2013年12月10日火曜日

KDIGOガイドライン:広汎なCKD例にスタチンを! ・・・CAlculator-gateのような問題は無いのか?

"CAlculator-gate": 心血管疾患予測式 リスクかさ上げ問題があり、スタチンとガイドライン作成上の疑念がひろがっている。

そんな中、CKD患者にかなり広汎にスタチン投与すべきという推奨がまたあらたに・・・



KDIGOワークグループの新しいガイドライン・・・8つの鍵となるシノープシスが含まれる。

鍵となる推奨は、eGFR 60 mL/min/1.73 m2未満の50歳以上では全員スタチン或いはスタチン/ezetimibeというもので、 Study of Heart and Renal Protection (SHARP; Lancet. 2011;377:2181-2192)研究に基づき1Aレベルの推奨となった。

他は
・透析依存成人はスタチン or スタチン/ezetimibe投与開始してはならない  (2A)

・透析時スタチン既投与患者は継続すべき(2C)

・腎移植患者は、冠動脈イベント劇的に高いので、スタチン投与受けるべき (2B)

・eGFR 60 未満の18−49歳成人ではスタチン治療されるべきで、透析や腎移植治療受けてないで、冠動脈疾患、虚血性卒中、10年冠動脈死・非致死性心筋梗塞確率10%を超える場合は、スタチン治療受けるべき  (2A)

・CKD患者において、LDLコレステロール検査は、心血管リスク検査として不十分。CKD診断新規成人では脂質特性検査をすべき (1C)

・しかし、フォローアップ測定は必要ない (Not graded)

・50歳超の成人・eGFR 60ml/min./1.73 m2以上(GFR categories G1 - G2) ではスタチン治療すべき (1B)



Lipid Management in Chronic Kidney Disease: Synopsis of the Kidney Disease: Improving Global Outcomes 2013 Clinical Practice Guideline
Ann Intern Med. Published online 10 December 2013

http://www.kdigo.org/clinical_practice_guidelines/Lipids/KDIGO%20Lipid%20Management%20Guideline%202013.pdf
















COPD : 吸入ステロイド+LABA併用 vs プラシーボ ・・・元々、すばらしい薬剤効果が約束されてるわけではない

COPDの薬物治療ってのも、製薬会社や各種講演会講師がのたまうほどのエビデンスはない! 主要参照TORCH研究ですら、プライマリアウトカムである全原因死亡率に関して有意差認めてない(0.825 (95%CI 0.681 ~ 1.002; P=0.052)で、相対的リスク減少として17.5%)。循環器系薬剤なら、有意差無しってことで無視されてもおかしくないトライアル結果。

Cochraneレビューにしては、結論甘いのではないかと思うのだが・・・

COPD治療に対する合剤治療に関して、主に、TORCH研究による部分が大きい。プラシーボに比べ、COPD急性増悪を4分の1減少させる。全死亡率減少は有意だが、TORCH研究のみで、より長期検討が必要だろう。肺炎リスクが問題;急性増悪・入院・死亡増加に関連せず。
現行エビデンスでは、効果問い意味で重大な差は認めないが、全てが同等というわけでもない

医療・臨床の世界って、どうも、スッキリしたものが少ない。

最近発売のCOPD合剤だって、薬剤vs薬剤比較研究だけでエビデンス有りと・・・インチキ宣伝が多い

Combined corticosteroid and long-acting beta2-agonist in one inhaler versus placebo for chronic obstructive pulmonary disease
Editorial Group: Cochrane Airways Group
Published Online: 10 NOV 2013 Assessed as up-to-date: 26 JUN 2013
DOI: 10.1002/14651858.CD003794.pub4


19の研究が登録クライテリアに合致(ランダム割り付け、4−156週間、平均42週間) 
フルチカゾン/サルメテロール、ブデソニド/ホルメテロール、モメタゾン/ホルメテロール配合剤 
盲目化バイアスリスクは低いが、被験者ドロップアウトのためattrition biasは不明か高リスク 
プラシーボ比較で、FUL/SAL、BUD/FOR共に急性増悪率減少

MOM/FORは、急性増悪1回以上患者数を減少

プール化解析にて、併用療法は、プラシーボ比較で、急性増悪回数減少を示唆 (発生率比 0.73; 95% CI, 0.69 to 0.78、7研究、7495名)

GRADEクライテリアを中等度とratingした場合エビデンスの質は中等度

これらのトライアルでの急性増悪は、年間1,2回で、結果的には、これらの患者へ2−4年毎に1回の急性増悪減少効果に相当。

包括的死亡率減少効果も見られるが、これらアウトカムは、F/SAL(TORCH研究)の一つのみ

一般的に、死亡に関しては、小規模研究ほど、短期間研究ほど包括的にはその寄与度が少ない。BUD/FORと、MOM/FORは広く観察されることか明確にする必要がある。

TORCH プラシーボ群からのベースライン死亡率15.2%では、1例の死亡を予防するためのF/SAL投与症例である、3年間ベネフィットNNT(NNTB)は 42 (95% CI, 24 to 775)

これら3つの配合剤治療で有意に健康状態測定値有意に改善するも、MMCIDに対してかなり小さな効果しか認めていない。

さらに、症状・肺機能は併用治療にて良好。肺炎リスク増加は、吸入ステロイド併用剤で、プラシーボ比較して多い  (OR 1.62, 95% CI 1.36 to 1.94)、そして、このエビデンスの質は中等度ratingであり、量依存性は認めない。
TORCHプラシーボ群での肺炎リスクは12.3%に基づくと、1例の肺炎回避のための3年間NNTHは17。併用治療群での、副作用、有効性梨のための中断例は少ない。

  


(層別化されたまともな)肺がん検診でも320に1人救えるが、1.38名は死なない肺がん

 日本では、一般に、がん見逃しには手厳しく追求を緩めないが、過剰検査・治療に関しては追求されがたい。潜在的リスクも大きな問題なのに・・・、日本人は物事を天秤にかけることに苦手な文化にあるのではないかとも思う。こういう文化だから、極端な主張の癌治療否定書籍が本屋に並ぶのだろう。GGOで癌を早期発見したと手柄顔をする日本の医療というのも問題だが・・・

 (もちろんだが高リスク症例層別化後の)低放射線量CT検診において、緩徐進行性がんがあり、生存期間に関与することがまずありえないがんががん発見中の比率で約18%存在する。トライアルでは、肺がんによる死亡1名を回避するため、320名の被験者数が必要で、過剰診断数は、1.38となる事実

 検診の有害性として、過剰診断に伴うコスト、不安、がん治療合併症の増大がある。
 
 筆者等の主張は極論ではない。過剰診断リスクを考慮の上、患者に低放射線量CT検診を説明するよう求めている。個別症例のリスクベネフィットをシフトを大幅に変更するものではないと筆者等。

Overdiagnosis in Low-Dose Computed Tomography Screening for Lung Cancer
Edward F. Patz  et. al.
JAMA Intern Med. Published online December 09, 2013. doi:10.1001/jamainternmed.2013.12738

NLST研究の過剰診断検討

フォローアップ期間中 肺がん
・LDCT群 1089名
・CXR群 969名

LDCT検診肺がん検出例の 18.5%(95%信頼区間 [CI], 5.4% to 30.6%)が過剰診断の確率、LDCTの非小細胞肺がんの22.5% (95% CI, 9.7% to 34.3%)が過剰診断
、気管支肺胞肺がんでは78.9% [62.2% to 93.5%)が過剰診断


肺がんによる死亡1名を回避するため、320名の被験者数が必要で、過剰診断数は1.38名。

高齢者糖尿病合併症の特性:罹病期間と年齢との関連性 ・・・病歴と共に大血管合併症増加、小血管合併症はむしろ低下

切迫した糖尿病の状況は、高齢者増大のため、深刻さを増している。エビデンスに基づく臨床実践推奨により研究優先事項、あてがうべきリソース、医療施策設定について明らかにすべきであると大上段に構えた報告。

2型糖尿病7万2千名あまりの60歳以上コホート研究


Rates of Complications and Mortality in Older Patients With Diabetes Mellitus
The Diabetes and Aging Study
Elbert S. Huang,  et. al.
JAMA Intern Med. Published online December 09, 2013. doi:10.1001/jamainternmed.2013.12956


【主要アウトカム・測定項目】  急性高血糖、急性低血糖イベント、微少血管合併症(ESRD:終末期腎疾患、PVD:末梢動脈性血管障害、下肢切断、糖尿病性眼疾患)、心血管合併症(冠動脈性心疾患、脳血管疾患、うっ血性心不全)、全原因死亡率


【結果】 糖尿病病歴短い成人では、血糖が最も多い非致死的合併症。例えば、70−79歳短期間病歴患者では、冠動脈性疾患低血糖が頻度多い  (千人年あたり 11.47 vs 5.03 )。他の合併症としてESD (2.60)、下肢切断(1.28)、急性低血糖(0.82)

 糖尿病病歴が長くなると、同年齢群比較で、冠動脈性心疾患・低血糖頻度が最も頻度として高くなる(千人年あたり18.98 、15.88)。一方、ESRD (7.64)、下肢切断(4.26)、急性低血糖(1.76)

 特定の年齢群、それぞれのアウトカム率、特に、低血糖、微少血管合併症は、罹病期間増加に従い、劇的に増加する。 
しかし、糖尿病罹病期間あたりで考えれば、低血糖発生率、心血管合併症、死亡率は、加齢そのものにより劇的に増加する。一方、微小血管合併症はさほど増えないか、減少する

ノバルティス・ディオバン問題の主犯は?

 マスメディア報道をみても、なんだか皆勘違いしてるのではないかと思う。
 ノバルティス・ディオバン問題、関係者や行政は製薬会社の責任を追及するが、利益を一番享受して多のは大学関係者なのは間違いない。
 あえて、製薬会社の肩を持つが、大学医学部・医科大学の教室に対しては様々な利権が有る。卑近な例では、直接的には関連病院への働きかけから、間接的には各種講演会などで処方誘導的なことが行われる。さらに、厚労省の保険適用に関する諮問なども、直接間接に関与する。製薬会社として生きていくためには、大学関係者に配慮しなければ商売できない。今回の問題に関しても、すべて製薬会社が主導的にやったということで幕を引きたかったのだろう。関係者暗黙の了解にて・・・

 だが、以下の記事から・・・それを抗弁できるだろうか?


千葉大でもデータ操作か 大学側、関与の可能性
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/131210/crm13121007060001-n2.htm
2013.12.10 07:05
 高血圧治療の降圧剤「ディオバン」(一般名・バルサルタン)の臨床研究データ操作問題で、研究を行った5大学のひとつ、千葉大が外部機関に依頼した解析調査で、多数のデータの相違が見つかっていることが9日、関係者への取材で分かった。人為的に操作された可能性があり、千葉大は月内に調査結果を公表する方針。
 研究には、ディオバンを販売する製薬会社「ノバルティスファーマ」の社員(退職)が所属を隠してかかわっていたが、千葉大側は「(元社員に)データは触らせていない」としており、大学の関係者が関与した可能性が高い。

ディオバンを不採用とし、降圧治療中安定した患者から薬剤変更した病院を見聞きする。それは正義の行為なのだろうか?
ディオバンを採用した根拠が、いんちきPROBE法に基づく者としたら、それを信用する程度に、エビデンスレベルへの学識の低さも問題。



一方で、製薬会社は常に弱者で、正義なのか?真っ向から否定できる一例・・・MSDの肺炎球菌ワクチンに関して行きすぎた宣伝

まるで、ニューモバックスが肺炎予防に対してかなりの効果があるごとく、消防の法から来た消火栓詐欺的CMを毎日見聞きするにつけ腹が立つ。

noteへ実験的移行

禁煙はお早めに! 米国における人種・民族・性別による喫煙・禁煙での死亡率相違|Makisey|note 日常生活内の小さな身体活動の積み重ねが健康ベネフィットをもたらす:VILPA|Makisey|note