2012年3月23日金曜日

日本の国民健康栄養調査は今のままじゃ役立たないという批判への反論 (the Lancet)


日本の国民健康栄養調査に関する辛辣で適切な批判があった。

The value of the National Health and Nutrition Survey in Japan
The Lancet, Volume 378, Issue 9798, Pages 1205 - 1206, 1 October 2011 

日本人の食事に世界が注目しているが、 日本の国民健康栄養調査( National Health and Nutrition Survey)が問題。

1950年代の塩摂取17gにもおよぶ地域があり、1972年までに 14.5gまで低下。  
食事の西洋化が進み、1975年から2009年のデータでは、脂肪摂取平均は21%から26%へ増加するも、年齢補正死亡率は同時期減少。 飽和脂肪酸や他の脂肪酸摂取のデータ無く、死亡率の食事内容変化の影響を正確に説明するのは不可能。

1990年代後半から急激に糖尿病数増加した。その後2009年には2210kcalから1861kcalへ食事摂取量減少し、炭水化物摂取量も減少した。糖尿病増加の解釈はカロリー・炭水化物過剰の原因になるか不明。国民健康栄養調査からは、問題点を除外出来ない。

生データへのアクセスできるものがなく、計算結果のみの公表であるのも問題。

政府報告のため、調査方法記載がpoor、若干改善の傾向はあるものの、quality controlのステートメントがない。
この調査は歴史的に家庭での調査であり、食の多様性に対し対応できてない。

現行の方法で調査を続ける限り、価値あるリソースであり得ることはないだろう


 対し、 反論。


Towards a better National Health and Nutrition Survey in Japan
The Lancet, Volume 379, Issue 9821, Page e44, 24 March 2012 

・横断研究観察なのだから、自ずと限界がある
・回答率は60%でやや低いという指摘には、常に努力をしており、研究データの質・量とも改善傾向にあり努力をしている。
・政府統計に関し、二次データは研究者に公開している。 Survey primary dataは、研究者たちにフォーマルに、secureに遂行している。ラウンドテーブル討論の場を開いている。


 ごちゃごちゃ言う前に、生データを公開しろ!・・・といいたいけどね。

ニュージーランド:重症感染症増加と貧困層

Omran's health transition theory、epidemiological transition: 疾患や治療のイノベーションにより突然・急激な住民人口増加事相出現し、その後、死亡率低下し、出生率も低下し・・・高齢化となる。先進国では、非感染性疾患が主な健康脅威というのが普通。ニージーランドはGNPでは先進国。だが、キャンピロバクター、急性リウマチ熱、小児肺炎、髄膜炎、皮膚疾患といった感染症比率が高い。
結核、急性リウマチ熱、髄膜炎感染症、皮膚疾患が不均一分布。2009年H1N1では、入院率はヨーロッパ系民族・その他比較で、Māoriは3.0倍、Pacific peopleは6.7倍。




感染性疾患が入院原因の中で最大。1989-93年では、急性入院の20.5%、2004-2008年では26.6%と増加が見られる。
民族・社会的不均等性が感染症弛緩リスクで見られる。2004-2008年年齢標準化rate ratioは、ヨーロッパや他のグループ比較で、 Māori (indigenous New Zealanders)で 2.15 (95% CI 2.14—2.16)、 Pacific peopleで 2.35 (2.34—2.37)。
社会経済的5分位最貧困層は非貧困層に比べ2.81(2.80-2.83)
これら不均衡は最近20年で増加し、特に、Māori や Pacific peopleで目立つ。



Increasing incidence of serious infectious diseases and inequalities in New Zealand: a national epidemiological study
The Lancet, Volume 379, Issue 9821, Pages 1112 - 1119, 24 March 2012 

アスピリンと癌

Rothwellらが、連日アスピリン使用による癌予防・治療可能性に関するエビデンス・ベース増加にくわえた知見

1) 51のランダム化トライアルで、心臓発作などの血管イベント予防
Short-term effects of daily aspirin on cancer incidence, mortality, and non-vascular death: analysis of the time course of risks and benefits in 51 randomised controlled trials
The Lancet, Early Online Publication, 21 March 2012
長期がん死亡リスクへの役割は報告されていたが、3年程度の短期効果としてのがん発生・がん死亡率減少確認、長期使用で頭蓋外出血のリスク減少、死亡率減少、癌予防としての役割など
・ 約1/4ほどのがん発生減少、男性 23% 女性 25% 3年以上
・ アスピリン5年以上で、37%がんリスク減少
・ 副作用は長期使用で減少


2) 癌転移への効果
Effect of daily aspirin on risk of cancer metastasis: a study of incident cancers during randomised controlled trials
The Lancet, Early Online Publication, 21 March 2012
大規模トライアル(17285名登録)で、アスピリン使用は、対照に比較して、遠隔転移を予防し、がん早期死亡減少をもたらすことを見いだした。特定のがん治療(腺癌、特に診断時転移無し症例)に関して手助けになる。
・ 遠隔のがんリスク減少 36%
・ 大腸・肺がん・前立腺癌(いづれも腺癌)減少 46%
・ 膀胱・腎がん減少 18%
・ 腺癌死亡率 50%

3) Lancet Oncologyの転移への効果(システマティック・レビュー)
Effects of regular aspirin on long-term cancer incidence and metastasis: a systematic comparison of evidence from observational studies versus randomised trials
The Lancet Oncology, Early Online Publication, 21 March 2012
観察研究では、いくつかの癌の長期リスクと遠隔転移減少を示した。厳格な方法論的手法でもRCTから得られた所見と一致。しかし、感度は、アスピリン使用の詳細記録・分析により依存する部分があった。

NGSP、JDSに関する混乱 ・・・ 糖尿病学会と行政立案者は同一人物が関与してるのに・・・


事務連絡「平成24年度における特定健康診査及び特定保健指導に関する記録の取扱いについて」に関するQ&A
http://jhep.jp/jhep/sisetu/pdf/kosei_jimurenraku3.pdf
 (2)事務連絡本文1項の「当事者間で特段の取り決めがないかぎり」、特定健診に係る登録衛生検査所等から医療機関等へのHbA1cの報告はJDS値とする、とされているが、この「特段の取り決め」とはどのようなものを想定しているのか。
A.
1.日本糖尿病学会の方針では、平成24年4月1日より、日常臨床におけるHbA1c検査の結果表記については、JDS値とNGSP値の併記となることとされているが、一方で、特定健診に関する保険者への報告についてはJDS値により行うこととしており、日常臨床と特定健診の保険者への報告との間で異なる取扱いが行われることとなることから、厳に正確なデータの授受が当事者間で行われる必要がある。
2.こうしたことから、HbA1cの表記について、平成24年度においては、特定健診・保健指導におけるデータの取扱いは、従来通りJDS値を用いることとし、特定健診に係るHbA1c検査を医療機関等から外部委託された登録衛生検査所等においても原則としてJDS値を用いることとしている。
 


昨年12月にまだこういう議論をしてるなんて・・・

“GSP値を測定できる計測機器が保険診療用の器具として認められるのか否か”すら決まってないそらおそろしさ。



 (お恥ずかしい厚労省検診・保健指導”腹囲基準”問答(H24.2.3)
  ↑
ここでえらそうに、ご託を述べてる門脇 孝氏(東京大学大学院 医学系研究科糖尿病・代謝内科教授)は、糖尿病学会のお偉いさんだが、想像力すらないのだろうか?



2011年12月2日 実務担当者による特定健診・特定保健指導に関するワーキンググループ議事要旨(第1回)
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000025a9v.html

“登録衛生検査所からの結果報告がNGSP値だけの場合、JDSへの変換作業はどの機関が行うのか。登録衛生検査所からの結果報告がNGSP値だけの場合、JDSへの変換作業はどの機関が行うのか。”
“事務連絡案の書きぶりでは、誤解を招く可能性がある。平成24年度の特定健診の結果報告に関してはJDS値で報告することを徹底するよう書きぶりには注意していただきたい。”

両腕血圧差と生存率


The difference in blood pressure readings between arms and survival: primary care cohort study
BMJ 2012; 344 doi: 10.1136/bmj.e1327 (Published 20 March 2012) Cite this as: BMJ 2012;344:e1327


230名のプライマリケア高血圧治療をうけてる被験者

血圧 10mmHg以上 24%(55/230)、 15mmHg以上 9%(21/230) ; 腕間差は 全原因死亡率と相関  (補正化ハザード比 3.6, 95% 信頼区間 2.0 ~ 6.5 、 3.1, 1.6 ~ 6.0,)

死亡リスクは、心血管疾患既往のない対象者において、収縮期 10mmHG、拡張期 15mmHg以上の差で増加   (2.6, 1.4 ~ 4.8 、 2.7, 1.3 ~ 5.4)

拡張期血圧腕間差 10mmHg以上の差は、心血管イベント・死亡リスク増加と関連



肥満は心臓だけで無く、頭にも悪い。特に60歳代・・・

韓国の横断研究で、60歳以上、250名を体組成測定、腹部CT、認知機能評価

多変量ロジスティック回帰分析で、70歳未満での、肥満と内臓脂肪領域量は認知機能低下と関連する [odds ratio (OR) 2.61, 95% 信頼区間 (CI) = 1.21–6.01、P= 0.015 、OR: 2.58, 95% CI = 1.001–6.62、P=0.045)] が、70歳以上は相関せず

The relationship between visceral adiposity and cognitive performance in older adults
Age Ageing (2012) doi: 10.1093/ageing/afs018 First published online: March 22, 2012




肥満は心臓だけで無く、頭にも悪い。特に60歳代・・・




この報告に、メディアが食いついている

http://www.bbc.co.uk/news/health-17465404

特発性肺線維症:FVC減少 10%以上が正確性を担保した指標である



特発性肺線維症において、どの程度のFVC減少に関して、その頻度、その後の障害や死亡率に関与するのか?



ベースラインからのFVC10%以上減少を2つの方法で計算
・ 相対的減少:relative decline of 10% (eg, from 60% predicted to 54% predicted)
・ 絶対的減少:absolute decline of 10% (eg, from 60% predicted to 50% predicted)


“FVC 10%以上の減少”は相対的変化を用いた方が大きい

FVC減少・両計算法とも、2年時点での無移植生存率に同様に正確性があり、ベースライン特性補正後も有意差あり。
絶対的方法は5%以上の減少でも予測性がある。


Interstitial lung disease
Original article
Relative versus absolute change in forced vital capacity in idiopathic pulmonary fibrosis
Thorax doi:10.1136/thoraxjnl-2011-201184 

FVC相対的変化を利用することで、10%以上を同定することで、予後正確性を犠牲にすること無く、減少変化を最大に同定できる。FVC減少 5%以上の基準は恒常的事実ではない。
診療上も、臨床トライアル上も重要な所見





たとえば、・・・
Pirfenidone in idiopathic pulmonary fibrosis
Eur Respir J 2010; 35: 821–829
ベースラインでVCが2400mlで、ΔVCはせいぜい80mlの改善程度

COPD 抗エラスチン自己抗体仮説 ・・・


COPDのAntielastin autoimmunity :抗エラスチン自己免疫仮説





COPD患者レベルで検討し、エラスチン特異的末梢T細胞反応をサブグループ検討

結論としては、COPD患者レベルでは、エラスチンへの全身性自己免疫反応同定できず
しかし、collagen-V介在自己免疫が喫煙者サブグループで増加し、COPDの病因に関与?

Chronic obstructive pulmonary disease
Original article
Antielastin B-cell and T-cell immunity in patients with chronic obstructive pulmonary disease
Thorax doi:10.1136/thoraxjnl-2011-200690

COPD患者で、エラスチンへの抗体価増加せず、むしろ、重症COPDでは減少(P<0.001)
低抗エラスチン抗体価は、CT判断肺気腫群でも認めあれた。
エラスチン特異的INFγ介在TヘルパーT細胞反応はCOPD有無に関わらず、喫煙者群で認められなかった。コラーゲン I-介在 T-細胞反応も同様。
一方、喫煙対照群・COPD患者群で、非喫煙者群に比べ抗コラーゲンV反応は有意に増加(p=0.008)
 コラーゲン  V-介在 T-細胞反応は、COPDと喫煙対照群で区別出来ない


COPD病態形成上のヒントにもなってない・・・

noteへ実験的移行

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