2013年2月20日水曜日

母体の肥満:羊水中に胎児脳発達阻害・影響を示す遺伝子発現あり

羊水中の無細胞胎児RNAでの205の遺伝子発現を肥満妊娠と対照(BMI 25未満)で比較

対やせで、もっとも肥満者が、down-regulateされている遺伝子は、アポトーシス促進遺伝子STK24で、アポトーシス促進性のCASP9のdown regulationの2.5倍。
アポトーシス細胞死抵抗遺伝子は肥満暴露胎児でupregulateされ、BCL2発現では7.6倍、BCL2L1では2倍となっている。
機能解析で、脳皮質細胞のアポトーシスに関する5つの遺伝子、海馬細胞の細胞死に関する4つの遺伝子、交感神経ニューロンアポトーシスに関する4つの遺伝子での有意なupregulationが観察された。

肥満の母親は、その胎児の脳の発達に影響を与える。第2トリメスターの羊水において、中枢神経アポトーシスの正常プロセスに関する遺伝子発現低下をもたらす変化が示された。
すなわち、肥満女性の胎児は、正常の神経防御的働きをするアポ蛋白D遺伝子(APOD)発現が9倍となり、過剰発現は有害である可能性がある。ただ、これが、脳の構造・機能にインパクトを与えるかはまだ不明ではある。
筆者らは、自閉症スペクトラム疾患、ADHDなどとの関連性を示す先行する報告とを参考に、肥満母からの子供への認知機能パフォーマンスの悪影響の可能性を論述。
ラットでは、構造的に脳の異常・遺伝子発現アポトーシスの異常、前駆細胞の神経migrationの異常が示されている。
有害刺激物への防御的働きのアポトーシスが、肥満では子供の神経発達に異常を来すそういう考えが展開されている。

"Decreased apoptosis in fetuses of obese women: implications for neurodevelopment"
Edlow A, et al
SMFM 2013; Abstract 37.
http://www.eventkaddy.com/smfm2013/abstracts/37.html


解説;http://www.medpagetoday.com/MeetingCoverage/SMFM/37439

呼吸器疾患:リアルワールドでのアンビリーバブルな診断

【症例】70代男性・喫煙歴あり
【現病歴】1ヶ月前からの呼吸困難(安静時・労作時ともに)出現
初診開業医で肺気腫として説明され
その地域中核病院の呼吸器外来の専門医紹介
そこの専門医にて、呼吸機能されることなく、CTのみで肺気腫と診断
持続性抗コリン剤投与
 【当院スパイロメトリー】1秒量 1.06L、FEV1% 58.2%                      
【当院CT】


今、話題?の気腫合併肺線維症(CPFE)を疑う












・・・・それだけ・・・だろうか?



実は、初診時に、気管支拡張剤吸入して、FEV1 2.01L まで改善しているのである。そして、吸入ステロイド+LABAにて、次回受診時呼吸機能正常化

要するに、患者さんの訴えである「呼吸困難」は、喘息によるものと断定したい

患者さんの訴えは、比較的急激な変化であり、COPDなどに見られる緩徐悪化でもなく、気道感染きっかけの急性増悪エピソードもない、安静時呼吸困難を示すもの

もちろん、気腫合併肺線維症の存在を疑い、その評価も必要とは思うが・・・

【結論】拡張剤による一秒量の変化を評価しない、呼吸器専門医が世の中に入るらしい。
この症例では、スパイロメトリーさえされてなかった・・・アンビリーバブルな世界が存在する。

うっ血性心不全患者に、オンデマンドで、シムビコート使ったケースも最近経験した。
某メーカーがSMARTと宣伝しているために・・・誤解使用が広まってるようだ。

ちなみに、以下が、苦しいときだけシムビコート使用するよう言われた症例のレントゲン写真
 ↓
鹿児島県というところは、気管支拡張効果のためスパイロメトリーを2回、2週間後スパイロメトリーを行うと、過剰診療だと判断して 保険査定をするという未開の地である。 スパイロメトリーしなくても、COPDや喘息診断は可能な優秀な医師たちがすむ地域らしい・・・ スパイロメトリーせずに、スピリーバ処方を診断根拠不明で査定する方が普通だと思うのだが・・・ この地域はGINAやGOLDのガイドラインに書かれている医学的常識が通じない・・・

そもそも、心電図を一度もとらず、狭心症という心電図を保険診療レセプトでだされたとき、審査関係者はそれを問題にせず認めるだろうか?そんなことはないはず・・・まともなレセプト審査なら・・・
ところが、スパイロメトリーもしくは肺機能検査をせず、気流制限がその定義であるCOPD、気道可逆性がその定義の一つである喘息・・・その診断根拠を問題にせず、それどころか、まともに検査・評価・診断した方を過剰診療と判定する鹿児島県の医療レベル・・・実に嘆かわしい状況である。

ロボット手術;コスト増大をもたらす ・・・ 現状ではベネフィット乏しい

ロボット手術(robotically assisted operation)による子宮摘出術の実態的研究

腹腔鏡手術に比べても、入院期間若干短い。ただ、輸血必要性やその後のケア必要性は同等。
だが、コストが最大の問題。コスト削減が急務。



Robotically Assisted vs Laparoscopic Hysterectomy Among Women With Benign Gynecologic Disease
Jason D. Wright, et. al.
JAMA. 2013;309(7):689-698. doi:10.1001/jama.2013.186.
2007年0.5%から、2010年に9.5%と米国内ではその応用が広がっている。
同時期に、腹腔鏡下手術も24.3%から30.5%と増加。
ロボット手術施行した病院でのその後の3年間に、すべての子宮全摘術の22.4%がロボット手術となっている。
propensity scoreマッチ化解析にて、ロボット手術も、腹腔鏡下手術も、包括的合併症率同様(5.5% vs 5.3%;相対リスク比 1.03;95%CI 0.86-1.24)

ロボット手術患者は2日以上の入院少ない  (19.6% vs 24.9%; RR, 0.78, 95% CI, 0.67-0.92)が、輸血必要性 (1.4% vs 1.8%; RR, 0.80; 95% CI, 0.55-1.16)と、看護施設への退院移送率 (0.2% vs 0.3%; RR, 0.79; 95% CI, 0.35-1.76)は同様。
コストはロボット手術が高く、症例あたり $2189 (95% CI, $2030-$2349) 多い。

竹中平蔵を代表とする、上げ潮派の意見が強くなってきて、米国からの要望を国防上もそのまんま聞き入れようとする世の風潮のなか・・・ 米国企業からのゴリおしで、高コストだけで、患者にベネフィットのないロボット手術が日本国内でも盛んに行われようとしている・・・そういう危惧を、医療各領域で感じる

感冒:テロメア長短ければ、かぜウィルス感染しやすい



テロメア長短縮例では、感冒ウィルスであるライノウィルス暴露後、風邪発症しやすい

テロメア長標準偏差未満では、ライノウィルス39の標準量暴露後、22%から38%感染リスク増加。急性臨床上発症とテロメア長の相関はさほど強くない 。しかし、加齢とともにその影響は増加する可能性あり。

"Association between telomere length and experimentally induced upper respiratory viral infection in healthy adults"
Cohen S, et al
JAMA 2013; 309: 699-705.


白血球、特に、CD8CD28ーT細胞におけるテロメア長短縮例での、上気道感染抵抗性低下と臨床的症状を若年・中年成人で調査

2008-2011年、テロメア長をPBMCとT細胞サブセット(CD4、CD8CD28+、CD8CD28-)で評価

主要アウトカムは、ウィルス出現、もしくはウィルス特異的抗体価4倍増加を感染都市、臨床症状を評価

感染率、臨床症状出現率は、69%(n=105)、22%(n=33)

テロメア長短縮は、暴露前ウィルス特異的抗体、住民統計学的要素、避妊薬使用、季節、BMIと無縁に、感染オッズ増加と相関x
(PBMC:  テロメア長  1-SD 減少毎オッズ比[OR], 1.71 [95% CI, 1.08-2.72]; n = 128 [最短三分 感染率 77% ; 中位  66%; 最長 57%]; CD4: OR, 1.76 [95% CI, 1.15-2.70]; n = 146 [最短三分位 感染 80% , 最長 71% 54%]; CD8CD28+: OR, 1.93 [95% CI, 1.21-3.09], n = 132 [最短三分位 感染 84% ; 中位 64%; 最長 58%]; CD8CD28−: OR, 2.02 [95% CI, 1.29-3.16]; n = 144 [最短三分位 感染 77% ; 中位 75%; 最長 50%])

CD8CD28-で、唯一、テロメア長短縮ほど臨床症状リスク増加関連が見られた。
(OR, 1.69 [95% CI, 1.01-2.84]; n = 144 [最短三分位 感染 26%; 中位 22%; 最長 13%])

CD8CD28-テロメア長と感染の相関は加齢とともに増加  (CD8CD28− telomere length × age interaction, b = 0.09 [95% CI, 0.02-0.16], P = .01, n = 144)


抑制的T細胞(CD8+CD28-)のみが臨床症状と関連するという意義・・・無学なためよくわからないが、テロメア長の最短3分位のうち25%程度が感染症状発症し、最長3分位では13%発症という差が認められた。
CD28がテロメアとの関連性のある分子で、テロメラーゼ酵素のupregulationと関連し、細胞の老化を防ぐと解説されている。

老化という側面で、テロメア短くなるという現象と風邪引きやすくなる現象は関連性があるということか・・・

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