2013年11月22日金曜日

システマティック・レビュー:スタチンと認知機能 ・・・ 現時点では明確な結論づけできるデータ無し

稀なケースながら、スタチン関連記憶喪失の報告が有る。
e.g. Statin-associated memory loss: analysis of 60 case reports and review of the literature. Pharmacotherapy. 2003 Jul;23(7):871-80.


むしろリスク減少してもおかしくなく、観察研究でもそういう報告がなされている。
いまだ、明確なエビデンスがないところを見ると、あまねく有効というわけでもなく、副作用としても明確でもないということなんだろう

Statins and Cognitive Function: A Systematic Review
Karl Richardson,  et. al.
Ann Intern Med. 2013;159(10):688-697.

低品質エビデンスでは、アルツハイマー病増加せず、procedural memory、注意、運動速度に関する認知機能パフォーマンスも差を認めないということが示唆される。
中品質エビデンスでは、認知症、MCI増加させないことを示唆また、全般認知パフォーマンススコア、行動遂行機能、叙述メモリー、遂行速度、視覚認知機能において変化認めず
FDA市販後サーベイランスデータベースでは、認知機能関連副作用は同種薬剤に比べ低頻度とされた。





ビタミン信仰弊害:徐放性ナイアシンにて虚血性卒中増加・・・ かろうじて否定

これもビタミン信仰の被害事例か・・・

 徐放性ナイアシン(ERN)は、当初、低HDL/TG高値心血管疾患症例に対して、臨床的ベネフィットを示す目的のトライアルだったが、HDLコレステロール増加させるも、ベネフィット効果認めなかった。

(臨床的アウトカム軽視の日本のトライアルなら、合格だったのかもしれないという・・同時、恐ろしさを感じる)

このトライアルから、シンバスタチンに、ERNを加えると、虚血性卒中増加させるという逆効果が示された。ただ、臨床的には有意差があるが、数は少なく既知リスク要素補正多変量解析ではナイアシンと虚血性卒中の相関性は消失したとのことだが、薬剤としてはあり得ない話だし、有意差がないといっても p=0.0631・・・

と、同時に、 HDL増加ターゲット治療に関する疑念も・・・



Extended-Release Niacin Therapy and Risk of Ischemic Stroke in Patients With Cardiovascular Disease
The Atherothrombosis Intervention in Metabolic Syndrome With Low HDL/High Triglycerides: Impact on Global Health Outcome (AIM–HIGH) Trial
Koon K. Teo, et. al.
on behalf of the AIM-HIGH Investigators
Stroke. 2013; 44: 2688-2693
Published online before print July 23, 2013,
doi: 10.1161/​STROKEAHA.113.001529


ITT解析では、非致死性虚血性卒中 50 ; プラシーボ 18(1.06%) vs ERN 32(1.85) (ハザード比 [HR], 1.78 [95% 信頼区間 {CI}, 1.00–3.17; P=0.050) 
多変量解析にて、独立した虚血性卒中との関連性は、65歳超の年齢 (HR, 3.58; 95% CI, 1.82–7.05; P=0.0002)、卒中・TIA・頸動脈疾患既往  (HR, 2.18; 95% CI, 1.23–3.88; P=0.0079)、ベースラインLp(a) (HR, 2.80; 95% CI, 1.25–6.27 (最小3分位と中間比較3分比較); HR, 2.31; 95% CI, 1.002–5.30

ERNは有意な関連性認めず HR, 1.74; 95% CI, 0.97–3.11; P=0.063).




【ビタミンの害を正当に広めると都合の悪い人たち → サプリメント屋や製薬会社さん、ネット通販したいどこかの方々、市井の知ったかぶり屋さん】

抗酸化ビタミンサプリメントは、主要心血管イベント、心筋梗塞、卒中、総死亡、心血管死へ無影響・無効果  2013/03/05

ビタミンE過剰摂取で骨減少=ネズミで確認、人の調査必要―慶大など 2013/03/05

抗酸化物質だけを大量にとると酸化促進物質 ...
intmed.exblog.jp/12809477


ビタミンE 前立腺がんリスク増加 
intmed.exblog.jp/13793866/ 

非アルコール性脂肪肝炎にビタミンE有効 ...
intmed.exblog.jp/10513533/

 高用量ビタミンEは寿命を短くする 続編
intmed.exblog.jp/1323743/

APO E2はアルツハイマー病治療・予防に役立つかもしれない

 APOE2 をウィルスベクターで脳内に導入すると、異常βアミロイド蛋白レベルが低下する。 さらに、ヒトAPOE2、APOE3、APOE4 isofromと緑色蛍光蛋白とともに導入し検討すると、42-merのβアミロイド対照比較でそれぞれに異なる反応が見られた。


APOE2では、対照およびAPOE3に比べ2/3まで減少、 APOE4では約80%まで増加し、
βアミロイドプラーク密度もそれぞれに改善、悪化の逆方向の反応が見られた。

以上から、APOE遺伝子関連による治療の可能性がひらけた画期的報告

"Gene transfer of human apoe isoforms results in differential modulation of amyloid deposition and neurotoxicity in mouse brain"
Hudry E, et al
Sci Transl Med 2013; DOI: 10.1126/scitranslmed.3007000.
http://stm.sciencemag.org/content/5/212/212ra161

apolipoprotein E (APOE)のε4 allele の遺伝性はアルツハイマー病の遺伝的リスク要素として最強。APOE ε2は逆の作用をもつ。メカニズム上、APOEがリスクとなるか、逆に、予防効果となるかは不明であった。gene transferを用い、アミロイドプラーク保有transgenic mouseで、ヒトAPOE遺伝子発現の実証を行った。

in vivo microdialysis、postmortem array tomographyによりAPOE-介在的Aβ関連神経毒性を検討。ヒトAPOE4にて、間質内液オリゴマーAβを増加させ、プラーク沈着増悪的に働いた。

ヒトAPOE2暴露後、逆に、オリゴマーAβ減少、プラーク減少として働いた。

APOE4によりプラーク周囲シナプス喪失、異栄養性神経突起悪化が見られ、APOE2によるその影響が減弱される。

CNSから血中へのAβのegress(排出)は、APOE2比較すると、APOE3、APOE4において、減少。これは、isoform特異的AβのCNS内貯留と一致する所見。

APOE isoform により、アミロイド沈着・クリアランスへ、異なる影響を与え、Aβ介在シナプス毒性に影響を与えることが分かった。

治療的アプローチとしてAPOE4を減少、APOE2を増加させることも考えられる。

軽度脳震盪でも、認知・身体・感情症状続き、MRI上左右不均等な所見認める

軽度脳震盪(しんとう)患者でも長期間、認知機能 、身体症状、情緒・感情的症状に影響を生じ、神経画像上の所見として存在持続する。4ヶ月後は左右不均等なdiffusion所見が脳MRIに見られるという知見。


"A prospective study of gray matter abnormalities in mild traumatic brain injury"
Ling J, et al
Neurology 10.1212/01.wnl.0000437302.36064.b1

50名の軽度頭部外傷患者と、性・年齢・教育レベルマッチ化対照との比較

外傷後の臨床・神経画像所見を14日から26名は4ヶ月目まで回収

亜急性外傷期において、認知、身体、感情面の訴え多く、4ヶ月後には有意に減少。

亜急性期において、両側前頭前皮質のdiffusion(fractional anisotropy:FA、diffusivityを意味)増加。左前頭前皮質の病変は、受傷後4ヶ月間持続する。


患者とマッチ化対照群では、神経心理的検査事項、灰白質萎縮/平均diffusivityにおいてどのポイントでも差を認めず


結論としては、皮質のFA増加は神経外傷後も灰白質の動物実験所見と一致した状況と類似し、細胞毒性浮腫、反応性のgliosisと関連する。この研究では皮質・皮質下萎縮のエビデンスがなく、慢性疾患経過初期に起きるニューロンあるいはneuropil喪失とつながるエビデンスは示せてない。



関連:
AAN:スポーツしんとうガイドライン
http://kaigyoi.blogspot.jp/2013/03/aan.html 


RSNA報告: サッカーと脳障害画像診断証拠2011 11 30
http://intmed.exblog.jp/14092689/

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