2012年2月7日火曜日

ポリフェノール・フラボノイドに関する知見:レスペラトロールのみ焦点 成分を複合的評価する方向へ サプリメントとして補給は推奨されず

情報ソース:http://www.theheart.org/article/1349603.do#bib_4


フラボノイド、ポリフェノールを含む食品の健康上のベネフィットに関する新しい知見が数週間毎に明らかになっている。ベリー類、チョコレート、赤ワインなど。

・ フラボノイド含量の高い食品摂取と死亡率低下減少

McCullough ML, Peterson JJ , Patel R, et al. Flavonoid intake and cardiovascular disease mortality in a prospective cohort of US adults. Am J Clin Nutr 2012; 95:454-464.


・ 赤ワインによるベネフィットを有する抗炎症効果
Chiva-Blanch G, Urpi-Sarda M, Llorach R, et al. Differential effects of polyphenols and alcohol of red wine on the expression of adhesion molecules and inflammatory cytokines related to atherosclerosis: A randomized clinical trial. Am J Clin Nutr 2012; 95:326-334. 


反論がないわけではない。

Dr Dipak Das (University of Connecticut) は、例のフォト編集詐欺(http://www.theheart.org/article/1339923.do)のごとく、赤ワイン単独の効果をフラボノイド全般の心血管健康改善効果に誘導する詐欺が行われていたことを述べている。


サプリメントに関しては、有効性判明した食品一成分があっても、結局は、効果激減の可能性がある(サプリメント製品の効果への疑念:ブロッコリー:乾燥沫で効能期待物質激減の仕組み 2011年 01月 31日)





レスベラトロールのみスポットライトの現状
Resveratrolが最も研究されているが、それ以外のポリフェノールやフラボノイドに関してはベネフィットは明らかでないと同様に述べている。

個別的でない研究として、Nurses' Health Studyは10万名もの登録で、フラボノイドが高血圧発症リスク減少を示す(Cassidy A, O'Reilly EJ, Kay C, et al. Habitual intake of flavonoid subclasses and incident hypertension in adults. Am J Clin Nutr 2011; 93: 338-347. )

フラボノイド高用量と虚血性卒中リスク減少・心血管疾患死亡率減少効果が、中年フィンランド男性のコホート研究で見いだされている(Mursu J, Voutilainen S, Nurmi T, et al. Flavonoid intake and the risk of ischaemic stroke and CVD mortality in middle aged Finnish men: The Kuopio Ischaemic Heart Disease Risk Factor Study. Br J Nutr 2008; 100:890-895.)。



フラボノイド・パズル問題
多くの研究はフラボノイドの少数を検討しただけで食品中のフラボノイドのデータベース記載が十分ではなかった。
McCulloughはフラボノイドの数を増加アップデートすることで、7つのカテゴライズ、そして、5つに心血管疾患との逆相関を観察できた。
大豆など主なisoflavoneは、この研究でリスク減少と関連性がなかった。
isoflavoneの逆相関研究アジアで行われたもので、多数の大豆製品が食されている地域である。
大豆イソフラボンの健康面でのベネフィットが米国では乏しいと・・・)

McCulloughは、高フラボノイド含量食品が心血管疾患健康のベネフィットがあることを支持し、これらの食品の多くが健康食品カテゴリーに分類されていること、フルーツ・野菜だけ出なく、種子類、茶、ココア、赤ワインなど


McCulloughは、フラボノイド類をサプリメントで摂取することを勧めていない。

何故なら、その中の一つの成分だけが必要なのか、他の成分は必要ないのか、食事として複合的に摂取することが勧められるのである(たとえば、抗酸化物質だけを大量にとると酸化促進物質として溜まる 2011年 06月 09日) 。




たとえば、植物ベースとして摂取し、それが健康な脂質として心血管疾患予防に働くことには、大量のエビデンスがある。そのベネフィットは、一つの成分からのベネフィットを示しているわけではない。これら健康な食品を合わせ食べることを推奨しているわけである。


似たような果物をとるのではなく、リンゴを毎日食べるのではなく、ベリーや他のタイプの果物をとること。野菜も新しい野菜をトライすること。異なる食品を少し加えるだけで成分を多くとることとなる。

フラボノイドは血管系へベネフィットのより確信的エビデンスがある。一方、脳、癌への効果示唆がある。

・・・
赤ワイン
チョコレート

何を食べたら良いか?
赤ワイン、チョコレートが良いと言っても、最も検討されたものだからというだけであり、これらが最善という証拠はない。茶、ベリー、オレンジジュースも同様。

メカニズム
複合物作用のメカニズム、ゲインは不明。多くのメカニズム、抗酸化、抗炎症作用、LDL酸化減少、弱いエストロゲン作用など 報告。

McCulloughらは、 nitric-oxide synthaseは特に血管拡張作用が重要で、フラボノイド豊富な食品、緑茶、大豆製品、ココア、チョコレートは、FMD増加作用、LDLコレステロール低下、血圧低下作用を示す。

レスベラトロールは特定のPDEを阻害し、間接的にsirtuin 1活性化する(Park SJ, Ahmad F, Philp A, et al. Resveratrol ameliorates aging-related metabolic phenotypes by inhibiting cAMP phosphodiesterases. Cell 2012; 148;421-433.)。


ACP臨床ガイドライン委員会:2型糖尿病経口治療 ・・・ 経口治療はメトホルミン第1選択

ACP臨床ガイドライン委員会:2型糖尿病経口治療
Annals of Internal Medicine   February 7, 2012 vol. 156 no. 3 218-231

Oral Pharmacologic Treatment of Type 2 Diabetes Mellitus: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians 

Amir Qaseem, MD, PhD, MHA; Linda L. Humphrey, MD, MPH;Donna E. Sweet, MD;Melissa Starkey, PhD; and Paul Shekelle, MD, PhD
for the Clinical Guidelines Committee of the American College of Physicians
フリー pdf:http://www.annals.org/content/156/3/218.full.pdf+html 


食事、ライフスタイル変容に治療応答しない患者への第1選択はメトホルミン

メトホルミン単独で高血糖コントロール出来ない場合、二次選択薬へ

Recommendation 1: ACP recommends that clinicians add oral pharmacologic therapy in patients diagnosed with type 2 diabetes when lifestyle modifications, including diet, exercise, and weight loss, have failed to adequately improve hyperglycemia (Grade: strong recommendation; high-quality evidence).
Recommendation 2: ACP recommends that clinicians prescribe monotherapy with metformin for initial pharmacologic therapy to treat most patients with type 2 diabetes (Grade: strong recommendation; high-quality evidence).
Recommendation 3: ACP recommends that clinicians add a second agent to metformin to treat patients with persistent hyperglycemia when lifestyle modifications and monotherapy with metformin fail to control hyperglycemia (Grade: strong recommendation; high-quality evidence).

Clinical Considerations
 • Good management of type 2 diabetes with pharmacologic and nonpharmacologic therapies is important and includes patient education, evaluation, and self-management, for microvascular and macrovascular complications, treatment of hyperglycemia, and minimization of cardiovascular and other long-term risk factors.
• Nonpharmacologic therapy includes dietary modifications, regular exercise, lifestyle modifications, and weight loss.
• Initiation of pharmacologic therapy is an important approach for the effective management of type 2 diabetes when weight loss and/or lifestyle modification fails.
• Metformin monotherapy was more effective in decreasing glycemic levels than other monotherapies, as well as in combination therapy with a second agent. In addition, metformin has the advantage of reducing body weight and improving plasma lipid profiles (in most cases).
• Although combination therapy more effectively reduces hemoglobin A1c levels, it is also associated with more adverse events.


うつ病治療と自殺念慮・自殺関連行動

「抗うつ薬で自殺が増加するか?」という問題は、世界的に、大きな問題となった。

日本では、他分野同様、関係団体の先生たちが、根拠ある証拠を示さず、大声を張り上げるだけ、あるいは、立場を利用して、強引に、強弁をふるうだけという事態が日本では続いてきた。

SSRIが自殺の危険性をたかめるという誤った認識? 2005年 04月 27日

これで結論とは思えないが、SSRIと自殺関連の問題に少しエビデンスが加わった。

ONLINE FIRST
Suicidal Thoughts and Behavior With Antidepressant Treatment
Reanalysis of the Randomized Placebo-Controlled Studies of Fluoxetine and Venlafaxine
Robert D. Gibbons, PhD; C. Hendricks Brown, PhD; Kwan Hur, PhD; John M. Davis, MD; J. John Mann, MD

Arch Gen Psychiatry. Published online February 6, 2012. doi:10.1001/archgenpsychiatry.2011.2048
http://archpsyc.ama-assn.org/cgi/content/full/archgenpsychiatry.2011.2048

フルオキセチン (Fluoxetine:プロザック)と ベンラファキシン(venlafaxine: エフェクサー)のすべてのスポンサー施行RCT

自殺念慮,(Suicidal thoughts) ・自殺関連行動(suicidal behavior)は、fluoxetineやvenlafaxineともプラシーボと比べ、成人・老人患者とも時と共に減少。

若年者では、自殺念慮・自殺関連行動治療の有意な影響は認めず、しかし、うつそのものは治療で反応。

成人では、うつ症状減少につれて自殺念慮(suicidal ideation)及び自殺企図(suicide attempt)は、減少する。

全年齢群共に、うつ重症度は薬物により改善し、希死念慮(suicidal ideation)や自殺行為と有意に相関する。





でも、CBTなどの対応がなされてない日本の精神科医医療において、果たして、上記報告を日本にそのまんま適応できるだろうか?


【関連】
SSRIと自殺 2007年 06月 28日

SSRIと自殺  BMJ読者欄から 2005年 05月 13日




ところで、
要約中だけで、”suicidal thoughts and behavior”、”suicide ideation and attempts”、”suicide ideation or behavior”という言葉が出てきている。

ステッドマンには、“suicide”のみ記載。

自殺傾向ハイリスク者に対する介入研究で考慮すべき事項に関する手引き・米国国立精神衛生研究所(http://ikiru.ncnp.go.jp/ikiru-hp/book/book8.pdf)の日本語訳に従うと、
自殺傾向(suicidality)
自殺関連行動(suicidal behavior)
自殺既遂(completed suicide)
自殺未遂(attempted suicide)
自殺念慮(suicidal ideation)

"suicide thought や suicide apptemptはこの中では英語はあるものの対日本語はなかった。

私が知らないだけなのだろう、自殺関連用語の統一明示を願いたい。



 いま、GKB47なる言葉が問題になってるが、命名はともかく、なんらかの科学的根拠あるのか?

 抗うつ薬と自殺の関係すらまともなエビデンスを提示できなかった日本のお偉いさんたち

その人たちに、エビデンスに基づく自殺対策行政基本理念を・・・と言っても無駄なのだろう。

【参考】
自殺予防対策(厚労省):http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jisatsu/
精神科救急医療ガイドライン(自殺未遂者対応)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jisatsu/dl/11.pdf
自殺関連用語の定義について
「自殺をしたい」と考えることが自殺念慮であり、自殺念慮により自殺するための具体的な行動を行い(自殺企図)死に至った場合は自殺(自殺既遂)であり、生存している場合は自殺未遂と定義する。一方、自殺念慮は存在せず、自殺の意図はなく故意に自らに損傷を加える行為を自傷行為とする。

上述する、自殺傾向ハイリスク者に対する介入研究で考慮すべき事項に関する手引き・米国国立精神衛生研究所(http://ikiru.ncnp.go.jp/ikiru-hp/book/book8.pdf)と異なる定義!!!


この辺に、この関係者たちのいい加減さが・・・ 国家的取り組みをするなら、定義をまず統一して議論や検討を行うのが当たりまえ。片方では米国など外国の対策を直輸入しながら、他では別の定義で議論をして、科学的エビデンスじゃなくて、ほとんど直感で政策(愚策)を決めていこうとする行政。

だから、ゴキブリ47なんて考えつくのだろう!

以下のラジオ文化放送”sokotoko"のtweetを見ると、”有識者の会議”って嘘で官僚が一方的に考え、頭空っぽの軽薄な蓮舫がそのまんま了承した代物。

岸博幸氏「今朝のキーワード『GKB47』なぜ変なネーミングなのか?役所が考え、有識者の『自殺対策推進会議』にかける。この会議が開催されない半年間に決まった。億を越える予算。主導すべき担当大臣だった蓮舫や総理は詫びるべき。他人事のような反応」 #sokotoko @tim1134 (H24.2.8)

日本の行政は、”有識者の意見”全く反映されてない仕組みになっている。

官僚が優秀かって? 冗談じゃない!

Whiteball II Cohort: 初老男性の認知機能低下は喫煙による影響;10年ほど早く認知機能低下

ONLINE FIRST
Impact of Smoking on Cognitive Decline in Early Old Age
The Whitehall II Cohort Study
Séverine Sabia, PhD; Alexis Elbaz, MD, PhD; Aline Dugravot, MSc; Jenny Head, MSc; Martin Shipley, MSc; Gareth Hagger-Johnson, PhD; Mika Kivimaki, PhD; Archana Singh-Manoux, PhD

Arch Gen Psychiatry. Published online February 6, 2012. doi:10.1001/archgenpsychiatry.2011.2016
http://archpsyc.ama-assn.org/cgi/content/short/archgenpsychiatry.2011.2016




Whitehall II study


56歳(range, 44-69歳)の5099名の男性、2137名の女性

主要アウトカム: cognitive test battery として、記憶、語彙、実行機能(1つのreasoning試験と2つの言語流暢性試験の組み合わせ)、総合認知スコア要約パフォーマンス


男性では、語彙力を除くすべての認知機能は10年間で減衰し、これは非喫煙者ではベースライン標準偏差の1/4~1/3に及ぶ。


非喫煙者に比べ、現行喫煙者では認知機能減衰が男性で明らか (10年間減衰 全般認知機能= –0.09 [95% CI, –0.15 to –0.03] 、実行機能= –0.11 [95% CI, –0.17 to –0.05])


禁煙開始した喫煙経験者は遂行能力低下  (–0.08 [95% CI, –0.14 to –0.02])し、長期禁煙期間喫煙経験者は、非喫煙者と同様の減衰となる。。


ドロップアウト・死亡例を加えた解析では、この差は1.2~1.5倍となる。


女性では、認知機能減衰は喫煙状態によるばらつきが見られない。 




現行喫煙は10年ほど早い認知機能低下と同等の影響を与える。

これは、社会的問題でもある。

この研究ではアルコール摂取、食事、運動、コレステロール、血圧、卒中・心疾患補正しても男性ではこの研究結果に影響を与えなかった。
社会階層部分の関連はむしろドロップアウト・死亡例により過小評価されてるのではないかという考察がなされている。


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禁煙はお早めに! 米国における人種・民族・性別による喫煙・禁煙での死亡率相違|Makisey|note 日常生活内の小さな身体活動の積み重ねが健康ベネフィットをもたらす:VILPA|Makisey|note