2012年7月19日木曜日

気管支拡張:民族により原因頻度が異なる

原因が多くの場合特発性である気管支拡張に関する報告は、単一住民で行われることが多い。気管支拡張の病因を様々な米国住民の患者比率で検討し、民族により異なるか、検討


Bronchiectasis in a Diverse US Population: Effects of Ethnicity on Etiology and Sputum Culture
Pamela J. McShane; Edward T. Naureckas; Mary E. Strek
CHEST. 2012;142(1):159 doi:10.1378/chest.11-1024


ヨーロッパ系アメリカ人 61.6%、 アフリカ系アメリカ人 26.8%、 ヒスパニック系アメリカ人 9.9%、アジア系アメリカ人 2.7%
気管支拡張の原因を93.3%で同定

患者の63.2%で原因を特定
・ 欠損を含む免疫系調整異常 (n=18[[17%])
・ 自己免疫(n=33[31.1%])
・ 血液系悪性腫瘍(n=15[14.2%])
・ アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(n=1[0.9%]) 


関節リウマチ原因の気管支拡張は、アフリカ系アメリカ人で 28.6%、ヨーロッパ系アメリカ人で 6.2%(P<.05)

血液系悪性腫瘍はヨーロッパ系アメリカ人で20.0%、アフリカ系アメリカ人では存在せず(P=.02)
ヒスパニック系比率が多いのは緑膿菌保有で、アフリカ系アメリカ人やヨーロッパ系より多い(P=.01)



気管支拡張は、年齢と共に増加。18歳~34歳だと10万人対4.2から、75歳超では272。気管支部位の拡張を伴う不可逆性の解剖学的変化は、繰り返し炎症、感染のサイクルとなることで気道の構造的障害をもたらす。喀痰産生亢進、繰り返す気道感染、気流制限で、医療コストかさ上げをもたらす。
原因は多岐にわたるが、Pasteurらは3年間の観察で、53%が特発性と考え、Shoemarkらは気管支拡張の原因を同様検討の結果 26%とした。
Pasteur:免疫不全(12)、嚢胞性線維症(4)、Young's syndrome (5)、 ,原発性線毛運動不全症(PCD:Primary ciliary dyskinesia)(3)、誤嚥(6)、汎細気管支炎(1)、congenital defect (1)、 ABPA (11)、関節リウマチ(4)、若年期肺炎、百日咳、麻疹(44) 

Shoemark: 感染後(52)、原発性線毛運動不全症(PCD:Primary ciliary dyskinesia)(17)、ABPA(23)、免疫不全(11)


中国人、韓国人のびまん性汎細気管支炎と思われる例を経験した。原発性線毛運動不全を幻覚に除外してるわけでないのが歯がゆいが・・・

COPD患者評価ツール CAT : 急性増悪、リハビリテーション後のどう変化するか!

St. George Respiratory Questionnaire (SGRQ)や Chronic Respiratory Questionnaire (CRQ) は、スパイロメトリーからの情報を補完し、COPD健康状態を評価するのに役立つもの 。しかし、臨床上のルーチン評価には使用されてない。なんせ、複雑で、時間がかかりすぎるものだから。
 COPD Clinical Questionnaire (CCQ)が、より簡略化したものとして用いることが出来る。

さらに、COPD Assessment Test (CAT)は8項目アンケートで臨床の場でルーチンに用いられ、COPD安定・急性増悪状態評価に用いるものである

CAT:COPDアセスメント・・・頻回急性増悪や肺機能重症化指標として有用らしい 
(2012年6月1日金曜日)






簡単なインストルメントで、ルーチンの医療受診下で健康状態評価として信頼できるものである


臨床的によく見られる状況、急性悪化後やリハビリテーション後などでどう変化するか検討した報告。


Study 1では67名の急性増悪中の患者の健康状態の変化を反映するか、
Study 2ではリハビリテーション中の患者でのCATの反応を評価
CATと他のアウトカム指標との関連性を検討

結論から言えば、CATは、時間的経過に基づくCOPD健康状態把握のため、簡便で、再現性、信頼性がたかく、 リハビリテーション後のCOPD健康状態改善を反映し、急性増悪からの回復を反映するものである。このツールをふんだんに使用して疾患重症の様々な状況で一致した測定特性を有するか今後も検討を続ける必要がある・・・という結語


Tests of the Responsiveness of the COPD Assessment Test Following Acute Exacerbation and Pulmonary Rehabilitation
Paul W. Jones; Gale Harding; Ingela Wiklund; Pamela Berry; Maggie Tabberer; Ren Yu; Nancy K. Leidy
CHEST. 2012;142(1):134 doi:10.1378/chest.11-0309

Study 1:CATスコア14日間の改善度は、-1.4±5.3単位(P=.03)
 レスポンダーに限れば -2.6±4.4、非レスポンダーでは、-0.2±5.9

Study2:CAT平均改善 -2.2±5.3(P=0.002)、変化のeffect sizeは -0.33
Chronic Respiratory Questionnaire—Self Administered Standardized (CRQ-SAS)のeffect sizeは -0.02~0.34
6MWDは41±55m 
CATとCRQ-SASドメインスコアはベースラインと相関(r = -0.54 ~ -0.69、 P<0.01)し、呼吸リハビリテーション後の変化に相関(r = -0.39 ~ -0.63)する。


CATとSt. George Respiratory Questionnaireの変化の相関はさほど強くない(r<0.24)で、6WMDとも同様(r<0.11)




【結論】CATは急性増悪に続く健康状態の変化に感度が高く、そして、複雑なCOPD健康状態測定値として呼吸リハビリテーションによる変化を反映する。




溶接煙:非喫煙者の肺機能減少加速

溶接煙暴露ブルーカラーワーカーの肺機能減少加速


Increased Lung Function Decline in Blue-collar Workers Exposed to Welding Fumes
Isabelle Thaon; Valérie Demange; Fabrice Herin; Annie Touranchet; Christophe Paris
CHEST. 2012;142(1):192 doi:10.1378/chest.11-0647
 503名の男性ブルーカラーワーカー


ベースラインの肺機能パラメータは対照群より高い
5年フォローアップで、年齢、pack-year、BMI、パラメータのベースライン補正後、FVC、FEV1非有意な減少(P=0.06、P=0.07)  

FEV1の減少がより加速すること(p=0.46)は、非喫煙者でとくに観察

FEV1減少と溶接煙暴露週間持続時間の暴露反応相関は非喫煙者でみられるが、喫煙者では診られない。

COPD終末期:医師との終末期話し合いはケアの質・健康状況を改善する

終末期ケア議論に強い要望があるに関わらず、COPD患者は医療従事者から話し合いがもたれることは少ない。終末期の話し合いをもった患者がよりよいQOL、医療状態となったかどうか、横断的に検討報告。

結論は、医師と終末期話し合いがもたれたと報告された患者は、QOL自覚・医師への満足度を高かった。終末期ケアの話し合いは、全般的なケアの質・満足度の自覚を改善するものであった。

The Effect of End-of-Life Discussions on Perceived Quality of Care and Health Status Among Patients With COPD
Janice M. Leung; Edmunds M. Udris; Jane Uman; David H. Au
CHEST. 2012;142(1):128 doi:10.1378/chest.11-2222





376名登録、55(14.6%)で終末期話し合いが行われたと報告。

終末期の話し合いがなされた患者では、有意に、最良にイメージされたケアと合致する質の率が多く (OR, 2.07; 95% CI, 1.05-4.09)、医療に対しても満足するものであった  (OR, 1.98; 95% CI, 1.10-3.55)

話し合いは St. George Respiratory Quetionnaire トータル、インパクトスコアで計測された健康状況の悪い人たちでおこなわれたものである。


COPDは、2020年には第3の死亡要因となるとされている。実数としては肺がん患者より多いはずだが、緩和ケアに預かれるのはCOPD患者ではかなり少ない。ATSによるCOPD治療の集約的構成要素とする試みが医療実践に転換されようとしている。
参考:http://www.thoracic.org/clinical/copd-guidelines/index.php
17. Ethical and palliative care issues 



余命6ヶ月を予測するクライテリアは存在せず、提案指標が必要
FEV1予測値<30%COPDへの薬物治療不応性、6-12個月未満の予後推定(ただしさほど単純ではない)


It Takes My Breath Away
End-Stage COPD
http://www.snjourney.com/ClinicalInfo/Systems/Resp/take%20my%20breath%20away.pdf
The profile of patients with a projected prognosis of approximately 1 year includes best FEV1 less than 30% of predicted amount, declining performance status, uninterrupted walking distance limited to a few steps, more than one urgent hospitalization within the past year, right heart failure, and other comorbid diseases, along with the accompanying demographics of older age, depression, and single marital status. ;FEV1<30%、PS低下、一気の歩行は数歩以内、1年間に複数回の入院、右心不全、ほかの合併症、高齢、うつ、単身状態


あたらしいβ2アゴニスト Vilanterol:迅速性と持続性を併せ持つ

Vilanterol (GW642444M) (VI) は、新しい吸入長時間作動型β2アゴニストで、1日1回投与で24時間24時間効果を有する。
中等症・重症COPDで、3-50μgでの用量効果・有効性、安全性についての研究

The Efficacy and Safety of the Novel Long-Acting ß2 Agonist Vilanterol in Patients With COPD: A Randomized Placebo-Controlled Trial
Nicola A. Hanania; Gregory Feldman; Wolfgang Zachgo; Jae-Jeong Shim; Courtney Crim; Lisa Sanford; Sally Lettis; Frank Barnhart; Brett Haumann
CHEST. 2012;142(1):119 doi:10.1378/chest.11-2231



ITT解析 62名 2重盲検 VI 3、6.25、12.5、25、50μg投与
プライマリエンドポイントはFEV1変化

用量依存的にFEV1改善

プラシーボ比較最小臨床的有効差である130ml以上、0-24時間荷重平均FEV1は、VI 25-、50-μgで観察。

VI全投与量で、血圧、脈拍、QT延長、血糖、K値など副事象を含む治療関連副作用・重症副作用イベントは発生少ない。



VIは、喘息・COPDICS患者と併用して1日1回投与するもので、予備研究でサルメテロールより作用発現迅速で、 サルメテロールやフォルメテロールより作用時間眼外、されに、β2adrenoceptor選択性が高い。5分で効果発現し、24時間その効果は持続する。

ANCA関連血管炎:遺伝的特性により明確に区分される疾患群である


 Wegener肉芽腫症は(PR-3ANCA)が関与する血管炎症候群であり、一般診療上の検査としては、現在PR3-ANCA(C-ANCA)測定がなされる。一方、MPO-ANCAは、顕微鏡的多発血管炎(MPA)やアレルギー性肉芽腫性血管炎(AGA)にみられるということで測定がなされる。


以下の報告は、ANCA抗体の特殊性そのものが疾患区分の本体であり、臨床的表現型そのものが疾患の根本ではないという概念の大幅変更が迫られている・・・と解釈した。


結語としては、「ANCA関連血管炎の病因は遺伝的コンポーネントがあり、granulomatosis with polyangiitis と顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis)の遺伝的鑑別点はANCA特異性にある。autoantigen proteinase 3に対する反応はproteinase 3 ANCA–associated vasculitisの病因的特性の中心である。
これらのデータから、proteinase 3 ANCA–associated vasculitisと、 myeloperoxidase ANCA–associated vasculitis は異なる自己免疫症候群であることが予備的に支持される」

Genetically Distinct Subsets within ANCA-Associated Vasculitis
Paul A. Lyons, et. al.
N Engl J Med 2012; 367:214-223July 19, 2012
1233名のUKのANCA関連血管炎のコホート、対照 5884名

ANCA関連血管炎では、MHC相関、非MHC相関を認め、granulomatosis with polyangiitis とmicroscopic polyangiitisは遺伝的に異なった。
この遺伝的相関は、ANCAに対する抗原特異的なものであり、臨床的症候群によるものではない。

Anti–proteinase 3 ANCA は、 HLA-DP と、 α1-antitrypsin (SERPINA1) と proteinase 3 (PRTN3) エンコード遺伝子と相関(P=6.2×10−89, P=5.6×10−12,  P=2.6×10−7)

Anti–myeloperoxidase ANCA は HLA-DQ (P=2.1×10−8)と相関。


 (Funded by the British Heart Foundation and others.)

【序文一部訳】
Antineutrophil cytoplasmic antibody (ANCA)関連血管炎は、全身性の小血管炎で、3つの症候群からなる
・granulomatosis with polyangiitis (formerly known as Wegener's granulomatosis)
・microscopic polyangiitis
・Churg–Strauss syndrome

生命危機に関わる腎不全、肺出血の原因として、5年での死亡率28%で、生存者間の長期合併症の原因となる。

Granulomatosis with polyangiitis と microscopic polyangiitisは主要な臨床症候群であり、前者は呼吸器系肉芽腫性炎症と66%の患者に検出される“neutrophil granule serine protease proteinase 3"への自己抗体。24%に他のneutrophil granule component, myeloperoxidaseへの抗体が検出される (myeloperoxidase ANCA–associated vasculitisと考えられる)

顕微鏡的多発血管炎は58%の症例でmyeloperoxidase ANCAと関連、26%が proteinase 3 ANCAと関連。

ANCA-陰性症例では50%超で uncommon Churg-Strauss症候群


ANCA関連血管炎に寄与する遺伝子分布は、家族関連性エビデンスを含み増加。 MHC、 locus HLA DPB1*0401など。ANCA関連血管炎と、α1アンチトリプシンをencodeする稀なserpin A1 gene (SERPINA1) Z (or null) allele 、proteinase 3のserine proteinase inhibitor もいくつかの基質の一つである

 granulomatosis with polyangiitisと microscopic polyangiitis は格別される疾患であるか、単一疾患のスペクトラムなのかの議論が続いている。
単一疾患スペクトラム概念として、治療戦略がなされている事実もあり、もし、病因が異なるものであるなら、疾患特異的治療戦略がなされることにもなる。

ANCA関連血管炎の病因として自己抗体反応性に議論がある。ANCAは診断ツールとして重要であるが、疾患活動性とはゆるい関連性しかない。
in vitroのエビデンスではANCAは炎症惹起性を示し、myeloperosidase ANCAとproteinase 3 ANCAのtransferモデルとして疾患類似性をある程度示す。

proteinase 3 ANCAと、myeloperoxidase ANCAは病因として重要だが、疾患のdriverというよりepiphnomenaとして重要な可能性がある。


現局性前立腺癌:手術 vs 観察 ・・・ 手術で生存予後改善せず

PSA増加を発見端緒とした700名超の現局性前立腺癌を、根治的前立腺手術と観察に振り分け
経過観察10年間中央値で、全原因死亡率・前立腺癌死亡率群間差は有意でない。


1994年11月から2002年1月までの731名の現局性前立腺癌・男性(67歳平均年齢、PSA平均 7.8ng/mL)を割り付け


Radical Prostatectomy versus Observation for Localized Prostate Cancer
Timothy J. Wilt, et.al.
for the Prostate Cancer Intervention versus Observation Trial (PIVOT) Study Group
N Engl J Med 2012; 367:203-213July 19, 2012
フォローアップ中央値10.0年間

死亡:
根治的手術割り付け 171/364(47.0%)
観察割り付け 183/367(49.9%) 
 (ハザード比, 0.88; 95% 信頼区間 [CI], 0.71 to 1.08; P=0.22; 絶対的リスク減少, 2.9  %ポイント)

前立腺癌および治療関連死亡
根治的手術割り付け群:21/364(5.8%)
観察割り付け群内:31/367(8.4%)
 (ハザード比, 0.63; 95% CI, 0.36 to 1.09; P=0.09;絶対的リスク減少, 2.6%ポイント)

全原因・前立腺癌死亡率治療影響は、年齢、人種、合併状況、自己報告PS、腫瘍組織学的特性により違いは見られない。

根治的前立腺切除術は、PSA>10ng/mL超男性で全原因死亡率減少(P=0.04 for interaction )、中間・高リスク腫瘍でも減少と関連の傾向(P=0.07 for interaction)

手術後30日内副事象は、死亡1例を含む 21.4%





PSA検査にたよる前立腺発見など、早期前立腺がん治療に関しては、議論の多いところである。 システマティック・レビューでは治療有効性・有害性に着眼した情報に関して適切さに欠く。
一方で、前立腺癌診断の生涯リスクは17%程度とかなり大きく、死亡リスクとして3%程度である。一方、保存的治療が多くでなされている。


PSA検診に関して日本でも議論盛んだが、 “助かる人がいるから続ける”という疫学的根拠に基づかない主張がなぜかまかり通ってる。“日本人のデータが十分でないから続ける”という根拠も、有害性に関する懸念を無視した主張である。

少なくとも公費を一部でも利用するような一律検診は差し控える時期はとうに過ぎていると私には思えるのだが・・・



Bloonberg日本語版で紹介されていた。日本のメディアには期待しないけど...


前立腺がんの手術による救命率、経過観察とほぼ変わらず
Bloomberg 7月19日(木)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120719-00000046-bloom_st-bus_all

noteへ実験的移行

禁煙はお早めに! 米国における人種・民族・性別による喫煙・禁煙での死亡率相違|Makisey|note 日常生活内の小さな身体活動の積み重ねが健康ベネフィットをもたらす:VILPA|Makisey|note