2012年11月28日水曜日

脂質異常症中高年:運動+スタチンは、それぞれ単独より、死亡リスク減少効果有り

運動、スタチン治療ともに、脂質異常症を有する中年・高齢者の死亡リスクを減らすわけだが、スタチン治療と運動量増加は、それぞれ単独より、さらなる死亡リスク減少をもたらす。


Interactive effects of fitness and statin treatment on mortality risk in veterans with dyslipidaemia: a cohort study
The Lancet, Early Online Publication, 28 November 2012

10,043名の登録者(平均年齢 58.8歳、SD 10.9歳)
フォローアップ中央値10.0年(IQR 6.0-14.2)年間で、2318名死亡、平均年間死亡率は1千あたり22

死亡リスクは、スタチン服用群 18.5%(935/5046) vs 非服用群 27.7(1386/4997)(p<0.0001)
スタチン服用者のうち、死亡率はフィットネスにより減少
9MET超(n=694)の高運動量の場合は、5MET以下の低運動量(HR 1; n=1060)に比べ、ハザード比は、0.30(95%CI 0.21-0.41 ;p<0.001)
スタチン非服用の場合は、最小運動量(n=1024)HRは 1.35 (95% CI 1.17—1.54;p<0.001)

ジゴキシン:心房細動に於ける死亡リスク増加をもたらす!

“ジゴキシン”は、ほんとうは“ヂゴキシン”が正しい訳か・・・ それと、ジゴキシンは、周期的に悪者になるなぁ わたしが医者になって3周期眼くらいでは?

ジゴキシンは、心房細動の“心拍コントロール”治療として用いられているが、心房細動患者での死亡率を増加するという報告。

全死亡率で41%増加と関連するという報告


ジゴキシン自体が死亡率増加に関与するか、合併症故に死亡率が高い状況でのより重症例処方だからか不明で、心房細動患者のジゴキシンと死亡率の関連検討目的が必要であったと序文。

Increased mortality among patients taking digoxin-analysis from the AFFIRM studyEur Heart J (2012) doi: 10.1093/eurheartj/ehs348 First published online: November 27, 2012

ジゴキシンと死亡率の相関をAF Follow-Up Investigation of Rhythm Management (AFFIRM) trial登録患者で、多変量Cox比例ハザードモデル評価。

検討は、全患者と、心不全(HF)の有無(駆出率<40 br="br">
ジゴキシンは全原因死亡率増加と相関 [estimated hazard ratio (EHR) 1.41, 95% 信頼区間 (CI) 1.19–1.67, P < 0.001]、同様に、心血管死亡率増加と相関  (EHR 1.35, 95% CI 1.06–1.71, P = 0.016)、不整脈による死亡率増加とも相関(EHR 1.61, 95% CI 1.12–2.30, P = 0.009)

全死亡率は、心不全の有無にかかわらず、ジゴキシンにより増加 (心不全無し EHR 1.37, 95% CI 1.05–1.79, P = 0.019 、 心不全有りEHR 1.41, 95% CI 1.09–1.84, P = 0.010)

全死亡、心血管死亡に関しジゴキシン-年齢有意相関なし (P = 0.70、P = 0.95)


血中濃度評価での検討となるランダム化トライアル( DIG study [N Engl J Med 1997; 336: 525–533],)では、negative effenct認めてない。
上記報告との整合性に関して、まだ議論が必要だろう。

神経ホルモン・inotropicな異常はジゴキシンで改善する部分はあるだろうが、それ以上に、安全閾値が狭いことで、心室性不整脈・重度徐脈性不整脈をもたらす危険性があると筆者らは述べている。
未検討共役要素による過剰推定の可能性もある。 感度分析でも一定程度以上の大きな影響が見られたため、やはり、重く受け止めるべきであろうとのこと。


虚血証拠のない心原因死亡は最終受診日のジゴキシン使用の56%と多い  (37% versus ジゴキシン無し27% , P=0.007)。がん、肺、非心原性原因死に関してはジゴキシン使用とは関連せず。


標準臨床ケア、正確なジゴキシン利用アドヒアランス期間がルーチンに記録されてない研究のため正確なメカニズム推定困難。

あくまでも可能性であるが、ジゴキシン濃度の厳格な検査が必要。

参考:http://www.medpagetoday.com/Cardiology/Arrhythmias/36135

“ジゴキシンは最小量にしてるので血中濃度測定を怠り気味”の場合は、あらためて注意が必要だろう。公的医療保険監視側にも、この情報は重要だろう。悪徳査定は患者にリスクを与える。

左室駆出率温存型心不全:RAS拮抗治療の根拠は不充分

駆出率温存型心不全(Heart failure with preserved ejection fraction (HFPEF))
駆出率低下型心不全(heart failure with reduced ejection fraction (HFREF))



駆出率がさほど落ちてない心不全に対する治療戦略はまだ確定的ではない


以下の報告の結論は、心不全(駆出率温存型)の治療検討において、ACE阻害剤、ARB(RAS拮抗剤)の3つのランダム化トライアルの検討によれば、いづれも、プライマリエンドポイントに達せず、選択バイアスがあり、検知パワー不足と判断された。

 Association Between Use of Renin-Angiotensin System Antagonists and Mortality in Patients With Heart Failure and Preserved Ejection Fraction
Lars H. Lund, et. al.
JAMA. 2012;308(20):2108-2117. doi:10.1001/jama.2012.14785.
2000-2011年のSwedish Heart Failure Registry(64病院・84外来クリニック 41 791 登録患者)の前向き検討

HFPEF 16216名(駆出率 40%以上、平均[SD]年齢 75[11]歳、女性 46%)のうち、RAS拮抗剤治療(n=12,543)、非治療(3,573)

RAS拮抗剤使用Propensity scoreは43変数を導びいた。

RAS拮抗剤と全死亡率の相関を、1:1の年齢・propensity scoreマッチ化コホートと、連続共変数としてのpropensity scoreで補正した全体コホートで評価

一致性評価のため、HFPEF患者をRAS拮抗剤投与量に従い、年齢・propensity scoreマッチ化解析し、HFREF(EF<40 br="br">
主要アウトカムは、全死亡率


マッチ化HFPEFコホートで、1年生存率は、治療群 77%(95%CI、75-78%)、 非治療群 72%(95%CI 70-73%)
ハザード比  0.91 (95% CI, 0.85-0.98; P = .008)

全HFPEFコホートでは、1年間粗生存率は、治療群 86% (95% CI, 86%-87%)、 非治療群  69% (95% CI, 68%-71%)
propensity score–補正 HR  0.90 (95% CI, 0.85-0.96; P = .001)


HFPEF投与量解析
目標投与量50%以上の場合の、対無治療比較HRは、 0.85 (95% CI, 0.78-0.83) (P < .001)
目標投与量50%未満の場合の、対無治療比較HRは、 0.94 (95% CI, 0.87-1.02) (P = .14)

年齢・propensity scoreマッチ化HFREF解析で、HRは 0.80 (95% CI, 0.74-0.86; P < .001)

アルドステロン拮抗剤:拍出量低下心不全患者への退院時処方は必ずしも死亡率低下せず 

退院時アルドステロン拮抗剤処方の適応は慎重に
とくに、駆出率低下心不全高齢者は良い適応だが、退院後カリウム値チェックを!

・・・ということか!

時にみられる、退院時30日処方どころか、60日処方というぶったげた退院処方は、一般論としても批難されるべきだろう!


以下の論文の結論は・・・

アルドステロン拮抗剤退院時開始は、死亡率・心血管疾患原因再入院改善効果と関連せず。 だが、心不全・駆出率低下高齢者においては心不全再入院改善効果を示す。 高カリウム血症による再入院リスク増加が有意である。”

駆出率正常型では無く、低下した心不全患者へのアルドステロン拮抗剤の臨床的エビデンスの問題


Associations Between Aldosterone Antagonist Therapy and Risks of Mortality and Readmission Among Patients With Heart Failure and Reduced Ejection Fraction
Adrian F. Hernandez, et. al.
JAMA. 2012;308(20):2097-2107. doi:10.1001/jama.2012.14795.

登録クライテリア合致5887名で、平均年齢 77.6歳、退院時アルドステロン拮抗剤使用者は18.2%、1070名

累積発生頻度 3年後
死亡 治療群 49.95 vs 51.2% (P=.62)
心血管再入院 63.8% vs 63.9% (P=.65)
心不全再入院 38.7% vs 44.9% (P< .001)

30日時点高カリウム血症再入院 2.9% vs 1.2%(P<.001)
1年内再入院  8.9% vs 6.3% (P = .002)

治療確率の逆加重法後、死亡率は有意差認めず (hazard ratio [HR], 1.04; 95% CI, 0.96-1.14; P = .32)、同様に、心血管再入院 (HR, 1.00; 95% CI, 0.91-1.09; P = .94)にも有意差認めず


心不全再入院は、3年後治療患者において低率 (HR, 0.87; 95% CI, 0.77-0.98; P = .02)
高カリウム血症関連再入院は、アルドステロン拮抗剤により、30日後 (HR, 2.54; 95% CI, 1.51-4.29; P < .001)、1年後 (HR, 1.50; 95% CI, 1.23-1.84; P< .001)と高率



"inverse weighting"とは、IDW(Inverse Distance Weighting):逆距離加重法のことだろうか?



スピロノラクトンだけじゃなく、“ACE阻害薬・ARB投与で、血中AII濃度は抑制できていても、血中アルドステロン濃度が減少しないというエスケープ現象が知られているが、エプレレノンの併用でこの問題が回避できる可能性がある”ということでセララが宣伝されているがやはり注意が必要だろう。

現に、ベネフィットリスクバランスがとれているか、今一つ、臨床で、吟味が必要と思う。

noteへ実験的移行

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