2019年8月16日金曜日

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群 統合モデルの可能性

myalgic encephalomyelitis/ chronic fatigue syndrome (ME/CFS) についてのNIH基金関連研究のまとめ

"ICD10対応標準病名マスターでは、神経系の疾患としてG93.3に分類されている(病名は、ウイルス感染後疲労症候群、慢性疲労症候群、良性筋痛性脳脊髄炎の3つを列挙)"ということで、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群


Advances in Understanding the Pathophysiology of Chronic Fatigue Syndrome
Anthony L. Komaroff, MD
JAMA. 2019;322(6):499-500. doi:10.1001/jama.2019.8312
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2737854



Institute of Medicine of the National Academy of Sciences が、2015年、 "myalgic encephalomyelitis/ chronic fatigue syndrome (ME/CFS) は、重症で、慢性の、複雑な全身b性疾患で、しばしば患者の生命に深く影響を与える”とし、米国内で推定250万名罹患、年間約170〜240億米ドルに直接・間接的出費を生じる疾患であるとした。



米国NIHは、異例の包括的多システム研究で、3つの extramural ME/CFS research centerにファンドを与え、7つの既存グラントをサポートするawardをだし、定期的遠隔ブリーフィングを開催した。2019年4月、直近の進展に焦点が当てられた。

いくつかのplausible modelも提案された



中枢神経・自律神経系

1990年代からME/CFS患者と年齢・性別マッチ化健常対照比較でいくつかの違いを見いだされた
•神経内分泌異常は、報告された最初の証拠の1つであり、いくつかの辺縁部-視床下部-下垂体軸(コルチゾール、プロラクチン、および成長ホルモンの最終産物を含む): limbic-hypothalamic-pituitary axes (involving cortisol, prolactin, and growth hormone end products)の障害を伴う。うつ病で見られる視床下部-下垂体副腎軸のアップレギュレーションとは対照的に、ME / CFS患者では視床下部-下垂体副腎軸の一般的なダウンレギュレーションが見られる
•多くの研究者が認知障害を発見。それには、情報処理速度の低下、付随する精神障害では説明できない記憶力や注意力の低下が含まれる。
•磁気共鳴画像法により、白質の高信号の点状領域の数が増加していることが明らかに。機能的磁気共鳴画像法は、聴覚と視覚の課題、および作業記憶のテストに対するさまざまな反応、および異なる脳領域間の変化した接続性を実証している。
•陽電子放射断層撮影法と磁気共鳴分光法は、ME / CFS患者の神経炎症(特にミクログリア細胞の活性化)が広範囲であり、 choline-creatinine 比率が増加し、疲労のレベルと相関する乳酸レベルが増加していることを最近明らかに. 脊髄液には、組織の損傷と修復に関与するタンパク質のレベルが増加している。
•自律神経系の異常はME / CFSで繰り返し示されており、特に症状と相関する全身および脳の血行動態の変化がある。直立姿勢が長引くと、心拍数の異常な増加と血圧の低下が報告された。;心拍数と血圧の反応が正常な場合でも、脳血流の大幅な減少が認められる。



代謝変化
最近、血液またはその他の体液サンプル中の数千の代謝物を同時に測定することが可能になりった。 いくつかのそのようなメタボロミクス研究により、ME / CFSの患者では、多くの代謝産物のレベルが hibernation:冬眠時に起こるように正常よりも低いことが明らかになっています。 言い換えると、人間の有機体は、その細胞にエネルギーを生成する(そしておそらく使用する)問題があるため、「エネルギー」が不足していると感じるかもしれない。 さらに、多くの研究で、酸化ストレスとニトロソ化ストレスの両方のマーカーが報告されている。たとえば、iNOSのレベルの増加など。


免疫学的変化
リンパ球では多くの表現型および機能異常が報告されている 。 最も一貫して報告されているのは、活性化された細胞傷害性CD8 + T細胞の数の増加と機能不全のナチュラルキラー細胞。 多くのサイトカインの血中濃度は、ME / CFSの患者、特に病気の最初の3年間で著しく高くなる。 さらに、循環サイトカインの多くのレベルは、症状の重症度と正の相関があり、髄液中のいくつかのサイトカインの異常なレベルも報告されている。

誘発研究
ME / CFSの患者では、身体的、姿勢的(起立性)、および認知的challengeにより、通常12から48時間遅れて、postexertion malaiseと呼ばれる症状のフレアがしばしば発症する。 provocation studyでは、ME / CFSの人が気分が悪くなるchallengeが生物学的異常を悪化させるかどうかを明らかにしようとしている。 その場合、異常が病気の症状に因果関係がある可能性が高くなる。
NIH conferenceでの運動中のmultiple studyからのエビデンス要約を行い、運動によっての"difficulty extracting oxygen”で、AT値低い状態であること、心拍数、血圧、前負荷低値で、それは初回後24時間後反復の2番目の運動時点が特に著明となる


統合モデルの可能性

ME / CFSが、傷害または潜在的な傷害に対する生物学的に古く、進化的に保存された反応の活性化となっているか、あるいは、これらの反応をスイッチオフにすることが病理学的に不能となっているか、はたまた、その両方の反映だとどうなるか? 
NIH conferenceでのいくつかのプレゼンテーションにより、動物モデルを引用して、 low-grade neuroinflammationがトリガーとなり、活動や食欲​​の減少、睡眠の増加など、防御的行動変化を引き起こすことが提示された。これにより、利用可能なエネルギーを温存し、傷害の予防または治癒に集中させる。このステレオタイプ化された行動の変化は、おそらく “fatigue nucleus” (a group of neurons)によって引き起こされます。nucleusは、神経炎症によって生成されたサイトカインによってトリガーとなる。
神経炎症は、個人ごとに異なるトリガーを持つ可能性があり、一部では、脳ヘルペスウイルス感染(慢性ヘルペスウイルス感染など)、自己抗体、神経毒、または慢性ストレスによって誘発される可能性がある。他の例では、脳外の炎症が脳内のinnate immune systemを活性化し、液性シグナルを通してporousな血管脳関門を通過するか、もしくは、腸管炎症も神経炎症の末梢トリガーの一つとなることがエビデンスで示されており;腸管microbiotaがME/CFS患者で炎症誘発性speciesを多数具有し、抗炎症性speciesが少ないという報告もある。 
ME / CFSの患者に見られる比較的低代謝状態は、傷害に対する2番目の、おそらく関連する生物学的に古代の反応を反映している可能性がある。このような代謝低下は、線虫Caenorhabditis elegansの state of dauer (ie, a developmental larval stage:幼虫発達段階) およびより複雑な動物の冬眠: hibernation 中に見られる。 
state of dauerと冬眠により、重要な脅威(虫の群れやクマの冬など)を知覚する動物は、不可欠な機能に必要なエネルギーを保存するために、不必要なエネルギー消費代謝プロセスを抑制できる。すなわち、動物は生き続けるために機能する能力を一時的に犠牲にしている。state of dauerと hibernation を開始(および終了)する信号は既知で研究者たちは、ME/CFS患者の活性化あるいは不活性化を打ち消す方法を研究中である





大雑把すぎるが、hibernationあるいはdauerが基本モデルということになりそう


就寝1−2時間前温浴は睡眠の質、睡眠効率、入眠潜時改善効果をもたらす

一般的な指導法が正しいということが確認された


Before-bedtime passive body heating by warm shower or bath to improve sleep:
Shahab Haghayegh,  et al.
Sleep Medicine Reviews Volume 46, August 2019, Pages 124-135
https://doi.org/10.1016/j.smrv.2019.04.008
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1087079218301552?via%3Dihub

就寝前の温水シャワーや入浴などのWater-based passive body heating (PBHWB):水ベースの受動的加温の効果がシンプルな睡眠の改善手段して推奨されることが多い。
入眠潜時:sleep onset latency (SOL)、中途覚醒:wake after sleep onset、睡眠効率:sleep efficiency (SE)、徐波睡眠、主観的睡眠の質検討された研究のシステミック・レビュー&メタアナリシス


5322の候補論文が得られ、そのうち17が重複を除去した後に登録基準を満たし、13のメタ分析の比較可能な定量データ


40–42.5 °CのPBHWBは自己評価rate睡眠の質と睡眠効率、予定睡眠1−2時間前施行時入眠潜時10分程度の短縮化を示した

これら知見はPBHWB効果のメカニズムと一致。PBHWBは、手掌と足底への血液灌流の増加による体温低下をもたらし、遠位から近位の皮膚温度勾配を増強して体の熱放散を強化する

しかし、PBHWBに関するこれら知見は研究報告が比較的少ないため追加研究が必要で、特に、適正なタイミングとその時間+正確な効果メカニズム検討が必要。





Forest plot of standardized mean difference (Cohen's d) between treatment and baseline nights of sleep onset latency (SOL).







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