2016年5月1日日曜日

SmokeHaz:システマティック・レビュー&メタアナリシス:喫煙による呼吸器系作用

煙害と訳したらよいのだろうか?

SmokeHaz (www.smokehaz.eu): A scientific review of the health hazards of smoking
http://www.europeanlung.org/en/projects-and-research/projects/smokehaz/home




SmokeHaz: Systematic reviews and meta-analyses of the effects of smoking on respiratory health
Leah Jayes , et. al.
Chest. 2016. doi:10.1016/j.chest.2016.03.060
http://journal.publications.chestnet.org/article.aspx?articleid=2518219

喫煙の呼吸器系疾患へのインパクトを科学的データを要約
長軸的研究のシステマティック・レビュー&メタアナリシス(2013年まで出版)
:電子データベース、grey literature、専門家から同定、216の論文

成人喫煙者のうち
肺癌 (Risk Ratio (RR) 10.92, 95% CI 8.28-14.40; 34 研究)
COPD (RR 4.01, 95% CI 3.18-5.05; 22 研究)
喘息 (RR 1.61, 95% CI 1.07-2.42; 8 研究)


受動喫煙:成人非喫煙者
肺癌
喘息
喘鳴
下気道感染

小児:肺機能低下

喫煙は、成人と妊婦では睡眠時無呼吸、喘息急性増悪

能動・受動喫煙とも結核リスク増加
 
結論:これら治験はSmokeHaz Websiteで公表


メタアナリシス:スタチンによるうつアジュバント治療効果

“「自殺者の9割がスタチン服用してた」→故に、スタチンはうつ誘発”という低レベルの情報ネットで広まってるようだ。


スタチンの中等症・重度うつへのトライアルは、pubmedで3つほど現時点で見いだすことができる


Statins for the treatment of depression: a meta-analysis of randomized, double-blind, placebo-controlled trials

Estela Salagre , et. al.
Journal of Affective Disorders
DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.jad.2016.04.047



疫学的研究にて、スタチンは気分障害へベネフィット可能性あり、一部RCTも示されている。
しかし、うつへのスタチンの役割不明。

中等度・重度うつ165名、3つの文献を最終的にシステマティックに検索後検討

抗うつ薬(citalopram or fluoxetine)のアジュバントとして、スタチン投与 82名、プラシーボ群 83

全研究は二重盲検RCT、フォローアップ 6-12週
スタチンは、ロバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン

プラシーボに比較して、add-on治療としてのスタチンでHDRSによる鬱症状評価大幅改善(SMD = −0.73, 95% IC −1.04 to −0.42, p<0 .001="" n="165)</blockquote">

出版バイアスの可能性は否定できない 

システマティック・レビュー:誤嚥検出のためのベッドサイド水飲みテスト:一飲み量(1−5ml)で再現できればrule inできる

誤飲検証のためのベッドサイド水飲みテストは、一飲み量(1−5ml)で再現できればrule inできる


Screening accuracy for aspiration using bedside water swallow tests: A systematic review and meta-analysis
Martin B. Brodsky, et. al.
Chest. 2016. doi:10.1016/j.chest.2016.03.059
http://journal.publications.chestnet.org/article.aspx?articleid=2518218



bedside water swallow test (WST)


気道反応(e.g. 咳き込み/窒息的)± 声の変化 (e.gi. ウェット/ゴボゴボ音質)を誤嚥とする
一飲みできる量 1-5 mlでのプール化推定値 感度 71%(95% CI, 63% - 78%) 特異度 90% (95% CI, 86% - 93%)

分けて飲み込まなきゃ行けない量 90 - 100mlトライアルでは、感度 91% (95% CI, 89% - 93%) 、特異度 53% (95% CI, 51% - 55%)

漸増飲水トライアルでは、感度 86% (95% CI, 76% - 93%)、 特異度 65% (95% CI, 57% - 73)

声質変化を伴う気道反応により誤嚥同定全般正確性改善

結論:ベッドサイドWSTは理想的ではないが、現在では十分な誤嚥スクリーニングのユーティリティである。漸増的水飲みトライアルは一過性気道反応声質変を伴わない患者で誤嚥リスクを除外できない。少量の一飲み量トライアルでは臨床的徴候再現できれば誤嚥をrule in できる。



ほんとは rule outできるユーティリティが欲しいのである!


http://www.engesyoku.com/kiso/kiso07.html




窪田式
https://www.med.or.jp/english/journal/pdf/2011_01/031_034.pdf


改訂水飲みテスト(modified water swallow test : MWST)
3mlの冷水を口腔内に入れて嚥下してもらい、嚥下反射誘発の有無、むせ、呼吸の変化を評価する。3ml冷水の嚥下が可能な場合には、更に2回の嚥下運動を追加して評価する。評点が4点以上の場合は、最大3回まで施行し、最も悪い評点を記載する。

評点  

  • 1点  嚥下なし、むせまたは呼吸変化を伴う      
  • 2点  嚥下あり、呼吸変化を伴う
  • 3点  嚥下あり、呼吸変化はないが、むせあるいは湿性嗄声を伴う
  • 4点  嚥下あり、呼吸変化なし、むせ、湿性嗄声なし
  • 5点  4点に加え、追加嚥下運動(空嚥下)が30秒以内に2回以上可能
  • 判定不能   口から出す、無反応

リアルワールドACOS

“ACOSは一般住民で頻度多く、男性に倉bレ女性が多い、しかし、65歳以上では男性が多くなる。COPD 18.3%がACOS、女性で頻度多い(女性 21.8% vs 男性 11.6%)
そして、喫煙既往なしで頻度多い”という記載・・・


だが、冒頭は、“COPDは加齢、喫煙が関連するが、両者とも原因と関連する・・・"と書かれ、ACOSに関しては、GINA-GOLD文書に基づき、 “asthma-COPD overlap syndrome (ACOS) is characterized by persistent airflow limitation with several features usually associated with asthma and several features usually associated with COPD. ACOS is therefore identified by the features that it shares with both asthma and COPD.”と書かれている。
このような記述だと、ACOSの必要条件はCOPDに含有されるわけではないようだ。実際のGINA-GOLD文書には、ACOSの明確な定義はなく、診断方法のガイダンスに過ぎないのが現実。

この論文では、リモデリング喘息や内因性気管支炎(DPB、副鼻腔気管支症候群など)の記載がない(chronic bronchitis記載はあるが・・・具体的記載が無い)



現実、リアルワールドでは、COPD患者に喘息診断事前診断既往の場合が多いと筆者等は考えている。それに基づき、ACOSの罹病率、合併症、入院リスクインパクトの検討


Comorbidome, Pattern, and Impact of Asthma-COPD Overlap Syndrome in Real Life
Job F.M. van Boven, PharmD ,et. al.
Chest. 2016;149(4):1011-1020. doi:10.1016/j.chest.2015.12.002


ACOS 5,093名(住民1千あたり5.55 罹病率)を、COPD 22,778名(30.40 罹病率)と比

ACOS患者はCOPDに比べ
・ 女性が多い ACOS (53.4%) vs  COPD (30.8%)
・ 若年  ACOS, 64.0 歳 vs  COPD, 65.8 歳
・ 非喫煙状況に差がある ACOS, 41.4% vs COPD, 22.1%
(all, P < 0.001)




補正解析にてACOSでCOPDより頻度多い
・アレルギー性鼻炎 (OR, 1.81; 95% CI, 1.63-2.00)
・不安 (OR, 1.18; 95% CI, 1.10-1.27)
・胃食道逆流 (OR, 1.18; 95% CI, 1.04-1.33)
・骨粗鬆症 (OR, 1.14; 95% CI, 1.04-1.26)


逆に、頻度少ない
・慢性腎臓病 (OR, 0.79; 95% CI, 0.66-0.95)
・虚血性心疾患 (OR, 0.88; 95% CI, 0.79-0.98)


一方、ACOS患者では、心血管疾患は入院と強く相関




上:ACOS、 下 COPD



ACOS自体、なにみてるかわからない疾患群だから・・・ 

呼気温度分析:COPD発症予測

呼気分析は、NOやVOCだけではない、呼気温度も診断に役立つのかもしれない


知らなかったが、以前からなされてた・・・

Slower rise of exhaled breath temperature in chronic obstructive pulmonary disease.
Paredi P, Caramori G, Cramer D, et al.
Eur Respir J 2003; 21: 439–443.

炎症性メディエータ有利にて気管支の血管拡張、ブラディキニン、PG、ニューロペプチド類増加。PAFは気道血流増加。気管支血管床減少により血流そのものは減少、さらに血管収縮性エンドセリンの影響、過膨脹にて気管支血流減少する部分がある。これらの炎症惹起メディエータによる血管拡張作用と気管支を含めた血管床減少のバランスにより気管支の血流は依存


ネットでは、COPD患者は呼気温度増加分量減少のよう




Exhaled Breath Temperature as a Novel Marker of Future Development of COPD: Results of a Follow-Up Study in Smokers
Marina Laborae,et. al.
COPD: Journal of Chronic Obstructive Pulomonary Disease DOI:10.3109/15412555.2016.1164129 Published online: 14 Apr 2016

exhaled breath temperature (EBT) :平均校正についての研究


現行喫煙(n=140, 40-65歳、pack-years 20以上) COPD診断履歴無し

初期評価COPD診断無しとGOLD 1 stageを2年後再評価

COPDはLLN肺機能クライテリアにて診断


ΔEBT(初回受診時喫煙後EBT変化量)は、新規診断COPD、新規診断COPD+重症度進行という2年後の2つの要素に有意に予測的  (p < 0.05 for both)
ΔEBTのLLNクライテリア新規COPD診断に関するAUCは 0.859 (p = 0.011)、感度 66.7% 、特異度 98.1%



住民ベースmetagenomics:腸内微生物群ゲノム構成と多様性に関する要素:食事、疾患、喫煙、薬剤など

ワインやコーヒーは腸内細菌叢の健常性と多様性と関連
他、野菜、果物、ヨーグルトが細菌叢の微生物多様性と関連

逆に、加糖飲料やスナック類は多様性レベル低下と関連
過敏性腸症候群や妊娠中喫煙も低下と関連

女性は男性より多様性高く、高齢者は若年者より多様性あり

注意すべきはこの研究は特定の食品や行動に特定の個人の腸内細菌叢に影響を与えているかを正確に示しているわけではない



Population-based metagenomics analysis reveals markers for gut microbiome composition and diversity
Alexandra Zhernakova, et. al.
http://science.sciencemag.org/content/352/6285/565
Science Vol 352, Issue 6285 29 April 2016
 Lifelines-DEEP studyという、オランダの1135名の腸内細菌の検討で、126の外因・内因要素(内因要素31)、60の食事要素、12の疾患要素、19の薬剤要素、4つの喫煙関連カテゴリーとの関連性が示された。これらの要素は 微生物校正の個別バリエーション18.7%の説明要素となる。 
110の要素は、125の菌種と関連し、便CgA(chromogranin A)、神経内分泌ペプチドが61の微生物種と微生物構成53%にあたり独占的に関連することが示された。
低CgA濃度は、多様性microbiomeで観察される。


筆者等によれば大規模研究で腸内microbiomeと関連した多数宿主と環境要素検討した初めての系統的評価


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