2013年8月31日土曜日

COPD:テストステロン低値となりやすいが、補充療法効果エビデンスは不十分

低テストステロン値が、可逆性となりえる機能障害、衰弱のリスク要素とする考え方もある。ホルモン補充療法を正当化する考え方。フィットネスアウトカムやQOL、生存率まで考えれば絶対的に使用すべきという状況にはまだ無いと思う。

COPD患者に於ける、内在性テストステロン値と、テストステロン治療の運動能力・HRQoLアウトカム効果をシステマティックに評価試み

Endogenous testosterone level and testosterone supplementation therapy in chronic obstructive pulmonary disease (COPD): a systematic review and meta-analysis
Evan Atlantis , et. al.
BMJ Open 2013;3:e003127 doi:10.1136/bmjopen-2013-003127

9つの観察研究、COPD男性 2918名は、対照比較で、テストステロン値低い  (weighted mean difference was –3.21 nmol/L (95% CI −5.18 〜 −1.23))

6つのRCT、287名では、ピーク筋力とピーク心血管フィットネスアウトカム研究5つあり、HRQoLアウトカム研究3つ

テストステロン治療は、ピーク筋力改善(標準化平均差 (SMD) was 0.31 (95% CI 0.05 〜0.56))、ピークworkload  (SMD  0.27 (95% CI 0.01 〜 0.52))   (プラシーボ比較は1つ除いて全て)で効果。

しかし、peak VO2  (SMD 0.21 (95% CI −0.15 〜 0.56)) 、 HRQoL (SMD   –0.03 (95% CI −0.32 〜 0.25))では効果認めず

結論としては、COPD患者では、テストステロン低値となりやすい。
しかし、テストステロン補充療法により運動能力アウトカム改善、すなわち、ピークの筋力、ピークの運動量増加を示す可能性はあるが、そのエビデンスは貧弱。

COPDと閉塞型無呼吸: CPAP使用するほど死亡率減少

Stanchina ML; Welicky LM; Donat W; Lee D; Corrao W; Malhotra A. Impact of CPAP use and age on mortality in patients with combined COPD and obstructive sleep apnea: the overlap syndrome. J Clin Sleep Med 2013;9(8):767-772.

オーバーラップ症候群って、喘息・COPD併発状態を表す意味でも用いられているが、この場合は、COPDと閉塞型無呼吸(OSA)

10,272名のpost hoc解析、COPD 1,112名、 OSA 2,284名
併発のオーバーラップ症候群 227名で、死亡 17名

多変量解析にて、死亡率に関連する独立因子は、CPAP使用と年齢(HR 0.71、1.14, p < 0.001、 0.002)

CPAP使用時間長いほど、死亡率減少
年齢はCPAP使用と相関せず

後顧解析なので自ずと研究解釈に限界

TIOSPIR研究:スピリーバはミスト、ドライパウダーとも、死亡率・心血管イベント同等

"Tiotropium Respimat inhaler and the risk of death in COPD"
Wise RA, et al
N Engl J Med 2013; DOI: 10.1056/NEJMoa1303342.


スピリーバのミストバージョンは、ドライパウダーと、死亡率・心血管イベントにおいて、安全性同等という TIOSPRIRトライアルの結果


情報ソース:http://www.medpagetoday.com/Pulmonology/SmokingCOPD/41290
メディア:http://www.bloomberg.com/news/2013-08-30/boehringer-s-respimat-inhaler-meets-safety-goal-in-study.html

メディアでは、べーリンガーのスピリーバ・レスピマットは安全性目標を満たしたと報道している。


そもそも、スピリーバ・ドライパウダーを主な対象としていたUPLIFT研究で、「死亡率減少・心血管イベント減少」効果が示されている。故に、ミストも安全ですよという執筆者の意向。

ただ、UPLIFT研究において、「死亡率・心血管イベント」は、セカンダリエンドポイントであり、これを強調しすぎるのは問題であり、UPLIFT研究はスピリーバの安全性をプライマリエンドポイントで示した報告ではない。「消防署の方からと偽る消火栓詐欺と同じやり方」と似ている。

ロジックはこうだ。
「UPLIFTでスピリーバ・ドライパウダーの死亡率減少・心血管減少が示された」

「スピリーバ・ドライパウダーとスピリーバ・レスピマットは安全性上は同等」

「故に、スピリーバ・レスピマットは、死亡率・心血管イベント上安全」
三段論法詐欺

そもそも、この種の報告が出る理由は、BMJメタアナリシスにより、パウダーとミストは別薬剤として扱うべきと主張されるほど安全性に疑問が投げかけられていることが発端。
52%ほどレスピマットで包括的死亡率増加懸念されている製剤である(あった)

スピリーバ・レスピマットの安全性疑惑: メタアナリシス 死亡率52%増加2011年 06月 15日

呼吸器学会のお偉いさんたちはこの話題を概してスルーするところが、滑稽。


UPLIFTのセカンダリアウトカム結果を持ち出して、間接的に安全・・・というのはちょっといただけない。

その種の主張を講演会でするお偉いさんが居たら・・・アホ認定で良いと思う。


スピリーバ・レスピマットを含む、LAMA、LABA全体への安全性懸念払拭というにはほど遠いと思うのだが・・・

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