2019年5月31日金曜日

好酸球由来IL-13は気腫促進的に働く

GOLD2019からさらに好酸球比率の臨床的重要性が強調されることがある。

GOLD science committee report 2019
https://kaigyoi.blogspot.com/2019/05/gold-science-committee-report-2019.html

COPDに於る好酸球増加が喘息COPDオーバーラップと関連して説明されるのはしかたないのかもしれないが、COPDにおける好酸球比率・数に関する評価はあくまでもCOPDの話ということは前提!これを混同して解説される場合があるので困る。



Eosinophil-derived IL-13 promotes emphysema.
Doyle AD, Mukherjee M, LeSuer WE, et al.
Eur Respir J 2019; 53: 1801291.

気腫を引き起こす慢性気道疾患における炎症反応は完全には同定されてない。肺好酸球増加症がマウスモデルでの気腔拡大、およびCOPD患者における気腫の一因となると仮説。 
慢性type 2 肺炎症(I5 / hE2)のトランスジェニックマウスモデルを使用して、気腔拡大をもたらす好酸球依存性機序を調べた。
慢性気道疾患患者における好酸球増加症およびMMP-12レベルtranslational研究用にヒト痰サンプルを採取 
 
気腔拡大はI5 / hE2マウスで同定し好酸球依存性あり
 I 5 / h E 2気管支肺胞洗浄の検査では、気腫のメディエータであるMMP-12の上昇確認。
 in vitroで、好酸球由来のIL-13が肺胞マクロファージMMP-12産生を促進することを示した
  I5 / hE2マウスにおける気腔拡大は、MMP-12および好酸球由来のIL-4/ 13に依存していた。
  この実験結果と一致し、MMP - 12は、痰好酸球増加症およびCT上気腫エビデンスある患者で増加し、FEV1と負に相関
 
Type 2慢性肺炎症のマウスモデルは、MMP-12および好酸球由来のIL-4/13に依存する気道拡大を示した
慢性気道疾患患者では、肺好酸球増加症は気腫の予測因子であるMMP-12レベルの上昇と関連していた 
これらの知見は、これまで過小評価されていたメカニズム、好酸球が喘息とCOPDの病態共に関与していることを示唆している

喘息もCOPDも気道の慢性炎症性疾患で、肺機能経時的減少の炎症と好酸球の役割が、喀痰好酸球数 ( Broekema M, Volbeda F, Timens W, et al. Airway eosinophilia in remission and progression of asthma: accumulation with a fast decline of FEV1. Respir Med 2010; 104: 1254–1262. )、喀痰好酸球のhigh variablity ( Newby C, Agbetile J, Hargadon B, et al. Lung function decline and variable airway inflammatory pattern: longitudinal analysis of severe asthma. J Allergy Clin Immunol 2014; 134: 287–294. )、血中好酸球数増加 (Ulrik CS, Backer V, Dirksen A. A 10 year follow up of 180 adults with bronchial asthma: factors important for the decline in lung function. Thorax 1992; 47: 14–18.) が注目されつつある。

さらに、喘息では気道と血中好酸球の関連性(Schleich FN, Chevremont A, Paulus V, et al. Importance of concomitant local and systemic eosinophilia in uncontrolled asthma. Eur Respir J 2014; 44: 97–108.)知られているが、COPDでも重要な要素(Silva GE, Sherrill DL, Guerra S, et al. Asthma as a risk factor for COPD in a longitudinal study. Chest 2004; 126: 59–65.)である。

肺機能減衰もまた好酸球性炎症増加を示すCOPD患者において比較上多く観察(Hastie AT, Martinez FJ, Curtis JL, et al. Association of sputum and blood eosinophil concentrations with clinical measures of COPD severity: an analysis of the SPIROMICS cohort. Lancet Respir Med 2017; 5: 956–967.)され、COPDの3分の1が気道好酸球性炎症を示し(Bafadhel M, Pavord ID, Russell REK. Eosinophils in COPD: just another biomarker? Lancet Respir Med 2017; 5: 747–759. Schleich F, Corhay JL, Louis R. Blood eosinophil count to predict bronchial eosinophilic inflammation in COPD. Eur Respir J 2016; 47: 1562–1564.)、加速的肺機能減少はCOPDのみの特徴ではない。

多くのCOPD患者は気腫所見だけで無く、肺組織破壊をも含む。COPDにおいて、大気汚染物暴露後マクロファージと好中球が気道リモデリングを仲介するだけでなく、破壊ももたらす(Hautamaki RD, Kobayashi DK, Senior RM, et al. Requirement for macrophage elastase for cigarette smoke-induced emphysema in mice. Science 1997; 277: 2002–2004. Sharafkhaneh A, Hanania NA, Kim V. Pathogenesis of emphysema: from the bench to the bedside. Proc Am Thorac Soc 2008; 5: 475–477.)。


DOYLEらの発見は、in vitroにおいて好酸球由来IL-13が肺胞マクロファージ由来MMP-12産生促進し、肺胞破壊への役割を果たすことを示した。
これは気腔拡大はMMP-12と独立し、MMP-12は気腫を示す好酸球性COPD患者において増加し、喘息併存では好酸球性と非好酸球性の間に差が無いという知見であった。

 CHAUDHURI ら(Chaudhuri R, McSharry C, Brady J, et al. Sputum matrix metalloproteinase-12 in patients with chronic obstructive pulmonary disease and asthma: relationship to disease severity. J Allergy Clin Immunol 2012; 129: 655–663.)は、喘息疾患重症度と喀痰MMP-12濃度に有意相関無いが、 COPD患者の喀痰MMP-12はCT測定気腫広がりと直接相関していた。


汚染物質吸入患者での気腫発症に好酸球が重要な役割を果たすことは確実

喘息において好酸球性炎症がかなりの頻度で観られるわけだが、非喫煙者喘息では拡散能が温存される (Schleich F, Brusselle G, Louis R, et al. Heterogeneity of phenotypes in severe asthmatics. The Belgian Severe Asthma Registry (BSAR). Respir Med 2014; 108: 1723–1732. Schleich FN, Manise M, Sele J, et al. Distribution of sputum cellular phenotype in a large asthma cohort: predicting factors for eosinophilic vs neutrophilic inflammation. BMC Pulm Med 2013; 13: 11.)

喘息において、気腔拡大は気腫や肺胞の破壊そのものというより気道リモデリングへとつながるair trappingの徴候で(Gelb AF, Yamamoto A, Verbeken EK, et al. Further studies of unsuspected emphysema in nonsmoking patients with asthma with persistent expiratory airflow obstruction. Chest 2018; 153: 618–629.


これらは気道壁破壊には好酸球性炎症に追加されるメカニズムが必要と考えられる。

大気汚染物質やタバコの煙の吸入後酸化ストレスを惹起し、MMP-12がたばこの煙により上皮から産生される(Lavigne MC, Eppihimer MJ. Cigarette smoke condensate induces MMP-12 gene expression in airway-like epithelia. Biochem Biophys Res Commun 2005; 330: 194–203.

WOODRUFら(Woodruff PG, Koth LL, Yang YH, et al. A distinctive alveolar macrophage activation state induced by cigarette smoking. Am J Respir Crit Care Med 2005; 172: 1383–1392.)も、MMP-12が喫煙者で増加するも、喘息患者では増加せず、抗proteinase活性レベル低い状態で気腫を生じるものとした。
抗IL-5はCOPD患者では急性増悪減少という意味では比較的ベネフィット乏しい( Brightling CE, Bleecker ER, Panettieri RA, Jr. et al. Benralizumab for chronic obstructive pulmonary disease and sputum eosinophilia: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2a study. Lancet Respir Med 2014; 2: 891–901. Pavord ID, Chanez P, Criner GJ, et al. Mepolizumab for eosinophilic chronic obstructive pulmonary disease. N Engl J Med 2017; 377: 1613–1629.)

COPDにおける抗IL5や抗IL-13による長期治療が気腫発症予防という効果を有するかもしれないということを否定仕切れない。

DOYLEらの報告からの臨床的メッセージは好酸球性炎症を有するひとでの禁煙の重要性ということに今のところはなろうか!


COPDリハビリテーション:運動誘発酸素飽和度低下に酸素付加必要なし

COPDリハビリテーション時、酸素飽和度の低い患者では高強度の運動に耐用できない場合があり、医療者は運動誘発による低酸素飽和度を最小化に執着し、結果、トレーニング強度 and/or強制休息を挟むことを強要する傾向にある(実際、私が見聞きしている九州の某県の医療施設や介護施設などでは、介護職だけでなく、看護師や医師たちまでも ナゾの呪文である 「サーチ サーチ」と騒ぎながら 酸素を強要し、トレーニングを中断を強要させる行事が毎日のようにおこなわれる)

運動による酸素飽和度低下はCOPD患者ではほぼ半数の47%とこの論文の序文には記載あり、半数がfield walking testなどで90%未満の飽和度となる。

生理学的研究の運動急性暴露で等価運動負荷量での分時換気量減少と動的過膨脹の発生遅延化、関連する呼吸困難の遅延化などが運動能力増加をするということから酸素負荷にこだわる向きがあるのだろう。しかし現実の臨床診療上では酸素投与のprovisionを支持するエビデンスは限定的。今までの運動中の酸素投与と空気比較のランダム化研究ではサンプル数が少なく、長期酸素療法や酸素飽和度否定加群も含まれていて不均一なサンプルでの検討であった。

今回の研究は運動による酸素低下確認群での検討で、安静時酸素飽和度正常だが、運動による酸素飽和度低下症例で、リハビリテーション中の酸素付加の意義検討するには強いエビデンスが期待された研究



運動能力やHRQoLに関しては、酸素投与群と医療用空気投与群でその効果に関して差は無く、ともに改善し、酸素投与群でより大きなベネフィットを示すことはなかった


Oxygen compared to air during exercise training in COPD with exercise-induced desaturation
Jennifer A. Alison, et al.
European Respiratory Journal 2019 53: 1802429; 
DOI: 10.1183/13993003.02429-2018

COPDの呼吸リハビリテーションを受けている患者の約半数が運動中酸素飽和度低下。酸素投与にて酸素飽和度は緩和するが、運動トレーニングのアウトカムへの影響については積極的には評価されてない。この研究は運動トレーニング中の酸素付加が運動耐容能改善、HRQoL改善の点でmedical aireよりCOPD患者にとって有効かを決定する目的の研究

6分間歩行試験中酸素飽和度90%未満COPD患者をランダム化多施設トライアルへ登録(独立した目隠し割り付け)で、Oxygen group と Air groupへ割り付け、盲目的(登録者、運動トレーナー、European Respiratory Journal assessors)、ITT解析

各々の吸入群とも濃縮器より経鼻prongから 5L/分を運動トレーニング(トレッドミル、サイクル運動)週3回8週間施行中使用

プライマリアウトカム:ESWT(運動耐用シャトル歩行試験)時間とChronic Respiratory Disease Questionnaire (CRQ)-Total score

被験者 111名(男性 60名)、平均±SD 年齢 69± 7歳、中等度〜重症 COPD登録、97名完遂 (Oxygen group n=52; Air group n=45)

8週間トレーニングプログラム終了時点で、ESWT (平均差 15 s (95% CI −106–136 s) と CRQ-Total の変化(0.0 points (95% CI −0.3–0.3 points))に群間差無し

トレーニング終了時点でのグループ内の差はESWTとCRQ-Total)で有意に(all p<0.01)

運動能およびHRQoLは両群改善、medical air投与より酸素投与でトレーニングによるベネフィットが多いということはない

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2019年5月30日木曜日

心不全管理は胸部エコー B-lineで・・・

超音波検査はポータブルポケットサイズによる心不全管理のため知見

Lung Ultrasoung Guided Treatment in Chronic Heart Failure Patients: a Randomized Controlled Trial (LUS-HF)
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02959372


 European Society of Cardiology Heart Failure (ESC-HF) 2019での学会発表


Ultrasound 'Lung Comets' Reveal Subclinical Congestion, Hint at Treatment-Target Value in HF Outpatients
https://www.medscape.com/viewarticle/913527
May 27, 2019


少数検討だが画期的な無作為化試験知見
心不全(HF)の外来患者における肺超音波検査(LUS)検査の可能性

肺超音波画像の於る"B lines"の点滅出現は、組織と貯留液とのエコー差によるアーチファクト、これがうっ血の診断確定、予後指標となる

胸膜線から横断する線状のため"ultrasound lung comets"とも呼ばれ、液貯留を意味する。
この線状陰影は、体液減少管理のターゲットとしての役割が示唆され、追加利尿剤反応にて臨床的アウトカム改善をもたらすことを示唆。
複合プライマリエンドポイントの6ヶ月後リスクに関して48%の減少で境界的有意差を示したが、LUSのB lineガイドの外来利尿剤治療による退院直後患者の心不全悪化緊急クリニック受診を75%減少した効果が大きい

トライアルは主たる診断として急性心不全で入院を経て退院したばかりの124名
呼吸困難と肺うっ血エビデンス、年齢補正natriuretic peptide値高値で重篤肺疾患無しの患者

退院前単盲検ランダム化:LUS 61名 vs LUSガイダンスなし 63名
ガイダンスの違いで標準治療を受ける

ベースラインで平均LVEF、natriuretic peptide level、心血管・肺疾患併存症、6分間歩行距離、LUSでのB lineの数は同等

Natriuretic peptideとLUSを2週後、1ヶ月、3ヶ月後、6ヶ月後施行

死亡、心不全増悪による緊急クリニック受診、再入院
LUS-ガイド群 23% vs 対照群 40% ハザード比 0.52   (95% CI, 0.27 - 0.99; P = .046)

他 natriuretic peptide level、QOL、心不全増悪のための緊急受診以外の項目は同様




Practical approach to lung ultrasound
https://academic.oup.com/bjaed/article/16/2/39/2897763?searchresult=1#64764094


B lines








COPD急性増悪と環境リスク 低温とオゾン

最近大陸からの贈り物で光化学スモッグ発生している

オゾン層破壊物質の増加原因は中国 国際研究チーム
2019年05月23
https://www.bbc.com/japanese/48375540
実際、外来で、不調を訴えるCOPD・喘息患者が多い印象

図表を見ると やっぱオゾンが悪い




大気汚染及び気候的要素が以下にCOPD急性増悪入院へ影響を与えるかのスペインでの後顧的検討(2004-2013)
 Spanish Meteorological Agencyの気候データ・大気汚染レベルと入院率(スペイン退院データベース)検討
COPD急性増悪で、16万の入院


結論からは、寒冷気候要素(季節、絶対温度)で負の影響、大気汚染(NO2、O3、PM10)では短期的に影響があるという話

Analysis of environmental risk factors for chronic obstructive pulmonary disease exacerbation: A case-crossover study (2004-2013)
Javier de Miguel-Díez, et al.
PLOS ONE Published: May 23, 2019
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0217143






アメリカ胸部学会(ATS)にて、米国はPMの方は改善したが、オゾンはやはり残存ということで目下問題はオゾンへの対応が必要

ATS: 'Dramatic' Survival Gains With Better Air Quality
Deaths attributed to particulate pollution decline; mortality from ozone unchanged
by Salynn Boyles, Contributing Writer May 28, 2019
https://www.medpagetoday.com/publichealthpolicy/environmentalhealth/80084





Cromar K, et al "Trends in excess morbidity and mortality associated with air pollution above ATS-recommended standards, 2008-2017" Ann Am Thorac Soc 2019.



過去10年間で、米国胸部学会(ATS)が推奨するレベルを上回る大気汚染レベルにさらされたことによる死亡者数は、主に粒子状物質への曝露の減少により、半分近く減少した、と研究者らは報告した。  米国のほとんどの地域で、2.5ミクロン以下の粒子状物質(PM2.5)の減少に起因する死亡率の改善が見られましたが、特に公害関連の健康問題が最も高い都市で顕著でした、とKevin Cromar博士は述べています。 、ニューヨーク市のニューヨーク大学のマロン都市管理研究所、および同僚の。
2008年から2017年までのEPA大気質システムデータの3回目の年次分析に基づいて、「Health of the Air」報告書は、期間中のPM2.5関連死亡率の60%近くの減少を推定した。 しかしオゾン汚染による死亡率はほとんど変わっていなかった、と彼らはアメリカ胸部学会の年報で報告した。
CromarはMedPage Todayに対し、「この分析により、粒子状物質による健康への影響が国中の大部分で劇的に改善されたことが示された」と述べた。 この分析では、2014年以降の粒子状物質汚染の減少による健康増進率の横ばいも示されました。懸念は、大気質の改善を目的とした規制を廃止しようとする最近の連邦政府の努力が、報告書に示されている死亡率と健康増進を逆転させる可能性があることだ。 EPAは、クリーンパワープランの廃止や、大気汚染の低減にはそれほど効果的ではない手頃な価格のクリーンエネルギー法の導入とともに、CO2基準をロールバックした」と彼は述べた。 「これらの行動のすべては、一緒に取られて、私たちを間違った方向に動かしています。」
Cromar氏は、この報告書の最新版が、大気質に関連した健康の傾向を経時的に調べた最初のものであると指摘した。
研究者らは、2008年から2017年までの各年に、米国内のモニターについてEPA大気質システムから得られた毎日の大気汚染(PM 2.5およびオゾン)値を分析した。
これらの値は、PM2.5の24時間測定基準と、オゾンの最大1時間測定、最大8時間測定、および24時間平均測定の3つの測定基準を使用して、ベースライン値と年間ベースラインおよびコントロールデータセットを作成するために使用されました。各モニターのローリング3年間の設計値に相当します。
「これらの設計値は、PM2.5の年間平均濃度の3年間平均、PM2.5の24時間の98パーセンタイル値の3年間平均、および毎日4番目に高いものの3年間平均に対応します。最大8時間のO3濃度」と研究者らは書いている。 「対照値は、年間PM 2.5に対して11μg/ m 3、24時間PM 2.5に対して25μg/ m 3、およびO 3に対して60 ppbのATS勧告に基づいていた。
推奨されるカットオフ値は、年間のPM2.5が12μg/ m3、24時間のPM2.5が35μg/ m3、オゾンが70ppbの既存の国家大気環境基準(NAAQS)よりも低かった。
「この分析に使用されたATS推奨レベルは、既存のNAAQSでは人間の健康を保護するのに不十分であり、より健康を守るための規制の必要性を強調していることがわかっています」とCromarらは書いています。
EPAの標準的な健康機能に基づいた疫学研究からの濃度 - 反応関係を用いて、各郡のATS勧告を上回る汚染レベルの死亡率への影響を計算した。
分析によると、ATSの勧告を超える大気汚染レベルによる死亡者数は、2010年の約12,600人(95%CI 5,470-21,040)から2017年の7,140人(95%CI 2,290-14,040)に減少しました。
また、PM2.5に関連した死亡率は、同じ期間で年間約8,330から年間3,260に減少しましたが、オゾン関連の死亡率はそれほど変わりませんでした。
有効なPM2.5設計値を持つ530の郡のうち、78(15%)だけがATS推奨濃度を満たしていませんでした。有効なオゾン設計値を持つ726の郡のうち599(83%)がATSの推奨を満たしていませんでした。
「粒子状物質の健康への影響に関しては実質的な改善が見られましたが、オゾンの健康への影響を見ても、米国のどの地域でも改善の大きな傾向は見られませんでした」とCromarは述べました。 「これはそれだけでは解決できない問題です。数値を見ると、オゾン汚染への曝露による健康への重大な影響がわかります。」
彼は、大気質は地方および州レベルで、そして連邦当局によって対処される必要があるが、連邦規制は大気汚染レベルを下げるための最も効果的で効率的な道であると彼は付け加えた。
「EPAと連邦政府が機会を利用しない、またはさらに悪いことに有効な規制をロールバックしないことを選択した場合、市や州は大気質の改善に努める必要があるだろう」と彼は述べた。 「それらの唯一の選択肢は、大気質に対処するための効率的でない方法であり、これもはるかに費用がかかる。」

高齢女性:歩数7500で効果頭打ち、歩行運動強度関係なし

序文をみると、日本の「万歩計」がウェアラブル端末に先行すること1965年発売され、日本では「1万歩」推奨となっている。ウェアラブル対応端末は2017年1億2500万台以上世界的に出荷されている。1万歩がcommon goalとして扱われているが果たして?

女性に限った検討ではあるが、死亡率改善効果に運動強度は影響与えず、1日の歩数が重要という話


Association of Step Volume and Intensity With All-Cause Mortality in Older Women
I-Min Lee, et al.
JAMA Intern Med. Published online May 29, 2019.
doi:10.1001/jamainternmed.2019.0899

意義:健康上必要な歩数目標は1日1万歩という目標が一般に信じられているが、この数については科学的根拠が少ない。さらに、歩数強度増加が健康ベネフィットに関連するか、1日の歩数と独立しているか不明。

目的:1日当たりの歩数とステッピング強度と全死因死亡率との関連検討

デザイン、設定、および被験者:
この前向きコホート研究には、2011年から2015年までの7日間の覚醒時間中に加速度計着用参加同意、女性健康調査の18289人の米国女性 ;データは17466デバイスから正常にダウンロード。これらの女性のうち、コンプライアンス良好(4日以上10時間以上装着)で2018年から2019年解析に含まれたのは16741名

暴露:1日あたり歩数とステッピング強度のいくつかの指標(ie, (ie, peak 1-minute cadence; peak 30-minute cadence; maximum 5-minute cadence; time spent at a stepping rate of ≥40 steps/min, reflecting purposeful steps :1分間ケイデンスピーク、30分間ケイデンスピーク、5分間ケイデンス最大、40ステップ/分以上となった時間数(意図的ステップ反映))

ケイデンスとは?ケイデンスは1分当たりのステップ数を計算し、2で割ることにより算出されます。例えば、両足では1分当たりのステップ数が180である場合、ケイデンスは90になります。ケイデンスは、ランニング効率を評価する重要なツールです。また、ランニングテクニックの改善にも役立つものです。
主要アウトカム・測定:総死亡率

結果: 選択基準一致16741名女性、平均(SD)年齢 72.0歳(5.7歳)

平均歩数は1日当たり5499で、ステップ頻度あたりの比率は 

  • 0歩/分:51.4%、(インシデンタルなステップにあたる)
  • 1〜39/分 45.5%
  • 40歩/分以上(意図的ステップ) 3.1%

平均フォローアップ 4.3年間、死亡 504名
1日あたりの歩数中央値は、分布横断的に低度→高度4分位で各々、2718、4363、5905、8442 歩数/日
対応する死亡率ハザード比(寄与要素補正)は、各々  1.00 (reference)、 0.59 (95% CI, 0.47-0.75)、 0.54 (95% CI, 0.41-0.72)、 0.42 (95% CI, 0.30-0.60) (P < 0.01)

spline解析だと、最大歩数として7500 /日まで1日あたりの歩数増加後とHRは低下する

高強度ほど有意に死亡率低下と相関するが、日数あたりの歩数補正後、相関性は減衰し、ほぼ有意でなくなる  (ケイデンス1分間ピーク 最高 vs 最小4分位 HR 0.87  [95% CI, 0.68-1.11]; ケイデンス30分間ピーク 最高 vs 最小4分位 HR  0.86 [95% CI, 0.65-1.13]; 5分間最大ケイデンス 最高 vs 最小4分位 HR  0.80 [95% CI, 0.62-1.05]; 40歩/分以上のステッピング速度時の経過時間 最高 vs 最小4分位 HR   1.27 [95% CI, 0.96-1.68]; P > .05)





結論と知見:年配の女性の間では、およそ4400歩/日という少ない数が、およそ2700歩/日と比較して低い死亡率と有意に関連。一日あたりの歩数が増えるにつれて、死亡率は徐々に減少し、平準化する前に約7500歩/日。歩数強度は、1日の総歩数を考慮した後の死亡率の低下とは明らかに関連していない。





こういうのってreverse causation bias:逆因果バイアスとの戦いで、同じ運動(身体活動)を扱っている報告だが・・・嘘が紛れ込む


"A standard method to reduce reverse causation is to exclude outcomes occurring in the initial follow-up period.":フォローアップ初期発生アウトカムの除外必要で、リスクのplausible trajectory 明確化してリスク評価する必要がある

逆因果バイアス考慮上の検討で、身体不活発は全原因認知症およびアルツハイマー病と関連せず、だが、心血管疾患発症の身体不活発サブグループでは認知症超過リスク認めた

Physical inactivity, cardiometabolic disease, and risk of dementia: an individual-participant meta-analysis
BMJ 2019; 365 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.l1495 (Published 17 April 2019)
Cite this as: BMJ 2019;365:l1495










   嘘つき
    ↓
認知症がなぜ生じるのか、その発症機構はすべて解明されているとは言えませんが、これまでの研究で、▼教育歴▼肥満▼高血圧▼難聴▼喫煙▼うつ▼運動不足▼社会的孤立▼糖尿病―などの要素が関連していることが分かってきています。
https://www.medwatch.jp/?p=26492



財務省・厚労省およびその関係者は平気で嘘をつく

SCARLET:敗血症関連凝固障害への組み替えトロンボモデュリン死亡率有効性認めず

26ヶ国159ヶ所のICUで行われた多施設第三相治験

主要アウトカム:28日間総死亡率

介入:敗血症関連凝固異常症例のランダム化
・ボーラス静注 or 15分間点滴投与 (0.06 mg/kg/d [最大 6mg/d]n=395
・プラシーボ n=406
x6日間

結果的には死亡率差認めずというものだが、後述の如く、これではおわらんぞという感じ


Effect of a Recombinant Human Soluble Thrombomodulin on Mortality in Patients With Sepsis-Associated Coagulopathy
The SCARLET Randomized Clinical Trial
Jean-Louis Vincent,et al. for the SCARLET Trial Group
JAMA. 2019;321(20):1993-2002. doi:10.1001/jama.2019.5358


816名ランダム化、研究完遂・full解析 800名(平均年齢 60.7歳、男性 437 54.6%]

thrombomodulin群とプラシーボ群の 28日総死亡率の統計学的有意差なし (106 / 395  [26.8%] vs 119 / 405  [29.4%]; P = 0.32)
絶対的リスク差 2.55% (95% CI, −3.68% to 8.77%)

重大出血副作用イベント(定義:全ての頭蓋内出血、生命危機出血、検討者判断重症分類出血イベント、2連続日赤血球パック 1440mL[ 6単位相当]以上輸血)は、thrombomodulin群 23/396 (5.8%) vs プラシーボ 16/405(4.0%)





ART-123は遺伝子組み換えヒト可溶性thrombomodulin (rhsTM ; thrombomodulin α) は498のアミノ酸(64 kDa)からなりthrombomodulinの可溶性活性化細胞外ドメイン部分
主たるメカニズムは血中トロンビン分子結合能力由来で、protein Cから活性化protein Cへ転換するactivation complexの役割で、付加的にrhsTMは例えばhigh mobility group box protein 1 や histoneなどdamage-associated molecular patternによる炎症抑制、臓器障害抑制をもたらす。
敗血症・DIC疑診例第2相ランダムトライアルpost hoc解析では死亡率減少効果示唆され、①感染症、②最低1つの敗血症臓器障害(心血管 and/or 呼吸系)及び凝固障害の場合、③凝固障害(INR延長)と血小板数減少の3つでrhsTM投与死亡率減少示唆されていた






28日間の全死因死亡率の主要評価項目の低下を明らかにすることができなかったため、他の抗凝固薬との過去の結果から研究がなぜ行われたのかという疑問が生じた。答えは多少微妙だが、要するに、トロンボモジュリンは重要な理論的利点を提供する異なる作用機序を持つこととなった。



日本のp3トライアル(227名、血液悪性腫瘍あるいは感染基礎疾患DIC)が敗血症患者への組み替えthrombomodulinのアジュバント治療としての初めての有効性報告
Efficacy and safety of recombinant human soluble thrombomodulin (ART‐123) in disseminated intravascular coagulation: results of a phase III, randomized, double‐blind clinical trial
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1538-7836.2006.02267.x
この研究自体はプライマリエンドポイントとしてDIC改善目的でヘパリンと比較した有効性研究であった。DIC改善に有意差(66.1% vs 49.9%)あったが、セカンダエンドポイントの死オブ率には有効さ無かった(21.9% vs 25.7%)
この結果により日本ではDIC管理にART-123(組み替えthrombomodulin)承認となった(2008年)

プラシーボ対照トライアル(n=781)は

A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Phase 2b Study to Evaluate the Safety and Efficacy of Recombinant Human Soluble Thrombomodulin, ART-123, in Patients With Sepsis and Suspected Disseminated Intravascular Coagulation
Critical Care Medicine. 41(9):2069–2079, SEP 2013

これでは28日死亡率有意差無し (17.8% vs 21.6% in the placebo group)



エディトリアルとしては
1)ヘパリン投与群がthrombomdulin治療阻害してる可能性
2)プラシーボ死亡率高くトライアル自体が検出力としてパワー不足
3)登録期間長すぎ・・・ということは登録数少なく無理矢理登録したところがある疑惑、1例登録が3分の1でプロトコール不徹底の可能性
4)薬剤投与時INR正常化1/4で投与タイミングの問題がある。投与時INR値でpost-hoc解析すると有意差まではないが死亡率低下の可能性
5)トロンビン・抗トロンビン複合体(TAT)濃度以上、 protein C濃度 40%以下で有効性差示唆
などこのトライアルでは終わらんぞ・・・感

2019年5月29日水曜日

うつ治療の新しい話題

運動は確定的なのだろうが、元々動機づけの乏しい病態なので導入難儀という宿命的課題を保つ、食事療法はまだまだ不確定。ケタミンに関しては安全性有効性・短長期検討何れも不足という感じだろうか?



Evolving Issues in the Treatment of Depression
Ole Köhler-Forsberg, et al.
JAMA. Published online May 24, 2019. doi:10.1001/jama.2019.4990
May 24, 2019

大うつ病性障害(MDD)の生涯発生率は10〜15%。
主な治療法の選択肢には薬理学的および心理学的介入が含まれ、多くの患者が併用療法を受けている。 無作為化臨床試験(RCT)により抗うつ薬の有効性が確立されているが、2つの急性および長期有効性は限定的、患者の3分の1は治療抵抗性を示す。
この分野では新たな介入が必要であり、この視点では、運動、栄養、ケタミンに特に焦点を当てて、新しい介入が検討中

運動
運動、脳由来神経栄養因子、および神経保護を結び付ける仮説を考えると、運動はMDDを予防または治療するための魅力的な選択肢です。ただし、MDDの運動の有効性と有効性の証拠はさまざまです。 
33件のRCTのメタアナリシス(N = 1877)は、レジスタンスエクササイズトレーニングは、非アクティブコントロール条件と比較して、中程度の効果サイズと治療に必要な数で、抑うつ症状の有意な減少と関連していた

Gordon BR, McDowell CP, Hallgren M, Meyer JD, Lyons M, Herring MP. Association of efficacy of resistance exercise training with depressive symptoms. JAMA Psychiatry. 2018;75(6):566-576.

この所見は健康状態、処方された訓練量、および筋力の改善とは無関係であった。しかしながら、20人のRCTがうつ症状の患者を含み、4人のみがMDDの診断を受けた患者を含んでいた。さらに、盲目的割り付けのRCTのみを含めると、うつ症状の減少は有意に小さくなった 。にもかかわらず、軽度から中等度のMDDを有する患者に限定された分析では大きな効果量を示した。

興味深い研究として運動とMDDの関連をMendelian randomization approachでやる方法で、遺伝子を操作変数として用い潜在的因果関係を運動などのリスク要素とうつなどの健康アウトカムの関連性を研究する方法で遺伝子をランダム割り付けし、Mendelian randomizationは共役・逆因果関係のリスクを最小化する。611 583名の成人を含むデータで、 加速度モニターにて活動性評価女性 91 084名で、Choiらは加速度モニターベース身体活動とMDDの予防的関連性、オッズ比 0.74 (95% CI , 0.59-0.92)を見いだした。 
座りがちな生活習慣を毎日15分の激しい活動または1時間の中程度の活動で置き換えることが、うつ病を発症する可能性の相対的な潜在的な減少を26%減少させることを意味した。
ChoiKW, ChenCY, SteinMB, et al; MajorDepressive Disorder Working Group of the Psychiatric Genomics Consortium. Assessment of bidirectional relationships between physical activity and depression among adults: a 2-sample mendelian randomization study [published online January 23, 2019]. JAMA Psychiatry. doi:10. 1001/jamapsychiatry.2018.4175

定期的な運動を実施することは、ほとんどの人にとって困難であり、MDDを持つ人にとっては、エネルギーや動機が低いという症状のため、さらに困難です。それでも、定期的な運動を奨励または処方することは、たとえ単に心血管の健康状態を改善するためであっても価値があります。

栄養
多くの研究が気分に及ぼす食事の影響を調査しました、しかし結果は混合された発見と食事、研究デザインと研究集団における大きな違いのために解釈するのが困難であった。観察研究は、気分と、食物(野菜、果物、全粒穀物など)の含有量が高いこと、および赤身のタンパク質(魚など)を含む食事との間の好ましい関係を裏付けているようだ。しかしながら、MDD患者における食事の影響を具体的に調べた研究はほとんどない
SMILES試験(BMC Med. 2017; 15: 23. )は、最初の優れたRCTの1つであり、地中海式食事療法に焦点を当てた体系的な食事療法サポートの効果を調査したものです5。中等度から重度のMDDの成人患者56人中、12週間の個別介入(7 60分セッション)食事療法の助言や栄養士による支援(すなわち、やる気を起こさせる面接、目標設定、そしてマインドフルートリング)と社会的支援の効果を調べました。食事療法サポートグループは、社会的サポートグループと比較して、大幅に改善された。この所見はMDD患者の他の最近の研究と一致しており、いくつかの結果はMDD患者と2型糖尿病患者の間でさらに大きな効果を示す。
最近行われた2件のRCTで肥満患者のうつ症状に対する食事介入の効果が調査された。
Ma J, Rosas LG, Lv N, et al. Effect of integrated behavioral weight loss treatment and problem-solving therapy on body mass index and depressive symptoms among patients with obesity and depression: the RAINBOW randomized clinical trial. JAMA. 2019;321(9):869-879.
Bot M, Brouwer IA, Roca M, et al; MooDFOOD Prevention Trial Investigators. Effect of multinutrient supplementation and food-related behavioral activation therapy on prevention of major depressive disorder among overweight or obese adults with subsyndromal depressive symptoms: the MooDFOOD randomized clinical trial. JAMA. 2019;321(9):858-868. 
RAINBOW試験(N = 409;平均年齢51歳)は、RAINBOW trial (N = 409; mean age, 51) は行動療法的減量治療と問題解決型介入で、BMI 30以上&中等・重度うつ症状を有する対象者、通常治療と比較して介入群でBMIの有意な減少(36.7〜35.9対36.6〜36.6)とうつ症状軽減(1.5〜1.1対1.5〜1.4)を12ヶ月後示した
MooDFOOD試験(N = 1025;平均年齢46.5歳)は、他栄養素サプリメントと食関連行動療法(food-related behavioral activation therapy)でMediterranean-style dietを推奨する方法にてBMI 25-40・MDDなしの患者で検討。150名(10%)は12ヶ月内にMDD発症、4介入群で群間差認めず (9.7% in the placebo- only group, 10.2% in the placebo plus therapy group, 12.5% in the supplement-only group, and 8.6% in the supple- ment plus therapy group; P = .48 for interaction)。
RAINBOW trialでは有意だが、減量・うつ減量効果軽度、MooDFOODではMDD発症予防効果をサプリメント栄養素使用ではしめせず支持されなかった 
MDDの構造化された食事療法のサポートに関する最初の証拠は有望な所見で地中海料理を支持する内容だった。最近の論説では、以前の2つのRCTについて議論し、うつ病の治療には、根本的な薬理学的および心理学的治療に加えてエビデンスに基づく生活習慣介入(例:食事、運動、禁煙)を用いるべき。将来の研究では、より多くの研究集団を含め、比較可能な結果を​​得るために、以前の試験と同様のアプローチおよび食事パターンを使用する必要がある。さらに、気分および健康状態全般に対する長期的影響を調査するためには、より長い追跡調査(すなわち数年)を伴う研究が必要であろう。

ケタミン
2019年3月5日に、食品医薬品局は治療抵抗性うつ病(TRD)の薬として鼻用ケタミン(Spravato)を承認しました。ケタミンは1970年代から麻酔薬として使用されており、20年間MDDでの使用が検討されている。ケタミンは初期の試験(9から73の範囲のサンプルサイズ)から広く注目されている。重度の鬱病患者およびそうでなければ治療抵抗性の患者の間で、抑うつ症状および自殺念慮の改善(最大60%)。亜麻酔薬用量(0.5mg / kg)のゆっくりした静脈内投与後数時間以内に大きな治療効果が経験され、そしてこれらの効果は一過性であり、患者は数週間以内にそれらのベースラインの重症度に戻った。これらの最初の発見により、気分障害、特に米国におけるTRDに対するケタミンの適応外使用が増加している。
潜在的な有害作用に関して、これらの用量でのケタミンの静脈内投与は一般に、MDDを有する身体的に健康な個体の呼吸器または心血管の状態に有意には影響を及ぼさない。患者は鎮静、混乱、および解離を経験する可能性があるため、投与中および投与後にモニタリングが必要です。潜在的な長期リスクには、忍容性、乱用、および悪用が含まれる。
臨床試験では、TRD患者の半数以上が通常の治療に加えて鼻腔内または静脈内ケタミンの抗うつ効果を経験していることが証明されている。しかしながら、精神病的特徴または活性物質使用障害のある患者はRCTから除外されており、長期的な安全性データは限られている。ケタミンは、潜在的にTRDを軽減するのを助けることができる有望な薬だろうが、どの患者が持続的な利益を受けるかを確認するためにさらなる研究が必要。ケタミンの点滴は費用がかかり、多くの場合保険でカバーされてないが、ケタミンの鼻腔内投与ははるかに安価だが、頻繁な投与が必要(週2回または週1回)。エスケタミン(特許取得済み)を加えてもエスケタミンが抑うつのための一般的な治療法になるかどうかは不明・・・(後述続く)

2019年5月28日火曜日

免疫療法:経口 TORC1 inhibitor RTB101:高齢者喘息への抗ウィルス抑制効果確認

" RTB101 was used as immunotherapy"だそうで、免疫療法

ラパマイシン標的複合体1(TORC1)シグナル伝達を阻害・・・正直、代謝系しか頭になかった。高齢喘息をターゲットにしているが、COPDでも同様だろう。






高リスクの高齢患者(85歳以上もしくは喘息・2型糖尿病・慢性閉塞性肺疾患(COPD)または現在喫煙している65歳以上)に経口 TORC1 inhibitor RTB101 (ダクトリシブ) (10 mg once daily)x16週間投与

RTB101は "potent small molecule TORC1阻害剤”、半減期 4-6時間
抗ウィルス免疫促進のための用量は最大耐容量の120分の1
ウィルス性RTI、例えば、インフルエンザAやライノウィルスは喘息急性増悪の重要因子で、症例の75%で検出される、この問題に対し予防薬となる可能性示唆




パイプライン:https://www.restorbio.com/pipeline

American Thoracic Society(ATS)の年次総会での喘息高齢者への投与報告

https://www.medpagetoday.com/meetingcoverage/ats/79982



最高医療責任者であるJoan Mannick、MDら報告

喘息を有する65歳以上という事前層別化群で、インフルエンザシーズン気道感染発症率は 治療群 47名の12%、対照プラシーボ 51名の40%
相対リスク 68.9% p=0.0001


喘息患者でも、臨床検査で確認されたRTIの調整率が78.6%低下した(P = 0.001)、American Thoracic Society(ATS)の年次総会での発表

初期phase IIaトライアル 264名高齢者all-comer RTIで42%減少
その後phase IIbトライアルへ移行し、652名の高リスク(高齢喘息を含む)で検査室確認RTIの30.6%減少、重度RTI症では52%減少




「これらの患者の感染症の約60%から80%がライノウイルスであり、ライノウイルスには100種類の血清型があるため、現在このライノウイルス感染を予防する方法はありません」とMannickは述べた。 「喘息患者は気道に十分な抗ウイルス免疫を欠いているため、このウイルス感染にかかりやすいのです。」  研究のために、高リスクの高齢者参加者は、インフルエンザのシーズン中16日間毎日ダクトリシブを単独で、またはエベロリムス、または対応するプラセボと組み合わせて投与されました。高リスクの高齢患者には、85歳以上、および喘息、2型糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、または現在喫煙している65歳以上が含まれた。 この研究の主要評価項目は、16週間の治験薬治療中に1人以上の検査室で確認されたRTIを持つ患者の割合でした。 著者らは、事前定義された分析において、85歳以上または65歳以上の喘息患者はプラセボと比較して高反応者(それぞれOR 0.184、P = 0.007、OR 0.105、P = 0.0001)と見なされたと報告した。  全体として、副作用プロファイルはグループ間で類似していました。参加者の2%以上が報告した有害事象(AE)の中で、最も一般的なものは頭痛(RTB101患者は5.7%、プラセボ患者は7.2%)であり、「安全性の兆候は現れなかった」とMannickは述べた。 「呼吸器感染症の全体的な感染率は40%減少しています」と彼女は述べた。 「私たちがこの治療効果を私たちの第III相試験で見続けるならば、これは高齢患者、特に高齢喘息患者にとって医学的進歩となるでしょう。」 ロンドンのインペリアルカレッジおよびロイヤルブロンプトン病院NHS財団のアンドリューブッシュ医学博士は、「すべての年齢において、呼吸器ウイルス感染が喘息発作の主要な原因であることは疑いない」と述べた。 「喘息発作を約3分の1に軽減することが知られているため、喘息患者には1年間のインフルエンザワクチンを接種することをお勧めします。」


resTORbioのプレスリリースによると、2件の第III相試験が2019年の第2および第4四半期に開始され、合計2,000人を超える患者を採用することを目指しています。






2019年5月24日金曜日

入院COPD急性増悪:CRP指標 vs 喀痰性状指標

入院COPD急性増悪患者:CRP 5mg/dLを指標にするか、喀痰の色を抗生剤使用の指標にするか


CRP-guided antibiotic treatment in acute exacerbations of COPD in hospital admissions
H.J. Prins et al.
European Respiratory Journal 2019 53: 1802014; DOI: 10.1183/13993003.02014-2018



慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪における抗生物質の役割に関し議論あり、抗生物質からのベネフィットを特定するバイオマーカーは必要。 COPDの急性増悪患者を対象とした無作為化対照試験を実施し、GOLD戦略に従ってCRPガイド下抗生物質治療と患者報告症状を比較し、抗生物質処方の減少効果を示唆した。


COPDの急性増悪で入院した患者は、GOLD戦略かCRP戦略(CRP≥50 mg L -1 :5mg/dL)のいずれかに基づいて抗生物質を投与するために無作為に割り付けられた。

合計101人の患者がCRP群に、119人がGOLD群に無作為に割り付け。

GOLDグループと比較して、CRPグループの抗生物質による治療を受けた患者は少なかった(31.7%対46.2%、p = 0.028;調整オッズ比(OR)0.178、95%CI 0.077-0.411、p = 0.029)。 30日の治療失敗率はほぼ同じであった(CRP群で44.5%対GOLD群で45.5%、p = 0.881;調整OR 1.146、95%CI 0.649-1.187、p = 0.630)。

次回増悪まで(CRP群で32日、GOLD群で28日、p = 0.713;調整ハザード比0.878、95%CI 0.649-1.187、p = 0.398)。滞在期間は両群で同様(CRP群で7日対GOLD群で6日、p = 0.206)。



30日目には、症状スコア、生活の質または重篤な有害事象における差は検出されなかった。



COPDの重度の急性増悪において抗生物質治療を導くためのバイオマーカーとしてのCRPの使用は、抗生物質治療の有意な減少をもたらす。

本研究では、両群間で有害事象の差は認められなかった。これらの発見の一般化可能性についてはさらなる研究が必要である。





GOLD戦略;膿性か否かで判断
Treatment of AECOPD usually consists of corticosteroids and bronchodilators. The current GOLD strategy advises to add or withhold antibiotic treatment based upon patient reported sputum purulence. This strategy assumes that both sputum purulence is a good marker of bacterial infection and that the patients’ assessment of sputum colour is reliable. (Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease. Global strategy for the diagnosis, management, and prevention of chronic obstructive pulmonary disease. 2018. 1-1-2018. 1-3- 2018.)





慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪はしばしば経験的抗生物質治療の開始を促すが、多くの場合細菌性病原体は検出できず、ウイルスは実際にエピソードの大部分を占めることがある。確かに、集中治療を必要としない増悪時の広範な抗生物質利用の有効性を裏付けるデータは不十分である。本明細書において、細菌感染の患者の個々のリスクに基づいて抗生物質治療を個別化することは、これらの薬剤の賢明で正しい使用を促進し、世界的な健康に対する最も緊急の脅威の1つを軽減するための抗生物質管理努力を改善する大きな可能性を有する。そして抗生物質の乱用に直接つながります。 COPDの急性増悪を伴う患者の全体的な評価および臨床ケアへの細菌感染と相関する宿主反応マーカーの統合は、個々の抗生物質の決定を改善する可能性が高い。 COPDの急性増悪におけるそのような有望な宿主応答マーカーの中で、細菌感染に特異的なマーカーであるプロカルシトニン(PCT)、および高感度のより一般的な炎症マーカーであるC反応性タンパク質(CRP)が最も関心を集めている。 COPDの急性増悪を含む、敗血症および呼吸器感染症の患者において、PCTが臨床症状の同様の解消と共に抗生物質の使用量の有意な減少をもたらすことをいくつかの無作為化試験が確認している。事実、COPD増悪患者1252人の個々のデータに基づくメタアナリシスは、抗生物質投与の有意な減少(72%対43%)および抗生物質曝露の有意な減少(死亡率に差はない)をもたらすPCTガイダンスを見出した。 (4%対3%)または治療失敗のリスク(17%対17%)[3]。それでも、集中治療を必要とするCOPD患者を調査した最近の試験では、抗生物質の使用に対するPCTの有意な効果は報告されておらず、臨床転帰に関してPCTの非劣性は証明できなかった。 CRPはプライマリーケア研究において抗生物質治療を指示するために首尾よく使用されており、観察研究はCRPがPCTと比較してCOPDの急性増悪における直接抗生物質治療に適していることを示唆した。それでも、急性COPD増悪の患者における抗生物質の決定を導くためのCRPの効果を検討している無作為化試験はほぼ不足。
https://erj.ersjournals.com/content/53/5/1900562

スタチンによる脳振盪認知症予防効果?

スタチンが傷害関連の脳浮腫、酸化ストレス、アミロイドタンパク質の凝集、および神経炎症を軽減する可能性があることを示唆され、スタチンによる潜在的な神経保護効果も推測される




Association Between Statin Use and Risk of Dementia After a Concussion
Donald A. Redelmeier,  et al.
JAMANeurology
https://jamanetwork.com/journals/jamaneurology/article-abstract/2733673

意義:振盪は急性外傷で、慢性の障害に関わる可能性有り、スタチンが神経学的回復改善する可能性有り 
目的:スタチン使用がその後の認知症リスク増加減少するかの関連性検証
デザイン・セッティング・被験者:オンタリオ(カナダ)1993年4月1日〜2013年4月1日登録、フォローアップ2016年3月31日まで、解析日 2014年4月18日〜2019年3月21、被験者は脳振盪診断老齢、重症例(入院必要、先行認知症・せん妄診断、90日内死亡)除外 
暴露:卒中後90日内のスタチン処方 
主要アウトカム:長期認知症発症 
結果:28815名の脳振盪診断(年齢中央値 76歳、女性 61.3%)、7058(24.5%)がスタチン治療、21757(75.5%)はスタチン治療受けず
認知症発症4727名 、フォローアップ平均 3.9年間で、6名中1例の発症に相当
スタチン治療により非使用者より認知症リスク13%減少 (相対リス, 0.87; 95% CI, 0.81-0.93; P < .001)
スタチン使用の認知症リスク減少は多様な患者群で該当するが、他の心血管薬剤使用、経過とともに明確になり、その後のうつ病リスクとは異なり、足首捻挫後の患者では観られない(足首捻挫は対照として用いてるらしい)



 解説
研究者らは、脳震盪後のその後の認知症のリスクの増加または減少がスタチンの使用と相関しているかどうかを確認した。 この大規模な人口ベースの二重コホート研究では、脳震盪を有すると診断された28,815人の被験者が同定され、そのうち7,058人がスタチンを服用し、21,757人が被験者を服用しなかった。 スタチンの使用に関連する認知症のリスクの減少は、様々な患者グループで見られ、他の心血管薬の使用とは無関係に維持され、経時的に強化され、その後の鬱病のリスクとは区別され、 。 この分析では、脳震盪後、高齢者はかなり長期にわたる認知症リスクを有しており、これはスタチン患者のわずかな減少に関連していた。

2019年5月23日木曜日

AENSCISトライアル:オフェブ強皮症肺への有効性



Nintedanib for Systemic Sclerosis–Associated Interstitial Lung Disease
Oliver Distler,, et al., for the SENSCIS Trial Investigators

強皮症関連間質性肺病変において、ニンテダニブの対プラシーボ、FVC年次低下軽減
副作用はIPFと同様
強皮症の他の臨床所見への臨床的ベネフィット認めず
(Funded by Boehringer Ingelheim; SENSCIS ClinicalTrials.gov number, NCT02597933.)





軽症持続型喘息の大半は喀痰好酸球低比率で、吸入ステロイドもLAMAも臨床的には反応しない

重症喘息では各種好酸球ターゲットBio治療、軽症でも、"BUD/FOR治療 as needed”という好酸球ターゲット療法への反撃?


”喘息の半数は好酸球性炎症を有さない”・・・ことに注目

軽症持続型から吸入ステロイドを全例に使用することに関して異議が述べられた


42週間2重盲検交叉トライアル、12歳以上、軽症持続型、295名
モメタゾン、チオトロピウム、プラシーボ
患者を喀痰好酸球比率2%未満、2%以上でカテゴリー化
プライマリアウトカム:トライアル薬剤の一つへの事前設定弁別反応示した喀痰好酸球比率低値患者に於けるモメタゾン反応性をプラシーボとの比較、チオトロピウムとの比較
反応は、導入治療失敗・喘息コントロール日数、FEV1を含む階層化複合アウトカム: 両側P値が0.025未満の場合、統計的有意性とする
セカンダリアウトカム: 痰好酸球高比率と低比率患者における結果の比較


結論
軽症、持続性喘息の多くは喀痰好酸球レベル低く、この群では、モメタゾンもチオトロピウムも、プラシーボと有意な差を認めない
データだと(喀痰)好酸球低値患者において他の治療と吸入ステロイドを比較する臨床的directive trialのequipoiseが必要という結論になる(Funded by the National Heart, Lung, and Blood Institute; SIENA ClinicalTrials .gov number, NCT02066298.)



Mometasone or Tiotropium in Mild Asthma with a Low Sputum Eosinophil Level
Stephen C. Lazarus, et al., for the National Heart, Lung, and Blood Institute AsthmaNet
N Engl. J. Med.
May 19, 2019
DOI: 10.1056/NEJMoa1814917
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1814917

患者の内好酸球比率低率は73%、59%はトライアル薬剤で弁別的反応
プラシーボに比較してモメタゾン、チオトロピウムも有意差認めず

弁別的反応を示した好酸球レベル低値患者においては、モメタゾン良好は57% (95% 信頼区間l [CI], 48 to 66) 、プラシーボ好反応は43% (95% CI, 34 to 52)  P=0.14
一方チオトロピウムへの良好反応は 60%  (95% CI, 51 to 68)で、プラシーボ  40% (95% CI, 32 to 49) より良好(p=0.029)

好酸球レベル高値患者群においては、モメタゾン反応性はプラシーボより良好 (74% vs 26%)だが、チオトロピウムの反応性は差認めず(57% vs 43%)







この試験では、主な結果は、試験薬に対して特異的に異なる反応を示した喀痰好酸球レベルが低い患者(<2%)において、プラセボと比較してモメタゾン、プラセボと比較してチオトロピウムに対する反応があった。治療の失敗、喘息の管理日数、および1秒の強制呼気量を組み込んだ階層的な複合的結果に従って、反応を決定した。
パネルAは、プラセボと比較した場合の、およびプラセボと比較した場合のチオトロピウムとの比較における、モメタゾンによる治療に対する予め特定された異なる反応を示す。少なくとも1つの試験期間中の反応が別の試験期間中の反応よりも良好にランク付けされた場合、患者は反応が異なると考えられた。モメタゾンとプラセボの比較では、患者の34%がモメタゾンを投与中に喘息管理が良好であり、25%がプラセボを投与中に管理が良好であり、21%が群間差なし、20%がデータなしで群間差なし。チオトロピウムとプラセボの比較では、チオトロピウムを投与している間に36%、プラセボを投与している間に24%に優れていた。22%には群間差がなく、18%に欠損があった。
パネルBは、試験薬剤に対して弁別的反応を示した患者間の主要転帰の統計的比較の結果を示し、0.025未満の2つのP値は統計的有意性を示す。プラセボよりもメタメタゾンに対してより良い反応を示した患者の割合(57%vs 43%、P = 0.14)またはプラセボよりチオトロピウムに対してより優れた反応を示した患者の割合(60)に、グループ間の有意差はありませんでした。





序文
喘息はheterogenousな疾患で多くの患者は現在治療で反応せず、多くの患者は現在利用可能な治療に対して許容可能な反応を示さず、そのほとんどは好酸球性炎症を標的としている。以前の研究で喘息患者の約半数が吸入グルココルチコイドに対する反応が乏しく、好酸球性気道炎症はubiqutousに存在しているわけではないということが分かってる。
 2%以上の痰好酸球のパーセンテージを持つ患者とは対照的に、1秒間の強制呼気量(FEV1)は、吸入されたグルココルチコイドの使用で増加し、好酸球レベルが低い患者(したがって、好酸球レベルの2つのサブグループは、治療の必要性が異なる2つの異なる表現型の喘息を表す可能性がある。
ガイドラインでは、持続性喘息患者全員に吸入グルココルチコイドの使用を推奨している。約50%の患者で、軽度の持続性喘息は痰好酸球増加症と関連していない可能性があるので、これらの患者が吸入グルココルチコイドの恩恵を受けるかどうかを前向きに判断し、そうでない場合は代替治療を検討することが重要。長時間作用型ベータアゴニスト(LABA)を用いた単剤療法の危険性がそれらの使用を除外したので、対照薬の安全な代替薬としてチオトロピウム、長時間作用型ムスカリンアンタゴニスト(LAMA)を考えた。
したがって、Steroids in Eosinophil Negative Asthma (SIENA) 試験では、患者のベースライン時の痰の好酸球レベルに従って、吸入グルココルチコイド(メメタゾン)とチオトロピウムをプラセボと比較した。




好酸球と関連しないとなると、Neutrophilic asthmaや Pauci-immune Phenotypeなど思いつくが・・・いずれも重症持続型喘息を念頭に置いた考え。確かにこれらの軽症例あって当然だが、それらの軽症例と考えて良いのだろうか?また別のphenotypeが紛れ込んでるのだろうか?


いずれにせよ、自覚症状ACT、客観的肺機能FEV1など改善する経過のうちに(喀痰好酸球と弱・中等度相関する)FeNO低値患者でも後から高値に変化する症例って結構多いんだけど、初診からFeNO低値でICSなど抗炎症治療せずってのも考えものだと思う



Gary W.K. Wong, MD( Chinese University of Hong Kong)のエディトリアル
将来軽症持続型喘息でもbiomarker-guided 治療の役割が大きくなると述べている。

"Larger trials with adequate power to detect all important asthma outcomes are needed to evaluate whether LAMAs would be an effective alternative for the treatment of persistent asthma in patients who do not have eosinophilic airway inflammation," Wong wrote.

軽症持続型喘息のphenotypeガイド治療のはじまり・・・


2019年5月22日水曜日

Dietary Inflammatory Index高値による総死亡・心血管疾患死亡リスク増加は日本人にもあてはまる

The literature-derived, population-based Dietary Inflammatory Index (DII) was developed as a comprehensive index to assess the effect of dietary factors on 6 inflammatory biomarkers: IL-1β, IL-4, IL-6, IL-10, TNF-α, and CRP.
Designing and developing a literature-derived, population-based dietary inflammatory index. Shivappa N, et al.  Public Health Nutr 2014;17:1689–96.

→ https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3925198/table/T2/?report=objectonly
Food parameters included in the dietary inflammatory index, inflammatory effect scores, and intake values from the global composite data set; Dietary Inflammatory Index Development Study, Columbia, SC, USA, 2011–2012


食品炎症性指数による総死亡・要因別死亡率への影響


高DIIスコアは、より高いレベルのIL-6、TNF-α、ホモシステイン、およびhs-CRPと関連。 高DIIが、一般集団における結腸直腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌などのいくつかの癌による全原因死亡率およびCVD死亡率および死亡のリスク増加と関連など報告があったが、日本人に当てはまるか?

結論〜言えば、DII高値ほど、総死亡率・総心血管疾患死亡率リスク増加と関連


Dietary inflammatory index is associated with risk of all-cause and cardiovascular disease mortality but not with cancer mortality in middle-aged and older Japanese adults
Okada E, et al.
The Journal of Nutrition, nxz085, https://doi.org/10.1093/jn/nxz085




年齢40-79歳の日本人5万8千人被験者: Japan Collaborative Cohort Study
総死亡、総心血管疾患(CVD)、卒中、冠動脈疾患、総がん、消化器系がん、非がん/非CVD死亡率と Dietary Inflammatory Index (DII) scoreの関連性検討


食物回数アンケートにて、DIIスコアを比検査で計算、19.3年間中央値フォローアップ

全死亡率とCVD死亡率はDIIスコア高値に関連して日本人成人で観察された


2019年5月21日火曜日

Novel START Study:軽症喘息にも シムビコート as-needed治療

軽症喘息:劇的に変化をもたらすか?
Journal Watchなどでも解説されている・・・


Controlled Trial of Budesonide–Formoterol as Needed for Mild Asthma
Richard Beasley, , et al., for the Novel START Study Team
N. Engl. J. Med.  May 19, 2019
DOI: 10.1056/NEJMoa1901963
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1901963

背景:二重盲検プラシーボランダム化トライアル、ブデソニド・フォルメテロールをas-needed basisで使用することで短時間作用性β2アゴニスト(SABA)使用するより重度喘息のリスクを低減する;リスクはブデソニド維持療法+as-needed SABAと同様
臨床トライアルからのデータを臨床実践に反映することはベネフィットのあることである

研究方法: 軽症喘息患者の52週間、ランダム化、オープンラベル、平行群、対照化トライアル。3治療群の一つにランダム化割り付け
・ albuterol (100 μg, two inhalations from a pressurized metered-dose inhaler as needed for asthma symptoms) (albuterol group)
・ budesonide (200 μg, one inhalation through a Turbuhaler twice daily) plus as-needed albuterol (budesonide maintenance group)
・ budesonide–formoterol (200 μg of budesonide and 6 μg of formoterol, one inhalation through a Turbuhaler as needed) (budesonide–formoterol group)

吸入を電子モニタリング使用で薬剤使用を計測。プライマリアウトカムは年間喘息急性増悪発生数

結果: 
解析は:ランダム化施行 668/675

年間増悪発生率:budesonide-formeterol群は、albuterol群より低い (absolute rate, 0.195 vs. 0.400;相対比, 0.49; 95% 信頼区間 [CI], 0.33 to 0.72; P<0.001)、budesonide維持群からのデータでは有意差認めず (絶対比, budesonide–formoterol 群  0.195 vs.  budesonide maintenance 群 0.175; 相対比, 1.12; 95% CI, 0.70 to 1.79; P=0.65)

重度増悪発生数は、budesonide-formeterol群ではalbuterol群(9 vs. 23; 相対リスク, 0.40; 95% CI, 0.18 to 0.86)、budesonide maintenance群 (9 vs. 21; relative risk, 0.44; 95% CI, 0.20 to 0.96)より少ない

吸入budesonide平均使用量(± SD)は、budesonide-formeterol群  107±109 μg per day、budesonide maintenance群  222±113 μg per day



報告された副作用イベントの頻度、種類は以前のトライアルや臨床使用報告と一致

結論:
軽症喘息成人のopen-label trialにおいて、budesonide-formeterol used as neededは、albuterol used as neededより喘息急性増悪予防という観点で優れている。
. (Funded by AstraZeneca and the Health Research Council of New Zealand; Novel START Australian New Zealand Clinical Trials Registry number, ACTRN12615000999538.)



軽症喘息から吸入ステロイド必要というのはよく分かるが・・・
bud.-for. as neededというのは臨床家としては抵抗がある
発作時"お好きにお使いください”というのはちょっと・・・

そもそも対照としての"ブデソニド維持療法群”:使用量平均・中央値は 1.1-1.23回程度で、真面目にやってるとは言いがたいのだが、文字通りの維持療法と考えて良いのだろうか?








解説一部Google翻訳

持続性喘息患者の間で、SYGMA試験は必要に応じて使用されたブデソニド - ホルモテロールが喘息増悪の予防においてブデソニド維持療法と同じくらい効果的であるが吸入グルココルチコイドへの曝露がはるかに低いことを示しました。 SYGMA 1ではブデソニド維持療法、SYGMA 2では25%のばく露を受けた。しかしながら、ブデソニド維持療法を受けた患者の間では、必要に応じてブデソニド - ホルモテロールを受けた患者の間よりも、喘息症状の抑制は依然として良好であった。 SYGMA試験の臨床試験設定において、治療への順守は60〜80%であったことに留意すべきである。現実の環境では、順守ははるかに低い可能性があります。
現実的な臨床診療をよりよく反映するために、Beasleyらは、軽度の間欠性喘息患者および軽度の患者を対象とした非盲検試験(Novel Symbicort Turbuhaler喘息緩和療法(Novel START))を実施しました。持続性喘息(すなわち、患者は、ステップ1またはステップ2の喘息治療に関する全国喘息教育予防プログラムのガイドライン基準を満たしていた)。 52週間の多施設共同研究では、成人は3つの治療のうちの1つに無作為に割り付けられた。喘息症状の軽減に必要なアルブテロール。維持療法としてブデソニド、1日2回200μg、必要に応じてアルブテロール。症状の緩和に必要な場合はブデソニド - ホルモテロール。主な結果は喘息増悪の年率化率でした。副次評価項目には、ACQ-5(前の週の喘息症状を評価するACQ-5、より大きい障害を示す)、治療中FEV1、吐き出された一酸化窒素の割合(Feno)、および重度の増悪の数(重度の増悪は、少なくとも3日間の全身性グルココルチコイド治療の処方または全身的グルココルチコイド治療をもたらす緊急診察の受診につながる喘息の悪化と定義される)。必要に応じてブデソニド - ホルモテロール(0.195)を投与された患者の年間の患者1人当たりの全体的な増悪率は、必要に応じてアルブテロール(0.400)を投与された患者のそれよりも有意に低く、有意差は認められませんでした。メンテナンスブデソニド(0.175)を受けた。ブデソニドによる維持療法は、喘息症状の管理に必要に応じて使用されるブデソニド - ホルモテロールよりも優れていました。これは、メンテナンスブデソニドを受けた患者のACQ-5のスコアが低いことを反映しています。 。さらに、中央値のフェノ値は、必要に応じてアルブテロールを投与された患者よりも、維持されたブデソニドを投与された患者および必要に応じてブデソニド - ホルモテロールを投与された患者の両方で低かった。必要に応じてブデソニド - ホルモテロール。この試験の結果は、SYGMA試験の結果と合わせて、必要に応じて使用されるブデソニド - ホルモテロールが、軽度の喘息患者に対する維持型ブデソニド維持療法の許容可能な代替療法であるという説得力のある証拠を提供します。


2019年5月20日月曜日

GOLD science committee report 2019



Global Strategy for the Diagnosis, Management, and Prevention of Chronic Obstructive Lung Disease: the GOLD science committee report 2019
Dave Singh,  et al.
European Respiratory Journal 2019 53: 1900164; DOI: 10.1183/13993003.00164-2019
https://erj.ersjournals.com/content/53/5/1802161


序文:
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、その病態生理学および臨床症状に寄与する多くの異なる構成要素およびメカニズムを伴う複雑な状態である。 "Precision medicine"は、薬理学的治療を最適化し、副作用の可能性と比較して治療上の利益を最大化することを可能にするために、各個人に関するすべての関連する臨床的、遺伝的および生物学的情報を統合する患者特有のアプローチ。例えば、組み合わせを含む吸入コルチコステロイド(ICS)のランダム化比較試験(RCT)が一貫してICS成分の臨床的有益性をグループごとに実証している一方で、効果の存在と規模は個人間で大きく異なる。さらに、COPDにおけるICS使用の長期的な副作用、特に肺炎だけでなく骨粗鬆症、糖尿病、結核および非結核性抗酸菌感染症についての懸念もある。
好酸球性気道炎症は、COPD患者のサブセットに見られる。短期間の臨床試験では、安定したCOPD患者における痰の好酸球数が多いほど、コルチコステロイドに対する肺機能の反応が大きいことが予測されることが示されてる。好酸球の好中球測定は、ほとんどの施設で広く利用できるわけではないため、日常の臨床診療での使用が制限され、患者は分析のために適切なサンプルを常に提供することができない。血中好酸球測定は、COPD患者における好酸球性気道炎症を反映する代替バイオマーカー。最近の臨床試験では、血中好酸球数がCOPD患者におけるICSの有効性と関連していることが示されており、ICSによる治療の有益性がより高い個体を同定するためのこのバイオマーカーの使用を示唆する。これは、適切な気管支拡張薬治療にもかかわらず、増悪の病歴を有するCOPD患者においてより正確にICS治療を標的にする機会を臨床診療において提供する。
慢性閉塞性肺疾患の管理のための世界的イニシアチブ(GOLD)2017戦略文書では、COPDの初期診断後に症状と増悪リスクに基づく評価(ABCD分類)を実施することが推奨されていた。ABCDグルーピングは、臨床特性に基づいて薬理学的管理へのより個別化されたアプローチを容易にするように設計されており、初期治療およびその後の各グループに対するフォローアップに対する異なる推奨を伴っていた。これらの治療アルゴリズムは、初診時に治療未経験者に比較的容易に適用することができるが、すでに維持療法を受けている患者では、フォローアップ中にその使用がより問題になる。重要な問題の1つは、個人に適用されるグループ分けが時間とともに変化する可能性があるということで、治療に対する積極的な反応または疾患の悪化のいずれかを反映している可能性がある。可能性のある解決策は、最初の治療にのみABCDを使用し、追跡調査中で治療を既に受けているCOPD患者の薬理学的管理を導くために異なるシステムを使用すること。
増悪予防に焦点を当てた最近の大規模ランダム化比較試験(RCT)は、ICSと長時間作用型気管支拡張薬の治療効果に関する重要な新しい情報を提供している。このレポートはCOPD患者におけるバイオマーカーとしての血液好酸球の証拠のGOLD科学委員会の解釈と増悪予防に関する最近のRCT証拠を説明する。我々は、この情報がGOLD 2019勧告にどのように組み込まれたかを説明しており、これは初期およびフォローアップの薬理学的管理に関してより明確にするためのものである。

Initial and follow up pharmacological management; more clarity needed in GOLD


GOLD 2017の薬理学的治療の推奨事項は、診断時の患者のABCD分類に基づいている。このシステムを使用して初期治療計画を決定することは比較的簡単である。初期治療後の次のステップを決定するための関連するアルゴリズムに従うことは、前の治療に対する臨床反応の知識を必要とし、それは現在の計画を拡大するか、切り替えるか、縮小するか、維持するかを導く。 GOLD 2017治療アルゴリズムがCOPDに初めて適用されると、以前の治療に対する反応に関するこれらの重要な詳細が失われる可能性がある。
すでに維持吸入治療を受けている患者。さらに、以前の治療に対する有益な反応はGOLD ABCD群の変化につながる可能性があり、臨床医はこの変化がその後の有益な薬理学的治療の中止につながるかどうかについて混乱する可能性がある。 COPD患者は時間とともに彼らのGOLDグループを変えることができ、そしてそのような状況でそれがABCDシステムがどのように使われるべきであるかは不明。
GOLD 2019でも適切な初期薬理学的治療法を決定するためにABCDグループを保持している。しかし、GOLD 2019では、ABCDグループはすでに維持療法を受けている患者には使用すべきではないと述べている。そのような患者に対してより明確な推奨をするために、追跡調査中の薬理学的管理のために異なる治療経路が構築されている。症状(呼吸困難および運動制限)および急性増悪は依然として治療の焦点であり、そしてこれらの治療可能な特徴のそれぞれについて別々のアルゴリズムがある。

臨床医はその時点でさらに効果的な治療を必要とする優勢な形質を決定し、そして関連するアルゴリズムを使用する必要があります。増悪アルゴリズムは症状と増悪の両方を患っている患者に使用されるべきである。患者は、彼らの現在の治療、および利用されている治療の段階的拡大、切り替えまたは段階的縮小の推奨に従って、関連するアルゴリズム内に配置されるべきである。両方の追跡治療アルゴリズムは、全ての以前の治療の可能性を網羅するために、現在利用可能なすべての吸入単剤療法および併用治療クラスを含む。これが、なぜICS / LABAが呼吸困難のアルゴリズムに含まれるのかを説明している。呼吸困難の治療法としては推奨されてない(この治療に向かってのエスカレーションの矢印はない)が、現在ICS / LABAで治療されていて、さらなる治療を必要とする呼吸困難がある患者に含まれいる。同様に、LABAまたはLAMAは、これらの以前の治療法の可能性の両方をカバーするために各アルゴリズムの最上部に記載されている。これらの経路は患者が必要に応じて一方から他方に切り替えることができるように構築されているので、使用するのに最も適切な治療アルゴリズムは各診療所訪問で再評価されるべき。
呼吸困難のアルゴリズムは、息切れのために追加の長時間作用型気管支拡張薬治療を使用したエスカレーションを推奨し、異なる形式ではあるがGOLD 2017レポートの推奨に厳密に従っている。デュアル気管支拡張薬またはトリプルコンビネーションですでに治療されている呼吸困難の患者のために、分子または吸入装置を切り替えるオプションが追加された、そして心不全と肺高血圧のような呼吸困難の他の考えられる原因を調査する注意がある。肺リハビリテーションを含む非薬理学的管理アプローチもまた考慮されるべきである。増悪経路の推奨は、バイオマーカーとしての血中好酸球の取り込みおよびRCTからの最近の証拠により、科学的内容および形式の両方においてGOLD 2017報告とは異なる。


The evidence for blood eosinophils as a biomarker in COPD
Relationship of blood to lung eosinophils
気管支鏡・喀痰サンプリング所見から、特定のCOPD患者に於ける好酸球数増加の存在は、気道中のこれらの細胞数増加による"eosinophilic COPD"サブグループの存在概念を後押ししている。血中・喀痰中好酸球数の統計学的相関がCOPD患者では存在するが、相関性は中等〜軽度。しかし、喀痰好酸球数は、inter-sample変動があり、 好酸球性肺炎症の “gold standard” biomarkerと見なすべきではない。好酸球数増加は肺組織サンプルの好酸球数増加と相関し、reticular基底膜肥厚増加(上皮下線維化)を含む病理的所見と関連

Variability of blood eosinophils
血中好酸球に関与しうる要素は敗血症、経口ステロイドで減少させる可能性あり、好酸球数反復測定のintra-class correlation coefficient (ICC)は1年時点で 0.64(n=17,724)で経口ステロイド and/or 合併急性増悪を除外した場合、0.70へ増加し関与していることがわかり、2年次は 0.87(n=59)となり、3年次は 0.57(n=1483)となる。ICC値の解釈は excellent (0.75)、 fair to good (0.40-0.75)、poor (<0 .40="" 0.59="" 0.70-0.72="" color="#ff0000" font="" icc="">他の疾患管理の通常バイオマーカーに匹敵するfair to goodあるいはexcellent カテゴリーなのだ。
事前取り決め閾値を横断する患者数の経時的解析では低閾値で良好な安定性をしめす。 閾値 <150 好酸球/ μLを使用すると、6ヶ月、2年超で各々87および86%で安定。これより高い閾値ではより大きな変動性を認めた。 細胞 340/μLを使用した場合、安定性は6ヶ月で85%、2年で62%であった。複数回の検査(少なくとも3回の測定)で観察された変動性は好酸球数が多いほど大きくる。最初の血中好酸球数≧150細胞/μLの88%が、その後の平均値≧150を有した。細胞/μL、最初の計数≧300細胞/μLについては、このレベルを上回るその後の平均との割合は68%であった。 300を超える好酸球/μLの閾値では、観察コホートは、1または2年の追跡調査後に値の15.8%、19%および20%が常にこのレベルを上回り、単一の測定での割合がより高いと報告している。血中好酸球の閾値以上または以下で特定されたCOPD患者の割合はgeographical変数の影響を受ける可能性がある。


Blood eosinophils and ICS response

RCTの事後分析および事前に特定された分析により、無作為化前に測定された血中好酸球数とICS効果との関係が評価されています。 これらの研究からの証拠は治療の比較に従って再検討されます。 特に明記しない限り、これらすべての試験の選択基準は、前年に1回以上の中等度または重度の増悪があることを患者に要求しており、試験は少なくとも1年間の期間であった。

ICS/LABA versus LABA

ICS / LABAとLABAを比較したRCTの3つの事後分析では、すべて同様の結果が得られました。血中好酸球数と増悪予防に対するICSの効果との間には継続的な関係があり、好酸球数が多いほど薬物応答が高いと予測された。最大の分析(n = 4528)ではデータモデリングを使用して、好酸球100個/μL未満ではICSの利点は観察されず、より高い数での効果はより大きくなった(そして臨床的に関連性が高い)。この分析および他の分析における> 300細胞/ μLでの治療効果は、約50%の増悪率の減少であった。データモデリング分析はまた、FEV1および生活の質に関してより高い血中好酸球数でより大きなICS効果を示した。
単一の血中好酸球閾値を用いたICS / LABAとLABAを比較した他の研究の事後分析はあまり有益ではなかった。好酸球閾値がICS反応の大きさの違いを反映していると思われるため、単一の好酸球閾値を用いてCOPD集団を「レスポンダー」と「非レスポンダー」を定義することは非常に単純です。比較的大きな効果が300細胞/μL以上で観察される一方で、効果はほとんどまたはまったくありません(図3)。これは、x軸が血中好酸球数であることを除いて、x軸を薬物濃度、y軸を薬物反応とする古典的な薬理学的用量反応曲線と同様である。
Triple therapy studies (LABA/LAMA/ICS fixed combination)
TRIBUTE試験では、血中好酸球患者の増悪率の低下に対して、LAMA / LABA(グリコピロレート/インダカテロール)と比較した3剤併用療法(ベクロメタゾンジプロピオネート/ホルモテロール/グリコピロレート)の効果が2%以上(20%) 2%未満と比較した場合の差、p = 0.029(6%、p = 0.68)。統計学的に有意な利益はこの閾値を超えて達成されなかったが、≧200細胞/ μLを用いて数値的に同様の結果が得られた(p = 0.057)。
IMPACT試験では、前年にFEV1が50%未満で1以上の中等度または重度の増悪、または前年度にFEV1が50%〜80%および2度以上または1つの重度の増悪を示した患者が登録された これらの選択基準は、比較的高い増悪リスクのある集団を登録した。前年度は、54%が2回以上の中程度または重度の増悪、26%が1回以上の重度の増悪でした。 LAMA / LABA(ウメクリジニウム/ビランテロール)よりも3剤併用療法(フルチカゾンフロエート/ビランテロール/ウメクリジニウム)を支持する年間増悪率に25%の治療差があった。事前設定分析は、150好酸球/μL以上で32%の治療差(p<0.001)、一方この閾値未満では治療差は少なかったが、tripleで治療効果有意(12%; p=0.034)

ICS/LABA versus LABA/LAMA
FLAME試験は、LAMA / LABA(グリコピロレート/インダカテロール)がICS / LABA(フルチカゾンプロピオネート/サルメテロール)よりも増悪率の低下に対して17%大きい効果を有することを示した。 2%好酸球閾値を用いた予め特定された分析は、この閾値の上または下の治療効果に差がないことを示した。 3つのサブグループ(<150 150="" 300="" 600="" cells="" laba="" lama="" p="" u="">血中好酸球とICS効果との間の連続的な関係の概念は支持しており、血中好酸球数が少ないほどICS効果は低下している。この研究では、前年の増悪歴が2回以上の患者の割合は限られていたが(約20%)、前回の増悪歴は治療の違いに影響を与えなかった。
IMPACT試験では、ICS / LABA(フルチカゾンフロエート/ビランテロール)とLAMA / LABA比較。 ICS / LABAは、全人口の増悪予防に対して10%の効果があり。 治療の違いは血中好酸球数に依存し、LAMA / LABAは150細胞/μL未満でより大きな効果を示したが、ICS / LABAはこの閾値を超えるとより大きな効果を示した。これらの結果は、どの好酸球閾値またはサブグループ分析においてもICS / LABAがLAMA / LABAよりも優れていなかったFLAMEとは大きく異なる
これらの研究の主な違いは登録患者の急性増悪リスクの違いで、FLAME試験被験者の大多数は前年に急性増悪1回経験者で、一方、IMPACT試験ではそれよりリスクが高いためリスクの高い患者でICSを含む合剤の効果が高かったことが示唆された。FLAMEでは喘息既往除外され、IMPACTでは喘息既往症例が含まれた。ICS治療効果に影響を与えた可能性がある。run-in治療期間においてFLAME研究ではtiotropium単独が投与され、IMPACTでは自身の吸入療法継続許可されていた。これらが結果に影響を与えたはずで、ICS必要な患者が存在し、FLAME run-in期間中に脱落した可能性有り。
ICS step-down studies

WISDOM試験は、3剤併用療法からのICSの段階的な中止を評価した。 WISDOMの2つの事後分析は、より高い血中好酸球数(300細胞/μL以上)でのICS離脱の重大な有害作用を示しています。これらの分析のうちの1つは、2以上の増悪の既往歴を有する患者においてより大きな有害作用を示し、より高い増悪リスクのある個人におけるより大きなICS作用の概念を支持している。
SUNSET試験では、少なくとも6ヵ月間すでに3剤併用療法を受けていた前年に0または1の増悪(それぞれ66%および34%)の患者が登録されました。   ICS離脱は、300好酸球/μL以下で良好な耐容性を示したが、300好酸球/μL以上の患者では臨床的悪化(より大きな肺機能喪失)およびより悪化が観察された。

Other clinical trials
INSPIRE試験の事後分析では、2%および200細胞/μLの閾値を用いた場合のICS/LABAとLAMAとの間の有意差は示されなかったが、他の閾値は調査されなかった。10件の研究を組み合わせた分析では、ICSの使用とは無関係に、好酸球患者では肺炎リスクが2%未満であることが示されました。 1.62)
臨床試験では、血中好酸球数が増悪中にどの患者が経口コルチコステロイド治療の恩恵を受けるかを予測できることが報告されています。 これらのデータは、急性増悪管理を指示するのに役立つかもしれませんが、ICSを含むコンビネーション吸入器の使用を指示するのを助けるために血液好酸球の使用を支持するものではありません

Summary; blood eosinophils and ICS response
検討された臨床的エビデンスには、サンプル数が少ないサブグループ分析が含まれています。そのような場合、統計的有意性のためにp値に焦点を合わせることはあまり適切ではないかもしれません。ただし、効果の大きさの大きさと研究間のデータの一貫性は重要な検討事項になります。増悪のリスクが高いCOPD患者で実施されたRCTの結果の一貫したパターンが浮上しており、好酸球数の減少は増悪予防に関してICSの有益性が低いかまたはないことを予測することを示している。最大のICS効果は300個以上の好酸球/μLで一貫して観察された。したがって、<100 br="">FLAME試験とIMPACT試験で二重併用治療を比較した場合に観察された異なる結果は、ICSがより高い増悪リスク集団においてより明白な有益性を有することを強調している。これは、血中好酸球数および閾値の解釈に影響を与えます。前年に1回の中等度の増悪を示した患者を対象とした場合のFLAMEの結果は、LAMA/LABAが一般的に好ましい治療法であることを示しているが、ICS/LABAは300細胞/μL以上の好酸球患者にはより効果的な治療法となる。リスクの高い患者(中等度の増悪が2回以上または重度の増悪が1回以上)では、LABA/LAMAよりもICS/LABAの利点が低い血中好酸球数でも存在することが実証された。好酸球数が多いほど好ましいが、好酸球>100μL/μLのリスクがある
1つの増悪を予防するための治療必要数(NNT)(事象に基づくNNT)は根底にある増悪率に依存し、IMPACTの結果から概算されています。 LAMA/LABA(増悪率の25%の減少が観察された)と比較して、3剤併用療法による1回の増悪を予防するNNTは3〜4の間にあると推定される。これらの事象に基づくNNTは血中好酸球数とともに変化し、より大きなICS効果が観察されたより高い好酸球数ではより低くなる。イベントベースのNNTは比較者の増悪率に依存しているため、集団の増悪リスクに応じて変化する。
TRIBUTE試験の母集団は、IMPACT母集団と比較して過去1年の歴史に反映されているように増悪リスクが低く、その結果、試験中に増悪率の低下が観察され、増悪に対する3剤併用療法とLAMA/LABAの差は15%でしたレートの引き下げこの研究のイベントベースのNNT計算は、11〜12(3)の間にある値を推定し、より高い好酸球数ではより低い数が予想される。
IMPACTおよびTRIBUTEについての人に基づくNNT(すなわち、患者を増悪させるため)は、LAMA/LABAに対して三重療法についてそれぞれ25および50であると推定されている。これらのNNTの推定値は、増悪リスクが増悪予防に対するICSの影響の大きさに影響を与えることを強調してる。
血中好酸球は、2型サイトカインおよび網状基底膜肥厚などの気道好酸球数および好酸球関連気道炎症の末梢バイオマーカーである。
COPD RCTで報告されたICSの臨床上の利点は、以下から生じるものではありません。血中好酸球数の抑制、しかしおそらく血中好酸球数の増加に関連する気道炎症の1つまたは複数の構成要素に対する薬理学的効果によるものである。
全体的に見て、現在の証拠は、増悪リスクと血中好酸球数の個々の評価を組み合わせて、ICSを含む組み合わせで臨床的利益の可能性を予測することができることを示している。。これは、副作用、特に肺炎、結核菌・非定型抗酸菌感染症、骨粗鬆症、糖尿病および白内障のリスクの個別評価と組み合わせるべき。

Relationship of blood eosinophils to clinical characteristics

コホート研究では、血中好酸球数が増悪率などの臨床的特徴と関連しているかどうかが調査されている。結果は様々であり、悪化について否定的および肯定的な発見が報告されている。
COPDGeneとECLIPSEの横断面(ベースライン時)および前向きデータの両者を用いた最近の報告では、300/μl以上の好酸球が増悪リスクの増加と関連していることを示し、急性増悪リスクが高い前年2回以上増悪経験者では特に明確である。急性増悪リスク、病歴による聞き取り重視で、これらコホートは影響をうけると強調。  また、COPDにおける血中好酸球数の増加は、喘息COPDオーバーラップ(ACO)との重なりが少数であったため、ACOと同じではないこともこの研究は示した。さらに、増悪歴のあるCOPD患者におけるICS / LABA対LABAの臨床試験では、ICSの使用により好酸球が多い患者の増悪率が低下することが示され、好酸球数と増悪率の関係はICSなしでのみ見られた。全体として、ICS治療効果と臨床的増悪リスクの交絡因子は、研究間の不均一性の原因となっています。これらの矛盾するデータにより、一般的なCOPD集団における増悪リスクまたは他の臨床転帰を予測するためのバイオマーカーとしての血中好酸球の使用を支持しない

New evidence from clinical trials

トリプル療法とLAMA / LABAを比較したTRIBUTEIMPACTの研究は、トリプル療法のICS成分が増悪(それぞれ15%と25%の増悪率の減少)と生活の質に及ぼす有益な効果の証拠を初めて提供した。
IMPACTはまた、二重併用の比較についてFLAMEとは異なる結果を報告していますが、これはすでに述べたように主に研究集団の増悪リスクが異なることに起因する。  TRIBUTEIMPACTの研究からのこれらの結果は、LAMA/LABAからトリプルセラピーへとエスカレートするというGOLD 2017の推奨を支持する証拠を提供している。これとは対照的に、二重組み合わせに関する状況は、より複雑であることが示されている。二重併用の相対的な有効性は、増悪リスク(したがって増悪歴に関する研究の充実)と血中好酸球数の両方の影響を受けるためである。
DYNAGITO試験では、1年以上に増悪した患者の増悪予防に対するLAMA/LABA(チオトロピウム/オロダテロール)とLAMA(チオトロピウム)の効果を比較した(n = 7880)。LAMA/LABAに有利な増悪率のわずか7%(p = 0.0498)の減少が観察されたが、これは有意性について設定された先験的レベル(0.01)を満たさなかった。
唯一の類似の以前の研究はSPARKであり、それはLAMA/LABA(グリコピロレート/インダカテロール)がグリコピロレート(主要転帰)に対して12%(p = 0.038)および10%(p = 0.096)対中等度から重度の悪化を減らすことを示した。チオトロピウム
全体として、DYNAGITOSPARKは、増悪予防に対する二重気管支拡張薬療法のLABA成分のマイナーな追加効果を示している。

Implementing new evidence into GOLD 2019
COPDの大規模RCTは通常のpopulationで行われ、大多数は維持療法をすでに受けていた対象。小規模では治療naive患者で薬物介入評価デザインされた特異的なのは少数。GOLD推奨は既知エビデンスに基づくが、これら推奨は治療naiveでの直接検証はなされておらず限界がある。
naive COPD患者の新規RCTがないため、GOLD 2019初期治療推奨はGOLD 2017とほぼ類似している。GOLD Dは例外で2つのカギとなる変化があり、1)好酸球300以上/μLでICS/LABA治療の指標で、閾値はICS治療からのベネフィット尤度高患者を同定するもの
リアルワールド臨床実践データの後顧的解析でこの推奨を支持している;好酸球 300/μL以上症例では、ICS/LABAの急性増悪一次予防効果はLAMA治療より大きいが、閾値未満ではその効果はない。 2)LAMA/LABAはGOLD 2017治療として優先され開始するというboxは新しいエビデンス(LAMAよりLAMA/LABAの効果の程度が予測より小さかったというエビデンス:DYNAGITO)で除かれた。そして、ICS/LABAはLAMA/LABAより治療効果が特定の患者に存在するということも理由(IMPACT)。
RCTで、LAMA/LABAの効果はLAMA単剤より症状、QoLで優越であった。ゆえに、LABA/LAMAを高度有症状者で1st line実践的推奨となった

Follow-up pharmacological management

呼吸困難対応pathwayは、Gropu BとDでは、GLD2017とにほぼ追随し、症状コントロールに長時間作用気管支拡張剤追加。急性増悪対応pathwayでは非常に異なっている。急性増悪リスクと血中好酸球数のintegrationで併用吸入使用に関する推奨へ影響する。
The dyspnoea pathway (Figure 2) closely follows the GOLD 2017
長時間作用気管支拡張剤単剤からICS/LABAもしくはLAMA/LABAへのescalationに関し、閾値 血中好酸球数 300以上 /μLを、急性増悪予防のために追加治療が必要な全COPD患者に使用しICS/LABAを好む選択のため使用。
閾値をより低下(血中好酸球 >100/μL)は、高度急性増悪リスク(直前1年間に、中等度急性増悪2回以上もしくは重度急性増悪1回以上)で、ICS/LABA使用を支持するために使用し、ICSはこのような高度リスク患者で効果がより大きいと判断。
GOLD 2019レポートは、"consider"という用語を用いるのは、血中好酸球数に関しての治療推奨を作成するにあたって以下の2つの理由である ;第一に、このバイオマーカーは、ICS治療が有益かどうか、また、効果の大きさに関してある程度の確率(確実性ではない)を提供します。 第二に、副作用の危険性を含む他の臨床的特徴も個々に考慮しなければならないから。
急性増悪状態にありLAMA / LABAをすでに服用している患者では、トリプル療法に拡大したときに臨床的利益を達成する可能性がより高い個人を特定するために > 100好酸球/μlの閾値を提案。
血中好酸球数とICSベネフィットとの間の関係の継続的な性質は、増悪に対する影響の大きさがより高い好酸球数、特に300以上の好酸球/μlでより大きくなることを意味する。 <100 br="" l="">
ICSの中止に関しては、3剤併用療法からLAMA / LABAへのde-escalation、またはICS / LABAからLAMA / LABAへの切り替えによるアドバイスを提供
これを考慮することができるときの一般的な臨床シナリオは
(1)肺炎の可能性や影響などの副作用に関する懸念。
(2)不適切な最初の適応症(例、患者に増悪歴はなく、ICSは症状を管理するために処方された)。
(3)ICSへの対応の欠如。 ICSの中止は、有害作用の最大の可能性が300以上の好酸球/μlの患者にあることを示す証拠とともに、注意深く監視されるべき。
薬理学的管理のセクションに重要な追加は管理サイクルであり、これは吸入技術と順守の評価が続く症状と悪化のプロセス、ならびに肺リハビリテーションと自己管理教育を含む非薬理学的アプローチを記述する。併存疾患の評価、治療、および追跡も、管理サイクル全体を通して考慮する必要があります。これは、薬理学的治療を調整するかどうかを決定する前に評価されるべき多くの要因のより広い全体像を提供する。

結論

GOLD 2019への変更は、従来のGOLDレポートで提唱されていたCOPD管理へのより個別化が進められたアプローチへの方向変更というのではなく、最近の証拠に基づく進化を反映している。症状の管理と増悪リスクの軽減への焦点は変わらない。臨床医がICSを使用することの利点とリスクに関する決定をより適切に管理できるように、血中好酸球が追加された。血中好酸球は有益性の可能性に関する情報を提供し、この情報の解釈は高い増悪リスクのある患者においてより明確になる。 ICSを含む併用療法の使用に関する臨床上の決定は、好酸球バイオマーカー情報に裏付けられた増悪リスクに焦点を合わせ、各個人の副作用リスクを評価しなければならない。
GOLD 2019薬理学的治療の推奨事項は、証拠がこれらが有効な選択肢であることを示しているので、しばしば複数の選択を提供する。各状況においてただ1つの治療選択肢を推奨することの単純さとは対照的に、これは意思決定の複雑さを生み出す。しかしながら、COPD患者の異質性は、治療の推奨とアルゴリズムが、個々の臨床的特徴と各患者のニーズ、そしてヘルスケアシステム間の違いに対する柔軟性を考慮に入れるべきであることを意味します。 GOLD 2019は、この文脈において柔軟性を提供しようとしており、異なる治療法の選択を可能にし、また臨床医が選択するのを助けるためのフレームワークを提供しています。最も議論が多く複雑な分野は、悪化を防ぐための組み合わせ吸入器の使用です。最近の臨床的証拠は、これらの組み合わせ吸入器のそれぞれが、臨床的特徴および血液バイオマーカーを使用して同定され得るいくつかの患者において最適な治療と見なされ得ることを示す。 COPD薬理学的治療の個別化は、FEV1が薬理学的管理を導いた日以来、著しく進歩した。





GOLD2019の解説ということになるが 訳分からん

そもそもバックグラウンドが異なり、トライアル・プロトコールが異なるものをまとめるって事に無理があるのでは・・・

仮説に基づく診断指針ということで利用はするが・・・

2019年5月17日金曜日

"Muco-Obstructive Lung Disease"、粘液閉塞性肺疾患(?)

"Muco-Obstructive Lung Disease"、粘液閉塞性肺疾患(?)

粘液閉塞性肺疾患
Muco-Obstructive Lung Diseases
粘液閉塞性肺疾患この総説では,粘液産生の正常な機序と,気道粘液の過剰産生を特徴とする頻度の高い病態,たとえば慢性閉塞性肺疾患(COPD),囊胞性線維症,非囊胞性線維症性気管支拡張症では,粘液産生の機序にどのような異常が生じているのかについて論じる.
May 16, 2019
N Engl J Med 2019; 380:1941-1953
DOI: 10.1056/NEJMra1813799


COPD、嚢胞線維症、原発性線毛機能不全症候群(primary ciliary dyskinesia)、非嚢胞性気管支拡張の特徴で、喘息を含むかどうか異議あり

健康者では、適切な水分状態の粘液層が末梢気道から気管へ迅速に輸送(毎秒 約40 μmの速度)される。この病態だと、イオン・液輸送、ムチン分泌、その両者の組み合わせが生じ、濃縮(脱水)粘液、ムチン移送の障害、気道表面への粘液adhesionが生じる。
気管に集まった粘液はphlegmaもしくは喀痰として咳嗽により排出される。
小気道の粘液は咳嗽により排泄されがたいため蓄積し、"nidus"を形成し気道閉塞、感染、炎症をもたらす

ヒト気道粘液は、加水ゲル(水 98%、塩 0.9%、球状タンパク 0.8%、高分子重量ムチンpolymer 0.3%)からなり、粘液の水分状態(濃度)は粘液のwet-to-dry成分(不揮発含有固形物の一定容積での%比率)として測定、あるいは、光散乱法(Light Scattering: LS)にてムチン濃度測定で評価。2つの測定方法の相関性は健康者でもmuco-obstructive disease患者で高く、粘液特性記載として両者用いられる。
呼吸器系ムチンとして2つのmajorな合成・分泌される、MUC5BとMUC5ACは生理学的にsingle polymerとしては巨大で0.2 to 10μmにも及ぶ、分泌されたムチンポリマーは織り込まれメッシュ様ゲルを形成し、濃度依存的にメッシュサイズが決まる(i.e. 高濃度ほど小さなメッシュサイズ)。MUC5BもMUC5ACも多くの共通特性が有り、多量体構造物で、多くの炭水化物を含む(総重量の約75%)。違いはtranscriptionの調整でMUC5BとMUC5ACの機能の違いとなる。マウスのデータからはMuc5bはbasal mucocilliary transport(基底粘液繊毛輸送)が必要で、Muc5acは外的ストレスに反応し、ヒトでのそれと性質類似。ヒトの正常末梢気道ではMUC5Bが主要ムチン( 10:1 over MUC5AC)
ムチンの生理学的特性は、ポリマー物理から予測され、粘液の粘弾性特性だけでなく、生物物理的特性も、粘液の浸透圧、adhesion、cohesion、friction(滑り摩擦)を含め記載されている。 (勝手に注記: adhesionは異種分子間の接着、cohesionは同種分子間の接着)
粘液特性は濃度の比較的経度変化でも粘液の生物物理的・輸送特性へ影響を与えることも考慮し、高濃度では劇的にtransportabilityが減少する可能性がある。加え、ムチンゲルの特性は、ムチン間ポリマー相互作用を形成し、比較的長い結合半減期、"sticky"なポリマーゲルを形成し、粘性特性は濃度8倍までのスケールとなる
ムチン濃度は4つのmuco-obstructive disease(COPD、のう胞性線維症、原発性線毛機能不全、非嚢胞性気管支拡張)で異常増加し、pathogenesisにもムチン濃度の増加は役割を一定果たしている。MUC5AC濃度は増加し、ユニークに粘液特性に影響を与えるが、MUC5Bがこれら疾患では濃縮されdominantである

ムチンは全ての気道表面で連続し、繊毛活動により咽頭へ運ばれる、大きな気道(気管)と小さな気道(細気管支)気道ではMUC5ACが分泌されると思われるが、大気道の粘膜下腺はMUC5Bが分泌されると考えられているが、これはマウスモデルのデータからのreformulationである。ヒト大気道・小気道ともに表層性上皮はMUC5Bを分泌、tonicあるいは咳嗽によりMUC5B分泌が気道MUC5B分泌に上乗せされ、肺へのストレス・トリガーが表層上皮MUC5AC発現のトリガーになりえる。MUC5AC分泌は表層性気道分泌(club)細胞へsuperimposeされ、基底のMUC5B分泌のcompetentとなるという報告がある

顕微鏡的レベル:粘液層-繊毛トポグラフィー
粘液繊毛クリアランスの以前の記載は線毛周囲の水の多い層(liquid layer、sol layer)の上で、粘液層(gel layer)が移動すると古典的記載であったが、mucus layerとpericiliary layerの2つのゲルからなる粘液繊毛構造として置き換わり記載されている
periciliary layerは、密なゲルで、glycopolymerとして、MUC1、MUC4、MUC16ムチンを含め、上皮細胞表面と繊毛にtetherしている。重大なコンセプトとしてこの構造は、粘液繊毛クリアランス装置は2つのpolymer hydrogelからなり、hydrationを競うといういこと。この作用で、polymer-gelを加水し、water-drawing powerとして、hydrogelの浸透圧が記載される。実験的測定だと、2%のsolidからなる正常の粘液層の浸透圧は約100 Paで、繊毛周囲層はさらに濃縮され浸透圧約500Paとなる。健常者の繊毛周囲層の浸透圧がより高いため加水が十分で、繊毛活動性のため適切な潤滑性が保たれ、粘液上層の移送として適切となる。

上皮イオン輸送と粘液加水
two-gelモデル:2層ゲルモデルでは粘液層濃度(水和)と粘膜繊毛輸送の効率との間の相互作用に関する定量的予測を可能にする。 これらの予測は、粘液層と繊毛周囲層がその下支えする気道上皮による水移送に反応するか理解するための最良の理解法である。健常者では、気道上皮はイオンや水の分泌・吸収可能でそれは同時に起きるのだろう。正常気道表面加湿(加水)の維持は繊毛の粘液層濃度のmechanosensingにより行われ、繊毛細胞による気道表面へのATP遊離を調整し、イオン輸送、水輸送速度をfine-tuningしている。
加水状態が正常でなされている、solid 2%、水 98%では、粘液層は粘膜輸送の効果的なfluid bufferとして働く。しかし、muco-obstructive diseaseでは、異常な上皮水吸収により気道表面の水分不足し粘液濃度増加、粘液層の浸透圧が増加し線毛周囲層の浸透圧を凌駕する。ある程度濃縮された粘液は繊毛をcompressし、粘液輸送を遅らせるが、一方、さらに重度濃縮の場合は、繊毛を平坦化し、粘膜のうっ滞、adhesionをもたらす。かように two-gelモデル形成は粘液の濃度から粘液繊毛輸送速度を予測し、加水状態の小さな変化がなぜ生じるかも説明できる(2% vs 8% solids  )


咳嗽
繊毛依存粘液クリアランス不能に陥ると、咳嗽がバックアップのクリアランスメカニズムの役割を果たす。繊毛依存、咳嗽依存クリアランスともに失敗するとmuco-obstructive diseaseが生じる。繊毛依存粘液移送のように、粘液濃度が、friction、viscosity、cohesion、adhesionといった咳嗽依存輸送関連粘液特性全般の鍵となる要素となる

Pathogenesis of muco-obstructive disease
粘膜閉塞性肺疾患の重要な特徴は、疾患の不均一性です。つまり、正常な肺の領域と、同じ肺の中に重度に罹患している他の領域があります。気管支拡張症は、肺のコンピュータ断層撮影(CT)でよく見られる所見です。しかしながら、粘膜閉塞性疾患を統一する一般的な特徴は、病理学的検査、マイクロコンピューター断層撮影法、および肺機能検査によって証明されるように、小さな気道(細気管支)における疾患の早期の徴候である。メカニカル(粘液)クリアランスと気道上皮から粘液に分泌される抗菌タンパク・ペプチド による防御が気道感染に対しなされる。抗菌分子・細菌感染replicationを抑制する抗体の能力は時間単位という短命。その結果、動的な「horse race:競馬」が肺内でなされ、機械的な(粘液性の)細菌クリアランスの速度に対して内因性の抗菌抑制に対する細菌耐性の獲得の速度が低下する。しかし、クリアランスを遅らせるだけでは、おそらく病気を引き起こすのに十分ではありません。粘液層がストップすると、mucus plaqueが形成され気道内腔にplug形成し、muco-obstructive diseaseを形成する。 動物モデル研究では、muco-obstructive diseaseのfull spectrumである気道閉塞・炎症・間歇的感染は、粘液濃度依存的なplaqueやplugの形成とともに観られるが、粘液繊毛クリアランス欠損単独では観られない。 気道における粘液斑または栓の形成は、新たに分泌されたムチンの不十分な上皮水和と併せて、しばしばウイルス感染または吸引によって刺激されるムチン分泌の増加を反映する高濃度の静的粘液plaqueが形成されると、双安定ポジティブフィードバック(「悪質な」)粘膜炎症サイクルが開始されます。最終的に、好中球エラスターゼの気道レベルの上昇に通常関連する重症または持続性の粘膜閉塞は、これらの疾患に典型的な気管支炎性病変から気管支拡張性病変または気管支拡張性病変への進行を促進する。 
細菌感染は、粘膜閉塞性肺疾患の一般的な特徴です。 嚢胞性線維症または他の粘膜閉塞性疾患を有する患者からのデータから粘膜閉塞性肺疾患における感染の主な部位は、気道上皮細胞表面ではなく、管腔内粘液plaqueおよびplugであることを示している。 粘液plaqueを介して下層の活発に代謝している上皮細胞への酸素拡散が制限されると、粘液plaque内に低酸素領域が生じる。 嚢胞性線維症またはCOPD患者からのmicrobiomeデータの分析は、口腔嫌気性菌が粘膜閉塞肺の最初の細菌性病原体であることを確認した。 これらのデータは、"mouth-lung aspiration axis"(口-肺吸引系)、口腔嫌気性菌低酸素状況粘液plaqueへ感染し、細菌感染早期となるという多くのmuco-obstructive diseaseの統一概念となる可能性。 嫌気性菌は低酸素性の粘液環境を改変して、粘液濃度に反応して凝集物(aggregate)またはバイオフィルムとして増殖する古典的な病原体(例、緑膿菌)による侵入を促進することができる。粘膜閉塞性疾患患者から得られた痰試料中の口腔咽頭フローラが、古典的な病原体と同様に治療を必要とするかどうかを立証するために将来の研究が必要である。
急性増悪
増悪は粘膜閉塞性疾患の典型です。増悪は、患者の幸福に対する認識の変化、健康管理の模索、または健康管理によって実施される患者の治療計画の変化として広く定義される。全ての粘膜閉塞性肺疾患において、疾患重症度の全体的な進行率(例えば、肺機能の喪失)はおそらく急性増悪の発生率および重症度によって大きく影響される。すべての粘膜閉塞性疾患に共通して、過去の増悪率および胃の誤嚥は将来の増悪率の予測因子であり、すなわち、過去の増悪が多い患者はそのような病歴のない患者よりも将来の増悪を有する可能性が高い。 増悪が既存の不均一粘膜閉塞性肺疾患に重なっていることに注意することが重要。以前の研究は、恐らく遺伝的漂流または局所的環境への表現型の反応による細菌の変化を反映して、いくらかの悪化が既存の病気のある地域の病気の激化によって引き起こされることを示唆している。しかしながら、増悪に関連する新しい身体的所見は、多くの増悪が以前には罹患していなかった領域への疾患の拡大に関連することを示唆している。広がるための一般的なメカニズムは胃の吸引かもしれない;この概念はCOPD、非嚢胞性線維症、気管支拡張症、または嚢胞性線維症の患者からのデータと一致している。
おそらく、拡散の主な要因は、上気道から肺に吸引されたウイルスです。拡散メカニズムは、嚢胞性線維症または非嚢胞性線維症の気管支拡張症の患者からのデータと一致しており、マイクロバイオームは増悪時にほとんど変化しないことを示している。臨床的には、悪化は肺機能の永久的な喪失を制限するために激しく治療されなければならない。

COPD
COPDは、ほとんどの場合吸入された環境物質に反応して、持続的な気流の閉塞として現れる。 COPD患者から得た気道下部サンプルで高濃度粘液が報告され、粘液濃度の上昇は粘膜繊毛除去率の低下と相関している。COPD患者を対象とした大規模コホート研究からのデータはCOPDの主要な引き金を示唆する。たばこの煙は、ムチン濃度の上昇と関連。さらに、このコホートでは、ムチン濃度の増加と気道閉塞の減少および増悪率の増加との間の関連性によって示されるように、喀痰中のムチンの高濃度が疾患の重症度と関連していた。COPD(すなわち、ほぼ正常な肺機能を有する者)、彼らの疾患の急速な進行の危険性があることが示された。
COPDで粘液の高濃度化を引き起こす気道上皮の障害は複雑。喫煙smoke暴露により、CFTR transcription速度の減少によるoxidant誘導CFTR減少を介した -介在塩素アニオンの分泌の異常を生じ、apical membraneのCFTRタンパクへの直接障害も生じる。さらに、細胞外nucleotideが増加し、nucleoside代謝が細胞外ATPやアデノシン濃度を減少し、気道表面の加水のpurinoceptor regulationの障害を意味する。この上皮イオンや水分輸送(加水)障害は喫煙smoke誘導MUC5AC、MUC5B過剰分泌による増幅される。 ムチンの過剰分泌はCOPDにおいて特に重要である可能性があります。なぜなら、CFTR機能障害のため、同時放出されるアデノシン二リン酸、アデノシン一リン酸、およびアデノシンの代謝が促進されるためです。COPD患者を特徴づけるムチン高濃度は、おそらく粘膜閉塞性疾患の分類における最も軽い例です。 COPD患者はまた、特に気管支拡張症およびシュードモナス感染症の発生率が低いという点で、重症の粘膜閉塞性気道疾患が最も少ない傾向がある
 
非嚢胞性線維症性気管支拡張
非嚢胞性線維症気管支拡張症は、単遺伝的原因がない場合の気管支拡張症によって定義される表現型です。非嚢胞性線維症の気管支拡張症は現在CT上の拡張気管支によって通常定義されているが、古典的な病理学的研究は、この症候群における気管支拡張症、粘液栓塞、および炎症を含む重症小気道疾患を強調している。これらの病理学的所見と一致して、非嚢胞性線維症気管支拡張症には、粘膜閉塞性疾患の典型的な小気道気道低損傷がある。非嚢胞性線維症の気管支拡張症は、おそらく環境ストレスと遺伝的宿主防御リスク対立遺伝子との間の相互作用を反映しており、気管支拡張症は最終的な共通経路として考えられる。 遺伝学的研究は、非嚢胞性線維症の気管支拡張症は、異常な粘膜宿主防御、免疫機能、または結合組織を含む一連の遺伝的リスクと関連していることを示唆する。非嚢胞性線維症気管支拡張症患者から得られた痰が高濃度であるという最近の報告は、ムチン水和の調節における上皮の欠陥が疾患の病因に寄与しているかもしれないことを示唆している。現在、遺伝子研究はイオン輸送遺伝子と非嚢胞性線維症の気管支拡張症とを結び付けていない。直接測定により、CFTRはCFTR変異のない非嚢胞性線維症の気管支拡張症の患者で通常機能することが示唆されている。非嚢胞性線維症気管支拡張症患者のミクロビオームは、口腔嫌気性細菌、ブドウ球菌、インフルエンザ菌を特徴とする粘液閉塞性疾患の典型であり、患者の約15〜20%が緑膿菌陽性である。これに関連して、非嚢胞性線維症の気管支拡張症は初期の嚢胞性線維症に似ています。非嚢胞性線維症気管支拡張症の患者は、非結核性マイコバクテリア感染症の発生率が他の粘膜閉塞性疾患の患者の発生率より60%高い可能性がある。この所見は、非嚢胞性線維症気管支拡張症における免疫不全アレルの潜在的な役割を示している。

診断
疾患特有の基準は、各粘膜閉塞性肺疾患の診断に役立つ。
嚢胞性線維症:汗中の塩化物陰イオン濃度、および遺伝子検査。
COPD:暴露歴および肺活量測定について。
原発性繊毛ジスキネジア:鼻一酸化窒素測定、繊毛波形分析、および遺伝子検査。
非嚢胞性線維症性気管支拡張症に対してはCTスキャン。
粘膜閉塞性疾患の一般的な診断を下すためのツールも有用。
咳嗽、喀痰産生、急性増悪回数に関する患者関連アウトカムを一般的呼吸系アンケートで入手
喀痰炎症精細胞、サイトカイン、ケモカイン測定は気道粘液閉塞性の炎症性コンポーネント確立のため有益
粘液濃度(%solids)および総ムチン濃度の測定もまた診断ツールとして検討。例えば、喀痰中のムチン濃度は、患者関連の転帰データによって定義される慢性気管支炎の症状と有意に関連しており、ROC曲線分析ではムチン濃度がCOPDの優れたバイオマーカーであることを示唆している。


2019年5月16日木曜日

閉塞型睡眠時無呼吸:薬物療法の可能性

アトモキセチン:先発製品名 ストラテラ(日本ではAD/HD治療薬 神経終末のノルアドレナリントランスポーターに対する選択的阻害作用が関与していることが可能性としては考えられるものの、明確な機序は不明)
オキシブチニン:先発製品名 ポラキス (平滑筋に対する直接的鎮痙作用と節後線維 のコリン作動部位においてアセチルコリン阻害作用を持つ)

前者さすがに使用したことないが、レスポンダーの比率とその反応性をみると期待できる治療法
ただ、素人が手を出しにくい薬剤であるアトモキセチン





ランダム化プラシーボ対照二重盲検交叉トライアル
atomoxetine 40mg + oxbutynin 5mg (ato-oxy) vs プラシーボ


The Combination of Atomoxetine and Oxybutynin Greatly Reduces Obstructive Sleep Apnea Severity. A Randomized, Placebo-controlled, Double-Blind Crossover Trial
Luigi Taranto-Montemurro,  et al.
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, Volume 199, Issue 10, Page 1267-1276, May 15, 2019.

被験者 53 (46-58)歳、BMI 34.8 (30.0-40.2)

ato-oxy にて AHI 63% (34-86%) 減少 (  28.5 (10.9–51.6) events/h → 7.5 (2.4–18.6) events/h (P < 0.001)

個別効果:プラシーボでのOSA患者(AHI > 10 events/h) 20名中15名で、AHI 低下 74% (62-88%)  (P < 0.001) 、低下全例50%以上低下



Genioglossus responsiveness(頤舌筋反応性)はプラシーボの 2.2 (1.1 - 4.7)%/cm H2)から ato-oxyで6.3 (3.0 to 18.3)%/cm H2)へ、約3倍増加 (P < 0.001)

atomoxetineもoxybutyninも別々に投与してもAHI減少せず



頤舌筋の筋電図(EMG GG):筋内2電極挿入+PSGとシールされた口鼻マスクにpneumotachometer装着し正確な気流測定、さらに、呼吸努力測定としてPes(食道内フラキシブル圧tipカテーテル)測定






序文手抜き
最近まで、内因性セロトニンの使用中止は、睡眠中の性舌筋電図筋活動(EMG GG))の喪失の重要なメカニズムと考えられていました。しかしながら、これらのデータは迷走神経支配除去動物実験に基づいており、そしてセロトニン作動性メカニズムは無傷の動物およびヒトにおける性舌筋活動に最小限の影響しか及ぼさないように思われる。

内因性ノルアドレナリン作動性駆動の睡眠に関連した離脱は、特に眼球運動不振(NREM)睡眠中の主な原因であり、活発なムスカリン抑制は、特にREM中に咽頭低緊張を仲介する。

実際、我々のヒトでの研究は、ノルアドレナリン作用薬デシプラミン(三環系抗うつ薬、TCA)の投与が、NREM睡眠中の性舌筋活動および上気道虚脱性を中程度に改善し、患者のサブグループにおけるOSA重症度を低下させることを示した。ノルアドレナリン作動性を有する別のTCA、プロトリプチリンは、以前に観察研究および無作為化対照試験またはOSAの治療で調査された。 結果は一貫しておらず、一部の患者は客観的および主観的改善を経験し、他の患者はOSA重症度に変化を示さなかった。
特に、これらのTCAは、ドーパミン作動性、セロトニン作動性、抗ムスカリン性および抗ヒスタミン作動性作用を含む広い範囲の非特異的な活性範囲を有する。

 抗ムスカリン薬と組み合わせた特定のノルアドレナリン作動性プロファイルを有する薬剤が、性舌筋活動の実質的な増加をもたらし、OSAの重症度を改善するかどうかは依然として不明である。

したがって、OSAの重症度と頤舌筋反応性に対する抗ムスカリン薬(オキシブチニン)と組み合わせて投与された強力な選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(アトモキセチン)の効果を評価するために、無作為化プラセボ対照二重盲検交差試験を実施しました。





NREM睡眠期自発呼吸中の筋の反応性は、食道内圧のswing変化あたりの頤舌筋筋電図の変化を反映する
薬物治療で反応性増加を示す
パネルBは生データで、食道内圧のswing増大に伴い頤舌筋の活動性が増加し、気流回復を示す


低炭水化物食と心房細動発症リスク

ARIC (Atherosclerosis Risk in Communities) Studyにおける炭水化物食と心房細動発生リスクの関連性

前向きコホート研究群を用いてはいるが、Cox比例ハザード解析に基づく、あくまでも後顧的検討内の話

米国心臓病学会(ACC 2019、3月16〜18日、米ニューオーリンズ)で発表の論文
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2019/029016.php




Low‐Carbohydrate Diets and Risk of Incident Atrial Fibrillation: A Prospective Cohort Study
Shaozhao Zhang , et al.
https://doi.org/10.1161/JAHA.119.011955
Journal of the American Heart Association. 2019;8


低炭水化物食状況下の炭水化物の特異的な食事源(動物 vs 植物ベース)への置き換え影響を検討
フォローアップ中央値 22.4年間、心房細動発生 1803例(13.5%)

全摂取エネルギーに対する炭水化物比率 1%増加あたり、心房細動発生1-SD (9.4%)増加ハザード比は、従来の心房細動リスク要素や他の食事要素補正後  0.82 (95% CI, 0.72–0.94

炭水化物食摂食4分位個別カテゴライズ後も結果は同様 (ハザード比, 0.64; 95% CI, 0.49–0.84; 両極端4分位比較)





炭水化物代替としたタンパク質や脂肪の種類とAF発症のリスクとの間に関連性は見られず





例により 論文序文
心房細動(AF)は、臨床診療において最も一般的な不整脈であり、推定生涯リスクは25%である。
AFは罹患率、死亡率、および経済的コストの大幅な増加に関連しているため、この疾患の予防戦略を提供するためのステップとして、食事要因などの修正可能な危険因子を認識することが重要です。
タンパク質や脂肪の摂取量を増やすために炭水化物の摂取量を制限する低炭水化物食は、短期間の体重減少を誘発する能力があるため、かなりの人気を得ています
それにもかかわらず、炭水化物制限の長期的影響は、特に心血管疾患への影響において、依然として物議をかもしています
最近、5大陸にわたる18カ国からの135 335人の参加者を対象とした2017年の2017 PURE (Prospective Urban‐Rural Epidemiology) 研究で、炭水化物摂取量の増加は総死亡リスクの増加と関連していたが、心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、および心不全)や心血管死亡率リスク増加とは関連せず。
大規模コホートに関するもう1つの最近の研究であるARIC (Atherosclerosis Risk in Communities) 研究では、炭水化物摂取量と総死亡率の間にU字型の関連性が報告されました。
 しかし、我々の知る限りでは、炭水化物摂取量と偶発的なAFのリスクとの関係を調べた研究はない。その結果、炭水化物の摂取量とインシデントAFの関連を評価するためにARIC Studyデータセットを分析しました。




なんだか、納得できない記載も・・・

制限すると体内の水分が排出されて短期間で減量できるが、同時に脱水状態にも陥りやすく、これが心房細動を引き起こす可能性があるという。また、糖質制限食は電解質異常をもたらし、心臓の拍動リズムにも影響する可能性があるとしている。
 一方、Zhuang氏らは、糖質制限食を取り入れている人たちでは、炎症の抑制に働くとみられる野菜や果物、穀類の摂取量が少ない傾向にあることを指摘し、「こうした人たちでは、心房細動に関与する炎症レベルが高いのではないか」と推測している。なお、Epstein氏は「糖質制限を行っていた理由も重要だ」
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2019/029016.php

特に解説前段・・・ 後段が正しいとしたら低Carb.のやり方次第ということにも

2019年5月15日水曜日

未診断・閉塞型睡眠時無呼吸の術後心血管イベントリスク

未診断閉塞型睡眠時無呼吸と非心臓系重大手術後の30日心血管合併症

5ヶ国8病院、1218名の閉塞型睡眠時無呼吸事前診断なしのリスク状態の患者の前ムココホート:2012年1月〜2017年7月まで、フォローアップ2017年8月まで
術後モニタリング夜間パルスオキシメトリーと心筋トロポニン濃度

REI (Respiratory Event Index (REI): – # of apneas + hypopneas per hour of monitored time):被検者装着モニタリング中の指数 5-14.9、 15-30、30超で分け分類

主要アウトカム・測定:
一次アウトカム:心筋障害、心臓死、心不全、血栓塞栓、心房細動、卒中(術後30日間)
比例ハザード解析にて閉塞型睡眠時無呼吸と術後心血管合併症関連性検討



Association of Unrecognized Obstructive Sleep Apnea With Postoperative Cardiovascular Events in Patients Undergoing Major Noncardiac Surgery
Matthew T. V. Chan,  et al.; for the Postoperative Vascular Complications in Unrecognized Obstructive Sleep Apnea (POSA) Study Investigators
JAMA. 2019;321(18):1788-1798. doi:10.1001/jama.2019.4783
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2733209


研究登録 1364名、解析は1218名(平均年齢, 67 [SD, 9]歳 ; 女性 40.2%)

術後30日において、プライマリアウトカム発生率

  • 重症OSA 30.1% (41/136)
  • 中等度OSA  22.1% (52/235) 
  • 軽度OSA 19.0% (86/452)
  • 非OSA 14.2% (56/395)



OSAはプライマリアウトカムリスク増加と相関 (補正ハザード比 [HR], 1.49 [95% CI, 1.19-2.01]; P = .01); しかし、この相関は重度OSA患者のみ有意 (補正 HR, 2.23 [95% CI, 1.49-3.34]; P = .001) で、中等度 OSA (adjusted HR, 1.47 [95% CI, 0.98-2.09]; P = .07) or 軽症 OSA (adjusted HR, 1.36 [95% CI, 0.97-1.91]; P = .08) (P = .01 for interaction)では相関認めず

初回術後連続3日夜間の平均酸化ヘモグロビン不飽和度 80%未満累積平均時間が心血管合併症ありの患者では、心血管合併症発症無しより長い  (23.1 [95% CI, 15.5-27.7] 分間) vs 10.2 [95% CI, 7.8-10.9] 分間) (P < .001)

周術アウトカムの有意相互作用は麻酔の種類には依存せず、同様、手術オピオイド、酸素負荷治療にも依存せず


結論:重大非心臓手術リスク成人において、未認識重度閉塞型睡眠時無呼吸は有意に30日間の心血管合併症発症リスクと関連する。





<序文 Google翻訳>
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠障害呼吸の最も一般的なタイプであり、睡眠中の咽頭虚脱と覚醒の間の周期的変化によって特徴付けられます。
その結果、夜間低酸素症、高炭酸ガス血症、内皮機能不全、凝固亢進、および交感神経過活動の再発性の症状があります。
 一般集団では、OSAは高血圧、心筋虚血、心不全、不整脈、脳卒中、突然の心臓死などの心血管系合併症のリスクが高いことと関連しています。
全身麻酔薬、鎮静薬、術後鎮痛薬は、上気道拡張筋を弛緩させ、低酸素血症や高炭酸ガス血症に対する換気反応を損なう強力な呼吸抑制剤です。
 これらの事象はそれぞれOSAを悪化させ、患者に術後の心血管合併症を起こしやすくします。この点で、OSAの周術期の管理ミスは深刻な医療法上の結果をもたらしています。しかし、最近の大規模データベースリポジトリの分析は矛盾する結果を示しました。選択したエンドポイントに応じて、OSAは手術後の不良、あいまいな、またはより良い転帰1と関連していました。認識されていないOSAが術後の転帰に悪影響を及ぼすかどうかは不明である。
</序文 Google翻訳>

ではどうしたらよいか?
術後3日間の酸素療法で術後心血管イベント改善しなかった
酸素飽和度 80%未満の重度低酸素飽和度期間により積極的な手段をとるのか、今後の課題




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