2012年4月6日金曜日

日本:2009年→2010年自殺減少:政府キャンペーンの効果との主張? Lancet掲載


Suicide in Japan
The Lancet, Volume 379, Issue 9823, Pages 1282 - 1283, 7 April 2012
 Yutaka Motohashi
"The key to successfully reduce the rate of suicides in Japan is thus the use of multidisciplinary and interprofessional approaches to develop comprehensive suicide prevention measures and implement them on a broader scale."


秋田大学医学部 “本橋 豊”氏の引用している自叙文献

Motohashi Y, Watanabe N. Suicide can be prevented: planning and action of suicide prevention by health promotion approach. Saitama: Spika-Shobou, 2007. (in Japanese)

“自殺予防できる”というすごい自信



 2010年3月から9月は、テレビ広告・大衆キャンペーンを張った後、2009年4月から10月に比べ、2010年4月から10月に、月あたり 自殺、7.3%、5.3%減少したと、主張。
田舎より都市部の減少は少なく、田舎より都市部対策を強化せよと・・・



公衆衛生の先生なのだが、すごい断定・・・


リーマンショックは2008年9月発生、故に、2009年頃、日本に多大なる影響をもたらしている。そして、“日本経済は、2009年4〜6月期に実質GDPがようやく前期比プラスに転じ、リーマンショック以前から続いていたマイナス成長から実に5四半期ぶりに回復”している。”

共役要素補正としては重要なはずだが、十分な解析を行った後の断定なのだろうか?

医療過誤訴えに対応するコスト:defense cost 診療科間比較

医療訴訟、即、医療側敗訴=医療側支払いってわけではない。訴えられた時点で、民事訴訟では敗訴側が裁判コストを弁済するといっても、医療側も、間接・直接コストが生じる。

米国の場合なので、詳細は不明だが、医療過誤訴えがあった場合、それに対応するコストを、勝訴・敗訴ともに分析


 Defense Costs of Medical Malpractice Claims
N Engl J Med 2012; 366:1354-1356 April 5, 2012

 Mean Defense Costs of Paid and Unpaid Malpractice Claims, According to Physician Specialty.
 医療過誤訴訟の訴え、則ち、defense costに関し、米国内データは少ない。
専門家毎のばらつきに関しても未知だった。このdefense costは米国内では医療コスト引き上げと直結していることは米国内では明らか。


訴えに対し、支払いコストと無支払いコストを分けて、防御コストとして表記。
平均(±SD)コストは$22,959±41687。
医療側敗訴(支払いあり)と医療側勝訴(支払い無し)場合、それぞれ、$45,070 vs. $17,130, P<0.001

損害賠償を求められなかった場合の平均defense costはあらゆる分野で少なかったが、それでも、分野によりばらつき、腎臓では$7,283から産科の$25,073までばらつきがある。
損害賠償有責有無間の相関は少ないが相関性あり (0.39).

損害賠償支払いとなった場合のコストは高いが、結果的には、損害賠償がないとされた場合もかなりのコストに登っている。さらに、専門科目毎のコストのばらつきがあり、過誤訴えの頻度、サイズは必ずしも同様でない。

このコストを減らすことは、保険者、医師にとっても、節約になる。






日本では、曖昧なままにされているが、間接的なコスト増加となっている。たとえば、産科事故に対する異常なまでの批判は、結果的に産科医療を衰退させ、産科医の寡少性を進行させ、人材コストの高騰をまねている。

臨床的レビュー:原発性副甲状腺機能亢進症診断・管理

Clinical Review
Diagnosis and management of primary hyperparathyroidism
BMJ 2012; 344 doi: 10.1136/bmj.e1013 (Published 19 March 2012) Cite this as: BMJ 2012;344:e1013

原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)は、高カルシウム血症として、日常臨床では、最も多い原因である。悪性、及び二次性のものを除外必要。


PHPTは、インタクトPTH増加、あるいは、軽度から正常高値でも、総・イオン化カルシウム高値の場合に考慮すべき、PHPT類似状況を除外が必要。


医学的サーベイランスは、血中カルシウム、クレアチニン、BMD(3カ所)測定 1-2年毎



選別患者・副甲状腺切除ガイドラインに合致しない患者向けマネージメントオプションは、ビスフォスフォネート、エストロゲン補充もあり、カルシウム受容体作動薬:calcimimetic cinacalcet(商品名:レグバラ)は血中カルシウムを減少させ、副甲状腺値を正常化する(e.g. 解説 http://www.my-pharm.ac.jp/~kishiba/rep8.pdf)。

術前局在診断のためのSestamibi imagingは、PHPT診断除外に診断的ツールではない。


二次性副甲状腺機能亢進症(持続的PTH分泌刺激)は、ビタミンD低下やCKDにより主に生じる。



 高カルシウム血症は中枢神経症状無ければ無症状。  血中カルシウム増加が急激な場合に顕性となる場合がある。尿中へカルシウム・水、他の電解質の移行に伴う脱水症状、ECF内のイオン化カルシウム濃度増加に伴う膜電位増加による症状。尿中のカルシウム不足はアニオンと水不足をもたらし、集合管CaR刺激故の腎性尿崩症ももたらす、バソプレシンによるapaporin water channnelの輸送機能への影響を与える。故に、多尿・多飲を生じる。脱水に鈍感な場合、神経・神経筋症状、疲労、うつ、集中力低下、記憶、認知機能、混乱、混迷などの症状。胃腸運動機能障害に基づく症状、便秘、吐気、嘔吐。続発性膵炎など・・・


開業医をしていると、カルシウム測定すぐ忘れてしまう。開業当時立て続けにPHPTを見つけたことも忘れていた。一方、がん患者では、HHM、LOHが頭にあるので、比較的忘れないのだが、腎不全ではないCKD程度から副甲状腺機能亢進症を・・・というのは、念頭になかった。

サプリメントの宣伝が行き届いているこの時代、外来で、カルシウムチェックをを行う必要性を感じる。


保護的人工換気遵守は、患者死亡率と直結



保護的人工換気をしないと、死亡率悪化させますよ。

具体的には半分遵守で4%、絶対遵守で8%程度死亡率改善のはず・・・


Lung protective mechanical ventilation and two year survival in patients with acute lung injury: prospective cohort study
BMJ 2012; 344 doi: 10.1136/bmj.e2124 (Published 5 April 2012) Cite this as: BMJ 2012;344:e2124

 13のICU(4つの病院)の前向きコホート研究

2年後、311名、64%死亡

換気期間・他共役要素補正後、lung protective ventilationアドヒアランス毎、2年死亡リスク3%ずつ改善  (hazard ratio 0.97, 95% 信頼区間 0.95 to 0.99, P=0.002).

アドヒアランス無しに比べ、推定絶対リスク減少率は、50%アドヒアランスの場合、2年時点で4.0%
 (0.8% to 7.2%, P=0.012)、100%アドヒアランスの場合7.8% (1.6% to 14.0%, P=0.011)




一回換気量:性別・身長ベース計算の6mL/Kg体重 及び プラトー圧(吸気停止後0.5秒後の気道内圧測定) 30cm水柱以下(vs 12ml/kg体重、プラトー圧 50cm水柱以下比較)

Ventilation with Lower Tidal Volumes as Compared with Traditional Tidal Volumes for Acute Lung Injury and the Acute Respiratory Distress Syndrome ;The Acute Respiratory Distress Syndrome Network;N Engl J Med 2000; 342:1301-1308May 4, 2000


単純性急性虫垂炎治療: 抗生剤 vs 虫垂切除

単純性急性虫垂炎治療: 抗生剤 vs 虫垂切除

Safety and efficacy of antibiotics compared with appendicectomy for treatment of uncomplicated acute appendicitis: meta-analysis of randomised controlled trials
BMJ 2012; 344 doi: 10.1136/bmj.e2156 (Published 5 April 2012) Cite this as: BMJ 2012;344:e2156


成人・単純性急性虫垂炎に対するRCT

プライマリアウトカム測定は合併症

4つのRCT(900名 ;抗生剤 470名、虫垂切除 430名)がクライテリア合致
抗生剤は、アモキシシリン/クラブラン酸 3g/日 (90kg以上は4g/日) 48時間
1年後、抗生剤治療群は、成功率 63%(277/438)

合併症のメタアナリシスは、虫垂切除比較で、31%のリスク減少
(risk ratio (Mantel-Haenszel, fixed) 0.69 (95% confidence interval 0.54 to 0.89); I2=0%; P=0.004).

ランダム化後2つの介入を交叉させた分を除外後の二次解析では、抗生剤治療群の方が、39%リスク減少有意
 (risk ratio 0.61 (0.40 to 0.92); I2=0%; P=0.02)

再入院後虫垂炎切除となった65名のうち、9名が穿孔、4例が壊疽性虫垂炎

治療有効性、滞在期間、合併症あり虫垂炎発症リスクに関して有意差認めず
結論としては、単純性虫垂炎患者に対して、初期治療として、抗生剤投与は有効で、安全。初期抗生剤治療のメリットを考えれば早期単純性虫垂炎の治療として、まず行う治療法と考えられる。


論文の序文に、虫垂炎の20%のみが“complicated appendicitis”という記載、則ち、80%程度は単純性虫垂炎。本来、行われなくても良い、虫垂切除がなされている可能性がある。


同様報告、CTスキャン評価により、アモキシシリン/クラブラン酸投与( 8-15日間(3 g /日)は緊急虫垂炎切除に比べ非劣性
Amoxicillin plus clavulanic acid versus appendicectomy for treatment of acute uncomplicated appendicitis: an open-label, non-inferiority, randomised controlled trial.
Lancet. 2011 May 7;377(9777):1573-9.




日本では、どの業界でもクライエントがゼロリスク求められる日本社会で、“ゼロリスク”を求めることで失うものは総量では膨大なのだが、ども、個人に対し、このことを説明するのは難儀。
で、穿孔を恐れながら抗生剤投与で様子見るくらいなら、切っちまえ!となる・・・

肩こり・持続性緊張型頚部痛:多要素疼痛・ストレス自己管理介入

持続緊張型頚部痛に対し、多要素疼痛・ストレス自己管理介入:multi-component pain and stress self-management group intervention (PASS)が有効




Randomised controlled trial: 
 For people with persistent tension-type neck pain, a multicomponent pain and stress self-management intervention gives better improvement in ability to control pain and self-efficacy, but not disability, than physical therapy 
  Evid Based Med ebmed-2012-100564Published Online First: 2 April 2012 
 http://ebm.bmj.com/content/early/2012/04/02/ebmed-2012-100564.full?ga=w_bmjj_bmj-com


multi-component pain and stress self-management group intervention (PASS)


pdf



“肩こり”というのは本来は肩周辺訴えのことを言うと思うのだけど、僧帽筋や肩甲挙筋などかかる筋肉の広大な起始部停止部のせいか、持続性緊張性頚部痛も、日常臨床では、“肩こり”と訴えてくる。

この疾患の対応には、理学療法だけで無く、多要素取り組みが必要という報告。


全国各地で行われている、肩こりへの漫然とした理学療法に関して、整理が必要なのは、担当している専門家たちも感じてるはず。日本でも、介入プログラム明確化した多要素的介入プログラムを開発すべきで、日本人に流布する時間・コストの無駄な疑似科学的介入へ向かう人たちを少しでも少なくすべきだろう。・・・と、いっても、自民・民主・公明など議員たちがなぁ・・・

職業的アスベスト暴露と心血管疾患死亡超過リスク ;女性の方が影響大?


アスベストは起炎性物質であり、動脈硬化プロセスにも炎症性プロセスが関連する。
となると、心血管疾患にアスベストがどの程度の影響を与えるかが問題。

Workplace
Original article
Cardiovascular disease mortality among British asbestos workers (1971–2005)
Occup Environ Med doi:10.1136/oemed-2011-100313 

職業的アスベスト暴露労働者、98912名の大規模コホート

全原因死亡15557のうち、1053が脳血管死亡、4185が虚血性心疾患(IHD)死亡

統計学的に脳血管死亡 (SMR(喫煙補正標準化死亡率: smoking-adjusted standardised mortality ratio): 男性 1.63, 女性 2.04)、IHD死亡 (SMR: 男性 1.39, 女性 1.89)は超過有意に存在

職業・ 出生コホートは、性・年齢・喫煙・職業・コホート・暴露期間を含むPoisson 回帰モデルにて、脳血管疾患・IHD死亡率リスクと相関

暴露期間が統計学的有意だったのは、IHDのみ

結論としては、アスベスト職業性暴露と、心血管死亡率超過に関し、一つのエビデンスが示されたということ。

noteへ実験的移行

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