2012年8月1日水曜日

百日咳:無菌体ワクチン置き換えで百日咳流行へ 豪州研究

Number and Order of Whole Cell Pertussis Vaccines in Infancy and Disease Protection
Sarah L. et. al.
JAMA. 2012;308(5):454-456. doi:10.1001/jama.2012.6364
接種部位反応、発熱などの副作用の恐れのため、,無菌体百日咳ワクチンを含む沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン:acellular pertussis vaccines (diphtheria-tetanus-acellular pertussis; DTaP)に、全菌体百日咳ワクチンを含む三種混合ワクチン:whole cell vaccines (diphtheria-tetanus-whole cell pertussis; DTwP) からの置き換えが世界中で広がっている。



オーストラリア Qeenslandで1996年開始され、2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月でワクチンがパブリックに始まった。北米と同様、オーストラリアで百日咳流行があり、2011年、6-11歳で最も多く、この置き換えのためと考えられている。

DTaP単独3回接種の子供は、DTwP主接種の子供より百日咳罹患多く、流行前 (13.2 versus 5.2 / 100,000 人年) 、流行中 (373.1 versus 113.3  100,000 人年)共に多い。

両ワクチン型接種では、初回接種としてDTaPでの百日咳発症多い (409.0 versus 113.3 per 100,000 人年).


 
図. Pertussis Reporting Rates Between 1999 and 2011 by Primary Course of Pertussis Vaccination for Children Born in 1998
DTaP indicates diphtheria-tetanus-acellular pertussis; DTwP, diphtheria-tetanus-whole cell pertussis.



一方、日本では、百日咳過剰診断が問題になっている。“国内の医科大学ならびに大学病院では百日咳疑いの集団感染事例”と大騒ぎしたが、当初感染が疑われた百日咳菌(Bordetella pertussis )がほとんど検出されず・・・

百日咳集団感染疑い事例における起因病原体の検索 (Vol. 32 p. 234-236: 2011年8月号)

 http://idsc.nih.go.jp/iasr/32/378/kj3781.html


国も、LAMP法などはやく保険認可した方が、こういう誤診で大騒ぎをすくなくできるのでは?
“抗体値が1回高いだけで、診断可能”と、閾をさげたものだから、偽陽性例大量発生。しかも、抗生剤治療タイミングを無視の上、長期投与という事例も多くみうける。

これらの騒ぎを引き起こすきっかけとなった犯人は・・・

COPD:運動トレーニングは疲れるくらいでないと駄目

疲労のため力がでないというくらいの運動トレーニングのほうが、楽々運動より、確実に効果がある。
それは、運動能力だけで無く、QOLなどへの効果も含む。


Effectiveness of exercise training in patients with COPD: the role of muscle fatigue
Eur Respir J 2012 40:338-344; published ahead of print 2011, doi:10.1183/09031936.00111811


運動トレーニングによる運動パフォーマンスの改善はCOPDのみならず他にも作用する。
運動トレーニング中の筋刺激が不充分あら明らかなトレーニング効果は不充分となる可能性がある。

大腿四頭筋疲労を示す患者は良好な効果を示すことになるのだろうか?

46名3ヶ月の強度運動トレーニングプログラムを続け、運動能力、大腿四頭筋筋力、QOLをプログラム前後で測定。大腿四頭筋筋力15%以上低下、運動トレーニングプログラム後15分を有意な筋力疲労と定義する。

45名中29名(63%)で有意疲労。

疲労群患者では
・6分間歩行距離増加:median (interquartile range) 57 (47–103) m versus 17 (-7–46) m; p=0.0023)
・Chronic Respiratory Disease Questionnaire score(高スコアほど健康状況良好) (mean±sd 22±12 points versus 14±12 points; p=0.028)

大腿四頭筋・最大運動能改善は、両群 同程度

運動トレーニング中の大腿四頭筋収縮能疲労出現群では、機能的運動能力、HRQOL改善効果という面でトレーニング効果大きい。

COPDの臨床的改善効果は肺機能では確認出来ず、形態でしか検出できない

LABA/ICSによるジオメトリー変化しか、COPD stage III患者でのICS/LABA合剤効果を検出できなかった。



The acute effect of budesonide/formoterol in COPD: a multi-slice computed tomography and lung function study
Eur Respir J 2012 40:298-305; published ahead of print 2011, doi:10.1183/09031936.00072511

COPD stage IIIの10名を二重盲検交叉研究

気道容積をMSCTにてsegmentation評価、気道抵抗はCFD(computational fluid dynamics)で分析

BUD/FOM合剤吸入後4時間で末梢気道容積有意に増加 (p=0.011) :9.6±4.67 cm3 → 10.14±4.81 cm3

同様に、CFD測定気道抵抗減少 (p=0.047) : 0.051±0.021 kPa·s·L−1 → 0.043±0.019 kPa·s·L−1

肺機能パラメータで有意変化認めず、FRCのみが減少傾向を示した (p=0.056)

画像ベースパラメータでのみこの合剤投与での予測可能であった。


肺機能検査の敗北? あるいは、トリビアルな変化の検出に過ぎない?

ERS小児結核 アドボカシーの提唱をするらしい

Childhood tuberculosis: progress requires an advocacy strategy now
ERJ August 1, 2012 vol. 40 no. 2 294-297
http://erj.ersjournals.com/content/40/2/294.full

肉アナフィラキシー:ダニからかまれることと関連、さらに生物製剤へのアレルギーも・・・

ダニにかまれることと、肉原因のアナフィラキシー、そして、生物製剤へのアレルギー・・・α-galへの感作によりなされているという話

Clinical Practice: Clinical Vignettes
A Peculiar Cause of Anaphylaxis: No More steak?
The Journey to Discovery of a Newly Recognized Allergy to Galactose-alpha-1,3-galactose Found in Mammalian Meat
Journal of General Internal Medicine 2012, DOI: 10.1007/s11606-012-2144-z

原因不明の特発性とされるアナフィラキシーの原因のうち新しいアレルギー性疾患が認識されるようになった。
“lone star tick”に刺されることで、“carbohydrate galactose-α-1,3-galactose (alpha-gal)に対するIgE抗体形成。糖タンパクや糖脂質上のα-galを含むほ乳類肉にも感作され、食後、遅延型アナフィラキシーで、3-6時間後に生じることがある。

肉に対する皮膚反応は陰性で、診断は困難。

α-galに対するIgE検査が開発され、検査上の確認が出来つつある。



以下に解説がなされていた。

"このα-gal という糖鎖は、red meat つまり ウシ、ブタ、ヒツジなどの哺乳類に豊富に存在するため、これらを摂取した時にアナフィラキシーを生じることが、2009年、Commins らによって報告されました。すなわち、セツキシマブアレルギーと牛肉アレルギーは、α-gal という同一の糖鎖が抗原となっているために、両者は交差するということになります。"
"さらにCommins らは、これらのアナフィラキシーは、吸血ダニが原因であることを、2011年に報告しました。彼らは、ロッキー山紅斑熱の好発地域でマダニに咬まれた既往のある人は、マダニ蛋白に対するIgE 抗体とα-galに対するIgE 抗体がいずれも高く、両者に相関関係があることをつきとめました。すなわち、アメリカでロッキー山紅斑熱を媒介するマダニに咬まれたことのあるヒトは、牛肉アレルギーやセツキシマブアレルギーを発症する可能性が高いという事になります。"

「第63 回日本皮膚科学会西部支部学術大会④ ミニセッション1-14 島根の冬に多発するアナフィラキシー」
http://medical.radionikkei.jp/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-120712.pdf


生物製剤まで飛び火する話らしい・・・



オリゴ糖類 α-gal :肉に対する遅延型アナフィラキシーとは関連するが、喘息とは関連なさそう 2012年4月2日

白内障手術で股関節骨折リスク減少

65歳以上では、白内障手術後股関節骨折減少がみられる。視力低下はバランス、安定性に影響を与え、転倒・骨折リスクに影響を与える。

どの程度のインパクトがあるのかは不明であったが、これで、確認された。
住民レベルでの骨折絶対的リスク減少 0.2%というのは結構なインパクトだと思う・・・


Risk of Fractures Following Cataract Surgery in Medicare Beneficiaries
Victoria L. Tseng, et. al.
JAMA. 2012;308(5):493-501. doi:10.1001/jama.2012.9014
 Medicare Part B beneficiariesのサンプル5%の1年間後顧的検討


2002-2009年の65歳以上の1113640名の5%サンプル

この期間の白内障手術 410 809 (36.9%)
股関節骨折13976(1.3%)

最頻度骨折関連合併症は骨粗鬆症 (n = 134 335; 12.1%)

最頻度眼科的合併症は緑内障 (n = 212 382; 19.1%)

白内障手術を受けてない白内障患者の1年股関節骨折と比較で、白内障手術の股関節骨折補正ORは 0.84 (95% CI, 0.81-0.87)で、絶対的リスク増加は 0.20%


白内障手術後股関節骨折オッズ低下の患者サブグループは、重度白内障患者、propensity scoreベースでの白内障手術患者、75歳以上、 Charlson Comorbidity Index (CCI) 3以上


Propensity Score


Charlson Comorbidity Index (CCI)
http://touchcalc.com/calculators/cci_js





白内障・眼科手術に関する手術可否の判断は眼科医が行うべきもののはずなのに、時に、「“手術可否”についてご教示下さい」という紹介状をかかりつけ患者・非かかりつけ患者でも持ってくることがある。「抗凝固剤の中止可否」や「狭心症リスクについて教示ください」ならわかるのだが、「手術可否」判断を全部投げてくるところがある。

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