2012年3月29日木曜日

インフルエンザ・ワクチンは、ナルコレプシー発症リスク著明増加?

 反ワクチングループには反ワクチン洗脳のための好材料、久しぶりに登場・・・と、皮肉的にいいたくなるが、日本でもナルコレプシーとの関連、検討必要だろう。

"AS03 adjuvanted AH1N1 vaccine associated with an abrupt increase in the incidence of childhood narcolepsy in Finland" 7Nohynek H, et al PLoS ONE 2012; 7(3): e33536; DOI: 10.1371/journal.pone.0033536.
コホートのワクチンカバーは75%

プライマリ分析で、ナルコレプシー確認67名の内、46名ワクチン接種、7名がワクチン接種せず

10万人年に対する、ナルコレプシー発生は、ワクチン群 9.0 非ワクチン群で0.7

rate ratioは、12.7 (95% 信頼区間 6.1–30.8)

ワクチンのナルコレプシー発症寄与リスクは、4-19歳で、1:16,000

無症候性甲状腺疾患

抜き書き

Subclinical thyroid disease
The Lancet, Volume 379, Issue 9821, Pages 1142 - 1154, 24 March 2012
 

無症候性甲状腺機能亢進症

【検査】
TSH濃度 < 0.1 mU/L持続する場合には画像診断が必要

123Iもしくは99mTcでautonomy領域確認が必要

カラー流量ドプラーエコーでの多結節性所見は自己免疫性を示唆
抗TSH受容体抗体はGraves病示唆
針吸引細胞診考慮は、エコー上結節疑い例に行うべき
閉経後女性は、骨塩定量を必ず考慮すべき(骨粗鬆症の状態では治療奏功しやすい)
心房細動存在下では抗凝固療法を考慮すべき

【TSH < 0.1 mU/L 状態での治療】
65歳を越える場合は、toxic multinodular goitre あるいは孤立性autonomous solitary goiterによる二次性の場合、自然消退期待できず、放射性ヨード治療すべき
Graves病の場合、薬物、放射性ヨードどちらかの適正選択を
特異的治療されない場合、心房細動リスク状態患者ではβ遮断剤使用、骨粗鬆症閉経後女性ではカルシウムサプリメントおよびビスフォスフォネート治療が代替的

American Thyroid Association guidelineでは、非対照トライアルを根拠に、65歳未満での有症状治療を推奨。65歳未満無症状患者で、心血管リスク無し、閉経後女性では、治療ベネフィットのエビデンスはない。
しかし、 toxic multinodular goitreあるいは solitary toxic adenomaは、Graves病に比べても、甲状腺機能亢進症発症リスクがあり、放射性ヨード治療が考慮されるべきである。
手術も、大きなgoitreでsubclinical hyperthyroidismあるいは圧迫症状ある場合は オプション。

未治療患者は6-12ヶ月毎にフォローアップ必要。

また、 “multinodular goitre and subclinical hyperthyroidism”は、ヨード誘起性甲状腺中毒のリスクがあることに注意。ヨード造影剤などを極力避ける。

【TSH 0.1-0.4 mU/L患者治療】
ちょっとTSH濃度が抑制されているだけの患者では治療の必要は無い。進行しているにかかわらず、正常甲状腺機能となる患者がいるので注意は必要。
ベネフィットのエビデンスはないが、65歳超の高齢者では心房細動リスク増加の観点からこの年齢群ではクリアカットな異常が示された場合 治療対象の可能性ある。結節性甲状腺疾患の場合、Graves病(抗甲状腺薬)や放射性ヨード治療12ヶ月間が考慮される。


Hyperthyroidism and Other Causes of Thyrotoxicosis: Management Guidelines of the American Thyroid Association and American Association of Clinical Endocrinologists
  Thyroid. June 2011, 21(6): 593-646. doi:10.1089/thy.2010.0417. 




無症候性甲状腺機能低下症のスキーム
Scheme for treatment of subclinical hypothyroidism

【3—4·5 mU/Lの患者】
TSH濃度がこの範囲の場合、 顕性甲状腺機能低下症(overt hypothyroidism)発症率増加、故に、定期的甲状腺機能検査モニターすべきで、特に、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体陽性の場合注意。
妊娠中は、1st trimesterでは、> 2.5mU/L、2nd trimester中は 3.1-3.5 mU/Lが軽度甲状腺機能低下症を示唆する。
妊娠女性では、非妊娠女性でのTSH濃度上限範囲にあるなら、治療すべき。
妊娠早期の自己免疫性甲状腺炎正常甲状腺状態女性では、妊娠中血中TSH濃度増加に関し監視が必要。治療により流産減少するという前向きランダム研究( J Clin Endocrinol Metab 2006; 91: 2587-2591.)の知見を理由として、 甲状腺ホルモン治療すべき。
【軽症 subclinical hypothyroidism,TSH 濃度 5—9 mU/L】
無症候性甲状腺機能低下症(Subclinical hypothyroidism)は、若年・中年で65歳超より心血管リスク増加と関連し、この年齢群でのもっとも補正すべき。
61-80歳では、多くは甲状腺ホルモン不足を示唆したものではないため、5-8mU/L程度の血中TSH増加軽度ならベネフィットは認めない
85歳を越えた場合、TSH濃度増加は死亡率減少と相関している。
新規発症症状、うつ、甲状腺腫、陽性抗甲状腺抗体、心血管リスク要素(eg. 高血圧、コレステロール高値、インスリン抵抗性、糖尿病、拡張性機能障害)は治療ベネフィットの要素。
レボサイロキシン治療で有効性あるとしたら、治療は継続し、血中TSH濃度を6-12ヶ月毎に、正常範囲に維持するよう評価すべき。
顕性甲状腺機能低下発症可能性があり、フォローアップ中、レボサイロキシン増量必要となる。
クリアカットなベネフィット降下がない場合、補充療法は中止すべきで、血中TSH濃度を1年毎評価すべき。
エビデンス上、治療ベネフィットは65歳を越える、TSH 4.5-10 mU/Lで減少。
レボサイロキシン治療開始の場合、冠動脈既存疾患あれば、低用量25-50μg/日から開始すべき
高齢者(75歳以上)や超高齢者(超高齢者)では 、無症候性甲状腺機能低下症での治療は推奨されない。理由は、うっ血性心不全リスク増加とは別に、症状がある場合でも、レボサイロキシン治療が認知機能やQOL改善につながらないからである。

subclinical hypothyroidism で TSH   10 mU/L 以上】
TSH濃度高値患者は有意に顕性甲状腺機能低下症発症リスク高く、自覚症状や心血管疾患尤度増加する。このような患者には、レボサイロキシン治療を推奨。
TSH 10mU/Lを越える場合、高齢者(75歳以上)や超高齢者(超高齢者)で個別検討。70歳超の場合TSH目標を高く設定し、4-7mU/Lなどを疑似生理的濃度と設定する。
高齢者において、レボサイロキシン過剰治療は、重度心血管、筋骨格系合併症故、避けなければならない。

【検診】

治療ベネフィットが多くの場合不明であるため、無症候性甲状腺機能低下症の住民検診は議論のあるところである。
専門学会・専門委員と、検診推奨お相違があり、高リスク群症例発見、特に、妊娠女性で未診断例に対する取り組みがadvocateされている。
症例検討では、妊娠女性の30%まで未診断例があるが、ランダムトライアルではuniversal screeningでは症例毎検討に比べ副事象イベント減少効果なかった。
予備的プラシーボ対照化トライアルでは、 中年・高齢者では、わずか1%のQOL改善のみ。


Look AHEAD 研究:2型糖尿病肥満患者でのライフスタイル変容とmobility

ある局面から見れば、2型糖尿病もCOPDも、心不全も・・・運動障害と関連する疾患と考えることができる。日本の臨床なんたら整形なんたら学会とやらが運動機能だけに着眼した概念であるロコモなんたらを喧伝しているのをみるにつけ内科医としてはなんだかなぁ・・・と思う日々。


2型糖尿病成人はmobility障害を有し、年齢と共に、それは増加する。強化ライフスタイル介入により、それらの患者のmobilty減少を緩徐化する可能性がある。




2型糖尿病肥満患者でのライフスタイル変容とmobility

Lifestyle Change and Mobility in Obese Adults with Type 2 Diabetes
W. Jack Rejeski,et. al.
for the Look AHEAD Research Group
N Engl J Med 2012; 366:1209-1217March 29, 2012
5145名の過体重糖尿病成人(45-74歳)を、強化ライフスタイル介入 or 糖尿病サポート・教育プログラムに、ランダム 割り付け比較

hidden Markov modelで、disability state特性化し、 mixed-effects ordinal logistic regressionで、機能的衰退の確率推定。
プライマリアウトカムは、自己申告mobilityのlimitation、4年間年次報告

4年時点

ライフスタイル介入群 重度disability 517/2514 (20.6%)、良好mobility  969 (38.5%)
サポート群(対照群) 重度disability 656/2502 (26.2%) ,良好mobility  798 (31.9%)

ライフスタイル介入群では、mobility喪失リスクは、サポート群に比べ48%の相対的減少  (odds ratio, 0.52; 95% confidence interval, 0.44 to 0.63; P<0.001)

 体重減少・フィットネス改善のあった場合、上記2つの因子である障害・運動機能をともに有意に改善   (P<0.001 for both variables)

副事象イベントは、筋肉骨格筋症状軽度頻度増加 
 最後の副事象イベントに関して筋骨格筋系の専門医の意見が必要。だが、一部の学会の方は思考狭窄に陥ってると思う。

4価HPVワクチン:HPV関連病変対象者へのワクチンでもその後の発症予防効果あり

 メルクの4価HPVワクチン治験トライアル: NCT00092521NCT00092534

これらHPV vaccine (protocol 013 (FUTURE I)とprotocol 015 (FUTURE II)).の後顧的解析


4価ワクチン(against HPV types 6, 11, 16, 18)と 2価ワクチン (against types 16と18) は、ワクチン前感染認めないgrade II-III、腺癌予防にかなり効果的。4価ワクチンも 陰部びらん・外陰部上皮および膣部新生物予防2効果的であることが示されている。

ワクチン接種時すでに病変のある対象者に、それら関連病変さらなる発症に効果があるかどうか?



17622名、15-26歳の被験者のうち、子宮頚部手術・genital wart(陰部疣贅) vulvar intraepithelial neoplasia(外陰部上皮内新生物)、vaginal intraepithelial neoplasia(膣部上皮内新生物)といった診断を受けた2054名

診断後60日からのHPV関連疾患のリスク状態の100人年エンドポイント数表現

Effect of the human papillomavirus (HPV) quadrivalent vaccine in a subgroup of women with cervical and vulvar disease: retrospective pooled analysis of trial data
BMJ 2012; 344 doi: 10.1136/bmj.e1401 (Published 27 March 2012) Cite this as: BMJ 2012;344:e1401

ワクチン接種者 587名、プラシーボ 763名の子宮頚部手術施行

その後のHPV関連疾患発生 ワクチン 6.6 vs プラシーボ 12.2
(ワクチンによる減少   (46.2% reduction (95% 信頼区間 22.5% ~ 63.2%))

ワクチンは有意に頚部の高度病変リスク減少に関与(64.9% (20.1% to 86.3%)

陰部びらん・外陰部上皮および膣部新生物診断 ワクチン 229、 プラシーボ 476
それぞれのHPV関連疾患の続発発生頻度は20.1、31.0 (35.2% reduction (13.8% to 51.8%))
結論としては、手術後HPV関連疾患発症をワクチンで有意に減少。


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