2012年2月9日木曜日

レビ-小体型認知症と軽症・中等症AD進行性に差は無いが、精神症状特性の影響大


レビ-小体を伴う認知症(DLB)は剖検では10~15%。臨床的にも、アルツハイマー病(AD)より高レベルの問題が生じやすく、施設への入所が早い。
 DLBがより認知機能低下急激であるが、認知機能・非認知機能症状の低下程度が分かれば、将来の患者とケアする人たちへの手助けになる可能性があるということで、DLBとADの進行度を検討。

Comparison of cognitive decline between dementia with Lewy bodies and Alzheimer's disease: a cohort study
BMJ Open 2012;2:e000380 doi:10.1136/bmjopen-2011-000380


100目のAD、58名のDLB 12ヶ月フォローアップ

ADとDLBは、ベースラインで性別、年齢、Clinical Dementia Rating score と cholinesterase inhibitorとmemantine使用率差を認めず。

Neuropsychiatric Inventory (NPI) と NPI carer distress scoreは統計学的に有意に、ベースラインやフォローアップ時、DLBで高い。

ADとDLBの認知機能スコアの差は、ベースライン、フォローアップ時にも認めない。

変数の進行程度に有意な差を認めない。


結論:DLBはより神経精神的特性がベースライン、フォローアップ時共にADより目立つが、軽症・中等症ADとDLB群に関しては、認知・神経精神的特性上の進行性の差は認めない。

DLBは精神症状として特徴的。だが、DLBがADより認知機能進行するかは不明であったが、このやや大きなコホートで、CAMCOGスコア減少に差は無かった。
DLB患者は、neuropsychiatric inventory(NPI)やNPI carer distressスコアが常に高値。
DLBの予後は、神経精神症状、他の症状を介し、認知機能低下だけによるものではない。


平成22・23 年度 医療政策会議 報告書


平成22・23 年度 医療政策会議 報告書 医療を営利産業化していいのか

平成2 4年1月 日本医師会医療政策会議
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20120208_1.pdf


気になったところの抜き書き


第1章 ポスト311 の社会保障と政治 執筆担当者 山口 二郎 委員

菅政権が提起した経済成長戦略には、次のような特徴があった。
第一に、「成長」という強迫観念にとらわれ、理念や構想を欠いた経済政策であるという点に本質がある。これは、民主党政権における自信の欠如の反映ということもできる。政治的な戦術としては、経済界に接近し、政権基盤を補強するという意図があった。また、民主党内における政策路線の対立との関連で見れば、増税に反対し、生活第一路線を守ろうとする鳩山元首相、小沢元幹事長を中心とするグループと、財源問題に取り組み、経済成長を進める野田佳彦首相、前原誠司政調会長を中心とするグループの対立の中で、菅、野田両政権は生活第一路線の修正を進めたと捉えることができる。
菅政権以降、医療もこのような経済成長戦略の中に位置づけられることとなった。ここでそうした政策をとりあえず「医療産業政策」と呼ぶなら、その柱は次のようなものである。
・医療の実用化促進のための医療機関選定制度
・国際医療交流を進めるための医療滞在ビザ、医療機関認証制度の創設
混合診療の解禁による高度医療の推進
ここでは医療分野のサービス提供、及びそれらを支える機器や薬剤の開発によってGDP の拡大を図るという発想が前提となっている。この点は、民主党の政策思想の根幹に関わる問題をはらんでいる。


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医療の産業化とTPP は連動した動きと捉えなければならない。アメリカ主導の自由化と市場化に向けた政策の標準化は、国家の主権を掘り崩し、アメリカ流の市場モデルが他国にも浸透することが起こり得ることに留意する必要がある。
ここで我々は、言葉の使い方に十分注意しなければならない。十年前に小泉政権が誕生したとき、日本の世論は「構造改革」一辺倒となった。小泉純一郎首相(当時)やその側近が唱える改革はすべて良いものであり、それに対する異論、反論は、すべて抵抗勢力のエゴイズムと退けられた。その結果実現した「社会保障制度改革」は、社会保障費の毎年2,200 億円ずつの抑制であり、改革は医療難民、介護難民を生み出した。労働市場改革は、派遣労働の製造業への全面解禁を意味し、この政策転換は派遣切りを正当化し、リーマンショック後大量の失業者を生み出した。地方分権は、地方交付税の削減を意味し、非大都市圏の多くの自治体では、公立医療施設の縮小、サービスの低下をもたらした。
同じことをTPP で繰り返してはならないのである。

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第2章 TPP と今後の日本医療 …………………………(二木 立 委員)

3.韓米・豪米FTA から学ぶことは何か?

2011 年11 月に韓国国会で強行採決され、2012 年1 月発効予定の韓米FTA の第5 章「医薬品・医療機器」の妥結内容は、米国が米国通商代表部の「外国貿易障壁報告書」等を通して日本に要求してきたことと酷似しており、これを初めて読んだとき「ホラーストーリー」と感じた。それもそのはずで、韓米FTA では、米国の強い要求により、従来知的財産権保護の国際基準とされていたWTO のTRIPS(知的財産権の貿易的側面に関する協定)を大きく超える保護水準(TRIPS プラス)が設定されている。

一番驚いたのは、米国の製薬企業が韓国政府の定めた医薬品・医療機器の償還価格に不満がある場合は、政府(本省=保健福祉部だけでなく、健康保険審査評価院、国民健康保険公団も含む)から独立した「医薬品・医療機器委員会」に異議申し立てできることになったことである。。上記「中立派」の研究者も、これは韓国政府の社会保険政策に対する外国企業の干渉の可能性を内包していると危惧している。しかも、内閣官房等が10 月に発表した「TPP 協定交渉の分野別状況」、および外務省が11 月に発表した「TPP 協定により我が国が確保したい主なルール」は、「医薬品分野に関する[同様の―二木]規定が置かれる可能性はある」と認めている(ISD条項と共に、この「医薬品・医療機器委員会」が重要で、”手軽な仕組みで、企業側からの異議申し立て乱発”の可能性がある)

(二木氏は、TPP反対運動の効用が続けば、少なくとも医療・医薬品分野に関しては、米国が求める水準より相当抑制的なものになる可能性がある。”と楽観視)

豪米FTA”では、“米国政府は米国の製薬団体(PhRMA12)の要求に基づいて、オーストラリア独自の「医薬品給付制度」(PBS、その核心は費用対効果の評価に基づいた医薬品価格の抑制)の廃止を執拗に求めたが、オーストラリア政府が最終的に拒否したため、PBS の根幹は守られた”
(TPPでこれがそのままという保証はない。)
・・・・
“PBS リストに掲載される医薬品に2 つの類型(F1(ブランド薬)とF2(ジェネリック薬))が設けられ、政府はF1 医薬品に対して「不相応に高額の支払いをしてきている」とされている。”

”医療の営利産業化は日米大企業の合作”
医療特区(総合特区)での株式会社の病院経営と混合診療原則解禁が認められた場合、米国資本単独ではなく、日米合作で進められるのは確実である。



はじめに ……………………………………………………………………… 1
第1章 ポスト311 の社会保障と政治 ……………(山口 二郎 委員) 4
1.3.11 の衝撃と社会保障 ………………………………………………… 4
2.政権交代以後の政治と社会保障………………………………………… 5
3.社会保障・税一体改革、TPP と今後の社会保障 ………………………… 8
第2章 TPP と今後の日本医療 …………………………(二木 立 委員) 14
1.TPP に参加したらアメリカは日本医療に何を要求してくるか?
………………………………… 15
2.アメリカの第1 段階の要求が実現したら何が生じるか?……………… 17
3.韓米・豪米FTA から学ぶことは何か? …………………………………… 19
4.TPP について検討する際見落としてならない2 つのこととは?……… 23
第3章 医療の営利産業化より医療関連産業の強化を
……………………(桐野 髙明 委員) 25
1.医療そのものの営利産業化 ……………………………………………… 26
2.製薬産業や医療機器産業を活性化する ………………………………… 28
3.皆保険制度のもとの医療関連産業の活性化 …………………………… 29
4.まとめ …………………………………………………………………… 32
第4章 医療保障政策と医療団体の政治経済学的位置
………………………(権丈 善一委員) 33
1.合成の誤謬と自由放任の終焉 ……………………………………………… 33
2.合成の誤謬に基づく政策に抗う経済界 …………………………………… 41
3.資本主義的民主主義の中での医療政策 …………………………………… 44
4.経済界のプロパガンダと規制緩和圧力 …………………………………… 45
5.資本主義的民主主義と対日圧力 …………………………………………… 48
6.成長政策と戦略的貿易論 …………………………………………………… 49
7.イノベーションと経済政策 ………………………………………………… 52
8.付加価値生産性と物的生産性 ……………………………………………… 56
9.福祉国家を支える集団としての医療界に求められるもの ……………… 57
おわりに ……………………………………………………………………… 60
付録(講演録)
1.「産業化」の意味を考える
-会長諮問を討議するにあたっての共通基盤を築くために- ……… 67
2.医療を営利産業化させていいのか………………………………………… 83
3.医療を営利産業化させていいのか-4 つの話題提供- ………………… 91
4.ポスト大震災の社会保障 ………………………………………………… 105
5.無政府状態下の日本の財政・社会保障
-2015 年を目標とした一体改革成案「一里塚」の意味- …………… 123
6.医療保険財政と医療の産業化…………………………………………… 155
7.公的医療保障制度と民間医療保険に関する国際比較
-公私財源の役割分担とその機能- …………………………………… 175


入院収容前ステロイド治療にて急性肺障害減少できず、死亡率高くなる?


Karnatovskaia L, et al "The influence of prehospital systemic corticosteroid use on development of acute lung injury and hospital outcomes" SCCM 2012; Abstract 41.

病院収容前のステロイド治療は、急性肺障害リスクを減少させないという報告。
少なくとも一つの急性肺障害リスクを有する5584名の入院患者コホート、入院時全身性ステロイド投与458名を含む。
プライマリアウトカムは、急性肺障害頻度。セカンダリエンドポイントは、人工呼吸必要性と院内死亡

急性肺障害率は事前解析で差を認めず

セカンダリエンドポイントの結果にはばらつき

・ 人工呼吸必要性 ステロイド群 23% vs 対照群 35% P=0.004

・ 院内死亡率 ステロイド群 8% vs 対照群 3% P<0.001

ロジスティック回帰分析に絵、急性肺障害頻度に差は認めず、人工呼吸必要性の有意差消失(P=.6)、 ステロイド群の有意死亡率高値はそのまま(P=0.02)

propensity scoringにて、ステロイド群 443名、 非ステロイド群1332名をマッチさせ、収容前ステロイド投与のオッズ非は、急性肺障害 1.0、人工呼吸 0.90、入院死亡率 1.2で、いずれも統計学的有意差まで至らず。


IgG4-Related Disease:IgG4関連疾患

IgG4関連疾患 スペクトラム



IgG4-Related Disease
John H. Stone, M.D., M.P.H., Yoh Zen, M.D., Ph.D., and Vikram Deshpande, M.D.
N Engl J Med 2012; 366:539-551February 9, 2012
  • Mikulicz's syndrome (唾液、涙腺関連疾患)
  • Kuttner's tumor (下顎腺腫瘍関連)
  • Riedel thyroiditis
  • Eosinophilic angiocentric fibrossi (眼窩・上気道関連)
  • Multifocal fibrosclerosis (主に眼窩、甲状腺、後腹膜、縦隔、他組織・他臓器)
  • Inflammatory pseudotumor (眼窩、肺、腎臓、他臓器)
  • Mediastinal fibrosis
  • Retroperitoneal fibrosis(Ormond's disease)
  • Periaortitis and periarteritis
  • Inflammatory aortic aneurysm
  • Idiopathic hypcomplentemic tubulointerstitial nephritis with extensive tubulointerstitial deposits
 IgG4関連疾患は、"tumefactive lesion"(腫瘍様病変)を特徴とする、fibroinflammatory conditionとして認識されてきた。

IgG4-陽性形質細胞、 花筵状の錯綜構造を示す炎症巣(storiform fibrosis)、しばしば観察されるがすべてではない所見として血中IgG4濃度増加


2003年まで全身性疾患としては認識されてなかった。”自己免疫性膵炎”として膵外病変として認識された疾患。

2001年には血中IgG4増加とリンクされ、膵組織で、IgG4陽性形質細胞を大量に見いだし、2つの疾患に病理組織学的に分類Am J Surg Pathol. 2011 Jan;35(1):26-35.
・ type 1: IgG4-related disease
・ type 2: type 1と臨床的オーバーラップはあるが、明確な病理的特徴を有する




IgG4-related disease は、バーチャルな全臓器疾患として記載;胆汁樹、唾液腺、眼窩後方組織、腎臓、肺、リンパ節、髄膜、大動脈、乳腺、前立腺、甲状腺、心外膜、皮膚臓器。

組織病理的特徴は、全器官横断的に類似。多臓器に同様の病理的特徴が存在するというのはサルコイドーシスとanalogous。



てんかん脳深部刺激療法による記憶改善効果

てんかん痙攣のfocusに対する電極による脳深部刺激療法(deep-brain stimulation)が患者たちの記憶機能改善したという報告


Memory Enhancement and Deep-Brain Stimulation of the Entorhinal Area
Nanthia Suthana, Ph.D., Zulfi Haneef, M.D., John Stern, M.D., Roy Mukamel, Ph.D., Eric Behnke, B.S., Barbara Knowlton, Ph.D., and Itzhak Fried, M.D., Ph.D.
N Engl J Med 2012; 366:502-510February 9, 2012


海馬や内側嗅領(entorhinal area)皮質へ脳深部刺激療法で、記憶パフォーマンスに与える影響を検討。


バーチャル環境内の目的地の学習による空間学習タスクで試験

内側嗅領への治療患者では、ランドマーク位置学習によりこれらの位置記憶を促進する。

被験者は、刺激治療してない被験者に比べ、迅速にランドマークに到達し、近道で到達する。

内側嗅領刺激はまた、θ-波の相のリセットをもたらすことが海馬の脳波所見から示された。

海馬直接刺激では効果的でない。

小シリーズ研究だが、施行による副事象は観察されてない。



妊娠(出生前)検査:甲状腺スクリーニング・治療にて子供の認知機能改善認めず

出生前スクリーニング(妊娠 中央値 12週3日)のランダム化トライアルで、甲状腺機能低下治療は、3歳時点での子供の認知機能低下を改善しない。
Antenatal Thyroid Screening and Childhood Cognitive Function

John H. Lazarus, M.D., Jonathan P. Bestwick, M.Sc., Sue Channon, D.Clin.Psych., Ruth Paradice, Ph.D., Aldo Maina, M.D., Rhian Rees, M.Sc., Elisabetta Chiusano, M.Psy., Rhys John, Ph.D., Varvara Guaraldo, M.S.Chem., Lynne M. George, H.N.C., Marco Perona, M.S.Chem., Daniela Dall'Amico, M.D., Arthur B. Parkes, Ph.D., Mohammed Joomun, M.Sc., and Nicholas J. Wald, F.R.S.

N Engl J Med 2012; 366:493-501February 9, 2012

 胎児期18-20週まで胎児の甲状腺ホルモンは能動的に分泌されない。動物実験では、母体からの遊離サイロキシン(T4)に依存している。さらに、中枢神経発達にfT4合成は必要で、ヨード不足住民での妊娠中ヨード投与の認知パフォーマンス 改善の報告があった。

ゆえに、出生前スクリーニングと甲状腺機能低下治療の効果について検討する必要があった。


妊娠15週6日以下でランダムに
・ スクリーニング群:hyrotropin+fT4測定
・ 対照群:血清保存+出産後データ回収

21846名の血中サンプル、390名を検診群、404名を対照群

thyrotropin 0.1-1.0 mIU/Lを目標として補正

陽性所見母に対応する子供は、 平均IQスコア  99.2 、100.0(スクリーニング群、対照群)、 その差は、 0.8; 95%信頼区間 l [CI], −1.1 ~ 2.6; P=0.40 (intention-to-treat analysis)

IQ<85の子供の比率はそれぞれ、  12.1%、 14.1% (difference, 2.1 %値; 95% CI, −2.6 ~ 6.7; P=0.39).

on-tretament解析でも同様。



noteへ実験的移行

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