2012年1月25日水曜日

ナーシングホーム居住肺炎:超過死亡は病原菌パターンの影響少ない、むしろ合併症などの影響

ナーシングホーム居住肺炎(NHAP)


NHAP患者の超過死亡は、病原細菌パターンの違いから由来するものではなさそうで、合併症や後遺症から関与する。肺炎は、ターミナルイベントとして考慮すべき、マネージされるべきものと考えられる。

Nursing-home-acquired pneumonia in Germany: an 8-year prospective multicentre study 

Thorax 2012;67:132-138 doi:10.1136/thoraxjnl-2011-200630 

 

NHAPの患者は、CAPより、CRB-65 (confusion, respiratory rate, blood pressure, 65 years and older)評価で、重症肺炎になりやすい。
人工呼吸頻度は同等で、抗生剤併用は少ない。
病因的には臨床的差が無く、肺炎球菌がどちらの群でも最も多く、多剤耐性病原菌は極めて少ない (<5%)
NHAP群では黄色ブドウ球菌が多い (n=12, 2.3% of the total population, 3.1% of those with microbial sampling compared with 0.7% vs 0.8% in the CAP group).

短期・長期死亡率は、65歳以上患者に関し、NHAP群でCAP群より高い  (26.6% vs 7.2% and 43.8% vs 14.6%, respectively)。
しかし、超過死亡と多剤抵抗性病原に関して相関認めず



BTS:特発性肺線維症治療アップデート PANTHER-IPFの影響

PANTHER-IPF(特発性肺線維症:プレドニゾン・アザチオプリン・Nアセチルシステイン組み合わせで予後悪化? 治験中断 2011年 10月 22日)の結果、アップデートされたのはBTSガイドラインだけ
http://www.brit-thoracic.org.uk/guidelines/interstitial-lung-disease-%28dpld%29-guideline.aspx

BTSでは
. However the BTS is able to give some guidance on the use of prednisolone, azathioprine and NAC based on these interim data:

1.The BTS ILD SAG recommends that new patients with definite IPF should NOT be initiated on a regimen containing prednisolone plus azathioprine
2. No concerns have been raised as a result of preliminary analysis of the n-acetylcysteine monotherapy arm of the study. The preliminary announcement by the NHLBI has no immediate implications on the use of NAC in IPF
3. ‘In patients with definite IPF already receiving combination prednisolone/azathioprine/n-acetylcysteine therapy, it is recommended that azathioprine therapy in particular should be withdrawn if there is evidence of disease progression (declining lung function).  In patients established on triple therapy with ‘stable’ disease, the decision to withdraw should be on a cases-by-case basis, but the threshold for withdrawing azathioprine from elderly patients should be low.
4. Patients with fibrotic ILD that is not definite IPF (e.g, NSIP, HP) should continue to be managed according to clinical judgement and  the BTS ILD Guidelines.

 という内容。


ペルフルオロ化合物:ワクチン免疫低下 ・・・ ポップコーンやファストフード包装?

Serum Vaccine Antibody Concentrations in Children Exposed to Perfluorinated Compounds
Philippe Grandjean et. al.
JAMA. 2012;307(4):391-397. doi: 10.1001/jama.2011.2034

Perfluorinated compound (PFC)s :ペルフルオロ化合物


 

これが、ヒトの免疫能力低下、具体的には、5-7歳の定期ワクチン反応減弱が示された


この化学物質ていうのが、レインコート、抗さび、電子レンジのポップコーン包装やファーストフードの包装につかわれているということで話題に・・・


PFOA(ペルフルオロオクタン酸)の用途は添加物(樹脂用)、その他製品用(触媒)など
、ポリテトラフルオロエチレン合成における添加剤、塗料のレベリング剤、水性膜形成泡消化剤、界面活性剤などに用いられるという表記(wiki)。「フッ素系の優れた界面活性剤/撥水剤」としてのPFOS/PFOP・PFOAの使用がかなり行われているとのこと。電気電子製品用途として使用されている可能性の高い物質は、テトラブロモジフェニルエーテル、ペンタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ヘプタブロモジフェニルエーテル、(PBDEの一種)、ヘキサブロモビフェニル(PBBの一種)のプラスチックの難燃剤の用途、およびペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とその塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸フルオリド(PFOSF)の撥水撥油剤、界面活性剤であろう(引用)。



論文訳の一部
フランス本土のNational Hospitalの生誕コホート前向き研究

5、7歳時の破傷風・ジフテリア 血清抗体

USの研究報告と同様の結果
血中ペルフルオロ化合物(PFC)のうち高濃度のものは perfluorooctane sulfonic acid (PFOS) と perfluorooctanoic acid (PFOA)

母体妊娠中血清中のPFCsのうち、PFOSが 5歳児の抗体濃度と、最も強い負の相関性を示し、 2倍濃度でジフテリア抗体濃度の差 -39%(95% CI, -55% ~ -17%)と関連する


5歳児の小児PFCs で、抗体レベルは均一に負の相関を示し、特に7歳でめだつが、例外はPFOS暴露と破傷風抗体で統計学的に有意差無し。


structural equation modelで、PFCの濃度2倍で、包括的抗体濃度 −49% (95% CI, −67% to −23%) と相関。

5歳時 PFOSと、PFOA濃度2倍で、7歳時の破傷風、ジフテリア抗体が臨床的防御値未満に陥る可能性オッズはそれぞれ、 2.38 (95% CI, 0.89 to 6.35) と4.20 (95% CI, 1.54 to 11.44) 




マジックマッシュルーム:うつ治療への応用の可能性

Psychedelic mushroom:幻覚作用をもつきのこ、”magic mushroom”が抗うつ作用を有するのではないかという小研究2つ


PNAS
Neural correlates of the psychedelic state as determined by fMRI studies with psilocybin
January 23, 2012, doi: 10.1073/pnas.1119598109 PNAS January 23, 2012
MRI研究で、シロシビン(psilocybin)を血中投与し、脳活動性を測定
脳のいわゆる"hub" regionの活動性低下が示された。


もう一つがBritish Journal of Psychiatry 掲載予定論文

10名の健康ボランティアで、やはりシロシビン
これを個人記憶recall、感情well-beingの効果が2-3週で現れた

"Department of Medicine at Imperial College London"が関係している論文


"Psychedelics"、"mind-expanding"、いづれにせよ、幻覚を生じさせる薬物は、脳の活性化を生じるが、最も密な他領域との結合性をもつ低活動性領域の活動性増加をもたらすという新知見。

 幾何学的パターンを幻覚としてみる、時間・空間の感覚変容、異常な身体感覚などが、脳のposterior cingulate cortex(後帯状皮質)や medial prefrontal cortex (mPFC:内側前頭前皮質)といった部位への酸素・血液供給量の減少と関連。
そして、PFCが意識・自己同一性に重要な役割をはたすことも見いだしたと筆者ら。

そして、MPCのうつ患者へ 特別な役割を見いだし、この種の幻覚作用が抗うつ的な効果として役立つのではないかと


Nuttらは、また、シロシビンが視床下部の血流を減少させ、一方で、偏頭痛患者の血流を増やすことを示したため、この方面への治療も考慮される。

 シロシビンは1950年代psychotherapyとして広く用いられてきたが、その使用の生物学的合理性に関して適切に研究されてきていなかった。
シロシビンは、個別の記憶・感情へのアクセス可能薬剤としての有用性、感情的well-being、不安状態のうつへの治療など利用が考慮されると筆者らの主張。

ソース:http://yourlife.usatoday.com/health/story/2012-01-24/Study-Magic-mushrooms-may-help-treat-depression/52775096/1



卵巣癌: BRCA1 ・BRCA2変異の有無による生存率差

侵襲性上皮性卵巣癌の患者の約10%は、 BRCA1 もしくは BRCA2 geneのgermline mutationを有する。


侵襲性卵巣癌3879名の生存率評価26研究のpooled data の解析

 Bolton らは、BRCA1 or BRCA2 mutationなしの症齢に比べ、mutationありでは、病期・病理・診断年齢時補正5年生存率の改善を認めた。


Association Between BRCA1 and BRCA2 Mutations and Survival in Women With Invasive Epithelial Ovarian Cancer
Kelly L. Bolton et. al.
JAMA. 2012;307(4):382-389. doi: 10.1001/jama.2012.20 

小児:ぜん息 無症状逆流性食道炎へのPPI投与 ・・・ ぜん息症状・肺機能改善せず、副作用増加

無症状胃食道逆流(GER)はぜん息の子供に多く、無治療GERはぜん息コントロール不良の原因とも考えられている。

19の American Lung Association Asthma Clinical Research Center サイトの研究で、306名のぜん息コントロール不良・GER症状無し患児をPPIであるlasoprazoleかプラシーボかを24週間投与

プラシーボ比較で、lasoprazoleはぜん息症状や肺機能改善と関連せず。
ただ、副事象イベントの増加と関連した




Lansoprazole for Children With Poorly Controlled Asthma 

A Randomized Controlled Trial

Writing Committee for the American Lung Association Asthma Clinical Research Center

 JAMA. 2012;307(4):373-380. doi: 10.1001/jama.2011.2035 
 

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