2013年10月11日金曜日

アルツハイマー病:ピーナッツバターを用いた左右差嗅覚検査;疾患特異的で他原因認知症も鑑別可能

ピーナッツバターと物差しがあれば簡単に検査できる・・・ってことだが・・・skippy大量消費国とは事情が違うので別の匂い発生源での検査別に開発してほしい。


A brief olfactory test for Alzheimer's disease.
Stamps JJ, Bartoshuk LM, Heilman KM.UF researchers find that ‘peanut but
J Neurol Sci. 2013 Oct 15;333(1-2):19-24.

アルツハイマー病では、嗅覚皮質において、右半球より左半球の変性が早期に生じることが多く、同側嗅覚皮質へ投射される嗅覚上皮の刺激の反応を反映する。
アルツハイマー病18名、MCI24名、他の原因認知症26名、マッチ化対照26名の検討


アルツハイマー病患者の平均嗅覚検出距離は右鼻腔 17.4cmで有意ではなく、左鼻腔に近づけての検出平均距離は他の群より有意に短い(・・・すなわち、鈍感である)

左右差平均
アルツハイマー病 -12.4  ( -15.0 〜 -9.8 ) 
MCI  -1.9 ( - 4.2 〜  0.4 )
他原因認知症 4.8 ( - 2.6 〜 6.9 ) 
対照 0.0  ( - 2.2 〜 2.1 )

'Peanut butter’ test can help diagnose Alzheimer’s disease
http://news.ufl.edu/2013/10/08/alzheimers-test/

嗅覚感度を調査するため、ピーナッツ・バターを用いたアイディアが浮かんだ。嗅覚と認知症早期検出の関連性は以前から指摘されていたが、ピーナッツバター14g(さじ一杯に相当)する。眼を閉じ口を閉じ、1鼻腔をブロックする。ピーナッツバター容器を開け、被験者に1cmずつ近づけ、匂い検出するまで続ける。90秒後片方の鼻でも行う。
アルツハイマー病患者では嗅覚検出距離の左右差著しく、右より左の鼻では10cm平均以上では嗅覚を感じない。他のタイプの認知症ではこの現象がなく、疾患特異的であった。







パーキンソン病も、嗅覚障害にて早期発見? 2008年 03月 24日

“チューリッヒ嗅覚スクリーニング・キット”



「ヨーロッパじゃピーナッツバターを食べないって本当なの?」
http://blog.livedoor.jp/drazuli/archives/6680562.html

臨床症状未発症アルツハイマー病(マーカー異常のみ):高齢者地域住民の3割存在? 認知症発症リスクはもちろん、死亡リスクさえ増加

もちろん、認知症発症リスクも高いのだが、認知症発症前の状態でも、その後の死亡率さえ高く、臨床カーカーだけで充分病的といえるのかもしれない。
高齢者一般住民調査でかなりの比率で存在し、認知症発症、死亡率増加と関連する。

Preclinical Alzheimer's disease and its outcome: a longitudinal cohort study
The Lancet Neurology, Volume 12, Issue 10, Pages 957 - 965, October 2013


311名の認知機能正常の地域住民ボランティア:65歳以上、認知機能正常(clinical dementia rating [CDR]=0)対象
脳脊髄液アミロイドβ1−42、Tau濃度、記憶複合スコア分類評価を評価
さらに、アルツハイマー病 stage 1-3と、 suspected non-Alzheimer pathophysiology (SNAP, abnormal injury marker without abnormal amyloid marker) 
臨床前状態を3つに分ける
・認知機能正常だが、アミロイドマーカー異常所見のみ:cognitively normal individuals with abnormal amyloid markers (stage 1) 
・アミロイド・神経学的異常マーカー所見あり:abnormal amyloid and neuronal injury markers (stage 2) 
・異常アミロイド・神経学的異常マーカーあり、認知機能軽度異常:abnormal amyloid and neuronal injury markers and subtle cognitive changes (stage 3) 

プライマリアウトカムは、臨床前アルツハイマー病比率、セカンダリアウトカムは、0.5を最小値とするCDRへの発症比率 

311名のうち、正常 129(41%)、 stage 1 47(15%)、 stage 2 36 (12%)、 stage 3  13(4%)、 SNAP 72(23%)、分類不能 14(5%)

CDR 0.5以上スコア発症比率、アルツハイマー病有症状発生は、正常者と分類された被験者の2%。同様に、stage 1:11%、  stage 2: 26%、 stage 3: 56%、 SNAP 5%
正常と分類された場合と比較すると、臨床前アルツハイマー病被験者では、共役要素補正後死亡率リスク増加 (hazard ratio 6·2, 95% CI 1·1—35·0; p=0·040)



この臨床症状発症前アルツハイマー病という病態の同定には、脳脊髄液検査が必要なため、一般的な検討は簡単ではない。より非侵襲的安価な検査が代用できるか、また、なにより予防的介入が存在するか、開発可能かが課題。



【骨粗鬆症予防:高リスク白人ですらビタミンD補充エビデンス乏しい】システマティック・レビュー&メタアナリシス

実際のメタアナリシスなどみると、研究の1%未満程度しか、その検討対象にしかなれないことが分かる。テレビや新聞などで「ある団体が調べた調査によると・・・」などと報道されるが、実際には検討対象にもなれない取るに足りないと評価される研究であることが大部分という認識を購読者・視聴者は知る必要がある。


「ビタミン」というと体に良い、予防効果があると、信じて疑わない連中が無責任にメディアを用いて不特定多数にいい加減な情報をばらまいている日々が続く・・・



Effects of vitamin D supplements on bone mineral density: a systematic review and meta-analysis
The Lancet, Early Online Publication, 11 October 2013
doi:10.1016/S0140-6736(13)61647-5


研究戦略により3939の引用検討するも、23研究(平均研究期間 23.5ヶ月、対象者 4082、女性92%、平均年齢 59歳)が引用クライテリア合致、19研究は主に白人
平均ベースライン血中25−OH-D濃度 50 nmol/L未満は8研究 (n=1791)
ビタミンD 800 IU/day未満投与は 10研究(n=2294)

骨塩定量評価は1−5部位(腰椎、大腿骨頚部、総股部、大転子、体全部、前腕)、うち、統計学的有意差は70検査であり。

ベネフィット認めるのは6つの報告で、2つが有意差あり、他は有意差認めず、1ヶ所以上の有意差は一つの研究のみ。

メタアナリシスでは、大腿骨頚部でのみ小程度のベネフィット(加重平均差  0·8%, 95% CI 0·2—1·4) 、トライアル間のheterogeneity大いに有り(I2=67%, p<0 br="">他の部位では効果報告無し。

大腿骨頸部・総股部に関して、バイアスの存在認める。

Oxford Vascular Study:TIA及び卒中後後年QOL評価

効用:Utilityを分析、健康子庵連QOL評価尺度、すなわち、質調整生存率(QALY:Quality-adjusted Life Year)として包括的健康尺度とするもの。さらには疾患毎の尺度も存在し、その病態毎の指標とされている。

遅きに失していると思うが、日本でもUtility分析が医療分野で検討され、中医協でQALY指標などを検討しているのは良い方向性だと思う。一部声のでかい団体に偏る医療費再配分の補正に役立つのではないかと思う期待の一方、官僚たちの詭弁に用いられる懸念はあるが・・・


一過性脳虚血発作(440名)と卒中(748)後5年を超えてのQOL評価
卒中、TIA後5年間
EQ-5D (EuroQol-5 Dimensions)を用い、英国住民valuationを用い、完全健康:1から、−0.59(死亡より悪い状態)まで評価

TIA後5年で、Utilityは約0.78
卒中後1ヶ月 0.64から、6ヶ月で 0.70まで改善 (p = 0.006)だが、それ以降 0.70のまま。対して、マッチ化対照は、卒中・TIAよりやはりutility値高い (0.85, p < 0.001)
イベント重症及び再発性卒中では、長期Utility減少する。


5年QALYは、TIA後 3.32(95%信頼区間:3.22−3.48)、卒中後  2.21 (2.15–2.37)
重症度によりばらつき(minor: 2.94; moderate: 1.65; severe: 0.70)

Quality of life after TIA and stroke
Ten-year results of the Oxford Vascular Study
Ramon Luengo-Fernandez,  et. al.
For the Oxford Vascular Study
Published online before print October 9, 2013, doi: 10.1212/WNL.0b013e3182a9f45f
Neurology 10.1212/WNL.0b013e3182a9f45f


EQ-5Dには日本語版も存在
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002mpa7-att/2r9852000002mpe0.pdf

換算表の日英比較も掲載されている。


アウトカム評価におけるQOL研究 (2001年)
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2001dir/n2429dir/n2429_01.htm

包括的尺度というのは,その測定対象を特定の疾患を持つ患者に限定しないQOL尺度です。しかも,病気を持っていない,いわゆる「健康人」を対象にしても利用可能であることも大きな特徴です。これまで,臨床家は患者さんを「病気の人」と「病気でない人」という2つのカテゴリーに分類することを学び,実践してきたと言えます。しかしQOLの観点からは,はたしてこういう二元的な考え方が妥当かどうかという疑問があると思います。すなわち,「健康人」にも「病気を持っている人」にも適用が可能な包括的尺度を使うことによって,健康状態を連続的に捉えることが可能になりました。これは包括的尺度の特徴の1つで,SIP(Sickness Impact Profile),NHP(Nottingham Health Profile),WHOQOL,SF-36(MOS-Short Form 36)などの指標があります。 

「効用理論」とは?・・・医療費の高騰という中で,一定の医療費をできるだけ効率的に使い,できるだけ多くの健康を得るために医療技術を選択する際の政策決定に用いる

経口キナーゼPERK阻害剤:マウスでの有効性 → アルツハイマー病治療ブレイクスルー?

プリオンによる折りたたみ異常蛋白、misfolded prion protein (PrP) の増加は、蛋白合成開始につながる、unfolded protein response (UPR) のbranchの持続性overactivationに起因する。マウスのプリオンモデルでこの経路のtranslationをシャットダウンするrescue pathwayを操作する方法、薬物的方法を筆者等は報告しており、経口投与で阻害する可能性が報告された。

kinase PERK (protein kinase RNA–like endoplasmic reticulum kinase) の特異的経口阻害剤で、UPR経路の鍵メディエーターを阻害し、UPR-媒介translation regressionを阻害し、臨床的プリオン疾患を阻害する。

プリオン疾患だけでなく、アルツハイマーなどの変性疾患治療に有効かもしれない・・・と、筆者等は、マスコミを介して自画自賛(http://www.foxnews.com/health/2013/10/10/scientists-stop-brain-cells-in-mice-from-dying-in-potential-alzheimer-treatment/


Julie A. Moreno , et. al.
Sci Transl Med 9 October 2013: Vol. 5, Issue 206, p. 206ra138 
Sci. Transl. Med. DOI: 10.1126/scitranslmed.3006767


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