2013年3月14日木曜日

COPD・カテゴリー「B」は、循環器系リスク・がんリスクが高い

MRさんが紹介してくれた、昨年の論文が気になった。

呼吸器の医者って、COPDは必ず、呼吸器疾患で死ぬと勘違いしているのではないかと思い込んでるのではないかと・・・疑念を持つことがある

COPD講演などで必ず持ち出される、カテゴリー分類


Association between symptoms, spirometric classification and future risk of exacerbations.
http://www.thepcrj.org/journ/view_article.php?article_id=935

この右下"Group B"は、左上 "Group C"に比べ、FEV1保たれてる割に、生存率予後悪い
このB群は、心血管疾患、がんによる予後悪化がめだち、この群では、心血管疾患系及び悪性腫瘍に関し評価、治療が必要

Prediction of the Clinical Course of Chronic Obstructive Pulmonary Disease, Using the New GOLD Classification: A Study of the General Population Peter Lange, et. al.
Am. J. Respir. Crit. Care Med. 2012; 186: 975-981. 



”Group B”に関して、高齢者が多く、虚血性心疾患、心筋梗塞頻度が多い。
さらに、がん発生に関しても・・

1) Group Bに関して、心疾患系のリスクが懸念されるというのに、LABAもしくはLAMA が第一選択となっている現状
2)COPDに関しては、この群以外でも、循環器系評価、悪性腫瘍徴候への対処が必要だが、この群では、特に、注意が必要。




座骨神経痛フォローアップMRI検査は無駄

座骨神経痛生涯発生頻度は13-40%に及ぶ。座骨神経痛の自然死は良好なことが多く、大多数では八週間以内に自然消失する。保存的治療改善せず、持続する場合、手術が提供されるが、画像診断と手術技術発展はあるものの、必ずしもここ数十年治療成績は改善していない。
にもかかわらず、MRIが、腰椎椎間板ヘルニア既知例、持続的座骨神経痛例に頻回に施行されている。

手術 vs 長期観察ランダム化トライアル283名にて一年後とベースライン比較

Magnetic Resonance Imaging in Follow-up Assessment of Sciatica
Abdelilah el Barzouhi, et. al.
the Leiden–The Hague Spine Intervention Prognostic Study Group
DOI: 10.1056/NEJMoa1209250
84%で、良好なアウトカム
椎間板ヘルニアでは良好なアウトカム 35%、不良アウトカム33%
椎間板ヘルニアある場合の良好アウトカムは85%、無い場合は83%(P=.70)
MRI評価は良好アウトカムと不良アウトカムを鑑別できず(AU/ROC 0.48)



腰痛といい、座骨神経痛といい、医師といい、疑似医療行為といい、無駄な検査や行為がはびこる領域。
 
「腰痛をめぐる常識の嘘」など読むと、大学時代にポリクリで見聞きした腰痛に関するふんぞり返った教授の画像診断っていったい何だったんだろう・・・と思う。

放射線被曝:放射線量に比例し重大冠動脈イベント増加する ・・・ 女性乳がん医療用放射線暴露の研究から

乳がんの放射線療法による電離放射線の心臓へ影響

重大冠動脈イベント(心筋梗塞、冠動脈再建、虚血性心疾患死亡)に対する、住民ベース症例対照研究

放射線治療における電離放射線の心臓への影響は、虚血性心疾患のその後の発生率増加と関連する。その増加は、放射線被曝量と直線的に相関し、暴露後数年で生じる。
心臓リスク要素有無にかかわらず、女性では、放射線療法のリスク増加に関し、絶対的な影響がある。
Risk of Ischemic Heart Disease in Women after Radiotherapy for Breast Cancer
Sarah C. Darby, et. al.
N Engl J Med 2013; 368:987-998 March 14, 2013 
DOI: 10.1056/NEJMoa1209825

スウェーデン・デンマークにおける、 1958-2001年の放射線療法施行2168名
重大冠動脈イベント 963名、 対照 1205名

心臓全部への平均放射線量は 4.9 Gy (range 0.03-27.72)

平均被曝量との線型関係:Grayあたり 7.4%(95%信頼区間, 2.9-14.5; p < 0.001)の増加
明確な閾値を認めず

放射線療法5年内に増加し、その後30年間継続

1 Grayあたりの重大冠動脈イベント発生率は比例的で、冠動脈リスク有無にかかわらず同程度

 
乳がんに対する放射線療法の検討のため、女性だけの検討になっているが、福島原発事故に関しても示唆を含む研究。福島の事故の心血管イベント増加はこれからなのだろう。

ダビガトラン(プラザキサ)副作用のゴタゴタ・・・

承認申請時のデータというのは、本来、それを製造した会社が、新薬にとても都合の良い被験者群に基づきデータ作成をするわけだから、市販後、有効性・安全性に疑念が生じるのはむしろ当然。



プラザキサ:ダビガトランごたごたやってるなぁ・・・と、正直、あまり関心を示してなかった。製薬会社主張するほど、この薬剤の安全性評価は少なくとも確立されてないことは確かと思っている。故に、私アー、自ら新薬としてこの薬剤使用したことはない、他医療機関からの依頼による処方継続のみ・・・
チェックリスト:http://prazaxa.jp/tool/pdf/tool02.pdf

 以下の報告で、そのゴタゴタ少しわかった気がする・・・Weber現象によるマスコミなどを介した空騒ぎ的要素も含まれているようだ・・・



プラザキサは、2010年10月承認後、FDAのAdverse Event Reporting System (FAERS)にてこの薬剤使用と重大・致死的出血イベントに関わる多くの報告を受けた。ワーファリンに比べても異常なほど高率な発生頻度への懸念。しかしながら、ワーファリンと比較した非弁膜症性心房細動患者での、Randomized Evaluation of Long-Term Anticoagulation Therapy [RE-LY]対照化治験では、出血リスクは同等であった。

プラザキサに対するbenefit-risk profileへの疑念をもたらす、FAERSの巨大数の副事象イベントに議論が多くわき上がっている。
RE-Lyでもワーファリン対照に比べ低発生頻度だったが、プラザキサでも100人年あたり、死亡率 3.6 vs 4.1、重大出血 3.3 vs 3.6ということで、重篤副事象報告は当然多く存在するだろうことは予測されていた。市販後適正使用がなされてなかったことが危惧されたが腎機能障害例などの不適切使用はあったが、全体的に一般的なことではなかった。

疫学上の現象である、Weber effect(Weber JCP. Epidemiology of adverse reactions to nonsteroidal anti-inflammatory drugs. Adv Inflamm Res 1984;6:1-7)とは新薬登場時、急激に、副作用報告が増加し、その後急減する現象。単にそういう現象であるのか・・・。出血イベント報告増加が現実の出血事故を正確に表しているのか・・・FDAは、真に意味あるphharmacovigilance提供義務を持つ。 Sentinel Initiativeのパイロットプログラム、 FDA Mini-Sentinel databaseから保険クレームデータ、行政データを用い比較がなされ、ワーファリンに比べ、必ずしも頭蓋内・消化管出血率増加が認められてない。限界も有り、寄与要素や詳細なカルテデータレビュー不足が否めないが、RE-LYの結果と一致していると筆者等。


Dabigatran and Postmarketing Reports of Bleeding
Mary Ross Southworth, Pharm.D., Marsha E. Reichman, Ph.D., and Ellis F. Unger, M.D.
March 13, 2013DOI: 10.1056/NEJMp1302834

心肺蘇生家族立ち会いにより家族へのPTSD関連症状減少・・・

家族の精神的安定のための心肺蘇生って・・・あってはいけないと思うのだが・・・ そして、医学的に非可逆的なポイントと、家族の蘇生希望時間には差が存在し、心肺蘇生されている当事者の希望と無縁に、無用な心肺蘇生、セレモニー的蘇生が永遠と行われる可能性がある。例えば、「家族が死に目に間に合わないとか・・・」

実際、米国でのスタンダードでは、心肺蘇生に関して、家族立ち会いは認めてない。

以下の報告は、心肺蘇生家族立ち会いに関して、ポジティブな影響のみが強調された報告になっている。

Family Presence during Cardiopulmonary Resuscitation
Patricia Jabre, et. al.
N Engl J Med 2013; 368:1008-1018 March 14, 2013

背景

心肺蘇生(CPR)中の家族の存在の家族自体への影響、医療チームへの影響はまだ未確定

方法

収容前救急医療ユニット15施設による心停止・心肺蘇生例 570名
ユニットをランダムに割り付け
・CPR観察機会をシステマティックに、家族へ与える:介入群
・家族に関して標準的方法を行う:対照群
プライマリエンドポイントは、90日目のPTSD関連症状を有する親族比率
セカンダリエンドポイントは、不安・うつ症状の存在、家族の存在による蘇生時医療スタッフへの影響、医療スタッフのwell-being、医事法制訴えの存在

結果

witnessed CPRは、介入群 211/266(79%)、対照群 131/304(43%)

ITT解析にて、PTSD関連症状は介入群より対照群で有意に比率高い   (補正オッズ比, 1.7; 95% 信頼区間 [CI], 1.2 〜 2.5; P=0.004)
CPR観察してない家族内の方が、観察家族内の方より比率高い (補正オッズ比, 1.6; 95% CI, 1.1 〜 2.5; P=0.02)
家族による観察されたCPRにより心肺蘇生特性変化無く、患者生存率、医療チームの感情に変化認めず、医療訴訟に影響なし

これは病院での特殊な状況調査であり、必ずしも一般化できるものではないと解説されている
http://www.medpagetoday.com/Psychiatry/AnxietyStress/37869

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