2018年6月13日水曜日

USPSTFステートメント:心電図による心血管疾患スクリーニング

2つの推奨
  • The USPSTF recommends against screening with resting or exercise ECG to prevent CVD events in asymptomatic adults at low risk of CVD events. (D recommendation) 
  • The USPSTF concludes that the current evidence is insufficient to assess the balance of benefits and harms of screening with resting or exercise ECG to prevent CVD events in asymptomatic adults at intermediate or high risk of CVD events. (I statement)

心血管疾患低リスク成人において、心血管疾患イベント予防のため、安静時心電図・運動負荷心電図によるスクリーニング施行を推奨しない
また、中等度・高リスク対象者に、心血管疾患イベント予防のため、安静時あるいは運動負荷心電図によるスクリーニングするこのとのベネフィット・有害性バランス評価不十分





低リスク無症候対象者に対して標準リスク評価として心電図のスクリーニング施行に反対する(recommend against)と表現しているわけだが、 さらにエビデンス・レポート、システマティック・レビューに記載
糖尿病を除く無症候性の場合、例え高リスクであっても、運動負荷心電図スクリーニングによる健康アウトカム改善効果は望めない

また、
安静心電図に、従来のリスク要素を追加した再分類はできるが、その判別効果の意義は限定的な可能性があり、エビデンスが不十分。スクリーニング有害性頻度は未だ不明。
との結論




無症状成人からの心血管疾患リスクをスクリーニングすることのエビデンス・レビュー

Screening for Cardiovascular Disease Risk With Resting or Exercise Electrocardiography
Evidence Report and Systematic Review for the US Preventive Services Task Force
JAMA. 2018;319(22):2315-2328. doi:10.1001/jama.2018.6897
US Preventive Services Task Force Evidence Report June 12, 2018

16研究, n=77,140

糖尿病患者、50-75歳対象の心血管組み合わせプライマリ・アウトカムに対する2つのRCT, n=1151で、運動負荷心電図 (vs no screen)でのスクリーニング有意改善認めず(各々のハザード比, 1.00 [95% CI, 0.59-1.71] 、0.85 [95% CI, 0.39-1.84] )


安静時心電図でのスクリーニング評価RCT無し


5つのコホート研究,n=9582にて、 通常のリスク要素、例えば、年齢・性差・現行喫煙・糖尿病・総コレステロール・HDL値で、判別性に改善効果は少ないが存在  (3研究報告; 曲線下面積、C統計値の絶対的改善 , 0.02-0.03)
キャリブレーション、適正リスク分類で改善するかは不明


9つのコホート研究, n=66,407にて、多くの心血管アウトカム予測に関する、安静時心電図に追加的に従来のリスク要素や適正リスク分類付加することでは判別性改善効果少ないが存在 (曲線下面積、C統計値の絶対的改善 , 0.001-0.05) 、しかしエビデンスとしては正確性、研究の質、考慮すべきheterogeneityにより不十分で、臨床的意志決定に使う上ではリスク閾値として一致していない


Total net reclassificationとしては Framingham Risk Score or Pooled Cohort Equations base modelにより、3.6%から30%へ改善する


無症候の対象者において、血管造影・血管再建術などによる寄与有害性のエビデンスは 限定的



日本の検診でも少しずつ科学的エビデンスとやらが導入されつつあるが、住民・職域検診などはまだまだ非科学性の集大成。
→ e.g. http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000129998.pdf

功利性がわかってないやつらが行政を主導しているもんだから、無駄・無益、有害性を具有する施策がまかり通る日本の行政


日本では、住民検診・職域検診や臨床の場で、虚血性心疾患発見目的でなのか、意義の分からない安静時心電図がなされる場面があるが、心血管疾患リスクスクリーニングとしてのエビデンス不十分ということを周知する必要がある・・・私個人は日本の行政に嫌気しか覚えない


ところで、不整脈など他の疾患発見の意義に関してはこの報告は触れられてないことも注意が必要。


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