2018年1月9日火曜日

”フレイル”という概念は必要か?


日本老年医学会が、ご執心の“Frailty"もしくは”Frail"という概念
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_51_6_497.pdf


以下のAnn Int Med.誌に掲載された報告、あえて“frail"という概念を登用する必要があるか、う概念の実証(proof of concept)は不確かとの著者等の意見。


そもそも、疾患や病害の概念というのはその存在意義があってこそのもの。ところが、日本だけじゃなく、我先に命名プライオリティを・・・という輩が多く、日本臨床整形外科学会の「ロコモ」も然り。


今回の報告で、"frail or not frail"は高齢者医療研究において中間的アウトカムとしての役割に大きな疑問がもたらされた。あえて、"frail or not frail"と区別することの意義無く、あまねく、構成的身体活動プログラムに価値を見いだす。
故に、frailいかんに関わらず、全ての高齢者に、運動指導処方を行うべきということが示唆されると著者の意見。






構成的中等度強度運動プログラムにより、高齢者へ可動性のベネフィットをもたらすかもしれないという、 LIFE (Lifestyle Interventions and Independence for Elders) trialの二次解析

Trombettiらは、70-89歳、1636名の機能障害のある地域居住成人のデータ解析、被検者は多施設単盲検LIFE研究の一部。プライマリな結果は2014年報告、この解析ではfrailty statusを層別化せず、ベネフィットが特定のfrailtyサブグループで明確化できてない。



Frailtyは、

  • SOF (Study of Osteoporotic Fractures) indexで評価:ベースライン、6、12、24ヶ月
SOF frailty index
SOF指数は、後年の検査で、以下の3つのコンポーネント中2つ以上確認した場合をFrailtyと定義
(1) 体重減少(検査の間で5%以上)
(2) 腕を使わず5回椅子から立ち上がることができない
(3)エネルギーレベルの減少(「エネルギーは十分と言える」かという質問(高齢者うつスケール:Geriatric Depression Scale)に対して“No”と反応する場合


  • 主要的可動性制限程度:major mobility disability (MMD)を400m歩行不能と判断し、3.5年後評価




Effect of Physical Activity on Frailty: Secondary Analysis of a Randomized Controlled Trial
Andrea Trombetti, et al.; for the LIFE Study Investigators
Published: Ann Intern Med. 2018.
DOI: 10.7326/M16-2011
http://annals.org/aim/article-abstract/2668215/effect-physical-activity-frailty-secondary-analysis-randomized-controlled-trial
背景:高齢者において、身体活動によりfrailtyを予防するか、負のアウトカムと関連するか、エビデンスは乏しい
大規模ランダム化トライアルの明確なデータもない

目的:長期、構成的、中強度身体活動プログラムが、frailtyのリスク軽減に関連するか、frailty statusが、“major mobility disability (MMD) risk”の減少に関して身体的活動への影響をもたらすか?

デザイン:多施設、単盲検、ランダム化トライアル
セッティング:USA内8つのセンター
機能障害をもつ、70−89歳の1635名地域住民

介入:構成化中強度身体活動プログラム(エアロビック、レジスタンス、柔軟性運動) or 健康教育プログラム(ワークショップとストレッチング運動)


測定:frailty (SOF定義)ベースライン・6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月時点測定

MMD (400m 歩行可能) 3.5年後まで


結果:24ヶ月フォローアップ期間において、frailtyのリスク(n=1623)は、身体活動介入群と健康教育群で統計学的有意差認めず (補正化発生確率差, −0.021 [95% CI, −0.049 to 0.007])
SOF indexの3クライテリアのうち、身体活動プログラム介入は、椅子からの起立不能と相関  (adjusted prevalence difference, −0.050 [CI, −0.081 to −0.020]).
ベースラインのfrailty状態は、MMD頻度減少をもたらす身体活動への効果に影響を与えない (P for interaction = 0.91).

Limitation:Frailty statusは、エントリークライテリア・ランダム化層別でも加味されてない

結論: 運動不足地域住民老人において、構成化中強度身体活動プログラムは、2年後のfrailtyのリスク減少と関連せず
身体活動のMDD頻度へのベネフィット効果は、frailと非frail被検者で差異はない

noteへ実験的移行

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