2013年2月6日水曜日

テニス肘治療:ステロイド治療は1年後の回復悪く、再発多い ・・・ 理学療法も効果確認できず

いわゆるテニス肘、慢性 片側上腕骨外側上顆部痛へのステロイド単独治療は、1年後の回復率上最も成績が悪い。理学療法は有意差を認めるほどの差はなかった。


Effect of Corticosteroid Injection, Physiotherapy, or Both on Clinical Outcomes in Patients With Unilateral Lateral EpicondylalgiaA Randomized Controlled Trial
Brooke K. Coombes, et. al.
JAMA. 2013;309(5):461-469. doi:10.1001/jama.2013.129.


上腕骨外側上顆部痛(lateral epicondylalgia: LE. )に対する ステロイド注射と理学療法が臨床の場で行われているが、この併用に関してはエビデンス欠如している。

2×2区分ランダム化注射盲目化、プラシーボ対照トライアル
オーストラリアの大学施設1つと、18のプライマリケア
18歳以上の片側上腕骨外側上顆部痛6週間継続例

ステロイド注射(n=43)、プラシーボ注射(n=41)、ステロイド+理学療法(n=40)、プラシーボ注射+理学療法(n=41)

主要アウトカムは、1年後の完全回復あるいはかなりの改善を示す包括的点数と、1年後再発(定義:完全改善、ほぼ改善4−8週まで)

ステロイド注射は完全回復・大部分回復少ない  (83% vs 96%, ; 相対リスク [RR], 0.86 [99% CI, 0.75-0.99]; P = .01)、そして、1年後の再発多い(54% vs 12%; RR, 0.23 [99% CI, 0.10-0.51]; P <.001)

理学療法を行った場合と、行わない場合で1年後の完全回復・準完全回復率に差は認めない (91% vs 88%, respectively; RR, 1.04 [99% CI, 0.90-1.19]; P = .56) 、再発でも差を認めない (29% vs 38%; RR, 1.31 [99% CI, 0.73-2.35]; P = .25

26週でも同じパターンで、ステロイド注射はプラシーボに比べ完全回復率が低く  (55% vs 85%, ; RR, 0.79 [99% CI, 0.62-0.99]; P <.001) 、理学療法施行・非施行で差がない  (71% vs 69% ; RR, 1.22 [99% CI, 0.97-1.53]; P = .84).






4週後、ステロイド・理学療法注射で有意な相関が見られ(p=.01)、プラシーボ注射+理学療法で、完全回復・準完全回復と、理学療法しない場合は39% vs 10% 相対リスク 4.00[99% CI, 1.07-15.00]; P = .004)






しかし、 ステロイド注射+理学療法 vs ステロイド単独では差を認めない  (68% vs 71%, ; RR, 0.95 [99% CI, 0.65-1.38]; P = .57)

米国終末期医療:メディケア医療費支払いから見た実態 ・・・ 在宅死ドグマは非現実的など明らかに

麻生副総理・財務大臣の終末期医療に関する発言が問題になったばかりだが、 米国でも死亡直前の医療費が問題になっている。

これを見ると、日本と違い、ホスピス施設がよく利用されていることがわかる。
死亡直前医療費を増大させないつもりなら、日本でも、本格的にホスピス施設の普及を検討した方が良いのかもしれない。この解説新聞記事でも、ホスピス導入があまりに遅すぎるとの著者らの解説が書かれている。日本の実態に比べればずいぶんましと思うが・・・
 

また、「一部医療関係者やマスコミ」が主張する「在宅死亡=理想」ドグマというのは、実態とはかなりかけ離れている。(元朝日新聞記者:大熊由希子などの)在宅死理想論が、ホスピスケア普及を阻害している部分があるのでは?


結論としては、急性期病院死亡者のメディケアの医療費支払いの2009年、2005年、2000年比較比率は少なくなってるが、死亡前1ヶ月でのICU使用、医療転送(終末期最後に病院やホスピス収容など)率が増加している

Change in End-of-Life Care for Medicare BeneficiariesSite of Death, Place of Care, and Health Care Transitions in 2000, 2005, and 2009
Joan M. Teno,  et. al.
JAMA. 2013;309(5):470-477. doi:10.1001/jama.2012.207624.


死亡前1ヶ月のメディケアサービスの種類と場所



全体的には人生最後の2週間で医療的な搬送を半数近くが経験している。
がんの診断死亡では、ホスピスサービス使用が増加し、特に、人生最後の週での増加が見られる。
 COPD診断の死亡例では、急性期病院への転送が多い
認知症診断死亡例では、ナーシングホームから最後の週にはホスピスへの転送が多い


臨死期医療サービス利用には、疾患毎特異性があり、そのことも配慮される必要があるだろう。何でもかんでも在宅死というドグマはあまりに乱暴

末梢動脈疾患:ACE阻害剤で無疼痛・最大歩行距離増加

ACE阻害剤 ラミプリルで、間欠性跛行ありの末梢動脈疾患(PAD)患者において、24週間治療で、プラシーボ比較で無疼痛・最大トレッドミル歩行距離増加をみとめ、身体機能改善をもたらした。

Effect of Ramipril on Walking Times and Quality of Life Among Patients With Peripheral Artery Disease and Intermittent ClaudicationA Randomized Controlled Trial
Anna A. Ahimastos, et. al.
JAMA. 2013;309(5):453-460. doi:10.1001/jama.2012.216237.


オーストラリアでの、212名のランダム化二重盲験プラシーボ対照化トライアルで、末梢動脈疾患(平均年齢 65.5歳、 SD6.2歳)

介入としては、ラミプリル投与 vs プラシーボ投与

標準的トレッドミル検査で、最大歩行時間・無疼痛時間を記録
Walking Impairment Questionnaire (WIQ) と Short-Form 36 Health Survey (SF-36)

6ヶ月時点で、プラシーボ比較で、無疼痛歩行時間 75秒(95%CI 60−89秒)増加、 最大歩行時間は255秒(95%CI 215−295秒)増加 p<0.001

プラシーボに対し、ラミプリルは、WIQ距離スコア中央値 13.8 (Hodges-Lehmann 95% CI, 12.2-15.5)、 スピード・スコア 13.3(95% CI, 11.9-15.2)、階段登りスコア中央値 25.2  (95% CI, 25.1-29.4) (P < .001 for all)

ラミプリルにより、プラシーボ比較で、SF-36全体の Physical Component Summaryスコア中央値は、 (Hodges-Lehmann 95% CI, 3.6-11.4; P = .02) 改善 

ラミプリルは包括的な  SF-36 median Mental Component Summary scoreには影響与えず 


新聞解説記事には、著者らのコメントが引用され、HOPE研究でのPAD合併心血管イベント減少効果が示されたことに注目、ただ、間欠性跛行緩和のためのACE阻害剤投与は推奨しないとのこと

さらに、JAMAエディトリアルには他のトライアルでは思うような結果が出ておらず、ラミプリル独自の作用で、クラス効果のない可能性を論述しているとのこと



TASCIIに基づき、日本では、第一選択 シロスタゾールという宣伝がなされているが、
www.arterial-stiffness.com/pdf/no12/032-036.pdf


副作用を考えれば、シロスタゾールは、まず第一に使用すべきでない。抗血小板剤、禁煙、運動といったものが効果のない場合の、しかたなしの薬剤選択として考慮すべきであるという考え方がある。
なぜか、日本では、薬物療法第一選択として宣伝されているが・・・ 用量依存的な死亡率増加(統計学的有意差は認めないが・・・)、超過死亡が他のPDEIII阻害剤で記載され、心不全悪化の可能性がある。不整脈、出血の可能性がある。
In practice, patients with intermittent claudication should not be given cilostazol; they should instead be prescribed an antiplatelet drug and encouraged to stop smoking and to exercise regularly.

Cilostazol: new drug. Intermittent claudication: too little efficacy, too many risks.
Prescrire Int. 2009 Apr;18(100):56-9.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19585717


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