of 0.80.
D, A participant in the 75th percentile (percent-predicted airway tree size,105%) and FEV1:FVC of 0.81.
E, A participant in the 99th percentile (percent-predicted airway tree size, 120%) and FEV1:FVC of 0.91.
For geometric mean calculations, see the Methods section.

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