2012年3月21日水曜日

認可行政当局への提出データの検討が必要; 向精神薬出版バイアスとFDA提出データ

向精神薬研究に関する出版バイアスと、FDAデータベースとの比較

出版バイアスの程度は、一致してプラシーボ効果より優越性が示されており、以前の抗うつ薬よりは少ないが、認可機関当局へのデータ公表が無ければ、出版バイアスにより、有効性と無効性の境界は不明瞭ということになる。


Publication Bias in Antipsychotic Trials: An Analysis of Efficacy Comparing the Published Literature to the US Food and Drug Administration Database.
Turner EH, Knoepflmacher D, Shapley L (2012)
PLoS Med 9(3): e1001189. doi:10.1371/journal.pmed.1001189

8つの 第2世代の向精神薬 aripiprazole、 iloperidone、 olanzapine、 paliperidone、 quetiapine、 risperidone、 risperidone long-acting injection (risperidone LAI)、 ziprasidoneを 24のFDA登録市販前トライアルコホートを同定

FDAによるトライアル結果を 、ジャーナル論文結果と比較

研究結果と出版状況を比較し、2つのデータ情報源由来のeffect sizeを比較

24FDA登録トライアルのうち、4(17%)は出版されず

これらの内、3つはプラシーボを越える統計学的アドバンテージを示せず、一つは、統計学的にactive comparatorより劣性であった。

20の出版トライアルの内、ポジティブなものでなかった5つで、バイアス報告のアウトカムエビデンスが示された。 
しかし、トライアル・アウトカムと出版状態との間の相関は、統計学的な有意に至らず
 
さらに、出版バイアスを伴うeffect size point の増加が軽度みられるが、統計学的な有意差に至らず

一方、非出版バイアスのeffect size(0.23, 95%信頼区間 0.07-0.39)は、出版トライアルのeffect size(0.47, 95% 信頼区間 0.40-0.54)の半分で、その差に有意差あり 




日本の場合も厚労省は、製薬会社からの情報生データを公表すべきであろう。


effect sizeの勉強:

effect size、効果量(http://www.mizumot.com/method/mizumoto-takeuchi.pdf
サンプル・サイズによって変化しない,標準化された指標である効果量(effect size)は、たとえば、「グループごとの平均値の差を標準化した効果量」の代表的な指標である Cohen’s dでは、“(介入の平均-対照群平均)/(SQRT(((介入群の標準差)^2+(対照群の標準偏差)^2))/2)で示される。 
この計算から得られる値はグループごとの平均値の差を標準化したもの(standardized mean difference)になっている。 
算出される数値は,標準偏差を単位として平均値がどれだけ離れているかを表しており,たとえば,d = 1 なら,1 標準偏差(SD)分だけ離れていることを意味する。効果量小(small effect size)という結果の場合、実質的な差は小さいということがわかる。 
このように,効果量は,平均値と標準偏差のみでの直感的な判断とほとんど同じ解釈
ができるものなのである。また,効果量はp 値のようにサンプル・サイズによって影響
されることはないので,実質的な差を考えた場合には,統計的検定の枠組み(p 値)ではなく,効果量による解釈がふさわしいといえる。 
つまり,統計的検定の結果を解釈する際には,p 値を判断の最終材料とするべきではなく,まずは平均値,標準偏差,そして効果量によって,実質的な差を検討すべきである。 
また,研究における実験条件によっては,「有意差があっても(p < .05)効果量が小さい場合」もあれば,「有意差がなくても(p > .05)効果量が大きい場合」も考えられるため,有意差があろうがなかろうが,どちらにしても効果量は報告しなければならない(American Psychological Association, 2009;Field, 2009; Kline, 2004 など)。 
よくある疑問としては,「効果量で実質的な差がわかるのであれば,統計的検定を行ってp 値を見る必要はないのではないのか?」というものであるが,「効果量のみでよい」ということはない。そもそも,効果量は確率を用いる推測統計とは目的が違うものであり,手元のデータから母集団にまで一般化を目指すのが統計的検定の目的なのである。 
データのサンプリングがうまくいっていないために,手元のデータが「たまたま」大きな差が得られるデータだったという場合は,効果量だけの解釈ではその可能性が否定できない。 
つまり,実質的な差を示す効果量が大きく,なおかつ統計的有意差もある(p < .05)というのが,理想的な統計的検定の形である。

Effect Size (ES)  Lee A. Becker
http://www.bwgriffin.com/gsu/courses/edur9131/content/EffectSizeBecker.pdf

乳がん生存者:不飽和脂肪酸ω3/ω6比と、炎症、疲労の関連



横断的現象を示した研究であり、介入研究というわけではない。

可能性として、がん患者において、不飽和脂肪酸ω3が、“炎症→疲労感”と関連する可能性を示した報告。


Fatigue, Inflammation, and ω-3 and ω-6 Fatty Acid Intake Among Breast Cancer Survivors
Published online before print March 12, 2012, doi: 10.1200/JCO.2011.36.4109 
JCO March 12, 2012 JCO.2011.36.4109 

がん生存者の疲労は一部に炎症から生じているという可能性がある。一方、不飽和脂肪酸のうち、ω3摂取にて、炎症を抑える作用を認める。なら、疲労、炎症、ω3/ω6PUFA(不飽和脂肪酸)を乳がん患者生存者で検討


Health, Eating, Activity, and Lifestyle Study

633名(平均 56歳、 stage I-IIIA)

行動疲労スケール(P=.003)、感覚疲労スケール(P=.001)は、CRP3分位増加毎増加
相関は、薬品・合併症にて減衰

CRP高値生存者は、補正後1.18倍の疲労(P<.05)

PUFA ω6/ω3比率高値は、CRPと相関(P=.01 補正後)、疲労オッズ増加と相関  (オッズ比, 2.6 for the highest vs lowest intake; < .05)

低用量放射線CT肺がん検診:stage shift認めず、死亡率減少も認めない

デンマークにおける低放射線量によるCT検診研究結果

有効性の間接的指標と見なしている、"stage shift"も認めず、死亡率減少も認めない。


CT screening for lung cancer brings forward early disease. The randomised Danish Lung Cancer Screening Trial: status after five annual screening rounds with low-dose CT
Zaigham Saghir, et. al.
Thorax 2012;67:296-301 doi:10.1136/thoraxjnl-2011-200736 



5万名を越える対象者数の、National Lung Screening Trial (NLST) では、25%が検診異常としてひっかかり、偽陽性95%にもなる
 
低用量CT喫煙者肺癌検診は通常のレントゲン検診に比べ死亡率を減少させるが・・・  2011年 06月 30日
http://intmed.exblog.jp/12996059/

こういう現状なのに、検診至上主義者たちは、多額の税金注入、偽陽性で引っかかるほんとは病気でない人たちの金銭や貴重な時間を奪い、不安を与えることを無視している。
 
overdiagnosisの弊害を無視する、非功利主義者たちが、行政や政治家にいる以上は、この弊害は続くのだろう・・・

米国女性:ビタミンD投与と用量反応曲線


プラシーボ、ビタミンD 400、800、1600、2400、3200、4800IU投与で、閉経後女性の25(OH)DとPTH値の6ヶ月後、12ヶ月後変化
Dose Response to Vitamin D Supplementation in Postmenopausal Women
A Randomized Trial
J. Christopher Gallagher,et. al.
Ann. Int. Med. March 20, 2012 vol. 156 no. 6 425-437 


ビタミン  D3 投与量800 IU/dだと、女性の97.5%で、25(OH)Dを50nmol/L増加、600 IU/d投与量でも同様の増加と予測される。

結果、Recommended Dietary Allowance (RDA):推奨栄養必要量 に従うビタミン投与を支持するものであった。ただ、臨床的意義付けはまだ無い。



Image not available.
Figure 2. Vitamin D dose–response curve.

衛生仮説:H.pylori新生児期感染は気道過敏性減少と関連?

講演会で“衛生仮説”のことを問いかけると、いんちき話と見下された経験がある。さすがに最近は変わってきたかな?


Helicobacter pylori infection in neonatal mice prevents allergic asthma
Thorax 2012;67:301 doi:10.1136/thoraxjnl-2011-20106


H.pyloriのような免疫へ影響を与える細菌の新生児感染が、アレルギー性気道疾患に関与しているのではないかという仮説に基づく研究
 

C57BL/6 マウス 6日(新生児)、6週(成人)に、H.pyloriに感染させ、ovalbumin感作させたもの
感染マウスではメサコリン暴露の気道過敏性有意に減少し、この炎症反応減少作用は、肺胞洗浄液好酸球、IL-5減少、Th2・Th17細胞浸潤減少で示される。

これらの変化は、誕生早期に感染した感染マウスでのみで 、成人マウスでの感染では見られない。

 免疫プロセスによる説明でこの減少を著者らは説明。



“衛生仮説”(http://bit.ly/GDaqMF)につながる話


衛生仮説:進歩版 “古い友人たちとの絶交がアレルギーを引き起こす”  2004年 05月 21日
http://intmed.exblog.jp/306982/

新しい衛生仮説支持論文 1歳児の湿疹は2-3ヶ月時のリビングルームのエンドトキシンと相関 2004年 07月 14日
http://intmed.exblog.jp/657574/

衛生仮説:トリクロサン高濃度ほど小児のアレルギー疾患増加、成人ではBPAによる免疫系へ影響?  2010年 11月 29日
http://intmed.exblog.jp/11633850/

日本OHCA:病院収容前エピネフリン投与は生存率改善せず

“院外心肺停止に対するボスミン投与:収容前循環は改善するが、アウトカムにつながらない?  2011年 07月 15日で、“院外心肺停止例へのアドレナリン(エピネフリン)投与二重盲検プラシーボ対照トライアル”を紹介している。
エピネフリンは病院外心停止患者蘇生に広く用いられている薬剤である。 しかし、その有効性は確立していない。日本の研究者である萩原らは、417188名の院外心停止患者の登録データを解析し、病院収容前エピネフリンと死亡率、生存者間の機能状況の関連性を検討。

病院収容前エピネフリン使用と、病院到着時自発循環回復は相関するも、1ヶ月時点での生存率尤度低下、良好機能状況生存率も低下。



Prehospital Epinephrine Use and Survival Among Patients With Out-of-Hospital Cardiac Arrest
Akihito Hagihara, et. al.
JAMA. 2012;307(11):1161-1168. doi: 10.1001/jama.2012.294 

前向き非ランダム化観察propensity analysis
417 188名の日本のOHCA (2005-2008)、EMS到着前18歳以上で、EMSにて処置され、病院搬送患者例


病院到着前自発循環改善
総サンプル
エピネフリン群 2786 /15 030 (18.5%) 
非エピネフリン群 23 042 / 402 158 (5.7%)  (all P<.001)
propensity-match化患者(13401名)
エピネフリン群 2446(18.3%)
非エピネフリン群 1400(10.5%)   (all P<.001)


生存者解析
総サンプルでの1ヶ月生存、CPC1/2、OPC1/2生存者
エピネフリン群 805 (5.4%)、 205 (1.4%)、 211 (1.4%)
非エピネフリン群 18 906 (4.7%)、8903 (2.2%)、 8831 (2.2%)   (all P<.001)

propensity-matched患者での対応数
エピネフリン群 687 (5.1%)、173 (1.3%)、 178 (1.3%)
非エピネフリン群で 944 (7.0%)、413 (3.1%)、 410 (3.1%)  (all P<.001)



全患者で、 収容前エピネフリンと収容前自然循環回復に正の相関 (補正化 OR [OR], 2.36; 95% CI, 2.22-2.50; P < .001)
propensityマッチ化患者でも正の相関認める  (補正化 OR, 2.51; 95% CI, 2.24-2.80; P < .001)


一方、全患者において、収容前エピネフリン使用と長期アウトカム測定値との負の相関 (補正化 OR: 1-month survival, 0.46 [95% CI, 0.42-0.51]; CPC 1-2, 0.31 [95% CI, 0.26-0.36]; and OPC 1-2, 0.32 [95% CI, 0.27-0.38]; all P < .001)

同様に、propensity-match化患者でも負の相関  (補正化 OR: 1-month survival, 0.54 [95% CI, 0.43-0.68]; CPC 1-2, 0.21 [95% CI, 0.10-0.44]; and OPC 1-2, 0.23 [95% CI, 0.11-0.45]; all P < .001)





長時間人工呼吸鎮静: デクスメデトミジン(α2アゴニスト) vs ミダゾラム or プロポフォール

人工呼吸遷延化した場合、ミダゾラムやプロポフォールによるセデーションは、重篤な副事象を生じる。Jakobらは、α2アゴニストである塩酸デクスメデトミジン(プレセデックス)による沈静をミダゾラム・プロポフォール比較2つの多施設ランダムトライアル(998名の24時間以上の人工呼吸必要と予想される患者対象)

デクスメデトミジンのミダゾラム・プロポフォール比較による軽度・中等度鎮静への非劣性、ミダゾラム比較での総人工呼吸時間減少効果を示した。

しかし、デクスメデトミジンはより副作用(低血圧、徐脈)が多い。


Dexmedetomidine vs Midazolam or Propofol for Sedation During Prolonged Mechanical Ventilation
Two Randomized Controlled Trials
JAMA. 2012;307(11):1151-1160. doi: 10.1001/jama.2012.30




Duration of Mechanical Ventilation and Intensive Care Unit Stay

noteへ実験的移行

禁煙はお早めに! 米国における人種・民族・性別による喫煙・禁煙での死亡率相違|Makisey|note 日常生活内の小さな身体活動の積み重ねが健康ベネフィットをもたらす:VILPA|Makisey|note