2012年2月28日火曜日

ω3脂肪酸血中濃度が低いと2年分に相当する脳の構造的加齢現象が生じる

ω3脂肪酸血中濃度が低いと2年分に相当する脳の構造的加齢現象が生じる

Red blood cell omega-3 fatty acid levels and markers of accelerated brain aging
Neurology February 28, 2012 78:658-664

赤血球中DHAレベル最小4分位(Q1)は、他の4分位(Q2-Q4)比較において、トータルの脳の減少があり、さらに、白質のhyperintensity volumeの増加が見られ、多変量解析にて総脳容積と持続下相関が見られる(model A:基本モデル<年齢・性別・教育レベル補正>: β ± SE = −0.49 ± 0.19; p = 0.009, 0.12 ± 0.06; p = 0.049)

DHAとω-3指数(赤血球DHA+EPA)レベル(Q1 vs Q2+4)では、model Aで、有意に視覚記憶スコア低く   (β ± SE = −0.47 ± 0.18; p = 0.008),、遂行能力が低く (β ± SE = −0.07 ± 0.03; p = 0.004)、抽象的思考弱い (β ± SE = −0.52 ± 0.18; p = 0.004)
そして、他のすべてのモデルでも有意差が残る(model B: APOE ε4 、血中ホモシステイン、 model C:運動・BMI、model d:従来の血管リスク要素補正)

白人が主で他の人種では検討されてない。


研究基金:National Heart, Lung, and Blood Institute and the National Institute on Aging

フットボールによる高体温症:体の大きなラインマン、熱指数警戒レベル以下でも注意必要

1994年から2009年の間に、熱関連フットボール死が3倍になったと University of Georgeaの研究者の発表

中学高校生がfatal heat injuryに最も弱いことを認識すべきで、ジョージア州は6倍にもなっている。気候データベースと、研究期間中の高体温症死亡58名の身長体重、体組成記録を調査。

死亡はUSの東四分円、時期は8月に集中。朝に半数死亡が生じ、高湿度が多い。アスリートは一般に大きく(BMI>30が79%)で、linemanのポジションが86%とほとんど。気象条件は異常に暑く、そして湿気があることが死亡と関連。さらに、死亡全症例で、WBGTを用いたAmerican College of Sports Medicine定義の高値・極端値に該当し、heat index(熱指数)によるthreat level(警戒レベル)以下であった。

着衣分(フルフットボールユニフォーム、練習用ユニフォーム、スポーツ)に基づく、フットボール特有な閾値の検討が必要 。アスリート着用のユニフォームからのデータにマッチさせた閾値が必要で、スポーツと一括するのは問題。full padのアスリートは少なすぎるので結論づけ出来ない。
 コーチは注意深く、プライヤーをモニターし、特に、体の大きなラインマン、プレシーズン早期の湿潤、"high"・"extreme"WBGT環境では注意が必要。

A retrospective analysis of American football hyperthermia deaths in the United States.Grundstein AJ et. al.
Int J Biometeorol. 2012 Jan;56(1):11-20. Epub 2010 Dec 15.




解説:
http://news.uga.edu/releases/article/morning-temperatures-thought-to-play-a-role-in-football-deaths-022712/

米国心理学研究:上層階級は非倫理的行為に走りやすく、詐欺的・他者からの奪取行為・強欲傾向が強い

マスメディアがいっぱい取り上げてる。
google news: http://bit.ly/xZnFxW



ベ ンツやBMW・トヨタプリウスのような高級車に乗る人は運転中法律を破りやすい・・など、上層階級はウソをつきやすく、インチキをしやすいという7つのシ リーズ研究をUniversity of California Berkeley や University of Toronto の心理学者が研究発表。


Higher social class predicts increased unethical behaviorPaul K. Piffa,, Daniel M. Stancato, Stéphane Côté, Rodolfo Mendoza-Denton, and Dacher Keltner

PNAS February 27, 2012 

7つの研究で、実験的な方法、自然観察法を用い、上層階層の行動が、下層階層に比べ非倫理的であるかを示した研究。

study 1、2は、上層階級が如何に運転中違法行為をするか、下層階級と比較。

フォローアップ検査室検査で、上層階級は、非倫理的意思決定傾向となってるか(study 3)、
さらに他者から価値あるものを奪う傾向にあるか (study 4)
ネゴシエーション上ウソをつくか(study 5)
賞金獲得チャンス増加のため詐欺的行為を働くか(study 6)
そして労働時非倫理的行動をとるか (study 7)
以上を下層階級と比較。


mediator や moderator dataにより、上層階級者の非倫理的傾向が示され、強欲(greed)傾向が強い。



社会階層が固定している国との比較したらどうなるのだろう。米国のような社会階層が流動的な社会では上層階級を目指すなら強欲的・私利的にならざるえないのでは?

米国の金持ちは非倫理的行いの言い訳として、 慈善活動や一部反捕鯨などへ金を使い、偽善行為を尽くす・・・そういう考えも成り立ちそう。


日本のマーケット市場主義者たちも似たような傾向があるような・・・ 法律を犯すことをさほど悪と考えてない、エルピーダにおけるインサイダー役人、ほりえもん・・・

PCI後心筋梗塞判断閾値: トロポニン > CK-MB

PCI後のトロポニンCKMB増加は、1年後の死亡率と関連。同じイベント頻度・死亡率閾値に関しては、CKMBよりトロポニンの方がより閾値が高い。





なぜ、この問題が論文で検討されたか・・・"Troponin Criteria for Myocardial Infarction After Percutaneous Coronary Intervention"
Myocardial Infarction Due to Percutaneous Coronary Intervention
Abhiram Prasad, M.D., and Joerg Herrmann, M.D.
N Engl J Med 2011; 364:453-464 February 3, 2011
Do we need to routinely screen patients for periprocedural myocardial infarction?
Which patients should be observed in the hospital for a prolonged period after periprocedural myocardial infarction?
What are the therapeutic implications, and what should we tell patients who sustained a periprocedural myocardial infarction despite an otherwise successful procedure?
Is a periprocedural myocardial infarction prognostically equivalent to a spontaneous myocardial infarction?
Is periprocedural myocardial infarction a valid end point in clinical trials? 
上記PCI後心筋梗塞に関わる疑問が臨床実地上出現しているから・・・



Troponin Criteria for Myocardial Infarction After Percutaneous Coronary Intervention
Victor Novack et. al.
Arch Intern Med. Published online February 27, 2012. doi:10.1001/archinternmed.2011.2275


心筋梗塞のユニバーサル定義は、CK-MB区画(CKMB)もしくはトロポニンが用いられている。その基準は、PCI後の診断としては、トロポニンを用い、正常参照上限値の99パーセンタイルの3倍超をもって指標としている。

EVENT (Evaluation of Drug Eluting Stents and Ischemic Events)の一部を用い、1年後死亡率とPCI後CKMBあるいトロポニン術後評価検討したもの

心筋梗塞はCKMBクライテリアで7.2%、トロポニンクライテリアで24.3%発症。

CKMBとトロポニンは持続指標として、1年後死亡率と相関  (ハザード比 [HR], 1.38; 95% CI, 1.22-1.55 vs  1.35; 95% CI, 1.18-1.54) 


3倍超での死亡率影響は、トロポニンよりCKMBの方が大きい (補正 HR, 2.5; 95% CI, 1.5-4.vs 1.7; 95% CI, 1.1-2.5)

トロポニン閾値を20倍超とした場合、CKMB 3倍と同程度の頻度(7.0%)及び死亡率リスク (補正 HR, 2.6; 95% CI, 1.6-4.3)


トロポニンと1年死亡率回帰スプラインモデルで、死亡率ハザードはトロポニン3倍で1.02、20倍で1.67となる。





骨粗鬆症薬物:アドヒアランス改善のための電話動機づけインタビューは有効性乏しい

慢性疾患に関して薬物へのアドヒアランスが問題。アドヒアランス改善のための介入が試みられているが少ない。電話による動機づけインタビュー介入に関し、骨粗鬆症の薬剤アドヒアランス改善するかの研究。


Osteoporosis Telephonic Intervention to Improve Medication Regimen Adherence
A Large, Pragmatic, Randomized Controlled Trial
Daniel H. Solomon et. al.

Arch Intern Med. Published online February 27, 2012. doi:10.1001/archinternmed.2011.1977




被験者は“メディケア”保険者主導的プログラム(保険者が医療阻害的な動きをする日本とは対照的) 

医療というのは患者の意志が最優先されるべきものであり、医療機関からの働きかけは最小限であるべきという考えがある一方、こういった、医療機関から患者への積極的働きかけというのがどの程度是認されるか?在宅酸素や薬物の存在がクリティカルである患者が来院しない場合は、やはり、連絡を取らざるえない場合もある。


患者への電話というのは本人への事前了解があれば良いのだろうが、運用次第では、受診の半強制となる場合がある。

高齢化率極限の地域で開業していると、移動手段の問題が大きい。限られた輸送手段の中で、自覚症状のない病態、高血圧・糖尿病などは後回しで、腰痛・頚肩痛などを優先ってのは当たり前なのかもしれない。また、医療リソース過剰地域では、輸送サービス合戦となっているところも・・・。患者のニーズを無視した状況も生まれかねない状況となっている。


医療アドヒアランスに関する、患者宅への医療機関側の働きかけ、医療行政の方で、なんらかのガイドラインなど提示されてしかるべきと思うのだが・・・

肥満臨床下生活習慣指導:腹囲を少ししか減らせず、効果は男性に限られる

Trial of Prevention and Reduction of Obesity Through Active Living in Clinical Settings
A Randomized Controlled Trial
Robert Ross et. al.
Arch Intern Med. Published online February 27, 2012. doi:10.1001/archinternmed.2011.1972


肥満減少に対し、健康食とともに、運動を行うことの有効性は確立している。しかし、プライマリケアの状況での肥満減少に対する有効なライフスタイル戦略のtranslationについての知識は乏しい。

2年間習慣化運動・食事プログラムの肥満減少臨床実践内に組み込み、その有効性を検討

通常ケア(n=241):肥満減少戦略としてライフスタイルについての医師からの助言
習慣介入(n=249) :健康食+運動促進に関して健康教育専門家からの個別カウンセリングを加える

プライマリアウトカムはウェスト径

396名の被験者でトライアル完遂 80.8%

介入群で、通常ケアに比べ、有意なウェスト径への影響を認め(P<0.001)、24ヶ月持続する(平均[SE], -0.9[0.4] vs 0.2 [0.4] cm; P=0.05)

セカンダリ解析では、有意にウェスト径変化は、男性(P = .009)および女性 (P = .02)で認める。

男性において、24ヶ月時点でのウェスト平均(SE)減少は習慣介入群が通常ケア群より大きく (–1.6 [0.6] vs 0.1 [0.6] cm; P = .049)、女性においては、行動介入群で、通常ケアに比較し、ウェスト径の差と6ヶ月、12ヶ月時点で相関性を認める(P ≦ .01) が、24ヶ月では認めない (P = .10)


結論: 2年研究で、肥満に対し、臨床状況下で習慣への介入によりウェスト径をほんの少し減少、しかし、介入効果は男性に限られる。

 



“メタボ検診”義務化したが、行政側&誤用(御用)専門家たちが一方的にその効果に関して自画自賛し、さらに、その範囲の拡大を画策しているというか、決めつけている。


メタボ健診:肥満以外も指導 血圧や血糖、検査値高めなら対象
http://mainichi.jp/life/today/news/20120228ddm008040066000c.html

見直しでは、腹部肥満を第1条件とする現制度の枠組みは変えないが、非肥満者への対応を医療保険者や市町村などに追加で求める予定。国内外の研究で は、非肥満者でも血圧や血糖などの値が高めの場合、心筋梗塞(こうそく)など心血管疾患の危険性が高まることが分かっている。このため、現制度では抜け落 ちてしまう非肥満者への対応が求められていた。  また検討会は、腎臓病の検査値「血清クレアチニン」を、特定健診の検査項目に加える方向で合意した。慢性腎臓病患者には肥満でない人も多く、現制度では腎機能低下の兆候を見落とす恐れがあった。
メタボ対策に重きを置きすぎたため日本は国際CKD年を無視した。その愚策・厚労省が、今頃、“血中クレアチニン値”を検診項目に入れ込んできた。

世界に冠たる慢性腎臓病国・・・日本 2011年 08月 15日
そのことは、遅すぎたとは言え、まぁ評価しよう。


腹囲にこだわり続けている、強権的・非科学的日本の検診制度は今後も続く・・・
なんという国なのだろう・・・
お恥ずかしい厚労省検診・保健指導”腹囲基準”問答 H24.2.3

高齢者インフルエンザワクチン有効性:バイアス除去で死亡率単独では有効性示せない

Estimating Influenza Vaccine Effectiveness in Community-Dwelling Elderly
Patients Using the Instrumental Variable Analysis Method
     Kenny Wong; Michael A. Campitelli; Therese A. Stukel; Jeffrey C. Kwong
     Arch Intern Med Published online February 27, 2012.
     doi:10.1001/archinternmed.2011.2038
     http://archinte.ama-assn.org/cgi/content/abstract/archinternmed.2011.2038?etoc


オンタリオの行政データベースとリンクして、65歳超の地域住民のインフルエンザワクチンと全原因死亡率を検討

1262180人・インフルエンザシーズン観察で、ロジスティック回帰にて、インフルエンザ時全原因死亡率補正オッズ比 0.67(95% CI、0.62-0.72)、インフルエンザ非流行時のインフルエンザ期間後0.85(0.83-0.86)で、バイアスの存在が示唆するも、Instrumental Variable(IV) analysisでは、インフルエンザ時期で補正オッズ比0.94(95%CI、0.84-1.03)、インフルエンザシーズン後は1.13(1.07-1.19)。

肺炎・インフルエンザによる入院・死亡の複合検討に対し、ロジスティック回帰により、補正オッズ インフルエンザシーズンオッズ比 0.74(95%CI、0.70-0.78)、インフルエンザシーズン後0.88(0.87-0.90)
一方、IV analysisでは補正オッズ比は0.86(95%CI、0.79-0.92)、1.02(0.97-1.06)

インフルエンザワクチンは肺炎・インフルエンザ入院と全原因死亡複合に対し減少効果あるが、死亡率単独では減少効果示せない。
標準モデル化に比較し、IV analysisはワクチン有効性に対し、よりバイアスの少ない推定が可能である。



操作変数法(IV)について多くの解説が検索される。http://www.econ.hit-u.ac.jp/~bessho/lecture/06/econome/060616IV1.pdf 高齢者の重大アウトカムへのインフルエンザワクチン有効性に関し、不適切なバイアスの存在が議論されていた。
Hottes TS, Skowronski DM, Hiebert B, Janjua NZ, Roos LL, et al. (2011) Influenza Vaccine Effectiveness in the Elderly Based on Administrative Databases: Change in Immunization Habit as a Marker for Bias. PLoS ONE 6(7): e22618. doi:10.1371/journal.pone.0022618

noteへ実験的移行

禁煙はお早めに! 米国における人種・民族・性別による喫煙・禁煙での死亡率相違|Makisey|note 日常生活内の小さな身体活動の積み重ねが健康ベネフィットをもたらす:VILPA|Makisey|note