2013年6月20日木曜日

パーキンソン病:H.ピロリ菌除菌で多数の症状改善 ・・・ 一般化できるのか?

除菌12週時点で、レボドパの onset時間減少、 ON time期間増加なども観察される。

ただ、open-labelなためエビデンスレベルの高い研究ではないのだが、筆者等は倫理性から困難と述べている。興味ある新知見だけど・・・

Mohamed Ibrahim, N et al, "An open label, single arm study on the effects of H. Pylori eradication in Parkinson's disease" MDS 2013.
参考:http://www.medpagetoday.com/MeetingCoverage/MDS/39967

76名の連続パーキンソン病患者にUBTを用いたH.pylori検査し、27名で陽性
1週間除菌治療をオープンラベル単独群研究施行
倫理的でないという理由でプラシーボ群設定しなかった

ベースラインで、H. pylori感染有無で差を認めず

Unified Parkinson's Disease Rating Scale 
感染患者 85.05 vs 非感染患者 63.98 , p = 0.005

Parkinson Disease Questionnaire score
http://ageing.oxfordjournals.org/content/26/5/353.long
感染患者 50.98 vs 非感染患者 32.55, p < 0.001

"onset"、"ON" t回数 について、感染 vs 非感染で ベースラインで有意差なし

H. pylori陽性患者を6週後再検査、除菌後12週で再検査


Total Unified Parkinson's Disease Rating Scale スコアは、ベースラインの85.05から 6週後 72.05、12週後の 66.71と減少 ( p < 0.001)


サブドメインにおいて、ADLはベースラインスコアの 21.67から 6週後 19.14、 12週後 18.43に減少 p = 0.001

運動器検査において、ベースラインスコア 50.62から 6週後41.43、12週後37.00と減少 p < 0.001

治療ドメインの合併症では、ベースライン 7.86から、6週後 6.76、6.38と減少 p = 0.009

Parkinson's Disease Questionnaireでは、治療は多くのドメインで有意にスコア減少。





反復尿路感染・閉経後女性:エストロゲン補充2週間で尿路感染防御的に働く・・・機序は抗菌ペプチド発現増加・細胞接合強化作用

短期的エストロゲン治療で、尿上皮細胞性変化をもたらし、尿路感染防御的になる

エストロゲン補充2週間で、抗菌ペプチドの発現増加により、防御メカニズムとして働く。反復尿路感染閉経後女性では、2週間程度のエストロゲン補充は、合理性があるのかもしれない。


Estrogen Supports Urothelial Defense Mechanisms
Sci Transl Med 19 June 2013:  Vol. 5, Issue 190, p. 190ra80 
Sci. Transl. Med. DOI: 10.1126/scitranslmed.3005574

疫学的にもエストロゲンが尿路感染に病因的に働く、しかし、その基礎づけメカニズムは不明。閉経後のエストロゲン補充にて再発感染リスク減少が知られている。

エストロゲンが宿主・病原体相互作用へ影響を与え、尿路感染病態形成後の経過に関わる可能性を検討。

閉経前・閉経後女性からの尿路上皮細胞をエストロゲン補充前と2週間後検討、さらに、大腸菌尿路感染マウス感染モデルでのエストラジオールの影響を検討。

ヒト尿路上皮cell line2つで、エストロゲンによる細胞上皮防御メカニズム同定。エストロゲンは抗菌ペプチドの発現を誘導し、尿路上皮の抗菌能を促進し、細菌増殖を制限する。
加えて、エストロゲンは、細胞・細胞相互蛋白の発現・再配列を促進し、感染中の上皮細胞の過度な損失を防御する。

これら2つの作用で、細菌の尿路上皮深部層到達を防御し、感染再発の貯蔵元としての働きを防止する。

この研究により、閉経後女性へのエストラジオールのベネフィットメカニズムの一部が示された。反復尿路感染閉経後女性でのエストロゲン投与を支持する知見である。


やっと保険収載となった、夏型過敏性肺臓炎のための検査

某大学も沈降抗体してくれなくなり、診断困難だった、この病気





新たに保険適用が認められた検査
平成25531日 保医発05311号(平成2561日適用)
測定項目
抗トリコスポロン・アサヒ抗体
商品名
トリコ・アサヒ Ab チェック
区分
E3(新項目)
測定方法
ELISA 法
主な測定目的
血清中の抗トリコスポロン・アサヒ抗体の検出
(夏型過敏性肺炎の診断の補助)
参考点数
D014 自己抗体検査
25 抗アセチルコリンレセプター抗体 900
関連する 留意事項の 改正
※「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(平 成 24 年3月5日保医発 0305 第1号)の別添1(医科診療報酬点数表に関 する事項)の第2章(特掲診療料)を以下のように改める。
第3部検査
D014 自己抗体検
(1)~(19) 略
(
20) 抗トリコスポロン・アサヒ抗体
ア 抗トリコスポロン・アサヒ抗体は、区分番号「D 014」自己抗体検査の「25」抗アセチルコリンレ セプター抗体の所定点数に準じて算定する。
イ 当該検査は、ELISA法により、夏型過敏性肺 炎の鑑別診断を目的として測定した場合に算定で きる。なお、鑑別診断目的の対象患者は、厚生省特 定疾患びまん性肺疾患調査研究班による「過敏性肺 炎の診断の手引と診断基準」により、夏型過敏性肺 炎が疑われる患者とする。
(21) 略
(変更箇所下線部)
(日本医師会医療保険課)




過敏性肺臓炎
http://bme.ahs.kitasato-u.ac.jp:8080/docs/qrs/imd/imd00085.html

2型糖尿病:低ゴナドトロピン性性腺機能低下症合併 テストステロン注射でインスリン感受性改善・脂肪から除脂肪体重への転換促進

私は個人的には”男性更年期”って言葉が大嫌いだ

蛋白同化ホルモン投与ってのは、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の確認があって初めて行われるべきだ

2型糖尿病の中で、性腺ホルモン機能低下を合併した場合に、その補充が病態改善に役立つかもしれないという報告。ただ、心血管合併症や多臓器への影響はなにも語られてないので、解釈に注意が必要と思う

低ゴナドトロピン性性機能低下と2型糖尿病合併男性へのランダム化対照化トライアル
プラシーボ比較で、テストステロン注射6ヶ月後インスリン感受性改善の報告(P=0.01)



Dhindsa SS, et al "Testosterone replacement decreases insulin resistance in hypogonadal men with type 2 diabetes" ENDO 2013; Abstract OR22-

http://www.medpagetoday.com/MeetingCoverage/ENDO/39965

2型糖尿病81名の男性
ベースラインで、性腺機能低下症では、低テストステロン症の無い場合より、BMI高値 、脂肪量多い
上記ごとく、2型糖尿病+低ゴナドトロピン性性腺機能低下症では、性腺機能低下症のない場合に比べインスリン感受性有意に低い(P=0.001)、そして、体重・年齢補正後もこの関連性は不変(P=0.017)

6ヶ月間テストステロン vs プラシーボにランダム化
治療後、テストステロン値は、治療群で有意増加 256 ng/dL → 562 ng/dL, p = 0.001
プラシーボ群では有意差無し 
遊離テストステロン劇的に増加 4.1 nmol/L → 12.4 nmol/L p < 0.001
プラシーボでは有意変化認めず

筆者等は、インスリン感受性(euglycemic clump測定)でインスリン感受性25%(p=.01)と劇的に改善したと主張。プラシーボではインスリン感受性有意差無し。 
体重、ウェスト/ヒップ比は両群変化認めず、総除脂肪体重(lean body mass)はテストステロン患者では有意に増加 (p=0.004)
同時期、脂肪量は有意に減少 (p=0.02) 
脂肪2kgが、除脂肪体重に置き換わったわけである 
平均インスリン濃度は薬物治療群でインスリン感受性とともにインスリン濃度低下 (11.6 → 7.1, p < 0.05)、 HOMA-IRも有意減少 (3.5 → 2.8, p < 0.05)

脂質濃度は両群で変化せず、しかし、テストステロン群で有意に性的欲求が高まった (P=0.05)

インフルエンザワクチンによる発症回避数・受診数・入院数有効性報告 若年成人でも確認:CDC研究者からの報告

2005-2011年の6年間にインフルエンザシーズン中110万名から500万名の予防効果
老人での有効性高いこととと、若年成人での有効性を強調した報告。


インフルエンザワクチン・プログラムのゴールは、インフルエンザ関連疾患アウトカム減少である。故に、インフルエンザの時間経過によるburden減少、年齢毎推定することで、米国内でのインフルエンザワクチンの価値を真に理解することが可能となるはず。特に最もベネフィットをもたらすのがどのエリアかが確認できるはず。

ということで、サーベイランスデータを用いて、副事象アウトカム減少、疾患予防区分を定義としてインパクトを推定

6年間研究期間中を推定し、ワクチンにより減少したはずのインフルエンザ数は、 
2006-2007年シーズンで、約110万人(95% 信頼区間 (CI), 60-170万人) 
2010-2011年シーズン中 500万人(95%CI, 290-860万人) 
入院減少効果は、最小で2009-2010年シーズン 7700(CI 3700-1,4000)、最大で2010-2011年シーズン 4万400(CI 20,800-73,00)


予防領域は年齢群、時間経過横断的にばらつきあり 
研究期間中最大予防領域は2011-2011年で、ワクチンカバーがパンデミック後ということで広がったためと思われる。 
米国内インフルエンザワクチンプログラムで、averted case、すなわち、リスク回避症例数を用いた表現で、医療ベネフィットを示した。具体的には、症例数、受診数、入院数。 
結果、ワクチン接種カバー率増加による付加的疾患予防ポーテンシャルは、非老人成人で強調される。ワクチン有効性は特に老人で高い。


"Influenza illness and hospitalizations averted by influenza vaccination in the United States, 2005"
Kostova, et al
PLOS ONE 2013; 8(6): e66312.


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