進行期COPD患者に対する緩和治療として、オピオイドが再考されている
ベンゾジアゼピン系や麻薬の添付文書には、「禁忌:重篤な呼吸抑制のある患者」と記載がある。
Review
Palliation of dyspnoea in advanced COPD: revisiting a role for opioids
Thorax 2009;64:910-915 doi:10.1136/thx.2009.116699
最上位段階では、モルヒネ投与+不安緩和薬剤が推奨されているのである。
市井には、呼吸抑制があるんだから、モルヒネなどオピオイド使うのは危険という発想が根強くある。患者の症状緩和のため、これをたださなければならない。
Safety of benzodiazepines and opioids in very severe respiratory disease: national prospective study
BMJ 2014; 348 doi:
http://dx.doi.org/10.1136/bmj.g445 (Published 30 January 2014)
Cite this as: BMJ 2014;348:g445
最重症COPD患者へのベンゾジアゼピン・オピオイド安全性評価
デザイン 住民ベース長軸連続コホート
セッティング スウェーデンでの長期酸素療法指示センター
患者 2249名COPD長期酸素療法、スエーデン(2005年から2009年、国内Swedevox Register)
主要アウトカム測定 年齢・性別・動脈血液ガス分析・BMI、パフォーマンス状態、入院歴、合併症、併用薬剤補正後ベンゾジアゼピン・オピオイドの入院・死亡への影響
結果 入院:1681 (76%) 、死亡 1129 (50%)
ベンゾジアゼピン・オピオイドは、入院増加と相関せず: ハザード比 0.98
(95% 信頼区間, 0.87 to 1.10) 、 0.98 (0.86 to 1.10)
ベンゾジアゼピンは、死亡率増加と相関 (1.21, 1.05 to 1.39) し、量依存的
オピオイドは、死亡率と量依存的に相関:
低用量オピオイド(モルヒネ換算30mg/日以下)なら、死亡率増加と相関せず (1.03, 0.84 to 1.26) 、高用量では相関 (1.21, 1.02
to 1.44)
ベンゾジアゼピン・オピオイド低用量同時投与も入院、死亡と相関せず (0.86, 0.53 to 1.42) or mortality
(1.25, 0.78 to 1.99)
相関性は、薬剤、高炭酸ガス血症にnaiveであり、補正されず
結論 COPD患者において、オピオイド低用量は、入院・死亡リスク増加と関連せず、重度呼吸器系疾患自覚症状改善のため安全であろう
ところが、日本の実情は、非がんCOPD患者の呼吸困難を無視した薬事行政がなされている。患者会などが怒るべき状況なのだ。
担がん患者の呼吸困難治療プロセスでは、モルヒネ投与に、抗不安薬追加が示されている。
http://www.jspm.ne.jp/gmeeting/peace3/M-6a.pdf
だが、健保病名適用を見ると・・・
オプソ:中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛
モルヒネ注射液:
1. 皮下及び静脈内投与の場合
(1) 激しい疼痛時における鎮痛・鎮静
(2) 激しい咳嗽発作における鎮咳
(3) 激しい下痢症状の改善及び手術後等の腸管蠕動運動の抑制
(4) 麻酔前投薬,麻酔の補助
(5) 中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛
呼吸困難に対する適用は存在しない・・・日本の状況。
緩和ケアに、心不全、呼吸不全など内因性疾患を加えるべきだし、終末期ケアと考えられる症例はがんやHIVだけではないことを理解してない行政や施策立案者たちが悪性だ。