2013年1月4日金曜日

COPD: 頸動脈血管壁肥厚2倍、脆弱脂質コア2倍

完成された病変(プ. ラーク)は,表層の線維性被膜と深層の脂質コア(lipid core)に二分される。
http://www.jc-angiology.org/journal/pdf/20034311/699.pdf


 COPDは虚血性卒中の独立したリスク要素で、そのリスクは気道閉塞重症度悪化に従い増加する。頸動脈プラークの脆弱要素として、プラーク内出血と脂質コアの存在がある。

 Rotterdam研究を利用した横断解析によるMRI検討

 COPDでは頸動脈血管壁肥厚リスク2倍(オッズ比, 2.0; 95% 信頼区間, 1.44–2.85; P< 0.0001)、このリスクは気道閉塞と相関。

 MRIにて、脆弱な脂質コアは対照の2倍(オッズ比,2.1; 95% 信頼区間, 1.25–3.69; P= 0.0058)

Chronic Obstructive Pulmonary Disease and Lipid Core Carotid Artery
Plaques in the Elderly: The Rotterdam Study
Lies Lahousse, et. al.
Am. J. Respir. Crit. Care Med. 2012; 187: 58-64. First published online
November 9, 2012 as doi:10.1164/rccm.201206-1046OC


この研究の真価は、寄与要素補正がやっぱりキモと思うけど・・・脂質コアなる検討を初めてしました・・・という顔見せ的論文の気もする。

注意欠陥/多動性障害双生児研究:遺伝的影響はやはり大きい

一口に遺伝といっても、“innovationとstability”があり、環境との関連でさらに、変動することになる。そういう特性を数式化し客観的に評価したところ、子供の頃から若年成人までやはり遺伝的要素が強く関連する。

Developmental Twin Study of Attention ProblemsHigh Heritabilities Throughout Development
Zheng Chang, et. al.
JAMA Psychiatry. 2013;():1-8. doi:10.1001/jamapsychiatry.2013.287.
Published online January 2, 2013

【序文】小児・成人期のattention-deficit/hyperactivity disorder(注意欠陥/多動性障害)の遺伝・環境関連は横断的情報を用いた長軸研究が無いため認識不充分である。
【目的】小児期から成人初期の注意障害の症状の遺伝手・環境影響の相対的寄与度を検討【デザイン】高く情報による長軸的構成数式を用いた解析
【セッティング】スイス双生児研究( The Swedish Twin Study of Child and Adolescent Development)
【登録者】1480双生児対を前向きに小児期から成人初期までフォロー
【主要アウトカム】症状は親からのものと、Attention Problems Scale自己評価(8-9歳、13-14歳、16-17歳、19-20歳)
【結果】ベストフィッティングモデルにより、小児・成人初期までの親・自己評価指標として、注意障害問題について遺伝性が高いことが明らかとなった(h2=0.77-0.82)
8-9歳までの遺伝的影響は、13-14歳で41%、16-17歳で34%、19-20歳で24%で説明因子となる。
さらに、別の新しい遺伝的要素組み合わせでも13-14歳、16-17歳、19-20歳で関与
【結論】自己評価・情報による注意障害の共有観点からみると、小児期、思春期、成人早期ともに遺伝の影響高く、以前の遺伝的要素過小評価は評価者の影響(rater effect:評価者問題)が一番考えられる影響であった。
成長期においてgenetic stability とgenetic innovation がともに存在し、これが、注意障害問題では生涯の不変性と変動性とを併せ持つ特徴的発達的表現型に関連すると考えられる。

新たな学習能力評価は優秀:“セサミストリート”のようなビデオで脳の局所活動性評価

 試験というのも必ずその目的があるはず、特に、入園・入学試験では“入園・入学後の効果的学習教育付与評価”のため、入社試験では“入社後その組織に維持発展に効果的な人材確保”のため、業務資格試験は“その資格による業務資質・能力があるかどうか確認”のためなはず。ところが、現行の、幼稚園や学校の入園・入学試験の内容は、果たしてその目的通りになってるか?

 そのエビデンスは存在しないと論文冒頭。

 現行の入園・入学試験では、現実の学校生活の能力と一致してない 。

 新たな方法の試みは“セサミストリート”のような学習的ビデオを見せて、fMRIでその脳の活動性をみる試み。

 結果としては、予測可能性が示された。

こどもが現実の学校教育で観察されるリアルワード思考プロセスを評価することは現在でも難しい。こどもの神経プロセスを推量するための何を知ってるかで推定されていた。このようなやりかたではリアルワールドの思考能力を明らかに出来ない。
セサミストローとのビデオ視聴にてfMRI評価。
子供と成人とのneural timeseries間のwhole-brain個体差相関で“neural maturity"(知的能力)のマップを形成する。
基礎的数値認識領域として知られるintraparietal sulcus (IPS)のNeural maturityが算数能力を予測するものであった。
一方、Broca野のneural maturityは、子供の言語能力と相関していて、これは以前の言語研究と一致した治験であった。

リアルワールドの情報刺激によりコンテンツ特異的認知能力を予測可能であった。


これらの方法は、より生態学的自然なパラダイムであり、"neural maturity"の新しい測定法と共に、リアルワールドな数学脳内能力発達研究の新しい方法となるだろう。


Neural Activity during Natural Viewing of Sesame Street Statistically Predicts Test Scores in Early Childhood.
Cantlon JF, Li R (2013)
PLoS Biol 11(1): e1001462. doi:10.1371/journal.pbio.1001462


一流幼稚園などでは、そのうち、ワンパターンのトレーニング効果が現れやすいペーパー試験が無くなり 、fMRIを利用した脳検査が行われる?

【果糖伝説否定】果糖では、満腹中枢へフィードバックが効かない

フルクトースたっぷりの食事は肥満頻度増加と関連し、体重増加とインスリン抵抗性と関連する。
フルクトース摂取増加はぶどう糖摂取比較すると、循環中のsatiety hormoneを軽度増加し、齧歯類での中枢神経へのフルクトース投与は、ぶどう糖の投与より食事量を増加させる。

フルクトース(果糖)摂取と体重増加の関連に関する新しい知見らしい

脳MRII研究で、ぶどう糖摂取では、フルクトース摂取と異なるパターンで、食欲を調整することになる、脳領域への局所血流を絞り、そして食欲を調整するパターンの存在がある。一方、フルクトースではこの機序が働かず満足感や満腹感を得がたいのだという報告。

Yale大学研究で、フルクトース消費と体重増加の関連性を基礎的に検討下モノで、20名の健康ボランティアに対し、ぶどう糖とフルクトース投与のMRIセッションを行った。
プライマリアウトカムは、視床下部領域の脳血流量。ぶどう糖とフルクトース投与後視床下部の血流に大きな違いが見られた。

ぶどう糖は(食欲、動機づけ、報酬系プロセス化に関わる)視床下部・島皮質・線条体の活性化を減少し、視床下部・線条体ネットワークの機能的結合強化し、満腹をもたらすと思われるが、それがフルクトースには存在しない。

Effects of Fructose vs Glucose on Regional Cerebral Blood Flow in Brain Regions Involved With Appetite and Reward Pathways.
Kathleen A. Page et al.
JAMA, 2013 DOI: 10.1001/jama.2012.116975




血糖とはぶどう糖濃度なので、果糖(フルクトース)は血糖代謝に関係しない。故に、糖尿病には良いなどという“妄言”が世にはびこる。上記報告に寄れば、果糖に偏った食事は、報酬系を介して、代謝系へ悪影響を及ぼす可能性がある。

“みかん”などでは、ステマが激しいが、成分の果糖によるメタボリック系への悪影響も、公的機関なら広報すべき。みかん関連イベントで集まった人対象のアンケート調査で糖尿病予防に役立つと言い放ついい加減な公的研究所の存在・・・
http://www.geocities.jp/frdnr535/oisii.html 
http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-830/wadai.html
絶望的な気分になりますねぇ・・・

ただ、上記論文だけを屎尿するわけに行かず

"フルクトース受容体は脳において栄養センサーとして機能する"(http://first.lifesciencedb.jp/archives/6252)という報告がある。

A fructose receptor functions as a nutrient sensor in the Drosophila brain.
Tetsuya Miyamoto et. al. Cell, 151, 1113-1125 (2012)

JAMA報告の解釈と一見矛盾するのだが・・・専門家の解釈を待ちたい。

植込み型除細動:臨床トライアルと臨床実践で死亡軽減効果乖離認めず

植込み型除細動による生存率に対する効果に関して、臨床トライアルと、実践の場で、差を認めないという報告

米国内のMADIT-II、SCD-HeFTという一次予防臨床トライアルのデータと、米国内大規模登録データとの比較


 Survival of Patients Receiving a Primary Prevention Implantable Cardioverter-Defibrillator in Clinical Practice vs Clinical Trials
Sana M. Al-Khatib, et. al.
JAMA. 2013;309(1):55-62. doi:10.1001/jama.2012.157182.


臨床トライアルのサンプルと、実際の臨床対象のバックグラウンドが大きく異なることが想定される。薬物でも、トライアル参加してもらえる対象者が、臨床使用と同じような分布の背景であることの方がめずらしいと思う。

一次予防ICDトライアルで問題視されたのは、対象者に合併症が少ないことで、通常の臨床状況と異なるのではないかと危惧されていた。




日本の臨床研究では、これほどの規模で、トライアルと実地臨床の乖離に関する、こういうきめ細かな検討がされることはほぼない・・・ 結果、製薬会社や機具業者のやりたい放題

妊娠中抗うつ薬SSRIは、子供の死産・新生児死亡に関連せず

 多変量補正後のオッズ比をみれば、むしろ、SSRI使用の方が周産期に関わる子供のアウトカムは改善するようにも見えるが・・・いいすぎなのかもしれない。

母体へのSSRIの副事象を考えれば、あまねくSSRIをといえない ・・・


Selective Serotonin Reuptake Inhibitors During Pregnancy and Risk of Stillbirth and Infant Mortality
Olof Stephansson,  et. al.
JAMA. 2013;309(1):48-54. doi:10.1001/jama.2012.153812.

【重要性】 母体の精神疾患は、妊娠における負のアウトカムと関連する。妊娠中SSRI使用のは先天異常、新生児禁断症候群(neonatal withdrawal syndrome)、新生児持続性肺高血圧症と関連するとされる。しかし、母体精神疾患既往を考慮上の死産や胎児死亡率リスクに関しては不明。

【目的】 死産・新生児死亡率と、妊娠中SSRI使用との相関

【デザイン・セッティング・登録者】 住民ベース研究(ノルディック全地域 デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン)、1996年から2007年の異なる期間。単胎出産女性のみ。処方登録上の母体のSSRI使用情報取得。母体特性、妊娠、新生児アウトカムを親・医療出産登録データから取得。

【主要アウトカム測定】母体特性・精神疾患入院既往考慮後妊娠中SSRI使用による死産、新生児死亡、出生後死亡のロジスティック回帰による相対リスク推定

【結果】 1633877名の単胎出産のうち、死産 6054、新生児死亡 3609、出生後死亡 1578。母体29228(1.79%)で、妊娠中SSRI処方調剤済み。
SSRI暴露女性は死産率、出生後死亡率ともに未暴露群より高い(4.62 vs 3.69 per 1000,p= .01、1.38 vs 0.96 per 1000,p= .03)。新生児死亡率は両群同様 (2.54 vs 2.21 per 1000,p= .24)
多変量モデルで、SSRI使用は死産、新生児死亡、出生後死亡と相関認めず (補正オッズ比o [OR], 1.17; 95% CI, 0.96-1.41;p= .12、 1.23; 95% CI, 0.96-1.57;p= .11、 1.34; 95% CI, 0.97-1.86;p= .08)。
推定値は精神疾患入院既往層別化後さらに減弱。

精神疾患入院既往女性の死産補正オッズ比 0.92 (95% CI, 0.66-1.28;p= .62) 、精神疾患入院既往無しの死産補正オッズ比  1.07 (95% CI, 0.84-1.36;p= .59)。同様に、新生児死亡のオッズ比は、既往有り 0.89 (95% CI, 0.58-1.39;p= .62)、既往無し 1.14 (95% CI, 0.84-1.56;p= .39)。出生後死亡は、既往有り 1.02 (95% CI, 0.61-1.69;p= .95) 、既往無し 1.10 (95% CI, 0.71-1.72;p= .66)

【結論・妥当性】
北欧諸国の単胎出産女性において、妊娠中SSRI使用と、死産、新生児死亡率、出生後死亡率の相関は有意で無い。
しかし、妊娠中SSRI使用に関しては、周産期アウトカムと母体の精神疾患リスクを斟酌して考慮すべき。

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