2012年12月11日火曜日

低放射線量CT肺がん検診発端肺がんの25%は過剰診断

低放射線量CT検診による肺がん診断は、体積倍加時間:volume-doubling time (VDT)でみると、25%程度は過剰診断である。


Estimating Overdiagnosis in Low-Dose Computed Tomography Screening for Lung Cancer: A Cohort Study
Giulia Veronesi, et. al.
Ann Intern Med. 4 December 2012;157(11):776-784

175名の原発性肺癌と診断された症例

ベースラインで55名ががん診断、120名がその後診断。
この後者のうち、新規(以前のスキャンで確認不可)かつ急速進行例(DVT中央値 52日間)19例(15.8%)
進行例101(84.2%)で、迅速進行70(58.3%)、その他31(25.8%)で、緩徐進行15.0%、遅発的10.8%

肺がん特異的死亡は新規患者で有意に高率(9.2%/年 vs 緩徐・遅発 0.9%/年)

急速進行 60%、新規発症ではstage  I が45%で、生存率良好 

がん検診とは、死亡アウトカムをプライマリエンドポイントにしなきゃ、なにやってるかわからない。ところが日本の「がん検診」は発見率だけを自慢してるところが多い。 近藤先生の“がんもどき”は正しい部分があったわけだが・・・みつかった、あらゆるがんを“放置理論”に・・・となると、やはり抵抗を感じる。

人種差(黒人・白人):黒人は血圧による卒中リスク増加効果、白人より強い

45-65歳の間に、卒中頻度は白人より黒人で2-3倍多い、それはなぜか?

高血圧との関係で、検討

 Racial Differences in the Impact of Elevated Systolic Blood Pressure on Stroke Risk
George Howard, et. al.
Arch Intern Med. 2012;():1-6. doi:10.1001/2013.jamainternmed.857.

4-5年フォローアップ下で、収縮期血圧(SBP)の10mmHgの増加は、白人の卒中リスクは8%(95%CI、0-16%)増加し、黒人では 24%(95%CI、14%-35%) 増加(交互作用 (interaction) P値 .02)

45-64歳の場合、白人に対する黒人のハザード比は 正常血圧では 0.87(95%CI 1.57)、高血圧前症では1.38(95%CI,0.94-2.02)、stage 1高血圧では 2.38(95%CI, 1.19-4.72)

卒中リスクにおける人種差をあらわす。

考察だが、人種差は、高血圧有病率の問題と、高血圧コントロールの困難さが考えられる。

日本国内研究:市民による早期除細動・院外心停止患者に対しては胸骨圧迫単独心肺蘇生が有効

日本国内の研究

市民による早期除細動(PublicAccessDefibrillation)された、病院外心停止患者では、胸骨圧迫単独心肺蘇生は、標準CPRに比べ、より有効。

胸骨圧迫単独CPRは、突然倒れた場合に出くわしたとき、市民による早期除細動使用状況では、もっとも好ましいシナリオということになる。

"Chest compression-only cardiopulmonary resuscitation for out-of-hospital cardiac arrest with public-access defibrillation: A nationwide cohort study"
Iwami T, et al
Circulation 2012; 126; DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.112.109504.

日本の観察研究で、5年間、1376の、CPRを受け・市民による早期AED使用状況のショック状態の、病院外心原性心停止bystander-遭遇を登録

506(36.8%)が胸骨圧迫単独CPRを受け・市民、870(63.2%)が通常CPR。

神経学的アウトカム良好な1ヶ月生存率は、胸骨圧迫単独CRP群 40.7%(206/506)で、通常CRP群 32.9%(286/870)より良好であった 補正オッズ比, 1.33; 95% 信頼区間, 1.03–1.70)

減量介入:ICT利用で減量促進

 総務省・経産省・厚労省が提示する、ICTの医療への応用ってのは、お役人さん達あるいは御用学者さん達の頭の固さ(悪さ)を反映して、(コスト効果理論とは無縁の)目先のコスト削減だけが目標となっている。20年近く遠隔医療、業務効率化、事故防止 と言い続けてるが、コストは現場持ち。利益はFとかNなどの企業利益だけ。 現場の利益性が主眼じゃない、日本の役人主導のICTって・・・なんにも期待を抱けない。

e.g. ) 総務省: http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/ictriyou/index.html




 世界的にみたら、医療へのICT応用ってのは、進化しているというのに・・・ 


 わざと、参考文献を付記したが・・・ 読みづらい・・・ 要は、食事・運動自己評価は有効で、携帯デバイスでネット接続・リアルタイム評価・介入可能で、その有効性の報告もぼちぼち出てるということ。


 食事、運動量自己モニタリングは、減量成功と関連する(Burke LE, et. al. Self-monitoring in weight loss: a systematic review of the literature.  J Am Diet Assoc. 2011;111(1):92-102)。そして、そのモニタリングは携帯デバイス接続にて可能となる(Beasley JM,  et. al. Evaluation of a PDA-based dietary assessment and intervention program: a randomized controlled trial.  J Am Coll Nutr. 2008;27(2):280-286、 Burke LE, Styn MA, Glanz K,  et al.  SMART trial: a randomized clinical trial of self-monitoring in behavioral weight management-design and baseline findings.  Contemp Clin Trials. 2009;30(6):540-551、 Burke LE, Conroy MB, Sereika SM,  et al.  The effect of electronic self-monitoring on weight loss and dietary intake: a randomized behavioral weight loss trial.  Obesity (Silver Spring). 2011;19(2):338-344)

モバイル・デバイスは、瞬時決断サポートを可能(Baker RC, et.al. Self-monitoring may be necessary for successful weight control.  Behav Ther. 1993;24(3):377-394、 Baker RC, et.al. Weight control during the holidays: highly consistent self-monitoring as a potentially useful coping mechanism.  Health Psychol. 1998;17(4):367-370)とし、食事・運動のエネルギー値チェックし、リアルタイムにエネルギーバランスを追跡可能とする。
テクノロジーサポート減量介入研究は、ヒト介入に代わり、ディジタルツールがより効果的で、より受容性が高まる可能性を示唆するものであった(Mohr DC, et. al. Supportive accountability: a model for providing human support to enhance adherence to eHealth interventions.  J Med Internet Res. 2011;13(1):e30、 Rao G, et al; American Heart Association Obesity Committee of the Council on Nutrition, Physical Activity and Metabolism; Council on Clinical Cardiology; Council on Cardiovascular Nursing; Council on the Kidney in Cardiovascular Disease; Stroke Council.  New and emerging weight management strategies for busy ambulatory settings: a scientific statement from the American Heart Association endorsed by the Society of Behavioral Medicine.  Circulation. 2011;124(10):1182-1203)。


ネット接続モバイル技術システム、電話コーチング、標準肥満治療を比較


個人別治療プログラムによるスケール可読性のある、テクノロジーと遠隔介入を用いたハイブリット介入
可動性意思決定サポート(ie, カロリー・活動性フィードバック)を供給するシステムで、システム的なグループ肥満プログラムの相加的ベネフィットを検討。

 Integrating Technology Into Standard Weight Loss TreatmentA Randomized Controlled Trial
Bonnie Spring, et.al
Arch Intern Med. 2012;():1-7. doi:10.1001/jamainternmed.2013.1221.

70名の成人(BMI>25、40以下)を2つのarm、12ヶ月研究
・ standard-of-care group treatment alone (標準治療群)
・ standard and connective mobile technology system (+mobile群)

被験者は、退役軍人局外来クリニック開催の週2回減量グループに参加
+mobile群では、食事・運動自己モニターのための個別的ディジタル補助装置を提供
6ヶ月間週2回コーチングコールを受ける。

体重をベースライン、3、6、9、12ヶ月フォローアップ

69名(平均年齢 57.7歳、男性 85.5%)が介入を受け。
長軸的ITT解析にて、+mobile群は、標準群より、どのベースライン後の時点でも、体重3.9kg(対照群比較で、3.1%の体重減少; 95% CI, 2.2-5.5 kg) 余計に減量



ベースライン後どの時点でも、ベースライン比較5%体重減少の標準群比較オッズ比、+mobile群で有意に高い(オッズ比, 6.5; 95% CI, 2.5-18.6)


結論:通常のケアシステムに、パーソナル・ディジタル補助・電話コーチングシステム追加で、短期間の減量追加効果を認めた。
モバイルネット接続技術は、医師主導減量治療の促進効果を、scalable mechanismとして役割を果たすかもしれない。

インスリノーマ診断:Amended I:G ratioの正確性

Amended I:G ratio = (serum insulin uU/ml x 100)/(serum glucose mg/dl -30)
http://www.vetstream.com/canis/Content/Lab_test/lab00353.asp

Diagnostic Accuracy of an “Amended” Insulin–Glucose Ratio for the Biochemical Diagnosis of Insulinomas
Michael A. Nauck, et. al.
Ann Intern Med. 4 December 2012;157(11):767-775

114名を評価(49名がインスリノーマの手術切除組織確定診断、64名除外)
年齢レンジ0-16歳、平均10歳

インスリノーマ例は、対照例に比べ、空腹長時間後、インスリン、Cペプチド高値。
amended insulin–glucose ratio はインスリノーマを正確に48/49同定し、対照例を64/65除外
PPV、NPVはそれぞれ 0.98 (95% CI, 0.89 ~ 1.00) 、0.99 (CI, 0.92 ~ 1.00)
一方、 ぶどう糖・インスリン・Cペプチド濃度クライテリアでは、それぞれ 0.75 (CI, 0.63 ~ 0.85)、 0.98 (CI, 0.89 ~ 1.00)であった。

珍しいと思うけど、わたし自身も、開業初期のころ1例診断した手術確認例がある。
臨床医は、やはりインスリノーマは頭の片隅にでも置く必要があると思う。

子供の自殺による親への影響と、親の事前的条件

親の死の影響:自殺企図リスク増加のタイミング自殺 2012/12/11

逆に、子供の自殺死による親への影響


子供の自殺による死別は、健康上も、社会的アウトカムにも悪影響を与え、自動車衝突事故: motor vehicle crash (MVC)による死別と同様な後遺症を残す。
子供の自殺による死別は、その子供の両親において、もともと、精神疾患・身体疾患・低所得傾向である場合が多い。


Parents Bereaved by Offspring SuicideA Population-Based Longitudinal Case-Control Study
James M. Bolton,  et. al.
Arch Gen Psychiatry. 2012;():1-10. doi:10.1001/jamapsychiatry.2013.275.

自殺死別は、子供の自殺後2年間に、それ以前に比べ、うつ (ARR, 2.14; 95% CI, 1.88-2.43) 、不安障害 (ARR, 1.41; 95% CI, 1.24-1.60)、離婚(ARR, 1.18; 95% CI, 1.13-1.23) 増加をもたらす

自殺死別とMVC死別両親は、死亡前と死亡後に、アウトカムに、さほど違いはない。

うつ発生率では、MVC死別両親の方が、自殺死別両親より、発生率が高い  (19.9% vs 15.9%; P = .005)
一方、自殺死別の親は、精神疾患入院率増加率が高い (P = .049)
自殺死別の親は、MVC死別例より、子供の死亡前より、うつ病を有する場合が多い (ARR, 1.30; 95% CI, 1.06-1.61)、同様に、身体疾患 (ARR, 1.32; 95% CI, 1.19-1.45)、低所得(ARR, 1.34; 95% CI, 1.18-1.51) が多い。


親の死の影響:自殺企図リスク増加のタイミング

子供の頃の親の死というのは、長く、子供の心に影響を与える。子供へのモニタリング・介入が必要。そのクリティカルな時期とは5年間だが、それ以降も影響が残る。
一方、思春期以上の場合でも、影響が1-2年間とくに深刻で、その間のモニタリング・介入が必要。


Time to Hospitalization for Suicide Attempt by the Timing of Parental Suicide During Offspring Early Development  
S. Janet Kuramoto, et. al.
Arch Gen Psychiatry. Published online December 10, 2012. doi:10.1001/jamapsychiatry.2013.274

住民ベース後顧的コホート

小児期に、自殺もしくは偶発事故による親の死を経験した、その子供のリスクは、5年間ほど、他の年代での経験群より、それを上回り、数十年継続する。
思春期や若年成人世代で親の死を経験した子供は、親の死1-2年内リスク増加し、時と共にリスク減少する。
子供や若年成人の親の自殺経験した子供は、偶発事故死の子供よりその自殺企図入院は早増す。


自殺企図リスクの早期モニタリング・介入にとって重大な時期は、両親死亡後1-2年間で、子供の頃の親の死を経験した場合は数十年ほど長く警戒が必要。

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