2013年3月26日火曜日

プライマリケアでの誤診の分析:対診時プロセス省略が主な理由

以下の報告を利用して医師たちは誤診をするものとあげつらうものも多いだろう。しかし現実にはそう単純なものではない
診断過程は必ずしも明確なものではなく、科学的解釈も不十分。意思決定には時間的制限・不明瞭差を伴う情報の限界が有り、症状・徴候での診断では経験不足・助言不十分な状況が存在する
という解説記事(http://www.physiciansnews.com/2013/02/26/missed-medical-diagnosis-common-report-faults-poor-doctor-patient-encounters/)を先に紹介する。


Types and Origins of Diagnostic Errors in Primary Care Settings
Hardeep Singh, et al.
JAMA Intern Med. 2013;173(6):418 
doi:10.1001/jamainternmed.2013.2777
目的 プライマリケアでの疾患見逃しの種類や確定診断過誤に関する診断過程を明確にし、そして、記録レビューが将来の調査として寄与する要素を明らかにできるか明確にする

デザイン 診断過誤カルテ記録レビュー(2カ所(高齢者在郷軍人相手が主:site A、より若年者あいての家庭医:site B)での電子カルテベーストリガーにて検知)。トリガーは、患者のプライマリケア指標受診後の計画外受診パターンに基づく

セッティング  A large urban Veterans Affairs facility and a large integrated private health care system.

被験者  プライマリケア受診検知誤診の190ユニーク・インスタンスに焦点を当て、2006年10月1日から2007年9月30日まで

主要アウトカム測定  カルテレビューを通して、指標受診時の症状に関するデータ収集、見逃し診断の種類、プロセスの省略、関連可能性寄与要素、過誤による有害性要素

結果   190例中、68のユニークな診断ミス検出

多くの誤診はプライマリケアでの多い病態であり、肺炎(6.7%)、非代償性うっ血性心不全(5.7%)、急性腎不全 (5.3%)、がん(原発性)(5.3%)、 尿路感染・腎盂腎炎(4.8%)

プロセス省略の多くは、対診時:patient-practitioner clinical encounter (78.9%) だが、紹介に関連するもの(19.5%)、患者関連要素(16.3%)、診断情報のフォローアップ・追跡(14.7%)、診断検査のパフォーマンス・解釈(13.7%)

プロセスの一つ以上で問題なのは、43.7%

対診時のプロセス省略の内容は、主に、病歴聴取(56.3%)、検査(47.4%)、and/or 追加検査ワークアップのための診断検査オーダー(57.4%)。

多くの過誤は中等〜重度有害事象可能性と関連

結論・新知見   今回研究の診断過誤は通常の疾患広汎対象で、しかも有害事象を生じる可能性があるもの。 多くの過誤は、 対診(patient-practitioner clinical encounter)の時のプロセス省略によるものである。これらミスに対する予防介入としては、診断横断的な普通のありふれた寄与要素をターゲット化する必要があり、特に、patient-practitioner encounterに関するデータ集積・合成をターゲット化すべき。



"$1 triton" problemは、日本では簡単・・・全部医者が悪いで済むから・・・

EF低下心不全:スピロノラクトンの効果はNYHA I-IIではネット・ベネフィットありとは言えない

 糖質コルチコイド受容体拮抗剤(MRA)は死亡率減少効果を示すが、無作為比較試験から、ネットのベネフィットは一般化できず、エプレレノン(セララ)は軽症心不全では検討されているが、スピロノラクトンでは検討されてない。スピロノラクトンが死亡率減少をより広汎な同時代対象の心不全・駆出率減少例、特にNYHA I-IIに対しても、ネット・ベネフィット適応できるか?

結論から言えばNo! 

相反する報告もあり
心不全:NYHA Class I、IIでもスピロノラクトンにベネフィット認める  2010年 11月 03日 
 さらに、 エププレレノン投与・EMPHASIS-HF試験 (N Engl J Med 2011; 364:11-21)にかかわらず、ガイドラインでは、NYHA III-IVにのみガイドライン記載であった。

結果的には賢明な選択?
だが、左室機能障害心不全:メタアナリシス:糖質コルチコイド受容体拮抗剤は心血管突然死リスク減少効果 2013/03/26 の件も、ネットベネフィットの一つとして考えなければならない。

Association of Spironolactone Use With All-Cause Mortality in Heart Failure
A Propensity Scored Cohort Study
Lars H. Lund, et. al.
Circulation: Heart Failure. 2013; 6: 174-183 Published online before print February 5, 2013, doi: 10.1161/​CIRCHEARTFAILURE.112.000115 


前向き18,852名(71± 12歳、女性 28%)、NYHA I-IV(駆出率 < 40%)

スウェーデンの登録データ( Swedish Heart Failure Registry 、 2000 〜 2012 )
スピロノラクトン n=6551、 非使用 n=12301
スピロノラクトン治療 propensityスコアを41共役要素から導いた

propensity score補正、propensity scoreマッチ化Cox回帰評価

感度・残存共役要素解析施行、NYHA I-II、III-IVサブグループ分け分析

1年生存率は、治療 83% vs 無治療 84% (log rank p < 0.001)

propensity score補正後、スピロノラクトンハザード比は、1.05 (95% 信頼区間, 1.00-1.11 ; p = 0.054 )

スピロノラクトンはNYHA状態と相互作用がある ( p < 0.001)
NYHA I-IIでは、propensity score補正後、ハザード比は、 1.11( 95% 信頼区間, 1.02-1.21, p = 0.019)

左室機能障害心不全:メタアナリシス:糖質コルチコイド受容体拮抗剤は心血管突然死リスク減少効果





Effects of Mineralocorticoid Receptor Antagonists on the Risk of Sudden Cardiac Death in Patients With Left Ventricular Systolic Dysfunction
A Meta-analysis of Randomized Controlled Trials
Srinivas R. Bapoje, et. al.
Circulation: Heart Failure. 2013; 6: 166-173 Published online before print February 12, 2013, doi: 10.1161/​CIRCHEARTFAILURE.112.000003











前向きパーキンソン病調査:軽度認知機能障害合併はその後の認知症リスク高いが、

パーキンソン病におけるMCIの意義

住民ベース研究: ノルウェー ParkWest研究

認知症発生率
MCIなしのパーキンソン病の場合、3年後、1000人年あたり20.5例
MCIありのパーキンソン病の場合、3年後、1000人年あたり98.9例
これは確認的な知見だが・・・

”MCI → 認知症”という一方向ではないということも判明し、価値ある知見である。

Prognosis of Mild Cognitive Impairment in Early Parkinson Disease
The Norwegian ParkWest Study
Kenn Freddy Pedersen, et. al.
JAMA Neurol. 2013;():1-7. doi:10.1001/jamaneurol.2013.2110.
 ベースラインでMIC有りのパーキンソン病患者は、MCI無しの場合に比べ、相対リスク 39.2 [ 95%CI, 5.2-296.5](10/32 [27.0%] vs 1/45 [0.75%])
 ベースラインMCIのうち、フォローアップ中正常状態へ回帰 8/37(21.6%)
 1年後受診MCIは認知症発症リスクと相関(認知症発症率 10/36[27.8%] vs 正常認知機能回帰 7/36 [19.4%]
 しかし、ベースライン・1年後受診時持続MCI 22名中、認知症発症10 45.5%)、正常回帰例はわずか2名(9.1%)

単回アセトン呼気分析(SIFT-MS):非代償性心不全評価

リサーチ・レター として報告

Single Exhaled Breath Metabolomic Analysis Identifies Unique Breathprint in Patients With Acute Decompensated Heart Failure
Michael A. Samara,  et. al.
J Am Coll Cardiol. 2013;61(13):1463-1464. 
doi:10.1016/j.jacc.2012.12.033
ion-flow tube mass-spectrometry (SIFT-MS)による呼気アセトン濃度検出
25名の連続患者・非代償性心不全と対照の前向き研究で、 患者群で 811 /pb (vs 対照 187, p = .001)

pentaneでも同様に中央値 40 ppb vs 22 ppb, p = 0.03
 

Selected ion-flow tube mass-spectrometry (SIFT-MS)というのは、定量的マススペクトロメトリと高流量チューブ技術の組み合わせで、呼気分析に最適で、試料準備や校正が不要ということでも簡便性が期待できるとのこと
量産されればうれしい

以上は、呼気アセトン検出が、非代償性心不全の迅速検出に役立つかもしれないというものだが、いわゆる、呼気VOCs測定は時折話題になり、がん呼吸器疾患などの報告が目立つ。
犬によるがん嗅ぎ分け ・・・ 安定的判断可能 2011年 08月 19日
肺がん:組織型の鑑別に においセンサー利用 2010年 01月 14日
呼気中のcondesate pH:喘息急性悪化のみ低下 COPDでみられず 2010年 12月 21日

比べると、心不全評価報告は少ないようだが、呼気アセトンをマーカーとする報告がなされていた。
Exhaled Acetone as a New Biomarker of Heart Failure Severity
Fabiana G. Marcondes-Braga, et. al.
Chest Aug 2012, vol. 142 (2) : 457-466
ethane 、 1-pentane、 isoprene、 acetone、 sulfur-containing compounds (hydrogen sulfide and carbonyl sulfide)が候補で、酸化ストレス後の体がん循環終末としてアセトンなどが表出されると書かれている。

対象疾患の広がりや技術拡大を含め、VOCsの臨床面利用がさらに広がるのかもしれない。

閉経前女性:内臓脂肪増加は骨質劣化と関連

やせが骨粗鬆症や骨折のリスク要素ということから考え、肥満はbone strength(骨強度)に好影響を与えると考えがちだが、肥満関連、特に、内臓脂肪により、骨密度減少そして骨折リスク増加と関わる可能性があることが判明した。

組織レベルでは、中心性肥満閉経前女性では、骨質とstiffness悪く、骨形成速度著明低下。

健康閉経前女性、40歳の骨密度と体幹脂肪DXA測定関連性と、QCT(定量的CT)によるサブセット評価、骨微小構造、stiffness、リモデリング、骨脂肪を標識transiliac bone biopsy評価

Abdominal fat is associated with lower bone formation and inferior bone quality in healthy premenopausal women: a transiliac bone biopsy study
Adi Cohen , et. al.
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism March 20, 2013 jc.2013-1047
BMIは20.1〜39.2 kg/m2
DXA体幹脂肪はBMI、QCT評価内臓脂肪と直接相関(r=0.78, p < 0.001、 r=0.79, p <0.001))

体幹脂肪最小3分位比較で、最大3分位は骨質悪化
骨量骨容積( 20.4 ± 8 vs 29.1 ± 6.1 %; p = 0.01)減少、 stiffness減少 (433±264 versus 782±349 MPa;  p = 0.01) 、cortical porosity(皮質骨密度)高値  (8.8±3.5 versus 6.3±2.4%; p = 0.049)

骨形成速度:Bone formation rate (0.004±0.002 versus 0.011± 0.008 mm2/mm/year;  p = 0.006) は、最大3分位群では64%低下


体幹脂肪は、骨量骨容積・骨形成速度と逆相関 (r=-0.50;  p < 0.01、r = -0.50 ;  p  < 0.001)

体幹脂肪と骨容積の相関性は年齢、BMI補正後も有意差持続


骨形成速度と、破骨細胞・贈骨細胞のturnover誤解されそう・・・

noteへ実験的移行

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