2020年1月21日火曜日

エンパグリフロジン:非糖尿病心不全改善効果の機序 NLRP3 inflammasome活性化減少

エンパグリフロジン:ジャディアンスでの心不全での治療機序の一つになるか?

HFrEF非糖尿病でも心機能減衰抑制効果が示されており、糖尿病と独立した機序の解明が必要であった。循環血中ケトン増加とケトン酸化が機序という考えもあるが、実証的ではない。

重要なのは、SGLT2の阻害が肝臓と腎臓の炎症を軽減することを示すいくつかの研究がある。エンパグリフロジンは、腎臓のNLRP3 (nucleotide-binding domain-like receptor protein 3) inflammasomeの活性化を調節することが示されている。別のSGLT2阻害剤(ダパグリフロジン;フォシーガ)は、NLRP3 inflammasomeの活性化に関連する心臓の炎症を緩和し、糖尿病・肥満マウスの心機能障害軽減効果が示されている。



Empagliflozin Blunts Worsening Cardiac Dysfunction Associated With Reduced NLRP3 (Nucleotide-Binding Domain-Like Receptor Protein 3) Inflammasome Activation in Heart Failure
Nikole J. Byrne ,et al.
Originally published 20 Jan 2020
https://doi.org/10.1161/CIRCHEARTFAILURE.119.006277
Circulation: Heart Failure. 2020;13
https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIRCHEARTFAILURE.119.006277

2つの齧歯類心不全モデル エンパグリフロジン 10 mg/kg/日投与し、心臓NLRP3 inflammasome測定

HFrEF n=30-34にエンパグリフロジン効果生じたが、ケトン体、心ketone oxidation、増加ATP産生に変化認めず
注目点は、エンパグリフロジンがNLRP3 inflammasomeの活性減弱、HFrEFマウスの心臓での無菌性炎症のマーカー発現減弱し、エンパグリフロジンのメカニズムとして糖尿病無しのHFrEFでの心機能持続に関与を示唆したところ

加え、HFpEFの心不全においてエンパグリフロジンの心臓への効果は、同様にNLRP3 inflammasome活性化減少を伴うものであった

エンパグリフロジンの炎症軽減能は、カルシウム(Ca2+ ionophoreにより完全に消滅する、これは、心臓内の適切なcytoplasmic Ca2+



HFpEFでも効果ありそうだが・・・臨床レベルでは?

SPRINT:降圧治療強化戦略と耐糖能異常発症の関連性

高血圧と糖尿病は併存することが多い。腎臓ナトリウム再吸収、交感神経系、膜透過イオン輸送の変化、血管抵抗などいくつかのメカニズムが考察される
高血圧のコントロールも糖尿病と複雑な関連を有し、高血圧コントロールが高インスリン血症・インスリン抵抗性へ影響を与える。UK大規模コホートでも高血圧と糖尿病発症の関連性示されていた

 Emdin CA, Anderson SG, Woodward M, Rahimi K. Usual blood pressure and  risk  of  new-onset  diabetes:  evidence  from  4.1  million  adults  and  a  meta-analysis of prospective studies. J Am Coll Cardiol. 2015;66:1552–1562. doi: 10.1016/j.jacc.2015.07.059
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4595710/


SPRINT (Systolic Blood Pressure Intervention Trial) では心血管アウトカム減少が示されたが、強化降圧戦略(SBP<120 mmHg)と標準戦略(<140 mmHg)において糖尿病発症差が提示できるか?

被験者は50歳以上、SBP 130-180 mmHg、高心血管リスク症例
糖尿病、PCK、蛋白尿 1g/d以上、心不全、認知症、卒中症例は除外
ランダム化後除外は 血糖 126 mg/dL以上、低血糖

アウトカム:糖尿病発症 空腹時血糖 126mg/dL以上、糖尿病自己報告、新規血糖降下剤使用
セカンダリアウトカム:正常血糖(100mg/dL未満)症例での IFG(100-125 mg/dL)


Blood Pressure Control and the Association With Diabetes Mellitus Incidence
Results From SPRINT Randomized Trial
Christianne L. Roumie ,  et al. , and for the SPRINT Research Group
Originally published 23  Dec 2019
https://doi.org/10.1161/HYPERTENSIONAHA.118.12572
Hypertension. 2020;75:331–338

無作為化された9361名の被験者と除外 981人の除外
割り付け:強化治療 4187名、標準治療戦略 4193名

糖尿病発症 強化治療 299 (年 2.3%)、標準治療 251(年 1.9%) :1000治療人年あたり 22.6(20.2-25.3) vs 19.0(16.8-21.5)イベント;補正ハザード比 1.19 [95% CI, 0.95-1.49]

IFGにおいては100人年あたり 26.4 (24.9-28.0) vs 22.5 (21.1-24.1); 補正ハザード比  1.17 [1.06-1.30]


結論:強化治療戦略は、真性糖尿病の増加とは関連していなかったが、空腹時血糖の障害と関連していた。 集中的な血圧目標のリスクと利点は、個別の患者治療目標に考慮されるべき





インスリン抵抗性→高血圧への関連性はわかるが
高血圧厳格治療→インスリン抵抗性改善は可能なのか?

明快な解説が欲しい



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