2012年1月19日木曜日

米国内分泌学会:非重症・糖尿病入院患者高血糖管理臨床実践ガイドライン

内分泌学会からの clinical practice guideline (CPG) 2012年1月報告


Management of Hyperglycemia in Hospitalized Patients in Non-Critical Care Setting:
An Endocrine Society Clinical Practice Guideline
Umpierrez et al
JCEM 97 (1): 16 

解説:http://www.medscape.com/viewarticle/756541?src=rss


 低血糖は、入院期間を延長し、非重症入院の感染頻度・死亡増加をもたらす。

CPG task forceの委員長Guillermo Umpierrez( University in Atlanta, Georgia)は、非重篤状況の入院患者低血糖管理のための推奨であると述べている。
低血糖は地域病院の32%-38%にあり、糖尿病既往だけに限らないことが今までの観察研究で報告されている。より良好な 血糖コントロールは一般内科・外科入院合併症を減らすことが観察研究・ランダム化対照化治験で明らかで、さらに、全患者は血糖検査をすべきということを示唆し、新しいガイドラインでは、血糖目標設定、3つのゴールに到達するようデザインされたプロトコール・システムを記述している。
  • 今までの糖尿病診断と関係なく、全員で、血糖検査を入院時行うべきである。 糖尿病既知もしくは高血糖(glucose < 7.8 mmol/L[140 mg/dL])では、HbA1cに関し、2-3ヶ月前に検査が行われてなかったら、測定を行うべきである
  • 重症でない状況では、多くの入院患者にとって、食前血糖は 140 mg/dL未満であるべきで、ランダムな血糖目標は180 mg/dLをターゲットとすべき。 抗糖尿病治療はもし血糖値が5.6mmol/L(100mg/dL)未満に低下したら再評価すべきで、3.9mmol/L(70 mg/dL)では修正がなされるべき。
  • 血糖目標は、臨床状態に応じて修正すべきで、低血糖傾向のない場合は厳格なコントロールは、ターミナルな病態や生命予後が限られている場合、低血糖リスクがある場合は、高めの目標( < < 11.2 mmol/L or 200 mg/dL)にする
  • 自宅でインスリンをうつ糖尿病患者は、入院中も皮下インスリンのスケジュールを遵守すべき。
  • 周術的低血糖予防のため、手術を受ける1型糖尿病全患者、2型糖尿病のほとんどは、静脈内継続投与もしくは皮下basal insulin投与+必要時bolus insulinで治療すべき。
  • 入院時高血糖( < < 7.8 mmol/L[140 mg/dL])の全患者、腸管・非経口栄養全患者では、ベッドサイドの毛細血管血point-of-care血糖検査を糖尿病歴の有無にかかわらず行うべき。 コルチコステロイドやオクトレオチドオクトレオチドなどの高血糖関連の場合も同様に対処すべき。
  • 静注継続インスリン治療終了前1-2時間は最低でも中止し、1型・2型糖尿病は計画的な皮下インスリン投与に移行すべき。
 患者向けパンフ:
http://www.hormone.org/Resources/upload/Hyperglycemia-in-the-Hospital-Web.pdf




中年男性でも、正常高値血圧も心房細動のリスク要素

心房細動は卒中リスクを5倍に、心不全リスクを3倍、認知症リスクを2倍とする。

そして全原因死亡率増加をもたらす。故に、心房細動一次予防は重要だよ・・・と。

正常高値血圧も、そのリスク要素になるので、より血圧をさげる戦略が必要かも・・・という話。

Grundvold I, Skretteberg PT, Liestøl K, et al.

Upper normal blood pressures predict incident atrial fibrillation in healthy middle-aged men: a 35-year follow-up study.

Hypertension 2012; 



 高血圧症は、心房細動発症のもっとも明らかなリスク要素で、正常高値血圧(high normal blood pressure)も女性では心房細動のリスク要素として確立されている。

この報告は、中年男性でも正常高値血圧が心房細動発症のリスク要素となるかどうかの検討。

1972-1975、2014名のノルウェー人男性を前向きに心血管系調査したもの

フォローアップ35年で、270名の心房細動を全退院詳細調査記載。

心房細動発症リスク推定は、多変量補正化Cox比例ハザードモデルを用いて、血圧の4分位解析で検討。
ベースライン血圧≧140 mm Hg及び上限正常高値血圧 128-138 mm Hgの群では、血圧 <128 mm Hg男性比較に対し、それぞれ、1.60-倍 (95% CI 1.15–2.21) と 1.50-倍 (1.10–2.03)。

ベースライン拡張期血圧≧80 mm Hgでは心房細動頻度は、拡張期血圧 < 80 mm Hgに比較して、 1.79-fold (95% CI 1.28–2.59)


4分位相対リスク(95% CI)
1(88-116 mm Hg)1.0
2(118-126 mm Hg1.26(0.74-2.14)
3(128-138 mm Hg)1.98(1.22-3.27)
4(140-220 mm Hg)1.84(10.07-3.19)


心房細動前糖尿病・心血管疾患発症補正後もこの結果は有意なまま。


ベースラインから7年平均で、より男性は健康だが、正常高値血圧のままの場合、その後の心房細動の有意な予測要素でありつづける。


椎体形成術後の肺セメント塞栓

椎体形成術後の肺セメント塞栓:
Pulmonary Cement Embolism after Vertebroplasty
Jean-Pierre Tourtier, M.D., and Sophie Cottez, M.D.
N Engl J Med 2012; 366:258January 19, 2012

心不全:肺動脈収縮期血圧は死亡率の予測要素

心不全住民の肺動脈収縮期圧:pulmonary artery systolic pressure (PASP) は有意に塩部と関連し、確立したリスク要素以上にリスク予測に役立つと、前向き研究で判明


Bursi F, McNallan SM, Redfield MM, et al.
Pulmonary pressures and death in heart failure a community study.
J Am Coll Cardiol 2012; 59:222-231

1000名を越える解析で、拡張能測定、BNPなどを含む既知の予測因子独立的に全原因死亡、心血管死亡リスク要素となる。
左室駆出率は肺動脈収縮期血圧による変動は少ない。
駆出率低下あるいは温存症例でも肺高血圧の影響は変わらない。





Hazard ratio (95% CI)* for mortality by tertile of pulmonary arterial pressure measured by Doppler echocardiography in community-based heart-failure patients


End point at 1 y Tertile 2, 41-54 mm Hg Tertile 3, >54 mm Hg
全原因死亡率 1.45(1.13-1.85) 2.07(1.62-2.64)
心血管死亡率 1.75(1.17-2.60 2.50(1.69-3.71



COPDなしの患者でも同様で、心房細動なし、左室駆出率<45%でも、この結果は同様。

心不全住民患者での肺動脈収縮期血圧の予後因子強度を他の予後因子モデルに振り向けた。年齢、性、心不全発症状態、合併症指数、貧血、左室駆出率、拡張能、COPDは、 integrated discrimination improvement (IDI)の4.2%の増加(p<0.001)をもたらし、 net reclassification improvement (NRI) indexでは、14.1%増加を示した(p<0.002)

結果、肺動脈収縮期血圧をアウトカム測定要素として加えることは、死亡率エンドポイントに対して標準的なアウトカム予測改善をもたらす。




遠隔皮膚科学:診断、臨床的効果、アウトカム 何れも改善効果

"Impact of live interactive teledermatology on diagnosis, disease management, and clinical outcomes"
Lamel S, et al
Arch Dermatol 2012; 148: 61-65.





ライブ・テレメディスン コンサルテーション( live interactive teledermatology consultation)についてのカルテ後顧的レビュー検討

2003-2005年、1500名

受診医からの診断・治療比較で、1500のlive interactive teledermatology consultationの結果、診断変化 69.9%、診断マネージメントの変化97.7%

遠隔皮膚科受診1年内に2回以上の313名では、臨床的改善が68.7%に見られた。

多変量解析にて、診断の変化(P=.01)、疾患マネージメントの変化(P< .001)、遠隔皮膚科受診数(P < .001) は有意に臨床的アウトカム改善と関連。







皮膚科領域のtelemedicine
http://www.imic.or.jp/about/imicpdf/25_2/v25_2p04.pdf


日本でも皮膚科遠隔診断はさまざまなところで行われているようだ。
問題は、公的医療保険の適用に関して。
施設や居宅から動かせない患者さんたちへの利便性やアウトカムを考えれば、全身が必要だろう。

検診:骨密度検査の適正間隔 正常・軽度低下なら15年以上でOK

初回骨粗鬆症スクリーニングで、骨密度良好な閉経後女性においては、次の骨密度検査は、15年ほど後でよい。




67 歳以上の骨粗鬆症進展は10%ほどで、初回検査骨密度正常あるいは軽度の骨密度低下対象者の検査間隔はそれぞれ16.8年、17.3年程度であろうと
Margaret Gourlay(University of North Carolina at Chapel Hill)ら。


中等度骨密度低下女性では4.7年、より重度の骨密度低下女性では1.1年。


筆者は、女性・医師の議論の元、骨粗鬆症検診の頻度は、初回検査の結果に基づき、判断すべきであると述べている。

dual-energy x-ray absorptiometry (DXA)による骨密度測定は、65歳以上の女性全員に対し推奨されている。しかし、この検査の間隔に関してはデータが少なすぎて結論が出てなかった。


Gourlay らは、 Study of Osteoporotic Fractures (SOF)のデータを利用。 4957名、67歳以上の女性で正常骨密度 (T score at the femoral neck and total hip of -1.00 or higher) or osteopenia (T score of -2.49 to -1.01)として検討。いずれも、股部・臨床的椎体骨骨折の既往無く、骨粗鬆症治療されてない人たち。15年までフォローアップ。

股部骨折・臨床的椎体骨骨折移行10%程度、もしくは、骨粗鬆症治療となる状況を検査間隔とすると定義した。

フォローアップ中、骨粗鬆症発症比率は、正常骨密度では 0.8%、 軽度 4.6%、中等度 20.9%、 重度 62.3%

4群の検査間隔推定として、それぞれ、16.8、17.3、4.7、1.1年で、骨折に関する重大な臨床的リスク要素補正後も十分な年数であった。

この研究の問題点としては、筆者自らが述べているが、活動性・運動性低下、体重減少、他のリスク要素に関しては十分に考慮してない。そして、年齢、BMIが重大な予測因子であること。

検査間隔をこのような場合は、短縮化することも考慮されるべき。

中等度骨密度低下から骨粗鬆症への移行推定期間は70歳で5年、85歳で3年。
そして、やせ気味の場合、さらに骨密度低下が伴うことがあると例示。


原著: Gourlay M, et al "Bone-density testing interval and transition to osteoporosis in older women"
N Engl J Med 2012; 366: 225-233. 


安定冠動脈疾患:MR-proADMなどの心筋細胞ストレスマーカー リスク推測・治療ガイドに役立つか?



Evaluation of Multiple Biomarkers of Cardiovascular Stress for Risk Prediction and Guiding Medical Therapy in Patients With Stable Coronary Disease
Circulation. 2012; 125: 233-240 Published online before print December 16, 2011, doi: 10.1161/​CIRCULATIONAHA.111.063842


subclinical cardiovascular stresに関わるbiomarkes(myocyte stress biomarker:心筋細胞ストレスバイオマーカー)rの利用は、治療戦略・テーラーメイド化に 寄与できないか?


4つの心血管系バイオマーカー
  • midregional pro-atrial natriuretic peptide (MR-proANP)
  • midregional pro-adrenomedullin (MR-proADM)
  • C-terminal pro-endothelin-1 (CT-proET-1)
  • copeptin

Prevention of Events With Angiotensin Converting Enzyme (PEACE) trialを利用

臨床的心血管リスク予測因子、左室駆出率補正後、MR-proANP,、MR-proADM、 CT-proET-1は心血管死亡、心不全リスクと独立して相関  (hazard ratios per 1-SD increase in log-transformed biomarker levels of 1.97, 1.48, and 1.47, respectively; P≤0.002 for each biomarker)

これら3つのバイオマーカーは、臨床的モデルに加えたときの判別的メリット改善に寄与する。

Trandolaprilは、2つ以上のバイオマーカー増加患者で、心血管疾患死亡・心不全リスク有意に減少 (hazard ratio, 0.53; 95% 信頼区間, 0.36–0.80)するが、増加バイオマーカーが1つ以下の場合はベネフィットを有しなかった (hazard ratio, 1.09; 95% 信頼区間, 0.74–1.59; Pinteraction=0.012)




予備研究:標準治療不応性ジェノタイプ1C型慢性肝炎に対する抗ウィルス薬2剤追加治療の有効性

事前治療に反応せず、あるいはSVRが得られなかった、HCV genotype 1感染に対し

2つの抗ウィルス薬単独
4/11 高ウィルス薬+Peginterferon+ribavirin 9/10


Preliminary Study of Two Antiviral Agents for Hepatitis C Genotype 1
N Engl J Med 2012; 366:216-224January 19, 2012


open-labelのphase 2a

21名の慢性HCV genotype 1感染 pegingerferon+ribavirin前治療 にて12週以上で HCV RNA 2 log10以上のウィルス減少無し)

Group A
 NS5A replication complex inhibitor daclatasvir (60 mg once daily)
 NS3 protease inhibitor asunaprevir (600 mg twice daily) alone (group A, 11 patients)

Group B
combination with peginterferon alfa-2a and ribavirin (group B, 10 patients)

for 24 weeks.

プライマリエンドポイントは、治療期間終了後12週SVR


SVR高率なのは2つの直接作用抗ウィルス薬をpeginterferon α-2a+リバビリンと併用した場合
(Funded by Bristol-Myers Squibb; ClinicalTrials.gov number, NCT01012895)



スタチン:脳梗塞後脳出血リスク増加と関連せず、脳葉性出血後は?

脳アミロイドアンギオパチーなどの脳葉型出血生存者においてリスク増加の報告が有り、それらの使用差し控えるべきという報告があった。


Statin Use Following Intracerebral Hemorrhage
A Decision Analysis
M. Brandon Westover, MD, PhD; Matt T. Bianchi, MD, PhD; Mark H. Eckman, MD, MS; Steven M. Greenberg, MD, PhD
Arch Neurol. Published online January 10, 2011. doi:10.1001/archneurol.2010.356






Statins and Intracerebral Hemorrhage A Retrospective Cohort Study
Daniel G. Hackam, MD, PhD; Peter C. Austin, PhD; Anjie Huang, MSc; David N. Juurlink, MD, PhD; Muhammad M. Mamdani, PharmD, MA, MPH; J. Michael Paterson, MSc; Vladimir Hachinski, MD, DSc; Ping Li, PhD; Moira K. Kapral, MD, MSc
Arch Neurol. 2012;69(1):39-45. doi:10.1001/archneurol.2011.228


後顧的コホート的研究だが、スタチンは、虚血性卒中後の頭蓋内出血リスク増加と関連せず

以下の報告も同様。

Statins and Intracerebral Hemorrhage
Collaborative Systematic Review and Meta-Analysis
Daniel G. Hackam et. al.
Circulation. 2011;124:2233-2242



noteへ実験的移行

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