2012年7月3日火曜日

”エホバの証人”:心臓手術・他人血輸血拒否例でも予後悪化なし

エホバの証人では、適切な輸血状態の対照に比べても手術合併症や長期死亡率リスク増加はないようだ。


Outcome of Patients Who Refuse Transfusion After Cardiac Surgery:  A Natural Experiment With Severe Blood Conservation  
Gregory Pattakos, et. al.
Arch Intern Med. Published online July 02, 2012. doi:10.1001/archinternmed.2012.2449


エホバの証人(Witness)での、心臓手術に関わる、合併症、長期生存率

輸血を受けた患者をマッチ化させて比較した場合より、急性合併症が少なく、入院期間少ない:
心筋梗塞 0.31% vs 2.8% (P = .01);
出血のための再手術 3.7% vs 7.1% (P = .03)
人工呼吸長期化 6% vs 16% (P < .001)

ICU滞在(15、50、85パーセンタイル)は、それぞれ 24, 25, 72 vs 24, 48, 162 時間 (P < .001)
入院期間15、50、85パーセンタイル)は、それぞれ 5, 7,  11 vs 6, 8,  16 日間 (P < .001)
1年生存率良好 (95%; 95% CI, 93%-96%; vs 89%; 95% CI, 87%-90%; P = . 007)
しかし、20年生存率は同等 (34%; 95% CI, 31%-38%; vs 32% 95% CI, 28%-35%; P = . 90)





待期的手術での話であり、緊急手術・外傷などの手術に関する問題では無い。
この場合は、自己血保存、人工心肺回路上の配慮、エリスロポエチン、鉄・ビタミンB群、クリスタロイドの使用など配慮された管理がなされた上での話である。

COPD急性増悪:血中好酸球比率でステロイド投与可否を決める・・・

COPD急性増悪に関して
COPD急性増悪の80%ほど感染(H. influenzae, S pneumoniae, M. catarrhalis, ライノウィルス・コロナウィルス・パラインフルエンザウィルスが50-60%程度)が原因で、抗生剤投与が必要。
軽症の場合は気管支拡張剤で、中等症では、 ステロイド全身投与、抗生剤、繰り返す場合は入院が必要(The Lancet, Volume 379, Issue 9823, Pages 1341 - 1351, 7 April 2012
血中好酸球比率をバイオマーカーにて、ステロイド使用是非の指標とするやり方が妥当かどうか?

Blood Eosinophils to Direct Corticosteroid Treatment of Exacerbations of
Chronic Obstructive Pulmonary Disease: A Randomized Placebo-Controlled
Trial
Mona Bafadhel, Susan McKenna, Sarah Terry, Vijay Mistry, Mitesh Pancholi,
Per Venge, David A. Lomas, Michael R. Barer, Sebastian L. Johnston, Ian D.
Pavord, and Christopher E. Brightling
Am. J. Respir. Crit. Care Med. 2012;186 48-55
http://ajrccm.atsjournals.org/cgi/content/abstract/186/1/48?etoc

序文: COPD急性増悪と治療反応性は様々

目的: 血中好酸球の利用で、急性悪化中のステロイド治療に使うことの有用性検討

方法: COPD急性増悪患者を、ランダム割り付け
biomarker-directed double-blind corticosteroid versus standard therapy study

標準治療群:2週間プレドニゾロン投与
バイオマーカー指標群:プレドニゾロン or マッチングプラシーボを血中好酸球数をバイオマーカーにして投与
両群とも抗生剤処方
血中好酸球を両群測定し、バイオマーカー陽性・陰性急性増悪(血中好酸球比率2%超、2%以上)と定義
プライマリアウトカムは、バイオマーカー指標治療群vs標準治療群に於ける、非劣性検討;CRQ(chronic respiratory questionnaire)、治療失敗急性悪化比率


測定・主要結果:
急性増悪数:バイオマーカー指標治療群 86、 標準治療群 80
バイオマーカー指標治療群では、急性増悪49%でプレドニゾロン治療なし

標準治療群とバイオマーカー指標治療群での、治療後CRQ改善度は同等 (0.8 vs. 1.1; 平均差, 0.3; 95% 信頼区間, 0.0–0.6; P = 0.05)

バイオマーカー陰性・急性増悪プラシーボ割り付け群の方が、プレドニゾロン投与群よりのCRQ著明改善 (mean difference, 0.45; 95% 信頼区間, 0.01–0.90; P = 0.04)

バイオマーカー陰性急性増悪では、治療失敗は、プレドニゾロン投与で、15%、プラシーボ投与で、2% (P = 0.04)

結論: 末梢血好酸球数は、COPD急性増悪のステロイド治療に直結するバイオマーカーとして有望だが、大規模研究必要。

閉経女性:adiponectinはその後の喘息発症を予測する ・・・ adipokineと肺疾患全般の関連性究明はまだまだ


血中adiponectinは喘息の将来リスク予想に役立つが、逆は成り立たない。
女性、特に、喫煙者において、血中adiponectin濃度は将来の喘息予防に対して何らかの対策に役立つかもしれないという筆者らの結論。


肥満という要素外に、adiponectin濃度が単独で将来の喘息発症に関わるとのことで、以前から、同じコホートで報告されている。
Association between asthma and serum adiponectin concentration in women
Thorax 2008;63:877-882 doi:10.1136/thx.2007.090803


女性に於ける血中adiponectinと喘息の逆相関を示した横断研究
Coronary Artery Risk Development in Young Adults (CARDIA) cohortの10、15、20年時データ利用

Low Serum Adiponectin Predicts Future Risk for Asthma in Women
Akshay Sood, et. al.
Am. J. Respir. Crit. Care Med. 2012; 186: 41-47.

1450名の女性、ほとんど閉経後のプライマリ解析

15年時の血中adiponectin濃度(<7mg/L)は有意に20年時の喘息頻度リスク高値と相関することが多変量解析で示された (オッズ比, 2.07; 95% 信頼区間, 1.05, 4.10)、特に現行喫煙者において関連性がある  (interaction P = 0.051)


さらに、女性に於ける喘息発症リスク推定上、血中adiponectinはBMIより重要

逆が必ずしも真ならず、10年時予測では、必ずしも15年時adiponectin濃度を予測できず 。




肺疾患とadipokineに関しては、以下のレビューが発表されている

Pulmonary Physiology and Pathophysiology in Obesity
Obesity, adipokines, and lung disease
Journal of Applied Physiology March 1, 2010 vol. 108 no. 3 744-753

adiponectinだけで無く、adipokine全般と喘息を含む肺疾患との関連性レビュー

肺疾患と肥満・adipokineの関連が要約されている。
肥満は喘息の独立したリスク要素、慢性気道閉塞性疾患でもリスク要素という報告。

メカニズム関連性は確立していない、炎症惹起性のadipokine、adiponectinすなわち、抗炎症性adipokineはマウスにおいて喘息 と原因的に関連性がある。
 ヒトではこのことは結論的で無い。

特定集団である、閉経後女性では、血中leptin高値・血中adiponectin低値はそ の後の喘息予測と関連し、それは肥満と独立した関連性である。

 血中leptin低値・血中adiponectin高値は逆に安定COPDと関連し、体脂肪が関連する。 leptinは、安定COPD患者の全身性・気道炎症促進的に働く。
一方、COPDは全身性・肺adiponectin発現をupregulateする。

正確なメカニズム・adipokineと肺疾患の重要性に関して、現時点では混乱中で有り、paradoxicalな状況が見られる。

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